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Drug Atlas · B34 Other / その他 · 必修

ジアゾキシド

diazoxide

分類
Antihypertensives / 降圧薬Other / その他
科目
Pharmacology
トピック
B34: Drugs used in cancer treatment IV (Hormonal agents)
承認適応
低血糖(非糖尿病性)ベックウィズ・ヴィーデマン症候群カルチノイド症候群・神経内分泌腫瘍(インスリノーマを含む)高血圧症
副作用
浮腫
影響検査値
血糖

🧠 全体像を理解する軸は「同じチャネルを開けるだけなのに、狙う臓器によって正反対のが生まれる」という点である。KATPチャネル開口薬という一つの機序が、①ではを止めるの治療)、②では弛緩させて血管を拡張するの治療、現在は他薬に取って代わられ使用頻度は低い)という、臓器が違うだけで結果がまったく異なる2つの適応を生む。もう一つの学習ポイントはという特徴的な副作用で、いずれもKATPチャネル開口という同じ機序が・腎・毛包に及んだ帰結として理解できる。

薬効群の中での位置づけ

適応の軸 の位置づけ 代替・併用薬
第一選択の内科的治療薬(新生児遷延性低血糖、の周術期管理など) 、機序は別系統)
かつて使われたKATPチャネル開現在はが容易な静注薬に取って代わられ使用頻度は低い など(速度で細かく調節可能)

、どちらのKATPチャネルを狙うかでが逆転する点が最大の学習ポイント。 の治療では血管拡張は望まない副作用(・低血圧)として現れ、逆にの治療では抑制による高血糖が望まない副作用として現れる——同じが、適応によって「主作用」にも「副作用」にもなるという好例である。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diazoxide'>ジアゾキシド</span>がKATPチャネルの<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='SUR'>スルホニル尿素受容体</span>サブユニットに結合"] --> B["KATPチャネルを開口状態に固定"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pancreatic beta cell'>膵β細胞</span>でのKATPチャネル開口"]
    C --> D["細胞膜が過分極し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='voltage-gated calcium channel'>電位依存性Caチャネル</span>が閉じる"]
    D --> E["Ca流入が止まり<span class='jp-term jp-term-diagram' title='insulin secretion'>インスリン分泌</span>が抑制される"]
    B --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular smooth muscle'>血管平滑筋</span>でのKATPチャネル開口"]
    F --> G["同様に過分極しCa流入が減る"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular smooth muscle'>血管平滑筋</span>が弛緩し血管拡張が起こる"]

💡 (グリベンクラミド等)がKATPチャネルを閉じてを促すのと、はちょうど正反対のを持つ。 どちらも同じSURサブユニットに結合するが、はチャネルを閉じ(↑・血糖低下)、は開ける(↓・血糖上昇)。この対比は、KATPチャネルという一つの標的が「開ける」か「閉じる」かでの方向を反転させる好例として覚えるとよい。

適応

領域 使いどころ
新生児・小児内分泌 新生児遷延性低血糖症(先天性を含む)のに伴う遷延・難治性低血糖の管理にも用いる
内分泌・腫瘍内科 による低血糖の周術期管理・例での長期的な低血糖予防(と並ぶ選択肢)
循環器(現在は限定的) 高血圧緊急症。現在はなどが容易な静注薬が優先され、使用頻度は低い

用法・用量

ではを1日数回に分割して開始し、血糖モニタリングをしながら反応をみて調節する。を抑えるため利尿薬を併用することが多い。実際の用量は年齢・体重・原因疾患・反応性(KATPチャネルの遺伝子により無効な例がある)で大きく異なるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • ⚠️ KATPチャネルの遺伝子(特に劣性変異)ではが無効な先天性があり、反応性を評価したうえで手術など他の治療への切り替えを検討する
  • ・浮腫のリスクがあるため、心不全やでは慎重投与とし、利尿薬の併用を検討する
  • 早産児・では肺高血圧の報告があり、投与中は呼吸を注意深く観察する1
  • に対する過敏症の既往がある場合はに注意

副作用

頻度は小児のコホート(6研究1142例)のメタアナリシスによる1

頻度 内容
高頻度 (45%。で減量・中止により軽快する)、浮腫(20%)、消化器症状(13%)1
注意 高血糖・(高用量や糖尿病素因がある場合)、好中球減少(9%)
重篤・まれ 肺高血圧(2%。特に早産・)、血小板減少(2%)1(早産・での症例集積レベルの報告)

まとめ

  • KATPチャネル開口薬。SURサブユニットに結合してチャネルを開き、では過分極による抑制、では弛緩による血管拡張を起こす。
  • を狙えばの治療薬、を狙えばという、同じ機序から生まれる正反対の2つの適応を持つ。
  • 現在の主用途は新生児遷延性低血糖・などの第一選択での使用はがより容易な他薬に取って代わられ、頻度は低い。
  • が特徴的な副作用で、いずれもKATPチャネル開口が標的以外の組織(腎・血管・毛包)に及んだ結果として説明できる。
  • 早産・での肺高血圧、遺伝子による無効例には注意する。

出典

  1. 1.Efficacy and safety of diazoxide for treating hyperinsulinemic hypoglycemia: A systematic review and meta-analysis(PLOS ONE・2021)小児(生後1日〜17歳)の高インスリン血症性低血糖を扱った6コホート研究1142例のメタアナリシスで、ジアゾキシドの奏効率が71%(95% CI 50〜93%)、多毛45%・体液貯留20%(浮腫11%)・消化器症状13%・好中球減少9%・肺高血圧2%(95% CI 0〜4)であったことを確認した。母集団は小児に限られる。閲覧 2026-08-10