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Disease Atlas · 内分泌・代謝 · 腫瘍

非浸潤性甲状腺濾胞腫瘍・乳頭癌様核所見を伴うもの

Noninvasive follicular thyroid neoplasm with papillary-like nuclear features

別名
NIFTP
臓器系
内分泌・代謝腫瘍
科目
Pathology (Histopathology)Internal MedicinePathology
トピック
組織病理 H2-096B:乳頭状甲状腺癌組織病理 H2-107B:乳頭状甲状腺癌の亜型・術式選択・経過観察内科学 S-11:甲状腺結節・結節性甲状腺腫の評価と治療病理学 C/86:甲状腺腫瘍
鑑別疾患
甲状腺癌甲状腺濾胞腺腫非中毒性甲状腺腫・甲状腺結節
画像所見
甲状腺結節
スコア
ベセスダシステム

🧠 全体像:は疾患というより分類変更そのものが主題である。2016年、それまで「型・の」として癌と呼ばれていた腫瘍群が、経過の良さを根拠に癌の呼称から外され、・様核所見を伴うもの()と改称された1。要点は3つ——①診断はでを全周にわたり検索して浸潤がないことを示して初めて成立し、細胞診では確定できない、②各カテゴリーの悪性リスクは「を癌に数えるかどうか」で変わる、③癌ではないが手術は要る(しないと診断できない)。

何が変わったのか

は欧州と北米で診断されるの10〜20%を占め、過去20〜30年でが推定2〜3倍に増えていた1。この群のうち浸潤がないものを分けて長期経過を見たところ、例109例は中央値13年(範囲10〜26年)の経過観察で全例が無病生存だったのに対し、浸潤例101例では12例(12%)に有害事象が生じ、うち遠隔転移が5例、が2例であった1。

この差を根拠に、例を癌の呼称から外して と改称する提案がなされた。世界で年間4万5千人以上がこの再分類の影響を受けると推定されている1。

💡 「新しい腫瘍が見つかった」のではない。 同じ組織像の腫瘍を、浸潤の有無という以前から評価していた軸で切り直し、呼び名と治療の強度を変えただけである。だから病態の話より、診断がどの検体で・どこまで検索して成立するかの話が本体になる。

診断基準

満たすべき条件
構築 されている、または境界が明瞭である
。が1%未満、なし、充実//胞巣状増殖が30%未満
核所見 2〜3(様の核所見)
浸潤 ・がない
そのほか がない、高いがない(400倍10視野あたり3個以上の分裂像がない)

これが2016年の提案時の基準である1。2018年の改訂で、明瞭なが一切ないことと、BRAF V600E変異・RET/PTC再構成・変異などの高リスク変異がないことが求められるようになった2。

⚠️ 細胞診では確定できない

単一のマーカーや単一の手技でを術前に診断することは現時点で不可能であり、確定診断にはおよび/またはの完全なを要する2。なし・なし・なしというも、被膜部を含めて腫瘍全体を提出して初めて確認できる2。界面の広範な検索は必須である1。

⚠️ ()は被膜を評価できない。したがって「細胞診でと診断された」という表現は成り立たず、細胞診の段階でできるのはの可能性を織り込んだカテゴリー判定までである。とを細胞診で分けられないのと同じ構図であり、いずれもというでしか見られない所見が決め手になる。

⭐ 入口は結節の診療そのものである。 を狙って検査を組むことはできない。・として超音波と細胞診で評価され、その結果として手術適応となった患者のから、は事後的に出てくる。したがって鑑別で問うべきは「この結節はか」ではなく、の帯に落ちた結節を切るか経過を見るかである。

ベセスダシステムの悪性リスクが変わる

は細胞診ではと同じ顔をするため、以前は各カテゴリーの「悪性」の中に数え込まれていた。癌の呼称から外すと、同じ細胞診カテゴリーの悪性リスクがそのぶん下がる。ここがとの接続点である。

カテゴリー 悪性リスク(を含む) を悪性から除外した場合
I 不適正 13% 12%
II 良性 4% 2%
III () 22% 16%
IV 30% 23%
V 74% 65%
VI 悪性 97% 94%

2023年第3版の値である3。

⭐ 下がり幅が大きいのはIII・IV・V、すなわち「良悪性を確定できない」帯である。はと様核所見を併せ持つため、まさにこの帯に落ちる。カテゴリーIIIやIVの悪性リスクを暗記する前に、その数字がをどちら側に数えたものかを確認する——版と前提が違えば同じカテゴリーで6〜9ポイント動く。

現行分類での位置づけ

第5版(2022年)は、をというカテゴリーに置いた。、、が同じカテゴリーに入る4。良性とも悪性とも言い切らない中間の枠であり、「癌ではない」を「良性である」と読み替えないための位置づけになっている。

論点 現行分類での扱い
1%未満という基準を維持4
分裂像 2 mm²あたり3個未満ならのまま。3〜4個で濾胞増殖優位の型、5個以上でへ格上げ4
分子 BRAF V600Eまたは変異があればを除外する。プロファイルはRAS様4
亜型 1 cm以下のと(75%以上)を新たに認めた4

治療

⭐ 癌ではないが手術は要る。 診断確定のためにはが標準治療であり、手術そのものは避けられない2。変わるのは手術のあとである。

  • 追加の全摘術とは、では利益が乏しくされない12。
  • も不要である1。
  • 経過観察は保存的な枠組みでよい2。

⚠️ 「癌ではない」を「経過観察でよい」と取り違えない。切除して被膜を全周検索するまで、その結節が なのか浸潤性のなのかは分からない。後者は遠隔転移もも起こす1。診断を確定させる目的で切除するという順序が、この主題では治療そのものと不可分である。

まとめ

  • は2016年に「型・の」を癌の呼称から外して改称した分類変更が主題であり、正式名は・様核所見を伴うものである。
  • 根拠は経過の差——例109例は中央値13年で全例無病生存、浸潤例101例では12%に有害事象(遠隔転移5例・2例)が生じた。
  • は、1%未満・なし・充実//胞巣状増殖30%未満、2〜3、被膜/なし、壊死なし、高いなし。
  • ⚠️ 確定にはでと界面を全周にわたり検索することが必須で、細胞診では診断できない。
  • ベセスダ各カテゴリーの悪性リスクはを癌に数えるかどうかで変わり、III・IV・Vで下がり幅が大きい(2023年第3版でIII 22%→16%、IV 30%→23%、V 74%→65%)。
  • 第5版はをに位置づけ、BRAF V600E・変異があれば除外する。
  • 治療はまで。追加全摘・・は要らないが、診断のための手術は避けられない。

出典

  1. 1.Nomenclature Revision for Encapsulated Follicular Variant of Papillary Thyroid Carcinoma: A Paradigm Shift to Reduce Overtreatment of Indolent Tumors(JAMA Oncology(Nikiforov et al.)・2016)本文で、非浸潤性の被包型濾胞型乳頭癌を「noninvasive follicular thyroid neoplasm with papillary-like nuclear features(NIFTP)」へ改称する提案、Box 2 の診断基準(被包または境界明瞭、濾胞状増殖で乳頭構造1%未満・砂粒小体なし・充実/索状/胞巣状増殖30%未満、核スコア2〜3、被膜浸潤・血管浸潤なし、腫瘍壊死なし、高い分裂能なし=400倍10視野あたり3個以上の分裂像がないこと)、非浸潤例109例が中央値13年(範囲10〜26年)の経過で全例無病生存であったのに対し浸潤例101例では12例(12%)に有害事象(遠隔転移5例・原病死2例)が生じたこと、Discussion で腫瘍被膜界面の広範な検索が必須であること、Introduction で被包型濾胞型乳頭癌が欧州と北米の甲状腺癌の10〜20%を占めること、Conclusions でこの再分類が世界で年間4万5千人以上に影響すると推定されること、NIFTPでは追加の全摘術や放射性ヨウ素療法の利益が乏しく病期分類も不要であることを確認した。閲覧 2026-08-20
  2. 2.The impact of non-invasive follicular thyroid neoplasm with papillary-like nuclear features (NIFTP) on the diagnosis of thyroid nodules(Gland Surgery(Pusztaszeri, Bongiovanni)・2019)本文で、単一のマーカーや単一の手技でNIFTPを術前に診断することは現時点で不可能であり確定診断には腫瘍被膜および/または腫瘍界面の完全な組織学的検索を要すること、乳頭構造なし・砂粒小体なし・腫瘍壊死なしという除外基準からも被膜部を含めて腫瘍全体を提出すべきこと、診断確定のためには葉切除が標準治療であり手術が必要であること、2018年の基準改訂で明瞭な乳頭構造がないこと・BRAF V600E変異やRET/PTC再構成・TERTプロモーター変異などの高リスク変異がないことが求められるようになったこと、確定後は追加の全摘術や放射性ヨウ素療法が正当化されず保存的な対応が推奨されることを確認した。閲覧 2026-08-20
  3. 3.Highlights of the 2023 Bethesda System for Reporting Thyroid Cytopathology, 3rd Edition(Korean Journal of Head & Neck Oncology(Song)・2024)2023年ベセスダシステム第3版の悪性リスク表で成人の平均値がI 13%・II 4%・III 22%・IV 30%・V 74%・VI 97%であること、およびNIFTPを悪性から除外した場合の推定最終悪性リスクを示すTable 4 が I 12%・II 2%・III 16%・IV 23%・V 65%・VI 94% であることを確認した。閲覧 2026-08-20
  4. 4.Update from the 2022 World Health Organization Classification of Thyroid Tumors: A Standardized Diagnostic Approach(Endocrinology and Metabolism (Seoul)(Jung, Bychkov, Kakudo)・2022)本文で、WHO第5版がNIFTPを「低リスク腫瘍(low-risk neoplasms)」というカテゴリーに置き、悪性度不確定濾胞性腫瘍・悪性度不確定高分化腫瘍・硝子化索状腫瘍を同じカテゴリーに含めること、乳頭構造1%未満という基準が維持されたこと、分裂像が2 mm²あたり3個未満ならNIFTPの診断は変わらず3〜4個では濾胞増殖優位の被包型乳頭癌へ、5個以上では非浸潤性高悪性度濾胞型乳頭癌へ格上げされること、BRAF V600EまたはTERTプロモーター変異が検出されればNIFTPの診断を除外すべきこと、1 cm以下のNIFTPと好酸性細胞型NIFTP(好酸性腫瘍細胞75%以上)が新たな亜型として認められたこと、分子プロファイルがRAS様であることを確認した。閲覧 2026-08-20