内科学

内科学 · H-28

急性骨髄性白血病

Acute Myeloid Leukemia

前提:病態
急性骨髄性白血病(AML)抗がん薬I(代謝拮抗薬)抗がん薬V(低分子シグナル伝達阻害薬・レチノイド)
薬剤
イダルビシンイボシデニブエナシデニブグラスデギブ
疾患
急性骨髄性白血病急性前骨髄球性白血病好中球性エクリン汗腺炎白血病の皮膚浸潤
症状
歯肉増生
検査値
白血球数

🧠 全体像:は、がしてクローン性に増殖し、正常造血を急速に障害するである。現在は形態だけでなく、、既往の/、治療関連性、分子リスク、に基づいて診断・治療する。123

病態

flowchart TD
    A["造血幹・前駆細胞に遺伝子異常が蓄積"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='differentiation arrest'>分化停止</span>と自己複製の亢進"]
    B --> C["芽球が骨髄・末梢血で増殖"]
    C --> D["正常造血を抑制"]
    D --> E["貧血・感染・出血"]
    C --> F["組織浸潤・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leukostasis'>白血球うっ滞</span>・腫瘍崩壊"]

臨床像

  • 貧血:倦怠感、、
  • 好中球減少・機能不全:発熱、感染、
  • 血小板減少・:紫斑、粘膜出血、重篤な臓器出血
  • :呼吸不全、頭痛、意識障害、神経
  • 骨・関節痛、、皮膚浸潤

ではが増加するとは限らず、正常または低値でも発症する。

診断

評価 内容
血算・ 芽球、、血球減少、
・生検 芽球比率、形態、骨髄細胞密度
分化と異常
染色体・ 核型、反復性再構成
分子検査 NPM1、FLT3、CEBPA、IDH1/2、TP53など
凝固・生化学 、腫瘍崩壊、臓器機能

一般には骨髄または末梢血芽球20%以上がの基準となるが、現在の分類では特定の定義遺伝子異常があれば20%未満でも診断できる病型がある。第5版とICC 2022では、閾値を外す遺伝子異常の範囲、最低芽球比率、例外となる病型が一致しない。どの分類体系で判定したかを明記し、遺伝学的所見と合わせて診断する。旧来の「を伴う」は再編され、現在は主に骨髄異形成関連遺伝子変異・染色体異常、TP53異常などで定義する。12

歴史的FAB分類

は形態・細胞化学に基づく歴史的分類であり、現在の遺伝学的分類に置き換えられているが、形態の理解には役立つ。

型 歴史的名称
M0 最
M1
M2 分化型
M3
M4 急性骨髄単球性白血病
M5 急性単球性白血病
M6 急性
M7

診断直後の優先順位

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute myeloid leukemia'>AML</span>を疑う"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute promyelocytic leukemia'>APL</span>を示唆する形態・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='disseminated intravascular coagulation'>DIC</span>があるか"}
    B -->|"はい"| C["遺伝学的確認を待たず<span class='jp-term jp-term-diagram' title='all-trans retinoic acid'>ATRA</span>開始"]
    C --> D["血小板・フィブリノゲンを積極的に補充"]
    B -->|"いいえ"| E{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leukostasis'>白血球うっ滞</span>・腫瘍崩壊・感染があるか"}
    E -->|"はい"| F["緊急支持療法と細胞減量"]
    E -->|"いいえ"| G["迅速な遺伝学的検査と治療適格性評価"]

治療原則

だけで強力療法の適否を決めない。高齢者でも全身状態、認知・身体機能、併存症、臓器機能、患者の目標を評価し、可能なら支持療法のみではなく抗白血病治療を提示する。遺伝学的病型とMRDは、の選択だけでなく、維持療法、移植の判断にも用いる。

⚠️ 「強力療法に適格か否か」というは、現在の枠組みでは出発点にすぎない。 ELNの評価に関する2025年の勧告は、とは強力化学療法への適格性という一般的なではなく、利用可能な複数の治療のうち特定の治療への適格性を反映すべきものだと述べている(原文の逐語は出典の claim に記録した)4。は年齢・全身状態(ECOG PS)・併存症・身体機能の包括的評価と定義され(推奨1、LoE I・GoR A)、異なるの水準が異なる治療強度に対応するため、患者は「特定の治療戦略に対して適格」と判断されるべきだとされる(推奨2、LoE IV・GoR A)。💡 低強度治療の選択肢が増えたことが背景で、fit・unfit・frailの3区分を超えた水準を認める必要があるとパネルは述べている。治療決定は患者側()と疾患側(遺伝学的所見)の特徴、および患者の希望に基づかせる(推奨10、LoE I・GoR A)4。

⭐ 適格性は移植と一対一に対応しない。 強力化学療法に適格であることはの適格を意味せず(推奨3、IV–B)、逆に強力治療にでも、非強力治療でに至った後のの適格は否定されない(推奨4、IV–B)4。⚠️ 積極的治療にな患者でも、支持療法のみとする前に標的の対象となりうる変異を検査する(推奨11、IV–C)。治癒が望めない場合でも、症状緩和を目的とした抗白血病治療は考慮してよい(推奨5、IV–C)。

状況 治療の方向性
強力治療を選べる場合 +を基盤とする寛解導入に、病型・標的異常に応じた薬剤を追加
低強度治療を選ぶ場合 (・)+は主要な初回治療の一つ。併存症・分子所見・骨髄抑制・感染・薬物相互作用を考慮53
寛解後 遺伝学的リスクとMRDに基づき、またはを選択
標的異常あり FLT3、IDH1/2などに対する標的薬を治療時期に応じて使用
再発・難治 再評価した分子異常に基づく、標的薬、、

⭐ 「強力」「低強度」の中身を具体的に持っておく。 ELN 2025の勧告は、強力治療として+(7+3。・・標的薬の併用の有無を問わない)とCPX-351を、低強度治療として、+、低用量、低用量+グラスデギブ、イボシデニブまたはエナシデニブの単剤もしくは併用、単剤、単剤を挙げている4。

全体に一律の長期維持療法を行うわけではなく、病型、治療強度、、MRDに応じて選択する。は一般的な標準ではなく、再発リスクの高い適格例ではを検討する。高齢・非適格例でも+が常に適するとは限らず、変異、骨髄抑制、感染リスク、薬物相互作用を踏まえて強度を調整する。

APLは独立した緊急病態

()は::RARA融合を有し、重篤な()を起こしやすい。疑い段階で診断確定を待たず治療と輸血支持を始める血液学的緊急疾患である。6

  • 疑った時点で()を直ちに開始する(推奨1.5、Ib–A)。遺伝学的に支持されなければ中止すればよい。
  • 疑った時点からフィブリノゲン/・血小板・を輸注し、必要なら1日1回以上補充してフィブリノゲン100〜150 mg/dL超・30〜50×10⁹/L超・ 1.5未満を保つ(推奨1.6、IIb–B)。
  • と(・・トロンビン時間、フィブリノゲン、)を少なくとも1日1回、必要ならより頻回に、の臨床・がすべて消えるまで測定する(推奨1.7、IIb–B。2019年版の新設推奨)。⭐ 輸注の目標値(1.6)と監視の頻度(1.7)は別の推奨である。
  • 非高リスク(Sanz risk scoreでいう低〜=1万/μL以下)では、化学療法を用いない+(ATO)がの第一選択である(推奨2.2、Ib–A)。⭐ ただし同じ推奨が、ATOが禁忌である場合、あるいは経済的に用いられない場合の第2の選択肢として+化学療法を挙げている。
  • ⚠️ 高リスク(1万/μL超)のは一本化されていない。 推奨2.3(Ib–A)は「2つの妥当な選択肢がある」と書いている——①+ATOに一定量の化学療法を加えるか、②従来の+化学療法か、である。理由として無作為化試験でいずれのも示されていないことを挙げる。「高リスクなら+ATO+化学療法」と一本に覚えると、この分岐が消える。
  • 発症時の高白血球に対する細胞減量は、選んだ骨格で薬が変わる(推奨1.10、IV–C)——+化学療法ならまたは(単独または併用)、+ATOなら12 mg/m²または6〜9 mg/m²である。
  • では(中心静脈カテーテル留置・・気管支鏡など)を寛解導入前および導入中は避け(推奨1.9、IV–C)、はを誘発する危険があるため避ける(推奨1.11、III–B)。
  • を疑う発熱、体重増加、浮腫、呼吸不全では、最も早い臨床的疑いの時点で10 mgの1日2回静注を開始する(推奨1.13、IIa–B)。⚠️ ・ATOの一時中断は重症のの場合にのみ行う(推奨1.14、IIa–B)。6

まとめ

  • は芽球増殖による急性で、血球数が低値でも起こる。
  • 診断は形態、、染色体、分子遺伝学を統合し、遺伝子異常により芽球20%未満でも診断される病型がある。
  • 治療は適格性、遺伝学的リスク、MRDに基づいて寛解導入・・を組み立てる。適格性は「強力療法に耐えられるか」のではなく、特定の治療への適格性として評価する(ELN 2025、推奨2、LoE IV・GoR A)。強力化学療法の適格との適格は一致しない。
  • を疑ったら遺伝学的確認を待たずを開始し、を積極的に支持する。非高リスク(1万/μL以下)は+ATOが第一選択(ATOが禁忌・入手困難なら+化学療法)。⚠️ 高リスク(同1万/μL超)は「+ATO+一定量の化学療法」と「従来の+化学療法」の2つが妥当な選択肢で、どちらのも無作為化試験では示されていない(推奨2.3、Ib–A)。

出典

  1. 1.The 5th edition of the World Health Organization Classification of Haematolymphoid Tumours: Myeloid and Histiocytic/Dendritic Neoplasms(2022)WHO第5版のAML分類は遺伝学的異常と臨床背景を重視し、一部病型で従来の芽球閾値に例外を設けることを確認した。閲覧 2026-08-13
  2. 2.International Consensus Classification of Myeloid Neoplasms and Acute Leukemias: integrating morphologic, clinical, and genomic data(Blood・2022)ICC 2022のAML分類、芽球閾値の扱い、骨髄異形成関連遺伝子・染色体異常とTP53変異による再編を確認した。閲覧 2026-08-13
  3. 3.Diagnosis and management of AML in adults: 2022 recommendations from an international expert panel on behalf of the ELN(2022)AMLの診断、分子リスク、MRD、初回治療、寛解後療法、移植と緊急支持療法の原則を確認した。閲覧 2026-08-13
  4. 4.Fitness assessment in acute myeloid leukemia: recommendations from an expert panel on behalf of the European LeukemiaNet(European LeukemiaNet / Blood Advances・2025)PMC12083920 の全文(Table 1〜3 の推奨表を含む)を取得して確認した。本パネルは抄録で逐語「fitness should reflect eligibility for a specific treatment among the several available, rather than a generic binary classification of eligibility for intensive chemotherapy」と述べ、強力化学療法の適否という二分法を退ける。推奨1(LoE I・GoR A)はフィットネスを年齢・全身状態・併存症・身体機能の包括的評価と定義し、推奨2(LoE IV・GoR A、合意92%)は「異なるフィットネスの水準が異なる治療強度に対応するので、患者は特定の治療戦略に対して fit と判断されるべきである」とする。パネル勧告は fit・unfit・frail という従来の区分を超えた水準を認める必要性を述べる。推奨3(IV–B)は強力化学療法の適格が同種移植の適格を意味しないこと、推奨4(IV–B)は強力治療に不適格でも非強力治療で完全寛解に至った後の同種移植の適格は否定されないこと、推奨5(IV–C)は治癒が望めなくても症状緩和のために抗白血病治療を考慮すべきことを述べる。推奨10(LoE I・GoR A、合意100%)は治療決定を患者側(フィットネス)と疾患側(遺伝学的所見)の特徴および患者の希望に基づかせるとし、推奨11(IV–C)は積極的治療に不適格な患者でも支持療法単独とする前に標的単剤療法の対象となりうる変異を検査すべきだとする。本文は暦年齢が生物学的年齢を必ずしも反映しないこと、包括的高齢者機能評価が強力化学療法の有害事象と全生存を予測することを述べる。⚠️ 推奨12(高齢のfitな患者では不良な遺伝学的所見は強力化学療法の禁忌ではない)は合意に達していない2項目の一方である。閲覧 2026-09-16
  5. 5.Azacitidine and Venetoclax in Previously Untreated Acute Myeloid Leukemia(2020)強力寛解導入に不適格な未治療AMLで、アザシチジンへのベネトクラクス追加が寛解率と全生存を改善することを確認した。閲覧 2026-08-13
  6. 6.Management of acute promyelocytic leukemia: updated recommendations from an expert panel of the European LeukemiaNet(European LeukemiaNet / Blood(Sanz MA, et al.)・2019)PMC6509567 の全文(Table 1・Table 2 を含む)を取得して確認した。推奨1.5(Ib–A)はAPLを疑った時点でATRAを直ちに開始するとし、推奨1.6(IIb–B)は疑った時点からフィブリノゲン/クリオプレシピテート・血小板・新鮮凍結血漿を輸注してフィブリノゲンを100〜150 mg/dL超、血小板数を30×10⁹/L〜50×10⁹/L超、INRを1.5未満に保つことを求める。推奨1.7(IIb–B、2019年版の New recommendation)は別項で、逐語「Platelet counts and routine coagulation parameters, prothrombin time, activated partial thromboplastin time, and thrombin time, as well as levels of fibrinogen and fibrinogen-fibrin degradation products, should be monitored at least daily and more frequently if required, until disappearance of all clinical and laboratory signs of the coagulopathy」=血小板数と凝固検査を少なくとも1日1回、必要ならより頻回に、凝固障害の臨床・検査所見がすべて消失するまで監視することを求める。推奨1.9(IV–C)は中心静脈カテーテル留置・腰椎穿刺・気管支鏡などの侵襲的処置を寛解導入前および導入中は避けるとし、推奨1.11(III–B)は白血球アフェレーシスを致死的出血を誘発する危険のため避けるとする。⚠️ ELN は Sanz risk score の3群ではなく白血球数1万/μL以下(非高リスク)と1万/μL超(高リスク)の2群で治療を振り分ける。推奨2.2(Ib–A)は非高リスクでATRA+三酸化二ヒ素(ATO)を化学療法なしで用い、ATOが禁忌または経済的に用いられない場合の第2の選択肢としてATRA+アントラサイクリン系化学療法を挙げる。⚠️ 推奨2.3(Ib–A)は高リスクについて逐語で「2つの妥当な選択肢がある——ATRA+ATOに一定量の化学療法を加えるか、従来のATRA+アントラサイクリン系化学療法か」と述べ、無作為化試験でいずれの優越性も示されていないことを理由に挙げる。推奨1.10(IV–C)は発症時の高白血球に対する細胞減量を骨格ごとに分け、ATRA+化学療法ではイダルビシンまたはダウノルビシン(単独またはシタラビン併用)、ATRA+ATOではイダルビシン12 mg/m²またはゲムツズマブオゾガマイシン6〜9 mg/m²とする。推奨1.13(IIa–B)は分化症候群の初発が疑われた最も早い時点でデキサメタゾン10 mgの1日2回静注を直ちに開始すること、推奨1.14(IIa–B)は分化療法(ATRAまたはATO)の一時中断は重症の分化症候群の場合にのみ適応となることを述べる。閲覧 2026-09-16