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Disease Atlas · 内分泌・代謝 · 疾患

甲状腺炎(亜急性・産後・無痛性・リーデル)

Thyroiditis (subacute, postpartum, silent, Riedel)

別名
De Quervain甲状腺炎亜急性肉芽腫性甲状腺炎Riedel甲状腺炎
臓器系
内分泌・代謝
科目
Internal MedicinePathology
トピック
内科学 E-02:甲状腺疾患の症状・診断・治療内科学 S-10:甲状腺炎病理学 C/85:甲状腺炎/甲状腺機能低下・亢進
鑑別疾患
バセドウ病非中毒性甲状腺腫・甲状腺結節
続発疾患
甲状腺機能低下症
治療薬
レボチロキシンプレドニゾロンタモキシフェンリツキシマブ
原因薬剤
アルファインターフェロン(PEG)-インターフェロンアルファ
画像所見
甲状腺シンチグラフィ集積パターン
元疾患
先天性頸部嚢胞(甲状舌管嚢胞・鰓裂嚢胞)免疫関連有害事象
原因となる疾患
IgG4関連疾患

🧠 全体像:甲状腺炎を整理する軸は「痛いかどうか」と「がホルモン合成亢進によるものか、濾胞破壊による既成ホルモンの漏出によるものか」の2つである。(亜急性腫性、無痛性・産後)ではが低く、合成が亢進しているわけではないのでなど)は無効という点が最大の落とし穴になる。は本ノートでは詳述せずを参照し、ここでは亜急性・無痛性/産後・Riedel・急性化膿性甲状腺炎を扱う。

病態

主要病型の比較

病型 疼痛 主な機序 抗体・炎症所見
(de Quervain病) 強い、圧痛、顎・耳への放散、発熱 ウイルス感染後のによる濾胞破壊 ESR・CRP高値、抗体は通常陰性
なし 自己免疫性のによる濾胞破壊 TPOAbがしばしば陽性、炎症反応は軽度
通常なし(圧迫感) を背景とする広範な線維化 IgG4高値のことが多い
急性化膿性甲状腺炎 強い局所痛 細菌感染(小児ではを背景とすることが多い) 発熱、白血球・CRP高値

(de Quervain、無痛性・産後)は「合成が止まらない」とは逆で、「壊れた濾胞から既製のホルモンが漏れ出す」ことでを来す。したがっては低下し、合成を阻害するは効かない。

flowchart TD
    A["濾胞の破壊(ウイルス感染後・自己免疫性など)"] --> B["貯蔵されていたT4・T3が漏出"]
    B --> C["一過性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyrotoxicosis'>甲状腺中毒症</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='radioactive iodine uptake'>放射性ヨウ素摂取率</span>低下"]
    C --> D["貯蔵ホルモンが枯渇"]
    D --> E["一過性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypothyroidism'>甲状腺機能低下</span>"]
    E --> F["多くは<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spontaneous recovery'>自然回復</span>、一部は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='permanent'>永続性</span>の機能低下に至る"]

臨床像・診断

亜急性肉芽腫性甲状腺炎(de Quervain病)

35〜50歳の女性に多く、後(など)に生じることが多い。強い・圧痛、発熱、ESR・を伴う点が特徴で、経過は甲状腺→機能低下期→というを取る。は低下している。

無痛性甲状腺炎・産後甲状腺炎

疼痛を欠き、TPOAbがしばしば陽性である点から自己免疫性の機序が推定される。は分娩後数か月以内に発症し、同様に→機能低下期という経過を取り得るが、多くは1年以内に回復する。

⭐ 産後の感・抑うつ様症状を見たら、産後うつと決めつける前に甲状腺機能(TSH、遊離T4)を確認する価値がある。

Riedel甲状腺炎

甲状腺とその周囲頸部構造に及ぶ「岩のように硬い」広範な線維化を来す、まれな病型である。現在ではのスペクトラムに位置づけられることが多い。急速な・圧迫症状(嗄声、呼吸困難、嚥下障害)から悪性腫瘍と紛らわしく、確定には生検を要することがある。線維化により症を来す。

⚠️ 急速に増大する硬い、圧迫症状、B症状を見たら、だけでなく甲状腺リンパ腫やも鑑別に挙げる。

急性化膿性甲状腺炎

まれだが、強い局所痛・発赤・発熱・白血球高値を伴う細菌感染である。小児での再発例ではの合併を検索する。

診断の流れ

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyrotoxicosis'>甲状腺中毒症</span>またはTSH異常を確認"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neck pain'>頸部痛</span>があるか"}
    B -->|"あり"| C["ESR・CRP、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='radioactive iodine uptake'>放射性ヨウ素摂取率</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subacute granulomatous (de Quervain) thyroiditis'>亜急性肉芽腫性甲状腺炎</span>を評価"]
    B -->|"なし"| D["TPOAb、産後・分娩歴、摂取率で無痛性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='postpartum thyroiditis'>産後甲状腺炎</span>を評価"]
    C --> E{"急速増大・岩様<span class='jp-term jp-term-diagram' title='induration'>硬結</span>・圧迫症状があるか"}
    D --> E
    E -->|"あり"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Riedel thyroiditis'>Riedel甲状腺炎</span>・悪性腫瘍を鑑別し画像・生検を検討"]
    E -->|"なし"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='triphasic'>三相性</span>の経過を想定しTSH・遊離T4を定期フォロー"]

超音波は結節・左右差・急速な腫大がある場合に有用で、や摂取率検査を全例に行う必要はない。

治療

亜急性肉芽腫性甲状腺炎(de Quervain病)

疼痛にはNSAIDsを第一選択とし、反応不良・重症例ではを用いる。甲状腺・振戦にはβ遮断薬で対症療法を行うが、合成亢進ではないためは投与しない。

無痛性甲状腺炎・産後甲状腺炎

はβ遮断薬で症状を緩和する。機能低下期に症状が強い、妊娠を希望する、TSH上昇が著明などの場合は一時的にを投与し、回復後に減量・中止の可否を再評価する。

Riedel甲状腺炎

としての性質から、などのグルココルチコイドが治療の中心となる。難治性・進行例ではリツキシマブを検討する。気道・食道圧迫が強い例では減圧目的の外科的処置を要することがある。症にはを補充する。

急性化膿性甲状腺炎

抗菌薬とドレナージが基本で、気道評価を並行する。小児の再発例ではの評価・治療を検討する。

まとめ