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Drug Atlas · B32 Other / その他

メチレンブルー

methylene blue

分類
Other / その他
科目
Pharmacology
トピック
B32: Drugs used in cancer treatment II (cytotoxic agents targeting DNA)
承認適応
メトヘモグロビン血症
禁忌疾患
G6PD欠乏症
対象薬
イホスファミド

🧠 全体像:は「還元して治す薬」でありながら、その還元能力自体がという別の経路に依存するという二重構造を持つ。では、ふだん使われない-経路を人為的にしてFe3+をFe2+へ戻す。この経路は依存性の一リン酸経路が供給するを使うため、欠損症では効果が乏しいだけでなく、本剤自体がとなって溶血を悪化させうる——効く仕組みと害する仕組みが同じ経路の表裏にある。もう一つの顔として、A()阻害作用を持つため、・などとの併用でを起こしうる点も、のという意外な適応(誘発性脳症)とあわせて押さえておきたい。

位置づけ・機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methylene blue'>メチレンブルー</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='IV dosing'>静脈内投与</span>"] --> B{"適応は?"}
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Methemoglobinemia'>メトヘモグロビン血症</span>"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glucose-6-phosphate dehydrogenase'>G6PD</span>依存性の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='hexose'>ヘキソース</span>一リン酸経路が供給する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nicotinamide adenine dinucleotide phosphate (reduced)'>NADPH</span>を利用"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nicotinamide adenine dinucleotide phosphate (reduced)'>NADPH</span>-<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methemoglobin reductase'>メトヘモグロビン還元酵素</span>が<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='methylene blue'>メチレンブルー</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leucomethylene blue'>ロイコメチレンブルー</span>へ還元"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leucomethylene blue'>ロイコメチレンブルー</span>がFe3+(メトヘモグロビン)を<br>Fe2+(ヘモグロビン)へ還元"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ifosfamide'>イホスファミド</span>誘発性脳症"| F["神経毒性代謝物(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chloroacetaldehyde'>クロロアセトアルデヒド</span>)の<br>生成を阻害すると考えられる"]
    F --> G["24時間以内の症状改善が報告される"]
    C -.->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glucose-6-phosphate dehydrogenase'>G6PD</span>欠損症では<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nicotinamide adenine dinucleotide phosphate (reduced)'>NADPH</span>供給が不足"| H["還元反応が働かず効果減弱"]
    H -.-> I["本剤自体が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oxidative stress'>酸化ストレス</span>となり溶血を悪化"]

では、ふだんはほとんど働かない-の副次経路を、外因性の体であるが人為的にする。この経路は依存性の一リン酸経路が生むを使うため、の効果自体が経路の機能に依存する1。

もう一つの適応は誘発性脳症である。神経毒性代謝物()の生成を阻害することで治療・予防に用いられ、24時間以内の症状改善が報告されている2。⭐ 同じ薬が「代謝物を還元して治す()」と「代謝物の生成を止めて治す(脳症)」という別々の機序で2つの適応を持つ点が紛らわしいので、適応と機序をセットで覚える。

💡 のリスクは、この薬がA()阻害作用を持つことに由来する。 はを阻害するため、・・MAOI・オピオイドなどとの併用でのCNS・自律神経・()を誘発しうる31。

適応

  • 後天性(小児・成人)3
  • 誘発性脳症の治療・予防(添付文書上の正式適応ではなく、神経毒性代謝物の生成阻害という機序に基づく臨床使用)2

用法・用量

適応 用法・用量
1 mg/kgを5〜30分かけて静注。初回投与1時間後もメトヘモグロビン濃度が30%を超える場合は最大1 mg/kgを追加投与できる(総投与回数は2回まで)3

⚠️ アニリンやなどのアリールアミン・スルファ薬が原因のでは、治療後にいったん改善してもメトヘモグロビンが(リバウンド)しうる。 反復測定と必要に応じた追加治療を要する3。

禁忌・注意

  • 禁忌:本剤への重篤な過敏反応、欠乏症(添付文書上の明記)3
  • ⚠️ 欠損症の扱いは資料により濃淡がある。 添付文書は禁忌と明記する一方、StatPearlsは「議論はあるがではなく慎重投与」とし、推奨用量の2倍を超える5 mg/kgを超えた投与で溶血が報告されているとする1。欠損症での使用回避に確実な根拠があるとする系統的レビューもあり、欠損が既知・強く疑われる場合は投与を避けるか最小限にとどめるのが安全である4
  • 併用注意:・・MAOI・オピオイドなどとの併用でのリスクが上がる。本剤投与後72時間はの開始を避けるべきとされる3

副作用

頻度・重篤度 内容
注意 高血圧、めまい、胸痛、呼吸困難、皮膚・尿の青緑色変化(による無害な)
重篤・まれ 欠損症での溶血性貧血、、アナフィラキシー3

まとめ

  • はの治療薬で、依存性の経路を介してをしFe3+をFe2+へ戻す。
  • もう一つの適応は誘発性脳症で、こちらは神経毒性代謝物の生成阻害という別の機序による。
  • 欠損症では効果が乏しいだけでなく本剤自体が溶血を悪化させうる。添付文書は禁忌と明記するが、慎重投与という位置づけの資料もある。
  • A阻害作用によりとの併用でを起こしうるため、投与後72時間はを避ける。

出典

  1. 1.Methemoglobinemia(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)メチレンブルーの還元機序が、G6PD依存性のヘキソースーリン酸経路で産生されたNADPHを用いてNADPH-メトヘモグロビン還元酵素が本剤をロイコメチレンブルーへ還元する副次経路によること、G6PD欠損症での使用は議論があるものの絶対禁忌ではなく慎重投与とされ、推奨用量の2倍を超える5 mg/kgを超える投与で溶血が報告されていること、本剤がモノアミン酸化酵素A阻害作用を持ちセロトニン作動薬との併用でセロトニン症候群を誘発しうること、標準用量が1〜2 mg/kg(1%溶液0.1〜0.2 mL/kg)を5分かけて静注することであることを確認した。閲覧 2026-09-07
  2. 2.Ifosfamide(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)メチレンブルーが神経毒性代謝物の生成を阻害することでイホスファミド誘発性脳症の治療・予防に用いられ24時間以内の症状改善が報告されていることを確認した。閲覧 2026-09-07
  3. 3.PROVAYBLUE (methylene blue) injection(DailyMed(U.S. National Library of Medicine)・2025)PROVAYBLUEの承認適応が小児・成人の後天性メトヘモグロビン血症であること、用法・用量が1 mg/kgを5〜30分かけて静注し初回投与1時間後もメトヘモグロビン濃度が30%を超える場合は最大1 mg/kgを追加投与できる(総投与回数は2回まで)こと、禁忌が本剤への重篤な過敏反応とグルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症であること、SSRI・SNRI・モノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)・オピオイドとの併用でセロトニン症候群のリスクがあり本剤投与後72時間はセロトニン作動薬を避けるべきとされていること、アニリンやダプソンなどのアリールアミン・スルファ薬によるメトヘモグロビン血症では治療後に再上昇(リバウンド)しうること、現行版(version 28)の改訂日が2025年5月28日であることを確認した。閲覧 2026-09-07
  4. 4.Medications and glucose-6-phosphate dehydrogenase deficiency: an evidence-based review(Drug Safety・2010)G6PD欠損症患者での医薬品使用に関するエビデンスに基づく系統的レビューが、使用回避の「確実な根拠がある」薬剤をダプソン・メチレンブルー(methylthioninium chloride)・ニトロフラントイン・フェナゾピリジン・プリマキン・ラスブリカーゼ・トルイジンブルーの7剤に限定していることを確認した。閲覧 2026-08-13