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Drug Atlas · B4 Other / その他 · 必修

マバカムテン

mavacamten

分類
Cardiac myosin inhibitors / 心筋ミオシン阻害薬
商品名(日本)
カムザイオス
商品名(EU)
Camzyos
科目
Pharmacology
トピック
B4: Positive inotropic drugs
承認適応
肥大型心筋症
副作用
めまい失神
相互作用
ジソピラミドジルチアゼムベラパミル

🧠 全体像:は、(HCM)の薬物治療に「心筋のそのものをで弱める」という新しい層を持ち込んだ薬である。β遮断薬・・がいずれも「心拍数を抑える」「イオンチャネルを介して間接的に収縮力を落とす」薬であるのに対し、はそのものに結合してアクチン-ミオシンのを選択的に減らす、機序としてまったく別の層に位置する。効果が強力なぶん過度に収縮力を落として心不全を起こすリスクもあり、プログラムと定期的な心エコーによるモニタリングが処方の前提条件になっている点が、他のHCM治療薬と一線を画す。

薬効群の中での位置づけ

の薬物治療は、の違いで整理すると理解しやすい。

段階 薬剤 LVOT較差を減らす経路
第一選択 など β1 心拍数・収縮力を間接的に抑制
第二選択 ・ Ca 収縮力を間接的に抑制
追加選択肢 Naチャネル遮断+強い抗コリン性 副次的なを利用
追加・第三選択 ATPase活性の直接的・選択的な阻害 過剰なそのものを減らす(直接的)

⭐ 「間接的に収縮力を落とす薬」と「収縮のそのものを弱める薬」という対比で覚える。 β遮断薬・Ca拮抗薬・はいずれも収縮力低下が「副次的な結果」だが、は収縮力低下(LVOT較差の軽減)そのものが主作用として設計されている。だからこそ効きすぎたときの帰結(低下・心不全)も直接的で、での厳重モニタリングが必須になる。

💡 2025年には同じクラスの2剤目としてが承認された。 標的・機序は同一だが、半減期はより短く(約75〜85時間)、単一酵素への代謝依存が低いぶんが速いというの違いがある。ただし心不全に関するとプログラムでの登録・心エコーによる監視は両剤に共通で、半減期が短いことがモニタリング要件の免除につながっているわけではない。

機序

flowchart TD
    A["正常状態:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myosin head'>ミオシン頭部</span>の一部が<br>アクチンと結合し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cross-bridge'>クロスブリッジ</span>を形成"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypertrophic cardiomyopathy, HCM'>肥大型心筋症</span>では<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='cross-bridge'>クロスブリッジ</span>形成が過剰"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypercontractility'>過収縮</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='left ventricular outflow tract'>左室流出路</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dynamic obstruction'>動的狭窄</span>(LVOTO)"]
    B --> D["拡張期の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='relaxation'>心筋弛緩</span>も障害される(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diastolic dysfunction'>拡張障害</span>)"]
    E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mavacamten'>マバカムテン</span>がミオシンに<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='allosteric'>アロステリック</span>かつ可逆的に結合"] -.->|"ATPase活性を選択的に阻害"| A
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myosin head'>ミオシン頭部</span>がアクチンと結合できない<br>省エネルギー状態へシフト"]
    F --> G["収縮に関与できる<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cross-bridge'>クロスブリッジ</span>数が減少"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myocardial contractility'>心筋収縮力</span>が低下しLVOT較差が軽減"]
    G --> I["過度に働くと収縮力が落ちすぎ<br>心不全(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='left ventricular ejection fraction'>LVEF</span>低下)を来しうる"]

💡 「」「可逆的」という2つの形容詞が試験のひっかけポイント。 はそのものを塞ぐのではなく、の別の部位に結合してアクチンとの相互作用を起こりにくくする()。可逆的な結合のため、すれば作用は消退するが、半減期が長いため消退にも日単位の時間がかかる1。

薬物動態

項目 値・特徴
経口、1日1回
代謝 主にCYP2C19(約74%)、次いで(約18%)
半減期 で約6〜9日、CYP2C19では最大約23日まで延長1
用量 開始5 mg/日、最大15 mg/日。・Valsalva LVOT較差に応じて

⭐ CYP2C19がを左右する点が、この薬の薬理学的な最大の個性。 では・半減期がともに増大し低下リスクが上がるため、や阻害薬との併用可否に反映される21。半減期が長いため、増量・減量の効果判定には数週間を要する。

適応

症候性 II-III度の(oHCM)における・症状の改善2。(β遮断薬)・()でも症状が残る例に追加する。

用法・用量

は1日1回5 mg。≥55%であることを確認してから開始し、心エコーで・Valsalva LVOT較差をみながら2.5〜15 mgの範囲で個別にする(最大15 mg/日)2。のと心エコー評価の間隔は、添付文書のアルゴリズムに従う3。実際の基準は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • ⚠️ :収縮不全による心不全のリスク。 を過度に低下させうるため、投与開始前・投与中を通じて心エコーによる評価が必須2
  • ⚠️ CAMZYOS Programに登録された処方医・患者・薬局を通じてのみ処方・調剤できる。 処方医は登録なしに処方できない
  • 禁忌:強力CYP2C19阻害薬、中等度〜強力CYP2C19・との併用(2025年改訂で中等度CYP2C19阻害薬・強力阻害薬は禁忌から外れ、2.5 mg/日で開始するのうえ併用が可能になった)3
  • ⚠️ 、・とβ遮断薬の併用など、他のとの併用はなを来しうるため避ける
  • 妊娠中はでが示唆されており、投与中および最終投与後4か月間は有効な避妊を行う
  • <50%への低下、または心不全症状の増悪では投与を中断する

副作用

頻度 内容
高頻度 めまい(約27%)、失神(約6%、の約3倍)
注意 低下(可逆性、で対応)
重篤・まれ 収縮不全による心不全、失神による投与中止(CAMZYOS群で最も多い中止理由)

まとめ

  • にかつ可逆的に結合し、ATPase活性を阻害してアクチン-ミオシンの形成を選択的に減らす、初めて承認された。
  • β遮断薬・Ca拮抗薬・が「間接的」に収縮力を落とすのに対し、は収縮のそのものを直接弱める点が作用機序上の個性。
  • 主にCYP2C19で代謝され、半減期はで約6〜9日、では最大約23日まで延長する。
  • は収縮不全による心不全リスクで、CAMZYOS Programでの登録と心エコーによるモニタリングが処方の前提条件。
  • 他の(、+β遮断薬)との併用はなを来しうるため避ける。
  • 妊娠中はのリスクがあり、投与中・最終投与後4か月は避妊が必要。

出典

  1. 1.CYP2C19 genotyping and mavacamten: predicting outcomes in normal, intermediate and rapid metabolisers in obstructive hypertrophic cardiomyopathy(PMC掲載レビュー・2026)マバカムテンは主にCYP2C19(約74%)とCYP3A4(約18%)で代謝され、消失半減期は正常代謝群で約6〜9日だが、CYP2C19低代謝群では最大約23日まで延長しうること、低代謝群では曝露量増加に伴いLVEF低下などの有害事象リスクが上がるため開始用量の調整が支持されることを確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.CAMZYOS (mavacamten) capsules, for oral use — full prescribing information(FDA(Bristol Myers Squibb)・2024)症候性NYHA II-III度の閉塞性HCMを適応とする経口の選択的アロステリック心筋ミオシン阻害薬で、開始用量は1日1回5 mg、最大用量は1日1回15 mgであり、LVEF<55%では開始を推奨せず、LVEF<50%で投与を中断すること、心不全(収縮不全)に関する枠組み警告がありCAMZYOS REMS Programを通じてのみ処方・調剤できること、強力CYP2C19阻害薬・中等度〜強力CYP2C19誘導薬・CYP3A4誘導薬とは禁忌であることを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.CAMZYOS (mavacamten) capsules for oral use — Full Prescribing Information (revised 4/2025)(U.S. Food and Drug Administration・2025)2025年4月改訂の添付文書では、禁忌が「強力なCYP2C19阻害薬」および「中等度〜強力なCYP2C19誘導薬または中等度〜強力なCYP3A4誘導薬」の2項目に整理され、中等度CYP2C19阻害薬・強力CYP3A4阻害薬は禁忌ではなく「2.5 mgを1日1回で開始する」という用量調整の対象(第2.2節)になっていること、維持期の用量調整と心エコーによるモニタリングの間隔は添付文書のMaintenance Phaseのアルゴリズム(Figure 2)に従うこととされていることを確認した閲覧 2026-08-25