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Disease Atlas · 皮膚 · 腫瘍

白血病の皮膚浸潤

Leukemia cutis

別名
leukemia cutis白血病性皮膚浸潤白血病細胞浸潤皮膚白血病
臓器系
皮膚血液腫瘍
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 S-37:急性白血病内科学 H-28:急性骨髄性白血病
鑑別疾患
Sweet症候群好中球性エクリン汗腺炎皮膚T細胞リンパ腫
関連疾患
急性骨髄性白血病骨髄異形成症候群
症状
皮膚結節皮疹

🧠 全体像:は、腫瘍細胞そのものが皮膚に入り込んだ状態である。⚠️ 炎症性の皮疹(・)と臨床像では区別できないため、生検が診断の唯一の手段になる。実地の軸は3つ——⭐ のに多い、⭐ 免疫染色ではCD68とが最も感度が高く、CD34とは感度不足で頼れない1、⚠️ 予後不良の指標であり、でマッチさせた比較でも白血病特異的死亡の2.06が残る2。

用語——「白血病の皮膚浸潤」が指す範囲は一定でない

⚠️ 「leukemia cutis」は病理側から見て一貫しない用語である。 厳密には未熟なの皮膚浸潤を指すが、・といったや、といったの皮膚病変にこの語を当てる著者もおり、・でも類似の病変が生じる3。

💡 分類上の位置づけも整理しておく。(ICC)2022年版と第5版の枠組みでは、のはと呼ばれ、は独立した疾患単位として扱われる3。「皮膚にがいる」という同じ見た目の背後に、複数の診断名が並んでいる。

臨床像

皮膚病変は通常は多発性で、単発はより少ない。結節・局面・丘疹の形をとることが多く、まれに紅斑・潰瘍・水疱として現れる。好発部位は下肢が最も多く、次いで上肢・背部・胸部・頭皮・顔面である3。

⭐ 白血病の診断より先に出ることがある。 はのおよそ10%にみられ、そのうち皮膚が最も多い臓器で、自体は3〜5%に生じる。多くは既知の(進行した)白血病の経過中に現れるが、30%は新規診断の白血病と同時に、10%未満は臨床的に検出可能な白血病に先行して現れ、この後2者は「aleukemic leukemia cutis」と呼ばれる3。⚠️ 末梢血・骨髄に異常が無いことは、皮膚病変がでないことの根拠にならない。

⭐ の白血病が皮膚に来る。 はのに最も多く、とくに例に多いとされる3。生検確認例21例の検討でもの皮膚浸潤が最も多く35%を占め、基礎疾患は14例・3例・1例・骨髄性白血病(NOS)3例で、年齢は24〜88歳(平均57歳)であった1。

鑑別——臨床像では決まらない

⚠️ の患者に皮疹が出たとき、感染症・炎症性・そのものの浸潤は臨床像で区別できない。 決め手は生検である。

鑑別 見分け方
真皮のであり腫瘍細胞ではない。悪性腫瘍関連型ではと併存しうる
汗腺周囲のとの壊死。腫瘍性の芽球浸潤があるかどうかで分ける
成熟T細胞の腫瘍。免疫染色でか骨髄球系かを先に決める
・の皮膚浸潤 病変が類似する。の皮膚浸潤はより生存が良好である3

病理と免疫染色

診断は段階的に進める。初期の免疫染色パネルとしてCD43・CD45・INSM1・・・pan-cytokeratin・TdTを用い、まずか骨髄球系かを判別してから追加マーカーで疾患を特定する、というアルゴリズムが提示されている3。

flowchart TD
    A["皮膚の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aberrant cell type'>異型細胞</span>浸潤"] --> B["初期パネル<br>CD43・CD45・INSM1・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lysozyme'>リゾチーム</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='myeloperoxidase (MPO)'>ミエロペルオキシダーゼ</span>・pan-cytokeratin・TdT"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hematopoietic System'>造血系</span>の表現型か"}
    C -->|"いいえ"| D["上皮性腫瘍・その他の腫瘍を検討"]
    C -->|"はい"| E{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymphoid'>リンパ球系</span>か骨髄球系か"}
    E -->|"骨髄球系"| F["追加マーカーで疾患を特定<br>(CD68・CD4・CD56など)"]
    E -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymphoid'>リンパ球系</span>"| G["追加マーカーで疾患を特定"]

⚠️ この図は免疫染色の進め方であって、臨床像から診断へ至る道筋ではない。 出発点はあくまで生検である。

の皮膚浸潤に絞ると、マーカーごとの感度には大きな差がある。組織ブロックが得られた12例での実測値である1。

マーカー 陽性率
CD68 100%
100%
CD4 67%
58%
CD56 33%
CD117 33%
CD34 17%

⚠️ 芽球のマーカーとして慣れているCD34とは、皮膚では役に立たない。 感度がそれぞれ17%・33%と不十分で、「CD34陰性だからではない」とは言えない1。⭐ 最も感度が高いのはCD68とだが、⚠️ これらは単球・マクロファージ系統に特異的ではない——感度は高いが特異度は担保されないので、他のマーカーと臨床情報を合わせて読む1。CD4発現は一般的である一方、CD56発現はそうではない。

予後

⚠️ 「予後不良のとされてきたが近年は否定されつつある」という理解は正しくない。 従来の報告が症例数の限られた記述的研究に偏っていたのは事実で、著者ら自身も近年の文献は予後との関連についてより両論的になっていると述べているが、でマッチさせたコホートは予後不良を支持する結果を出している2。

単施設ので2005〜2017年に診断された1683例のうち、生検で確認された皮膚浸潤は78例であった。年齢・人種/民族・性別・白血病型ので、皮膚浸潤例62例を非皮膚浸潤例186例と1対3にマッチさせて比較している2。

皮膚浸潤あり(62例) マッチさせた対照(186例)
平均年齢 58.2歳(SD 11.7) 58.2歳(SD 13.5)
男性 33例(53.2%) 103例(55.4%)
5年生存率 8.6% 28.3%

によるマッチ後のでは、白血病特異的死亡のが2.06(95%CI 1.26〜3.38、P = .004)、のが1.66(95%CI 1.06〜2.60、P = .03)であった2。著者らのは「を呈する患者は、より強力な治療とより厳密な経過観察を要する可能性がある」である。

💡 との関連は薄い。 このコホートで皮膚浸潤と有意に関連したはのみ(2.13、95%CI 1.10〜4.12、P = .03)で、・FLT3-ITDなどでは有意差が無かった2。⚠️ これは「とくに例に多い」という病理側の記載3と食い違って見える。 一方は皮膚浸潤例と例の比較(この単施設コホート)、他方は総説の記述であり、母集団も設計も異なるので、どちらか一方を採って他方を否定しない。なお皮膚浸潤群ではが多く、M4が25.8%・M5が37.1%であった2。

⭐ 移植で差が埋まる可能性がある。 ドイツのなレジストリ研究では、が・・芽球数の高値、の低下、の上昇、の短縮と関連した。しかしの有無による生存の差は、によって埋められうると総説は記す3。「予後不良だから諦める」ではなく「より強力な治療を検討する根拠になる」という向きで読む。

まとめ

  • は腫瘍細胞そのものの皮膚浸潤で、炎症性と臨床像では区別できず生検が必須である。
  • 「leukemia cutis」という語の指す範囲は一定でない。厳密には未熟なの浸潤を指すが、成熟腫瘍や・の皮膚病変に当てる用法もある。
  • 病変は多発する結節・局面・丘疹で、下肢に最も多い。のに多い。
  • 免疫染色ではCD68・が感度100%、58%、 33%、CD34 17%。CD34陰性は否定の根拠にならない。
  • 予後は不良で、マッチ後も5年生存率8.6%対28.3%、白血病特異的死亡の2.06。ただしによる生存差はで埋められうると報告されている。

出典

  1. 1.Myeloid leukemia cutis: a histologic and immunohistochemical review(Journal of Cutaneous Pathology(Cibull TL, Thomas AB, O'Malley DP, Billings SD)・2008)生検で確認された骨髄系の白血病皮膚浸潤21例を検討し、うち組織ブロックが得られた12例でCD4・CD34・CD56・CD68・CD117・CD123・TdT・リゾチーム・ミエロペルオキシダーゼの免疫染色を行ったこと、年齢が24〜88歳(平均57歳)で男性12例・女性9例であったこと、基礎の血液疾患が急性骨髄性白血病14例・骨髄異形成症候群3例・本態性血小板血症1例・骨髄性白血病(NOS)3例であったこと、単球系の骨髄系皮膚浸潤が最も多く35%であったこと、CD68とリゾチームがいずれも100%陽性であった一方でミエロペルオキシダーゼ58%・CD117 33%・CD34 17%と感度が低かったこと、CD4が67%・CD56が33%で陽性であったこと、単球系分化を伴う骨髄性白血病が他の型より皮膚に浸潤しやすいこと、CD68とリゾチームは単球・マクロファージ系統に特異的ではないものの骨髄系皮膚浸潤の検出に最も感度が高くミエロペルオキシダーゼも有用だがCD117とCD34は感度が不十分であること、CD4発現は一般的だがCD56発現はそうではないことを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得閲覧 2026-09-03
  2. 2.Association of Leukemia Cutis With Survival in Acute Myeloid Leukemia(JAMA Dermatology(Wang CX, Pusic I, Anadkat MJ)・2019)単施設の三次医療機関で2005年1月1日から2017年4月1日までに診断された急性骨髄性白血病1683例を後ろ向きに検討し、生検で確認された急性骨髄性白血病型の白血病の皮膚浸潤が78例、皮膚浸潤の無い急性骨髄性白血病が1605例であったこと、これまでの報告が症例数の限られた記述的研究に偏っていたのに対し本研究が年齢・人種/民族・性別・白血病型の傾向スコアで皮膚浸潤例62例と非皮膚浸潤例186例を1対3にマッチさせたこと、皮膚浸潤群の平均年齢58.2歳(SD 11.7)・男性33例(53.2%)、対照群の平均年齢58.2歳(SD 13.5)・男性103例(55.4%)であったこと、5年生存率が皮膚浸潤群8.6%に対しマッチさせた非皮膚浸潤群28.3%であったこと、拡張Cox回帰によるマッチ後の生存解析で白血病特異的死亡のハザード比が2.06(95%CI 1.26〜3.38、P = .004)、全死因死亡のハザード比が1.66(95%CI 1.06〜2.60、P = .03)であったこと、皮膚浸潤群で単球系サブタイプが多く M4が25.8%・M5が37.1%であったこと、第8染色体の付加が皮膚浸潤と関連した唯一の細胞遺伝学的因子でオッズ比2.13(95%CI 1.10〜4.12、P = .03)であり NPM1変異・FLT3-ITDなどでは有意差が無かったこと、著者らが近年の文献は白血病の皮膚浸潤と予後の関連についてより両論的(more equivocal)になっていると述べ、寛解率が同等であったとする2001年の研究に言及していること、結論が「白血病の皮膚浸潤を呈する急性骨髄性白血病患者は、より強力な治療とより厳密な経過観察を要する可能性がある」であることを、PMC6583862の全文で確認した閲覧 2026-09-03
  3. 3.Diagnostic approach to leukemia cutis: A differential diagnostic step-by-step algorithm(American Journal of Clinical Pathology(Jenei A, Tzankov A)・2025)「leukemia cutis」が皮膚の腫瘍性造血細胞浸潤を指す用語として一貫せず紛らわしい語であること、著者らが厳密な意味での白血病の皮膚浸潤を未熟な芽球様細胞の浸潤と定義する一方、慢性リンパ性白血病・有毛細胞白血病といった成熟B細胞腫瘍やT細胞前リンパ球性白血病といった成熟T細胞腫瘍の皮膚病変にこの語を当てる著者があり、骨髄増殖性腫瘍・骨髄異形成症候群でも類似の病変が生じること、急性骨髄性白血病の髄外病変が症例のおよそ10%にみられ皮膚が最も多く侵される臓器系で白血病の皮膚浸潤の発生が3〜5%であること、白血病の皮膚浸潤の多くが既知の(進行した)白血病の経過中にみられる一方で30%は新規診断の白血病と同時に生じ10%未満は臨床的に検出可能な白血病に先行し、この後2者が「aleukemic leukemia cutis」と呼ばれること、皮膚病変が通常は多発性で単発はより少なく、結節・局面・丘疹の形をとることが多くまれに紅斑・潰瘍・水疱として現れること、好発部位が下肢で次いで上肢・背部・胸部・頭皮・顔面であること、白血病の皮膚浸潤が急性骨髄性白血病の単球系病型でとくにNPM1変異例で最も多いこと、初期の免疫染色パネルとしてCD43・CD45・INSM1・リゾチーム・ミエロペルオキシダーゼ・pan-cytokeratin・TdTを用い、続いてリンパ球系か骨髄球系かを判別してから追加マーカーで疾患を特定する段階的アルゴリズムを提示していること、ドイツの大規模な急性骨髄性白血病レジストリ研究で髄外病変が乳酸脱水素酵素・白血球数・芽球数の高値、完全寛解率の低下、早期死亡率の上昇、全生存期間の短縮と関連したこと、しかし髄外病変の有無による生存の差は同種造血細胞移植によって埋められうること、骨髄異形成症候群の皮膚浸潤は白血病の皮膚浸潤より生存が良好であること、国際コンセンサス分類(ICC)2022年版とWHO第5版が参照枠として用いられ急性骨髄性白血病の髄外病変が骨髄肉腫と呼ばれること、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍が独立した疾患単位として論じられることを、PMC11890294の全文で確認した閲覧 2026-09-03