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Disease Atlas · 生殖・産婦人科 · 先天性疾患

処女膜閉鎖

Imperforate hymen

別名
処女膜閉鎖症無孔処女膜
臓器系
生殖・産婦人科小児
科目
PediatricsObstetrics and Gynecology (Gynecology)
トピック
小児科 2-15:小児の外性器・内性器救急婦人科 01:原発性無月経
鑑別疾患
ミュラー管無形成横腟中隔
合併症
子宮内膜症・子宮腺筋症
症状
無月経腹痛

🧠 全体像:は、の発生そのものは正常に完了しているのに、流出路の最下端()だけが開通しなかった状態である。⭐ だからとは根本的に別の話になる——子宮も腟も「ある」。あるのに、が体外に出られないだけである。⭐ は由来の組織であり、由来ではないため、などの合併頻度がとは違って稀になる1。⚠️ 臨床像は「無月経」ではなく「無月経に見える」ことが多い——そのものは正常に始まっているのに、経血が腟の中に閉じ込められて外から見えないだけである。

発生学——最下端だけが取り残される

腟は上部(由来)と下部(由来)の癒合によって作られる。が開通しないのは、この癒合の最終段階、側の洞腟球がを開通させる過程でだけが取り残されるためと考えられている1。

⭐ そのものが由来の組織であり、由来ではない。 これが、に泌尿器系の合併奇形が稀である理由になる1——でが約30〜40%に達するのとは対照的である。

頻度は女児出生1,000人に1人と推定される1。

臨床像——年齢で見え方が変わる

時期 臨床像
母体由来のエストロゲン刺激により(ムココルポス)を来しうるが、診察所見が乏しいことがある1
思春期(後) ⭐ 多くの症例はまで無症状で経過し、時に周期性の腹痛とで来院する1

(出生後236例)では、⭐ 思春期(12〜18歳)が153例(64.8%)と最多で、平均年齢は10.7±4.7歳であった2。最も多い症状は腹痛(54.2%)で、尿閉(20.3%)・(14.0%)・(9.7%)・頻尿(5.1%)が続く2。

⚠️ 症状の正体——月経血の逆流的な貯留

  • ・:が・子宮腔に貯留する。青紫色に膨隆する会陰腫瘤としてで分かる1。
  • ⭐ 貯留した経血が機械的に尿路を圧迫し、尿閉・水腎症を招く。 点で尿閉を約20%、を約2%に認める1。
  • ⚠️ 逆行性月経により、・不妊のリスクが高まる1。

診察

⭐ (下腹部を用手で圧迫する手技)で腟の膨隆を確認できる1。で青紫色に膨隆するが見えれば、診断はほぼ確定する。

診断——鑑別の要は視診とMRI

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary amenorrhea'>原発性無月経</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cyclic abdominal pain'>周期性腹痛</span><br>青紫色に膨隆する会陰腫瘤"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inspection'>視診</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hymen'>処女膜</span>の性状を確認"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hymen'>処女膜</span>が閉鎖し<br>膨隆しているか"}
    C -->|"はい"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pelvic ultrasound'>骨盤超音波</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hematocolpos'>血腫症</span>・尿路閉塞を評価"]
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hymen'>処女膜</span>は正常に開口している"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transverse vaginal septum'>横腟中隔</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vaginal agenesis'>腟無形成</span>を疑う<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>で鑑別"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='imperforate hymen'>処女膜閉鎖</span>と診断"]
  • :と合併する尿路閉塞の評価に重要1。でも妊娠20週の時点から水腎症・を検出しうる1。
  • ⭐⚠️ 鑑別の決め手はである。 では自体が閉鎖し膨隆しているのに対し、ではは正常に開口している——中隔はもっと奥(腟の途中)にある1。
  • が鑑別のgold standardとされ、(との間の)・(腟上部の先天的欠損)との判別に用いる1。

⚠️ ミュラー管無形成との取り違えに注意

の項でも触れたとおり、がやとされることがある。⭐ 超音波で近位のやが見えれば閉塞性の異常(・)であって、無形成ではない。 逆に、・では子宮も腟上部も正常に存在するため、核型やホルモン検査は基本的に不要である——や完全型で核型・テストステロンを測るのとは対照的である。

治療

⭐⚠️ 外来でのによる一時的な減圧は禁忌に近い。 医原性ののリスクを伴うため、確定的なを全身麻酔下に行うことが標準治療である1。

では、を受けた197例(83.5%)のうちが83例(35.2%)、切除術が86例(36.4%)であった2。

  • 手術は緊急の合併症(尿路閉塞・・感染)が無ければ、思春期・後まですることもある1。
  • ⭐ 術後にエストロゲンを塗布すると、とくに前思春期患者での再閉鎖を防げる1。

転帰

では、⭐ 改善141例(59.7%)・合併症15例(6.6%)・死亡5例(2.1%)・転帰不明75例(31.8%)であった2。重篤な合併症としては腎不全5例(2.1%)・尿路感染1例(0.4%)が報告されている2。⭐ 長期予後は良好とされ、ある報告では後に86%の女性がを経験せず妊娠に至った1。

⚠️ 合併奇形は稀ではあるが、ゼロではない。 では出生後患者の20.3%(48例)に以外の奇形を合併した2。⭐ 「由来だから泌尿器奇形が稀」という原則はあくまで相対的なものであり、他の合併奇形の検索を省略してよいわけではない。

まとめ

  • は流出路の最下端だけが開通しなかった状態で、子宮・腟は正常に存在する。とは根本的に別の疾患であり、が由来のため泌尿器奇形は稀。
  • 頻度は女児出生1,000人に1人。⭐ 多くはまで無症状で、時のとで発見される(平均診断年齢10.7±4.7歳)。最多の症状は腹痛(54.2%)。
  • ⚠️ 貯留したが尿路を圧迫し、尿閉(約20%)・(約2%)を招く。 逆行性月経は・不妊のリスクを高める。
  • 診断は(青紫色に膨隆する)が第一歩。⭐ との違いは「自体が閉鎖しているか、正常に開口しているか」。 が鑑別のgold standard。
  • ⚠️⚠️ 外来でのは禁忌に近い。 全身麻酔下の確定的なが標準治療で、術後のエストロゲンが再閉鎖を防ぐ。長期予後は良好。

出典

  1. 1.Imperforate Hymen(StatPearls Publishing・2023)NCBI Bookshelfのライブページ(末尾のRevision History「Last Update November 12, 2023」)で確認した。処女膜が発生の過程で腟の残りの部分と一緒に開通できないことで生じ、最も有力な説が子宮腟管と尿生殖洞が接合する部位で洞腟球(sinovaginal bulb)が腟を開通させる際に処女膜だけが取り残されるというものであること、処女膜がミュラー管由来ではなく尿生殖洞由来の組織であるため泌尿器系の合併奇形が稀である理由になること、頻度が女児出生1,000人に1人と推定されること、来院時点で尿閉を約20%・急性腎障害を約2%に認めること、新生児期には母体由来のエストロゲン刺激により粘液瘤(ムココルポス)を来しうるが診察所見が乏しいことがあること、多くの症例は初経まで無症状で経過し初経時に周期性の腹痛と無月経で来院すること、月経血が腟腔・子宮腔に貯留する血腫症(hematocolpos)・子宮留血症(hematometra)が青紫色に膨隆する会陰腫瘤を作ること、身体診察でクレーデ法(下腹部を用手で圧迫する手技)により腟の膨隆を確認できること、鑑別診断が横腟中隔(尿生殖洞とミュラー管の間の癒合不全による)と腟無形成(腟上部の先天的欠損)であり、MRIがこれらを鑑別するgold standardであること、出生前超音波で妊娠20週時点から水腎症や骨盤内腫瘤を検出しうること、骨盤超音波が血腫症や合併する尿路閉塞の評価に重要であること、貯留した月経血が機械的な尿路閉塞を来し尿閉・水腎症を招くこと、逆行性月経により子宮内膜症や不妊のリスクが高まること、確定的な処女膜切開術を全身麻酔下に行うのが標準治療であり確定的な処女膜切開術の前に外来で切開排膿により一時的に減圧してはならないこと(外来での処置は医原性の骨盤内炎症性疾患のリスクを伴うため)、術後にエストロゲンクリームを塗布することで特に前思春期患者での処女膜再閉鎖を防げること、ある研究では処女膜切開術後に86%の女性が性交痛を経験せず妊娠に至ったことを確認した。閲覧 2026-09-06
  2. 2.Imperforate Hymen: A Comprehensive Systematic Review(Journal of Clinical Medicine・2019)PMCの全文(PMC6352236)で確認した。155篇(症例報告143篇・症例集積12篇)に含まれる253例を対象とし、出生後例236例を解析したシステマティックレビューであること、年齢分布が思春期(12〜18歳)153例(64.8%)・小児期(2〜12歳)33例(14.0%)・新生児期(生後1か月未満)26例(11.0%)・成人期(18歳超)11例(4.7%)で、平均年齢が10.7±4.7歳であったこと、最も多い症状が腹痛(54.2%)で、尿閉(20.3%)・月経異常(14.0%)・排尿痛(9.7%)・頻尿(5.1%)が続くこと、重篤な合併症として腎不全5例(2.1%)・尿路感染1例(0.4%)が報告されたこと、出生後患者の20.3%にあたる48例で処女膜閉鎖以外の奇形を合併したこと、外科治療を受けた197例(83.5%)のうち処女膜切開術(hymenotomy)が83例(35.2%)・処女膜切除術(hymenectomy)が86例(36.4%)であったこと、転帰は改善141例(59.7%)・合併症15例(6.6%)・死亡5例(2.1%)・転帰不明75例(31.8%)であったことを確認した。閲覧 2026-09-06