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Disease Atlas · 皮膚 · 疾患

好中球性エクリン汗腺炎

Neutrophilic eccrine hidradenitis

別名
NEH
臓器系
皮膚腫瘍
科目
DermatologyInternal Medicine
トピック
皮膚科 3-25:腫瘍随伴性皮膚症状内科学 H-28:急性骨髄性白血病
上位概念
好中球性皮膚症
鑑別疾患
Sweet症候群移植片対宿主病丹毒・蜂窩織炎白血病の皮膚浸潤
治療薬
コルヒチンダプソン
原因薬剤
シタラビンダウノルビシンフィルグラスチムミノサイクリン
症状
丘疹膿疱紅斑発熱疼痛圧痛
検査値
白血球数
原因となる疾患
急性骨髄性白血病

🧠 全体像:(NEH)は、の選択的な壊死とその周囲へのを特徴とするの一員である1。典型像はの化学療法(が代表)を受けている最中に、と時期を合わせて体幹・四肢へ有痛性の紅色〜暗赤色局面が出現するというものだが、⚠️ 小児では悪性腫瘍・化学療法とに、過度の運動や熱曝露を契機に生じる特発性の型がある2——同じ組織像が、まったく背景の違う2つの集団を指している。多くは数週間で自然消退し、原病の予後を悪化させない良性の経過をとる。

定義と位置づけ

NEHは、という・などを含む枠組みの一員である。・導管の周囲に密な好中球が浸潤し、の壊死を伴う点が組織学的な特徴で、この汗腺の壊死こそが診断の決め手になる1。

疫学:成人と小児で背景がまったく異なる

成人 小児
主な背景 悪性腫瘍(多くは)+化学療法 過度の運動・熱曝露を契機とする特発性が多い
悪性腫瘍の関連 高頻度 まれ

Mayo Clinicの3施設で1992〜2022年に診断されたNEH 47例(組織学的または臨床的に確定した33例)を検討したでは、成人21例(64%)・小児12例(36%)に分かれ、成人の76%(16/21)は基礎に悪性腫瘍を持ち化学療法を受けていた一方、小児の特発性NEHは主に過度の運動の後に生じ、悪性腫瘍が原因である可能性は低かった2。年齢は生後6か月〜79歳の報告があり、性別はやや男性に多い1。

病因:シタラビンが代表だが単一薬剤の病気ではない

が最も高頻度に報告される起因薬で、などのとの併用でも生じる。そのほか(製剤)、、、メトトレキサート、カルバマゼピン、、、、、など多岐にわたる薬剤が報告されている1。小児では化学療法歴がなくても、熱によるの傷害が誘因になりうる1。

💡 単剤のだけでは説明がつかない。 提唱されている機序は3つある——①起因薬が上皮に直接の細胞傷害を及ぼす、②基礎にある悪性腫瘍に対する反応性の、③好中球そのものの異常な反応・機能障害。G-CSFは好中球の遊走と増殖を促進することで病態を助長すると考えられている1。

臨床像

発症は化学療法開始から早ければ2日、遅ければ2年後までと幅が広い1。好発部位は体幹・四肢で、顔面にも生じうる。皮疹は紅斑性の丘疹・局面から、暗赤色〜紫紅色の斑・丘疹・結節・局面まで多彩である。発熱を伴うことが多く、の最中に出現する例が典型的である1。

⚠️ 半数は無症状である。 症状を伴う残り半数では疼痛・圧痛が最も多い訴えで1、痛みの有無だけで重症度や診断の優先度を判断しない。

組織病理:好中球が乏しくても壊死は残る

・導管を取り囲み浸潤する密な好中球と、壊死に陥った細胞が特徴で、汗腺単位の壊死こそが診断の決め手である1。

⚠️ 好中球減少症の患者では、そのものが乏しい、あるいは消失しうる。 それでも汗腺の壊死は明瞭に残るため、末梢血で好中球が減っているからNEHを除外してよいわけではない1。「好中球性」という病名にもかかわらず好中球が乏しく見えるこの所見は、むしろ病態の主体が薬剤のにあることを示唆する。

鑑別診断

の最中に皮疹が出た患者では、感染症・浸潤との鑑別が最優先になる。

鑑別疾患 見分け方
同じの枠組み。血管炎を伴わないは共通するが、汗腺壊死という所見はNEHに特異的
生検で腫瘍性の芽球浸潤があるかどうかで区別する
・蜂窩織炎 培養・臨床経過で細菌感染を除外する
歴の有無、基底層の変化の有無
蕁麻疹、血管炎、、・ いずれも生検所見(汗腺壊死の有無)で区別する1

皮疹の外見だけでは区別できず、生検が診断確定の鍵になる1。

flowchart TD
    A["化学療法中/後の患者に紅色局面・丘疹"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='febrile neutropenia, FN'>発熱性好中球減少症</span>を伴うか"}
    B -->|"伴う"| C["血液培養・感染検索を並行し<br>敗血症・蜂窩織炎を除外"]
    B -->|"伴わない"| D["経過観察しつつ皮膚生検を検討"]
    C --> E["皮膚生検:<br>汗腺周囲の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neutrophil infiltration'>好中球浸潤</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sweat gland epithelium'>汗腺上皮</span>壊死を確認"]
    D --> E
    E --> F{"好中球減少症を伴うか"}
    F -->|"伴う"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neutrophil infiltration'>好中球浸潤</span>は乏しい・消失しうるが<br>汗腺壊死があればNEHと診断"]
    F -->|"伴わない"| H["密な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neutrophil infiltration'>好中球浸潤</span>と汗腺壊死でNEHと診断"]
    G --> I["支持療法を行い原病の治療を継続"]
    H --> I

治療:確立した治療はなく、自然軽快を待つのが基本

確立された治療法はなく、対症療法が推奨される1。多くは1か月以内に自然消退し、瘢痕を残さない1。

  • 副腎皮質ステロイドの位置づけは定まっていない。有効例の報告がある一方、好中球減少症のある患者では慎重投与を要する1。
  • 基礎疾患のない患者ではがした報告がある1。
  • 起因薬を中止せず治療を継続する必要がある場合、再投与前に100 mg/日を48時間前投与する方法が報告されている1。
  • 発熱・疼痛には対症療法()を行う1。

予後

自然軽快する良性の経過をとり、基礎にある悪性腫瘍の予後を悪化させない1。ただし化学療法を継続する患者では再発が多い1。⚠️ 再発を理由に、有効な化学療法レジメンを不必要に中断しない。 NEHそのものは自然に治まる皮膚所見であり、原病の治療を妨げる根拠にはならない。

まとめ

  • NEHはの壊死とを特徴とするの一員で、成人では化学療法(が代表)、小児では運動・熱曝露を契機とする特発性という異なる背景を持つ2つの集団を含む。
  • の最中に出現しやすく、感染症・浸潤との鑑別に生検が必須。
  • 好中球減少症があると組織上のは乏しくなりうるが、汗腺壊死という所見は残る。
  • 治療は確立されておらず、多くは1か月以内に自然消退する。ステロイドの位置づけは定まらず、好中球減少症では慎重投与。
  • 予後は良好で、基礎腫瘍の予後を悪化させない。

出典

  1. 1.Neutrophilic Eccrine Hidradenitis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)好中球性エクリン汗腺炎の年齢層が生後6か月〜79歳、性別はやや男性に多いこと、起因薬としてシタラビンが最も一般的でアセトアミノフェン・ミノサイクリン・G-CSF製剤・シクロホスファミド・メトトレキサート・カルバマゼピン・セツキシマブ・BRAF阻害薬・ブレオマイシン・フルオロウラシル・抗レトロウイルス薬が報告されていること、小児では熱によるエクリン汗腺傷害が誘因になりうること、病態生理として起因薬の直接細胞毒性・基礎腫瘍に対する反応性の腫瘍随伴現象・好中球自体の異常な反応または機能障害の3つの仮説が提示されG-CSFが好中球の遊走と増殖を介して病態を助長すると考えられていること、好発部位が体幹・四肢(顔面にも及ぶ)であること、化学療法開始から発症までの期間が2日〜2年と幅広いこと、発熱を伴うことが多いこと、患者の半数は無症状で症状のある残り半数では疼痛・圧痛が最多の訴えであること、組織学的特徴が汗腺周囲の密な好中球浸潤と壊死に陥った汗腺上皮細胞であり汗腺単位の壊死が診断の決め手であること、好中球減少症の患者では真皮の好中球浸潤が乏しいか消失しうるが汗腺壊死は明瞭に残ること、鑑別として急性・慢性蕁麻疹、血管炎症候群、薬疹、多形紅斑・結節性紅斑、白血病細胞浸潤、Sweet症候群、移植片対宿主病、蜂窩織炎・丹毒が挙げられること、確立された治療法はなく対症療法が推奨されること、多くの例で1か月以内に自然消退すること、副腎皮質ステロイドの位置づけは定まっておらず好中球減少症の患者では慎重投与を要すること、基礎疾患のない患者ではコルヒチンが奏効した報告があること、起因薬の再投与前にダプソン100 mg/日を48時間前投与した報告があること、化学療法を継続する患者で再発が多いこと、自然軽快し基礎にある悪性腫瘍の予後を悪化させないことを確認した。閲覧 2026-09-02
  2. 2.Neutrophilic eccrine hidradenitis: a retrospective study(International Journal of Dermatology・2023)Mayo Clinicの3施設で1992年1月1日から2022年1月1日までに好中球性エクリン汗腺炎と診断された47例のうち組織学的または臨床的に確定した33例を対象とした後方視的研究で、成人21例(64%)・小児12例(36%)に分かれたこと、成人の76%(16/21)は基礎に悪性腫瘍を持ち化学療法を受けていた一方、成人の残る24%は特発性であり特発例は若年で再発率が高い傾向がみられたこと、小児で悪性腫瘍を背景に持つのは1例のみであったこと、小児では特発性の好中球性エクリン汗腺炎が主として過度の運動の後に生じ悪性腫瘍が原因である可能性は低いことを確認した。検索結果の抜粋(アブストラクト相当の記載)を確認しており、原著全文は未取得。閲覧 2026-09-02