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Disease Atlas · 耳鼻咽喉科 · 先天性疾患

先天性頸部嚢胞(甲状舌管嚢胞・鰓裂嚢胞)

Congenital neck cysts (thyroglossal duct cyst, branchial cleft cyst)

別名
Thyroglossal duct cystBranchial cleft cyst甲状舌管嚢胞鰓裂嚢胞
臓器系
耳鼻咽喉科
科目
ENTEmbryology
トピック
耳鼻咽喉科 46:頸部奇形と頸部軟部組織の炎症性疾患発生学 16.4:頭頸部:臨床
鑑別疾患
リンパ管奇形舌性甲状腺頭頸部癌
合併症
化膿性甲状腺炎甲状腺乳頭癌
続発疾患
甲状腺機能低下症
症状
頸部腫瘤圧痛
画像所見
無エコー後方エコー増強

🧠 全体像は「弓・嚢・溝」の発生過程で消え忘れた上皮の遺残である。正中で嚥下・舌突出とともに上下に動くなら前縁のにあるならを考える。ただし成人の新規嚢胞性腫瘤は、先天性と決めつけず悪性腫瘍のリンパ節転移(嚢胞性頸部転移)を必ず除外する。

発生学的分類

病変 発生起源 位置
甲状腺の下降路()の遺残 頸部正中、舌骨近傍 嚥下・舌突出で上下に動く(舌骨と連続するため)。時に増大しやすい
・洞・瘻 に埋没した鰓裂の遺残 頸部側方(多くは前縁) 動きは伴わない。第2鰓裂由来が最多
(旧称 リンパ管系の形成異常 に多い 多くは2歳までに明らかになる。・血管リンパ管型に分類

💡 が「舌突出でも挙上する」のは、嚢胞がを介して舌骨・舌根と線維性に連続しているためである。この可動性の有無が、動かないとの重要な鑑別点になる。

鰓裂嚢胞・洞・瘻の詳細

第2が第3・第4を覆って形成するが正常に消失しないと、上皮で裏打ちされた遺残病変となる。

形態 定義
嚢胞 内外いずれにも開口を持たない
またはの一方のみを持つ
の両方を持つ
  • 第1鰓裂由来:耳介前・外耳道・耳下腺周辺に生じる。
  • 第2鰓裂由来:最も多く、前縁の腫瘤として現れる。
  • 第3・第4鰓裂由来と交通することがあり、反復性の(多くは左側の)化膿性甲状腺炎として現れることがある。

診断

  • ・触診で位置、可動性(嚥下・舌突出との連動)、圧痛、瘻孔の有無を確認する。
  • を第一選択とし、甲状腺の存在(を切除すると唯一の甲状腺組織を失うの可能性を除外するため)と嚢胞の性状を確認する。・境界明瞭・という組合せを示すのが典型像で、や充実成分を伴う場合は感染や悪性を疑う根拠になる。
  • 複雑な瘻孔評価や周囲進展の評価には造影コンピュータ断層撮影(CT)・を追加する。
  • 成人での新規発症・非典型例では、による検索を行い、悪性腫瘍のリンパ節転移(特に扁平上皮癌甲状腺の嚢胞性転移)を除外する1
flowchart TD
    A["頸部嚢胞性腫瘤"] --> B{"正中・嚥下や舌突出で挙上?"}
    B -->|"はい"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyroglossal duct cyst'>甲状舌管嚢胞</span>を疑う: 超音波で甲状腺の存在を確認"]
    B -->|"いいえ・側方"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='branchial cleft cyst'>鰓裂嚢胞</span>を疑う"]
    C --> E{"小児・典型像?"}
    D --> E
    E -->|"はい"| F["先天性病変として計画的切除"]
    E -->|"いいえ・成人の新規発症"| G["悪性リンパ節転移を除外(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fine-needle aspiration cytology (FNAC)'>穿刺吸引細胞診</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary tumor'>原発巣</span>検索)"]

治療

  • :感染を制御したうえで、嚢胞・舌骨中央部・舌根方向の管をに切除する(Sistrunk手術)が標準である2。舌骨中央部を含めずに嚢胞のみを切除すると再発率が高い(単純摘出のみでは45〜55%、では約5%)。
  • ・洞・瘻:急性感染があれば先に制御し、を含めて完全切除する。不完全な切除は再発の原因となる。
  • :超音波・で広がりと気道への影響を評価し、病変の位置・型に応じて、手術、経過観察を選択する。

合併症と鑑別

  • 感染を反復するとや周囲組織との癒着を来し、手術の難易度が上がる。
  • の摘出前に甲状腺の位置を確認しないと、した唯一の甲状腺組織()を誤って切除し、術後にを来しうる。
  • が発生することは稀だがあり、病理標本の確認を要する。
所見 考えやすい病態
正中、嚥下・舌突出で挙上
前縁の (多くは第2鰓裂由来)
との交通、反復する左膿瘍 第3・第4鰓裂由来の瘻
成人の新規嚢胞性腫瘤 悪性腫瘍のリンパ節転移を除外

まとめ

  • 正中で嚥下・舌突出に伴い動く腫瘤は前縁の腫瘤は(多くは第2鰓裂由来)を考える。
  • の標準術式はで、術前に甲状腺の存在を確認する。
  • 成人の新規嚢胞性病変は先天性と決めつけず、悪性腫瘍のリンパ節転移を必ず除外する。

出典

  1. 1.Thyroglossal Duct Cyst(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)シストランク手術(甲状舌骨中央部を含めた一塊切除)が標準術式で、単純摘出のみでは再発率45〜55%と高い閲覧 2026-08-02
  2. 2.Clinical Practice Guideline: Evaluation of the Neck Mass in Adults(American Academy of Otolaryngology-Head and Neck Surgery (AAO-HNS)・2017)成人の持続する頸部腫瘤は先天性と決めつけず悪性腫瘍を第一に疑い除外する閲覧 2026-08-02