小児科学

小児科学 · 2-39

急性喉頭蓋炎・細菌性気管炎・クループ

Epiglottitis, Bacterial Tracheitis and Croup

前提:病態
ヘモフィルス属黄色ブドウ球菌
前提:正常
喉頭・気管・気管支・肺
疾患
クループ・急性喉頭蓋炎・細菌性気管炎喉頭蓋嚢胞
症状
吸気性喘鳴流涎
画像所見
オメガ型喉頭蓋尖塔徴候母指徴候

🧠 小児のは上気道狭窄の徴候である。なら、・・(tripod position)なら、高熱・・濃厚分泌物・治療不応ならを疑う。最重症例では検査より気道確保を優先する。

鑑別

特徴
発症 急速 ウイルス感染後に急速悪化 ・後、夜間に悪化しやすい
咳 目立たない 強い咳、濃厚分泌物
声・嚥下 こもった声、、 嗄声、分泌物 嗄声
全身 高熱、、 高熱、 多くは全身状態が比較的良い
治療反応 治療で改善しない アドレナリンで不十分 アドレナリンで一時改善、ステロイドで持続改善
気管内の炎症・

急性喉頭蓋炎

によりHaemophilus influenzae type b による小児例は激減し、現在の主なはStaphylococcus aureus、、Streptococcus pneumoniaeへ移っている。フィンランドの全数では、ワクチン接種率が94〜98%へ上昇するにつれ小児の年間発症数が50〜60例から2例へ減少した。1 この結果、現在は成人例が小児例を上回るようになっている。2 非H. influenzaeはワクチン接種児にも起こり得るため、接種歴を理由に本症を否定しない。

  • 児を興奮させず楽な姿勢のまま、保護者とともに酸素を近づける。仰臥位を強制しない。
  • 不安定例でによる咽頭診察、、X線のため気道確保を遅らせない。
  • 麻酔科、耳鼻科、小児を招集し、手術室など管理環境で自発呼吸を保ちながらを準備する。も準備する。
  • 気道確保後に血液培養などを採り、第三世代を基本に抗菌薬を投与する。現在の分布を踏まえ、地域の分離率が高い場合やが強い例ではバンコマイシンまたはクリンダマイシンの併用を検討し、培養で狭域化する。

細菌性気管炎

黄色ブドウ球菌、、S. pneumoniaeなどにより気管粘膜がし、厚いが気道を閉塞する。好発年齢は生後6か月〜14歳(ピーク3〜8歳)で、の標準治療(ラセミ・エピネフリン、全身性ステロイド)に反応しない点がとの重要な鑑別点である。3

  • 吸引可能な太いで気道を確保し、頻回吸引・加湿・を行う。
  • 内視鏡で濃厚分泌物と炎症を確認し、培養を採る。
  • を含むブドウ球菌と呼吸器病原菌をカバーするを開始し、培養で狭域化する。

クループ

は主になどによるで、6か月〜3歳に多い。通常は、嗄声、から臨床診断し、X線やをルーチンに行わない。4

重症度 所見 治療
軽症 、なし 全例に単回。落ち着かせ、水分を保つ5
中等症 、があるが意識・換気は保たれる +アドレナリン、観察
重症 著明な・、換気低下 アドレナリン反復6、酸素、熟練者による気道準備、PICU
傾眠、チアノーゼ、換気音低下、喘鳴消失 バッグ換気・挿管を含む蘇生。小径を準備

アドレナリン後は効果消失によるを観察する。加湿・の有効性は一貫せず、ステロイドの代替にはならない。「直腸ステロイドのみ」「点数だけで入院」という固定ルールは用いず、臨床反応と再受診可能性を含め判断する。の用量は資料により0.15・0.3・0.6 mg/kgと幅があるが、45試験・5,888例を統合したCochraneレビューでは低用量0.15 mg/kgが標準用量0.60 mg/kgと比べ再受診・や追加治療の必要性で明確な差がなく、同等に有効な可能性がある。5

まとめ

  • ・の児を興奮させず、では気道チームを先に呼ぶ。
  • は濃厚分泌物による閉塞のため、気道確保・吸引・抗菌薬が必要である。
  • は重症度を問わず単回ステロイドを投与する。
  • 以上ではアドレナリンと治療後観察を行う。

出典

  1. 1.Disappearance of epiglottitis during large-scale vaccination with Haemophilus influenzae type B conjugate vaccine among children in Finland(The Laryngoscope・1994)フィンランドで1985〜1992年に実施された血液培養陽性喉頭蓋炎の全数サーベイランスで、小児例の97%(226例)がHib(Haemophilus influenzae type b)による一方、Hib結合型ワクチン導入後にワクチン接種率が94〜98%へ上昇するにつれ、小児の年間発症数が1985〜1986年の50〜60例から1992年には2例へ減少したことを確認した。他の起因菌による喉頭蓋炎の増加は認めなかった。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Review of epiglottitis in the post Haemophilus influenzae type-b vaccine era(ANZ Journal of Surgery・2018)オーストラリア・ビクトリア州の3次医療施設4か所で2011〜2016年に診断された急性喉頭蓋炎93例(成人87例・小児6例)の後方視的検討で、Hibワクチン導入後は成人例が小児例を大きく上回るようになったこと、気道確保のための挿管を要した割合が27.6%であったことを確認した。閲覧 2026-08-27
  3. 3.Bacterial tracheitis in children: Approach to diagnosis and treatment(Paediatrics & Child Health・2004)細菌性気管炎はクループとの重要な鑑別点として、ラセミ・エピネフリンや全身性ステロイドといったクループの標準治療に反応が乏しく毒性外観・高体温を呈しやすいこと、主な起因菌が黄色ブドウ球菌(抗菌薬普及後に最多となった)・A群溶血性連鎖球菌(抗菌薬普及以前に最多だった)・肺炎球菌・インフルエンザ菌であり、モラクセラ・カタラーリスの検出頻度も増えていること、好発年齢が生後6か月〜14歳(ピークは3〜8歳)であることを確認した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.Croup in children(Canadian Medical Association Journal・2013)クループの臨床診断、Westley scoreの構成、重症度に応じた糖質コルチコイドとエピネフリン治療を確認した。閲覧 2026-08-27
  5. 5.Glucocorticoids for croup in children(Cochrane Database of Systematic Reviews・2023)18歳以下のクループ小児を対象とした45件のランダム化比較試験(5,888例)を統合したCochraneレビューで、デキサメタゾン0.15 mg/kgは0.60 mg/kg(標準用量)と比べ24時間後のクループスコア改善がやや劣る可能性があるものの、再受診・再入院や追加治療の必要性には両用量間で明確な差がなく、低用量が標準用量と同等に有効な可能性があることを確認した。閲覧 2026-08-27
  6. 6.Nebulized epinephrine for croup in children(Cochrane Database of Systematic Reviews・2013)中等症から重症のクループにおけるネブライザー・エピネフリンの短期的症状改善効果を確認した。閲覧 2026-08-27