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Drug Atlas · B17 Pituitary & hypothalamic hormones / 下垂体・視床下部ホルモン

テルリプレシン

terlipressin

分類
Pituitary & hypothalamic hormones / 下垂体・視床下部ホルモン
商品名(EU)
Glypressin
科目
Pharmacology
トピック
B17: Thyroid and antithyroid drugs. Pituitary hormones. Hypothalamic hormones, hormonanalogs and antagonists
承認適応
食道静脈瘤
副作用
腹痛胸痛呼吸困難
監視検査値
クレアチニン
影響検査値
低ナトリウム血症

🧠 全体像の構造を改変した合成類似体で、作用)よりV1受容体(収縮)に選択的に働く点が核心である。V1刺激による内臓血管(特に脾臓・腸管領域)の強力な収縮が、の出血源であるの圧を下げる一方、では相対的に虚脱した全身動脈系を締め直してを確保する。同じ「V1選択的な血管収縮」という一つの機序が、の2つの重大な合併症()の両方に効く、というのがこの薬を理解する軸になる。半減期の短い自体と異なり、残基が徐々に切り離されて活性型リジン・を持続的に生じる構造により、でも効果が持続する。

薬効群の中での位置づけ

に用いるは、標的とする受容体・臓器が異なる。

薬剤 標的 主な使いどころ 特徴
V1受容体選択的(V2の約2倍) 、食道・出血 長時間作用型。米国ではHRS-AKIのみ承認
食道・出血 を減らすが機序はV1刺激と別系統
選択的 、血友病A・の軽症例 血管収縮作用はほぼ持たない。とはが正反対

と対比すると覚えやすい。 どちらも類似体だが、はV2に選択的で「水を溜める薬」、はV1に選択的で「血管を締める薬」——同じ骨格から出発して選択性を逆方向に振った設計である。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='terlipressin'>テルリプレシン</span>投与<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prodrugs'>プロドラッグ</span>)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peptidase'>ペプチダーゼ</span>によりグ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lysyl'>リシル</span>残基が<br>徐々に切断される"]
    B --> C["活性型リジン・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vasopressin'>バソプレシン</span>が<br>持続的に遊離"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular smooth muscle'>血管平滑筋</span>のV1受容体を選択的に刺激"]
    D --> E["内臓血管(腸管・脾臓)の強い収縮"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='portal blood flow'>門脈血流</span>量低下→門脈圧低下"]
    F --> G["食道・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gastric varices'>胃静脈瘤</span>の出血が減少"]
    D --> H["全身の相対的動脈拡張を是正し<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='effective circulating volume'>有効循環血漿量</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mean arterial pressure, MAP'>平均動脈圧</span>が上昇"]
    H --> I["腎への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perfusion pressure'>灌流圧</span>が回復"]
    I --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='HRS-AKI'>肝腎症候群</span>の腎機能改善"]
    D -.->|"腸管・四肢・冠動脈でも<br>同じ収縮が起こりうる"| K["虚血性合併症"]

💡 である点が「長時間作用型」の理由。 自体の半減期は数分だが、は酵素的にゆっくり分解されてを供給し続けるため、を数時間おきに繰り返すだけで血管収縮効果を維持できる。

薬物動態

項目 値・特徴
または持続静注)
構造 合成付加類似体(
活性化 内因性によりリジン・へ徐々に変換される
作用持続 自体より長い。数時間おきのが可能1
代謝・排泄 主に肝・腎で代謝される

適応

領域 使いどころ
HRS-AKI(急速な腎機能悪化を伴う)における腎機能改善——米国ではアルブミン併用下での使用が承認された唯一の薬剤1
消化管出血 からので、の結果を待たずに開始するの一つ2

⚠️ 適応の範囲は国・地域で大きく異なる。 米国では2022年にHRS-AKIに対してのみ承認され、添付文書上の適応に出血は含まれない1。一方、米国外の多くの国では食道・からのに対するとして長く用いられてきた。同じ薬でも国によって「正式な適応」が違うことを踏まえ、実際の使用は各国の添付文書・診療ガイドラインで確認する。

米国でのHRS-AKI承認は「アルブミン併用」が前提になっている。 根拠となったCONFIRM試験では両群でアルブミン併用が強く推奨された上でを比較し、HRSの検証済み逆転率は群32%・群17%(P=0.006)だった3単剤ではなく、を確保するアルブミンとのセットで効果が評価されている。

用法・用量

米国添付文書では、初回0.85mgを6時間ごとに静注し、4日目に値の反応で投与を調整する——ベースラインから30%以上低下していれば同用量を継続、30%未満の低下なら1.7mgに増量、ベースライン以上であれば中止する。最大投与期間は14日間1。投与中は継続的なでSpO2をモニタリングし、90%未満に低下した場合は投与を中止する1。実際の用量・は適応・国の添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:低酸素または呼吸症状増悪のある患者、進行中の冠動脈・末梢・のある患者1
  • ⚠️ 虚血性合併症(腸管・四肢・心筋):V1受容体を介した血管収縮は標的臓器()以外にも及び、を来しうる。では虚血関連イベントが群4.5%(9/200例)に対し群0%だった1
  • ⚠️ 呼吸不全群15.5%(31/200例)・群7.1%(7/99例)に発現し、後にも重篤・致死的な呼吸不全が報告されている。継続的なでのモニタリングとSpO2 90%未満での中止基準が設けられている1
  • ⚠️ 後の有害事象として報告されており、血清ナトリウムのモニタリングを要する1
  • の適格性を失わせうる(移植前の投与は移植チームと調整する)
  • 妊娠中はのリスクがある

副作用

頻度 内容
高頻度 腹痛、悪心、下痢
注意 呼吸困難胸痛
重篤・まれ 虚血性合併症(腸管・四肢・心筋)、重篤・致死的な呼吸不全、・壊疽

まとめ

  • V1受容体選択的な合成類似体()。 内臓血管を強く収縮させ、門脈圧を下げる・全身動脈圧を上げるという一つの機序で2つの適応を説明できる。
  • 米国ではにおける腎機能改善にアルブミン併用下で承認された唯一の薬剤で、CONFIRM試験がその根拠。
  • 食道・に対してもとして用いられるが、米国添付文書上の適応には含まれず、国・地域で承認範囲が異なる
  • ⚠️ 最大の安全性懸念は虚血性合併症(腸管・四肢・心筋)と呼吸不全。 SpO2の継続モニタリングと中止基準が設けられ、のフォローも要する。
  • V2選択的なとはが正反対の設計であり、対比して覚えると整理しやすい。

出典

  1. 1.TERLIVAZ (terlipressin) for injection, for intravenous use — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration (DailyMed)・2022)適応(肝腎症候群でみられる急速な腎機能低下の改善)、機序(V2受容体の2倍のV1受容体選択性を持つ合成バソプレシン類似体)、警告(虚血関連イベント4.5%[9/200例]対プラセボ0%、呼吸不全15.5%[31/200例]対プラセボ7.1%[7/99例]、SpO2 90%未満で中止)、禁忌(低酸素・進行中の冠動脈/末梢/腸間膜虚血)、用法用量(0.85mgを6時間ごとに開始し、4日目の血清クレアチニン反応で継続・1.7mgへの増量・中止を判断、最大14日間)、市販後に低ナトリウム血症の報告があることを確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.Terlipressin plus Albumin for the Treatment of Type 1 Hepatorenal Syndrome(New England Journal of Medicine(CONFIRM試験)・2021)1型肝腎症候群に対するテルリプレシン+アルブミンの第3相試験(CONFIRM)で、HRSの検証済み逆転率がテルリプレシン群32%・プラセボ群17%(P=0.006)であったこと、90日以内の呼吸器疾患による死亡がテルリプレシン群11%・プラセボ群2%であったことを確認した(本剤の米国承認の根拠試験)閲覧 2026-08-11
  3. 3.Esophageal Varices(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)急性静脈瘤出血では内視鏡の結果を待たずオクトレオチドまたはテルリプレシンなどの血管作動薬を開始することを確認した閲覧 2026-08-11