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Drug Atlas · B22 Other / その他 · 必修

ネランドミラスト

nerandomilast

分類
Other / その他
商品名(日本)
ジャスケイド
商品名(EU)
Jascayd
科目
PharmacologyPulmonology and Thoracic SurgeryTranslational Medicine and Pathophysiology
トピック
B22: Antiinflammatory agents inhibiting bronchial inflammatory processes. Antitussive agents and expectorants呼吸器内科 38:特発性肺線維症病態生理学 II-14:COPDと肺線維症の呼吸力学・血液ガスへの影響
承認適応
特発性肺線維症進行性肺線維症
副作用
下痢体重減少食欲不振
相互作用
ニンテダニブピルフェニドン

🧠 全体像:は、()・(機序が完全には解明されていない・)に続く(IPF)の3番目のである。既存2剤とは異なり、4B(PDE4B)を優先的に阻害するという明確な単一標的を持つ点が特徴で、細胞内cAMPを高めて線維化に関わる経路を抑える。2025年に米国、2026年にEU・日本で承認された最も新しいであり、既存2剤と同様「進行を遅らせる薬であって、既存の線維化を元に戻す治癒薬ではない」という位置づけは変わらない。

薬効群の中での位置づけ

薬剤 機序 主な有害事象 承認時期・特徴
VEGFR/FGFR/PDGFR阻害() 下痢が主体 2014年米国承認。と分子標的抗がん薬の二面性
TGF-β関連の線維化・を抑制(正確な単一標的は未確定) 消化器症状・・発疹 2014年米国承認。14日間のが必要
PDE4Bを優先的に阻害(明確な単一標的) 下痢(既存の併用でさらに増える) 2025年米国承認。米国の禁忌は None だが、日本の禁忌は成分への過敏症

⭐ 3剤とも「FVC低下を遅らせる」効果の位置づけは共通するが、既存のとの併用を前提に設計されている点がの特徴である。 FIBRONEER-IPF試験の組入れ患者の77.7%はまたはを既に使用しており、単剤での効果ではなく既存治療への追加という文脈で有効性が示された1。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nerandomilast'>ネランドミラスト</span>がPDE4B<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='phosphodiesterase (PDE)'>ホスホジエステラーゼ</span>4B)を優先的に阻害"] --> B["cAMPの分解が抑制され<br>細胞内cAMP濃度が上昇"]
    B --> C["線維芽細胞・炎症細胞の活性化シグナルが減弱"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myofibroblast'>筋線維芽細胞</span>への分化・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='extracellular matrix'>細胞外基質</span>の沈着が抑制される"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary fibrosis'>肺線維化</span>の進行を遅らせる<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='idiopathic pulmonary fibrosis, IPF'>特発性肺線維症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='progressive pulmonary fibrosis, PPF'>進行性肺線維症</span>)"]
    F["PDE4はA〜Dの複数<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Subtype'>サブタイプ</span>を持つ"] -.->|"PDE4Bを優先的に阻害することで"| G["PDE4D阻害に伴う悪心・嘔吐などの<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='tolerability'>忍容性</span>の問題を軽減する設計"]

💡 「優先的に(preferentially)」阻害するという表現が重要。 PDE4にはA〜Dの複数があり、非選択的な(例:)はPDE4D阻害由来の悪心・嘔吐が問題になりやすい。はPDE4Bを優先的に阻害するよう設計されており、これが既存のと比べたの改善につながっているとされる2。

薬物動態

項目 値・特徴
用法 経口、1日2回投与
併用時 のが約50%低下する。側のへの影響は無い2
併用時 の曝露に臨床的な差はなく、側のにも臨床的な差はない2

⚠️ 併用薬によるは、相手がか阻害薬かで向きが逆になる。 FIBRONEER-IPF試験の併用例では9 mg1日2回で有効性がみられなかったため、米国添付文書は(および中等度CYP3A)併用時も18 mg1日2回を維持し、9 mgへ減量しないよう求めている2。日本の電子添文も同じく、または強い・中程度のCYP3A誘導剤との併用時は9 mg1日2回へ減量しないとする一方、強いCYP3Aとの併用時は逆に9 mg1日2回へ減量するよう求めている3。

適応・用法

米国添付文書の推奨用量は18 mgを1日2回とし、できない場合は9 mgを1日2回へ減量する(ただし併用時は18 mgを維持する)2。日本の電子添文も用法・用量は同じ1回18 mg 1日2回で、に応じて1回9 mg 1日2回へ減量できるとする3。

💡 の適応は「進行している」ことの確認が前提である。 日本の電子添文は、臨床成績の項を熟知したうえで、肺機能・呼吸器症状・胸部画像所見の総合的な評価により進行性線維化が認められる患者に投与するよう求めている3。であれば一律に使える薬ではない。

⚠️ 承認状況は日付つきの事実である。 2026年10月1日に文書で確認できるのは、米国(2025年に初回承認、DailyMedの添付文書は改訂8/2026)2、EU(CHMPの肯定的意見が2026年5月21日、EU全域で有効な販売承認が2026年7月15日)4、日本(2026年5月18日に新含有医薬品・として承認5、ジャスケイド錠9 mg・18 mgとして2026年7月に販売開始、電子添文は2026年9月改訂 第3版3)の3地域である。これ以外の国・地域での承認状況はこの時点で確認していないため、「世界的に広く使える薬」と一般化しない。

禁忌・注意

  • ⚠️ 禁忌の記載は国で違う。 米国添付文書の禁忌の項はNone(記載なし)である2が、日本の電子添文の禁忌は本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者で、さらにとして本剤との治療に十分な知識・経験をもつのもとで使うことを求めている3。「禁忌が無い薬」と一般化しない
  • 重度のでは治療が推奨されない。 が上昇する可能性があり、この集団の・試験は行われていない。(eGFR 15 mL/min/1.73m²未満)も同様に未検討である3
  • ⚠️ との併用では減量しない。 が約50%下がるため、有効性を保つには18 mg1日2回の維持が必須である2
  • との併用では下痢が増える。 併用例の下痢は18 mg群62%・9 mg群50%(プラセボ群28%)で、下痢による中止も18 mg群で13%と報告されている2
  • 体重減少・食欲低下がみられることがあり、継続的なの評価が望ましい

副作用

頻度 内容
高頻度 下痢(18 mg群41.3%、9 mg群31.1%、プラセボ群16.0%)1、体重減少、2
注意 併用時の下痢増加(18 mg群62%)2
重篤・まれ 重篤な有害事象の発現率はプラセボ群と均衡していた(FIBRONEER-IPF試験)1

まとめ

  • はPDE4Bを優先的に阻害する新しい機序ので、・に続くIPFの3番目の薬として2025年以降に承認された。
  • FIBRONEER-IPF試験は、既存のを使用中の患者が多い(77.7%)集団で行われ、既存治療への追加という文脈でFVC低下抑制効果が示された。
  • との併用ではの血中濃度が下がるが、減量してはならない(有効性が失われるため)。との併用では下痢が増える。
  • 2026年10月1日時点で文書を確認できる承認地域は米国(2025年)・EU(2026年7月)・日本(2026年5月承認・7月販売開始、ジャスケイド)の3地域であり、他地域の承認状況は未確認である。
  • 禁忌の記載も国で違う。 米国の禁忌は None だが、日本の禁忌は成分への過敏症で、もある。「禁忌の無い薬」として覚えない。
  • 既存2剤と同じく、線維化を元に戻す治癒薬ではなく進行を遅らせる薬という位置づけである。

出典

  1. 1.Nerandomilast in Patients with Idiopathic Pulmonary Fibrosis(New England Journal of Medicine(FIBRONEER-IPF試験)・2025)抄録(Europe PMC)で確認した。特発性肺線維症の患者1,177例をネランドミラスト18 mg 1日2回・9 mg 1日2回・プラセボに1対1対1で割り付け、背景の抗線維化薬(ニンテダニブまたはピルフェニドン対なし)で層別化した第3相二重盲検試験(組入れ時77.7%が既存の抗線維化薬を使用)。主要評価項目の52週時FVC変化量は18 mg群−114.7 mL、9 mg群−138.6 mL、プラセボ群−183.5 mLで、プラセボとの差は18 mg群68.8 mL(P<0.001)、9 mg群44.9 mL(P=0.02)。最も多い有害事象は下痢(18 mg群41.3%、9 mg群31.1%、プラセボ群16.0%)で、重篤な有害事象は群間で均衡していた閲覧 2026-09-26
  2. 2.JASCAYD (NERANDOMILAST) TABLET, FILM COATED(DailyMed (U.S. National Library of Medicine) / Boehringer Ingelheim Pharmaceuticals, Inc.・2026)DailyMed表示の改訂8/2026の米国添付文書で確認した。ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬として成人の特発性肺線維症(1.1)と進行性肺線維症(1.2)に適応があり、初回米国承認は2025年、禁忌は None、推奨用量は18 mg 1日2回(忍容できなければ9 mg 1日2回へ減量)。ピルフェニドン併用ではネランドミラストのトラフ濃度が約50%低下し、FIBRONEER-IPFのピルフェニドン併用例では9 mg 1日2回で有効性がみられなかったため、ピルフェニドン(および中等度CYP3A誘導薬)併用時は18 mg 1日2回を維持し減量しない(2.1・7.1)。ニンテダニブ併用ではネランドミラストの曝露に臨床的な差はなく、ネランドミラスト併用でピルフェニドン・ニンテダニブ側の薬物動態にも臨床的な差はない(12.3)。一方ニンテダニブ併用例では下痢がより多く(18 mg群62%・9 mg群50%・プラセボ群28%)、下痢による中止も18 mg群で13%だった(6.1)閲覧 2026-09-26
  3. 3.ジャスケイド錠9mg/ジャスケイド錠18mg 電子添文(医薬品医療機器総合機構(製造販売元 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社)・2026)日本の電子添文(2026年9月改訂 第3版、販売開始2026年7月)で確認した。薬効分類名はPDE4B阻害剤・抗線維化・免疫調整剤で、効能・効果は特発性肺線維症と進行性肺線維症。進行性肺線維症では臨床成績の項を熟知し、肺機能・呼吸器症状・胸部画像所見の総合的な評価により進行性線維化が認められる間質性肺疾患患者に投与する(5項)。用法・用量は成人に1回18 mgを1日2回で、忍容性に応じて1回9 mg 1日2回へ減量できる(6項)。ピルフェニドンまたは強いもしくは中程度のCYP3A誘導剤との併用時は1回9 mg 1日2回へ減量しない(7.1)が、強いCYP3A阻害剤との併用時は1回9 mg 1日2回へ減量する(7.2)。⚠️ 米国添付文書の禁忌が None であるのに対し、日本の禁忌(2項)は本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者であり、さらに警告1項で本剤と適応疾患の治療に十分な知識・経験をもつ医師のもとで使用することを求めている。重度の肝機能障害(Child-Pugh C)のある患者では本剤による治療は推奨されず、曝露量が上昇する可能性がある(9.3.1)。末期腎不全(eGFR 15 mL/min/1.73m²未満)では臨床試験・薬物動態試験が実施されていない(9.2.1)閲覧 2026-10-01
  4. 4.Jascayd (nerandomilast): EPAR(European Medicines Agency・2026)EMAのEPARランディングページで、Jascaydが成人の特発性肺線維症と成人の進行性肺線維症の治療に適応をもち、CHMPの肯定的意見が2026年5月21日、EU全域で有効な販売承認が2026年7月15日に出ていることを確認した閲覧 2026-09-26
  5. 5.承認品目一覧(新医薬品:2026年9月)(独立行政法人医薬品医療機器総合機構・2026)2026年9月24日に取得した版で、2026年5月18日にジャスケイド錠9 mg・同18 mg(日本ベーリンガーインゲルハイム、成分名ネランドミラスト)が特発性肺線維症・進行性肺線維症を効能・効果とする新有効成分含有医薬品(希少疾病用医薬品)として承認されたことを確認した閲覧 2026-09-26