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Drug Atlas · B1 Hemostatics / 止血薬

シアノアクリレート

cyanoacrylate

分類
Hemostatics / 止血薬
商品名(EU)
Histoacryl
科目
Pharmacology
トピック
B1: Drugs influencing blood coagulation I: Antiplatelet agents. Fibrinolytic drugs. Drugs inhibiting bleeding
承認適応
食道静脈瘤
副作用
胸痛呼吸困難発熱腹痛

🧠 全体像を持たない組織接着剤で、血液・水分に触れると数秒〜数十秒で急速に重合し硬い状に固まるそのものを止血に利用する。この「速すぎる重合」という同じ性質が、部型(GOV2・IGV1)に対するの第一選択というと、重合前に血流へ流れ込むと肺・脳などへする異所性塞栓という短所を同時に生む。術とは適応が異なり、術」ではなく「静脈瘤の型で手技を変える」という考え方の代表例になる薬剤(正確には的性格を持つ薬剤)である。

薬効群の中での位置づけ

の中でも、は全身を持たず局所の物理的閉塞で止血する点で異質である。

薬剤・処置 適応となる静脈瘤の型 機序
輪ゴムで機械的に絞扼する
注入 部型(GOV2・IGV1) 急速重合による静脈瘤腔内の物理的閉塞
BRTO(下逆行性経静脈的塞栓術) 部型、特に太い胃腎シャントを伴う例 血管内アプローチによる硬化・塞栓
食道・全般 としてを減らす

は「の延長」と「部型(GOV2・IGV1)=独立した太い静脈瘤」に分けて考える。 GOV1はと同じ術で対応できるが、GOV2・IGV1は術の成績が悪く、注入またはBRTOが優れた止血・再出血予防成績を示す第一選択になる。

機序

flowchart TD
    A["N-ブチル-2-<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cyanoacrylate'>シアノアクリレート</span>を<br>リピオドール(造影剤)と混合"] --> B["内視鏡下に静脈瘤内へ直接注入"]
    B --> C["血液・水分に接触"]
    C --> D["数秒〜数十秒で急速に重合し<br>硬い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plastic'>プラスチック</span>状に固化"]
    D --> E["静脈瘤腔が物理的に閉塞される"]
    E --> F["止血・再出血予防"]
    C -.->|"重合が完了する前に<br>血流へ流入すると"| G["肺・脾・脳などへの<br>異所性(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='migrate/displace into'>迷入</span>)塞栓"]

💡 リピオドールと混合する理由は2つある。 一つは放射線不透過性を持たせてX線下で注入部位を確認できるようにするため、もう一つは希釈によって重合速度を調整し、針を抜く前に接着剤で内視鏡自体がしてしまう事故を防ぐためである1。ただし希釈しすぎると重合が遅れ、逆に血流への流出・異所性塞栓のリスクが上がるというがある。

薬物動態

的な吸収・分布・代謝・排泄は存在しない(局所で重合し物理的な塊として残存する剤であり、循環血液中のを持たない)。重合したの塊は時間をかけて排出・脱落することがある。

適応

領域 使いどころ
消化器 (特に部型:GOV2・IGV1)の・再出血予防の第一選択1
消化器(追加手技) 下でコイルを留置した上でを注入する併用法。コイルの合成繊維に接着剤をさせることで、通常の注入法より異所性塞栓を減らす狙いで考案された2

⚠️ 国・地域で使用できる薬剤が異なる。 米国では血栓塞栓症のリスクを理由にN-butyl-2-cyanoacrylate(Histoacryl)の使用がFDAにより制限されており、欧州・アジアでは標準治療として広く使われてきた薬剤と事情が異なる3

用法・用量

内視鏡下、またはに、静脈瘤内へ直接注入する。標準化された手技の一例として、N-ブチル-2-0.5mLをリピオドール0.8mLで希釈し、1回あたりの注入量を1.0mLに制限する方法が131例のコホートで報告されている4。注入後は針をでフラッシュしてからする(接着剤による内視鏡・注入針のを防ぐため)。EUS下コイル併用法では、先にコイルを1〜数本留置してからを追加注入する2。実際の希釈比率・投与量は手技のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:成分への過敏症
  • ⚠️ 異所性塞栓(肺塞栓・:重合前の接着剤が血流に流入することで起こる、最も重篤な合併症。門脈-大循環シャント(特に胃腎シャント)を伴う静脈瘤で起こりやすいとされる1。EUS下コイル併用法はこのリスクを下げる目的で考案された2
  • では、群と非群の間で有害事象の発現率に有意差はないとされる一方5、個々の重篤な塞栓症例は繰り返し報告されており、油断できる合併症ではない
  • 手技に伴う偶発症(穿孔、注入針・内視鏡の)に注意する

副作用

頻度 内容
高頻度 腹痛発熱
注意 胸痛(塞栓を疑う
重篤・まれ 異所性塞栓(肺塞栓症)、呼吸困難を伴う重症例

まとめ

  • を持たない組織接着剤。 血液・水分との接触で急速に重合し、静脈瘤腔を物理的に閉塞して止血する。
  • 部型(GOV2・IGV1)に対するの第一選択。 側型(GOV1)に用いる術とは適応が異なる。
  • リピオドールと混合してから注入し、可視化と重合速度の調整を両立させる。
  • ⚠️ 最大の合併症は異所性塞栓(肺・脾・脳・冠動脈)。 重合前に血流へ流入することで起こり、下コイル併用法はこのリスクを減らす目的で考案された。
  • 米国では制限、欧州・アジアでは標準治療と、国・地域で使用実態が異なる薬剤である。

出典

  1. 1.Gastric Varices(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)シアノアクリレート系接着剤が胃静脈瘤の確定的内視鏡治療薬であること、造影剤リピオドールと混合してから静脈瘤内へ注入すること(水・血液に触れると急速に重合し止血する)、異所性塞栓(肺塞栓・脾梗塞・脳卒中・冠動脈塞栓)が有害事象として起こりうることを確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.Endoscopic Ultrasound–Guided Coil and Glue Injection for Gastric Variceal Bleeding(Gastroenterology & Hepatology (New York)(開発者Binmoeller自身によるレビュー)・2018)コイルに付属する合成繊維へシアノアクリレートを結合・固着させることで異所性塞栓のリスクを下げる狙いでEUS下コイル併用法が考案されたこと、著者ら自身の152例のコホート(2016年発表分)で技術成功率99%超、肺塞栓症の発現が152例中1例(1%)であったことを確認した閲覧 2026-08-11
  3. 3.Safety and efficacy of endoscopic cyanoacrylate injection in the management of gastric varices: A systematic review and meta-analysis(JGH Open・2021)システマティックレビュー・メタ解析自身の解析として、シアノアクリレート群と非シアノアクリレート群の間で有害事象の発現に有意差がなかったこと(RR 1.03、95%CI 0.46-2.32)、内視鏡的結紮術との同等性を示すエビデンスは主にGOV1(小弯側型)に限られ、GOV2・IGV1(胃底部型、対象62例)については十分なエビデンスが無いことを確認した閲覧 2026-08-11
  4. 4.A standardized injection technique and regimen ensures success and safety of N-butyl-2-cyanoacrylate injection for the treatment of gastric fundal varices (with videos)(Gastrointestinal Endoscopy・2008)自施設131例(男性91例・女性40例)のコホートで、N-butyl-2-cyanoacrylate 0.5mLをLipiodol 0.8mLで希釈し、1回あたりの注入量を1.0mLに制限する標準化手技を用いたことを確認した閲覧 2026-08-11
  5. 5.Endoscopic management of refractory gastrointestinal non-variceal bleeding using Histoacryl (N-butyl-2-cyanoacrylate) glue(Gastroenterology Report・2016)米国FDAが血栓塞栓症のリスクを理由にN-butyl-2-cyanoacrylate(Histoacryl)の米国内での使用を制限してきたこと(原文:"The US FDA has limited its use in the USA due to the rare but serious problem of thromboembolism")を確認した閲覧 2026-08-11