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Drug Atlas · B35 Targeted cancer therapy / 分子標的薬 · 必修

ロミデプシン

romidepsin

分類
Targeted cancer therapy / 分子標的薬
商品名(日本)
イストダックス
科目
Pharmacology
トピック
B35: Drugs used in cancer treatment V (Small molecule signal transduction inhibitors. Retinoids)
承認適応
皮膚T細胞リンパ腫末梢T細胞リンパ腫
副作用
悪心嘔吐食欲不振味覚障害掻痒
監視検査値
血小板減少

🧠 全体像:は、に次いでに承認された2剤目の阻害薬であり、両者を並べて覚えることで「同じ標的でもが違うと臨床像が変わる」という阻害薬全体の理解が深まる。が経口・広域(pan-)な設計なのに対し、は・クラスI選択的な設計をとる、構造の“”である。適応も「1種類以上の全身治療歴」との「2種類以上」より手前に位置づけられ、選択の軸は経口の利便性か、選択性の高さ・の管理しやすさかという実務的なになる。

薬効群の中での位置づけ

項目
構造 (天然物由来の) 誘導体
阻害する クラスI(とくにHDAC1・2)に選択的 クラスI(1・2・3)+クラスIIb(HDAC6)の広域
(が低い) 経口
用法 28日サイクルの1・8・15日目に4時間かけて 毎日1回経口(食後)
適応の要件 1種類以上の全身治療歴 2種類以上の全身治療歴
特徴的な注意点 QT延長・、 肺塞栓症、

⭐ 「経口か静注か」「広域か選択的か」という2つの軸で対比すると覚えやすい。 は通院での管理が必要になる一方、電解質・という明確なチェックリストがあるため管理手順は定型化しやすい。は自己管理できるだが、肺塞栓症のような予測しにくい合併症への警戒が必要になる。陽性例の、も同じ既治療の選択肢に並ぶため、実地では発現や、患者の通院能力を踏まえて使い分ける。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='romidepsin'>ロミデプシン</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cyclic depsipeptide'>環状デプシペプチド</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prodrugs'>プロドラッグ</span>)を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='IV dosing'>静脈内投与</span>"] --> B["細胞内で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='disulfide bond'>ジスルフィド結合</span>が還元され<br>活性型の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dithiol structure'>ジチオール構造</span>に変換される"]
    B --> C["活性化された<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thiol group'>チオール基</span>が<br>クラスI <span class='jp-term jp-term-diagram' title='histone deacetylase'>HDAC</span>(とくにHDAC1・2)の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='catalytic center'>触媒中心</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='zinc ion'>亜鉛イオン</span>に結合"]
    C --> D["クラスI <span class='jp-term jp-term-diagram' title='histone deacetylase'>HDAC</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deacetylation'>脱アセチル化</span>活性を阻害"]
    D --> E["ヒストンのアセチル化が蓄積し<br>クロマチンが開いた状態になる"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumor suppressor gene'>がん抑制遺伝子</span>を含む<span class='jp-term jp-term-diagram' title='target gene'>標的遺伝子</span>の転写が変化"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cell cycle arrest'>細胞周期停止</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='differentiation induction'>分化誘導</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='apoptosis induction'>アポトーシス誘導</span>"]

💡 「として投与され、細胞内で活性化される」という設計が静注投与の理由の一つ。 は分子内のが還元されて初めて活性型(型)になり、この活性型分子がの依存性を阻害する。クラスIのなかでもHDAC1・2へのが突出して強く(クラスIIのHDAC4に対して1桁以上、HDAC6に対しては2桁以上弱い)、が併せて阻害するクラスIIb(HDAC6、主に細胞質でなどに関わる)への作用は乏しい。同じ「阻害」という戦略でも、阻害するの範囲が薬剤ごとの副作用プロファイルの違いにつながる。

薬物動態

項目 値・特徴
(4時間かけて投与)。が低く経口製剤はない
代謝 主に肝による
蛋白結合率 非常に高い
肝機能低下時 が上がるためを下げる。米国の添付文書は中等度(がの1.5倍超〜3倍以下)で7 mg/m²、重度(3倍超)で5 mg/m²とし、軽度では調節不要としている1

⚠️ を強く阻害・誘導する薬剤との併用はを大きく変化させるため注意する。 強い阻害薬との併用は毒性増強、との併用は効果減弱につながりうる。

適応

領域 使いどころ
・腫瘍(米国) 1種類以上の全身治療歴がある成人の1
血液内科(日本) 再発又は難治性の末梢T細胞リンパ腫2

既治療歴中央値4回、87%が(stage IIB以上)の再発・難治性 71例を対象とした第2相試験では、34%(4例・20例)、中央値13.7か月であった3。

⚠️ は国ごとに書き分ける。日米でほぼ裏返しになっており、にはそもそも承認が無い。

地域 承認された効能・効果
米国 1種類以上の全身治療歴がある成人の()のみ1
日本 再発又は難治性の(PTCL)のみ。・は国内の効能・効果に含まれない2
EU 承認されていない。 2013年2月12日付で販売承認が拒否された(下記)4

⚠️ では承認されたことがない。「で取り下げられた」でも「では未申請」でもなく、申請されて拒否された。 Celgene Europe Ltd. がを対象に申請したが、CHMPは2012年7月19日に否定的見解を採択し、の再審査請求を受けて再検討したうえで2012年11月15日に拒否を確認、EMAの記録上の Refusal of marketing authorisation は2013年2月12日である4。理由は、主要試験(既治療のPTCL 131例)が対照を置かないであったため、観察されたが薬剤によるものか患者背景によるものかを切り分けられず、・の観点から臨床的有用性をできなかったことである。⚠️ したがって Istodax は米国の商品名であって、の商品名ではない4。

💡 米国にもかつてPTCLの適応があった。 2021年3月改訂の版(補正s016)には「1.2 Peripheral T-Cell Lymphoma」が併記されており、そこにはに基づく(accelerated approval)であり、承認の継続は確認試験で臨床的有用性が検証・記述されることを条件としうると明記されていた。次の版(補正s017、2021年7月改訂)の RECENT MAJOR CHANGES 欄は逐語で「Indications and Usage, Peripheral T-cell Lymphoma (1.2) Removed 7/2021」と記し、適応はの1つだけになっている1。⚠️ 取り下げの理由そのものは添付文書には書かれていない。 2021年11月改訂のの添付文書でも米国の適応はのみである5。⚠️ したがって「米国は、日本はPTCL」という現在の対比は、もともとそうだったのではなく、米国側で適応が1つ減った結果である。 古い資料が米国の適応としてPTCLを挙げていても誤植ではない。

⭐ これで3極が出そろい、対比が完成する。 同じ薬の同じ疾患(PTCL)について、米国はで得たのちに取り下げ、日本は承認して現在も維持、EUは申請を拒否——3つのが3通りのに達している。💡 分かれ目はどこも同じで、対照を置かないのをどこまで信用するかである。

用法・用量

14 mg/m²を1回4時間かけて投与し、28日サイクルの1・8・15日目に投与、16〜28日目はする。以後はこの28日サイクルを、があり効果が続く限り繰り返す。この用法は米国の添付文書と日本の電子添文で同じである(は違うが投与スケジュールは共通)12。投与前に・が内であることを確認する。実際のは施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

⚠️ 禁忌の書き方が日米で違う。国を書かずに「禁忌は◯◯」と言わない。

国 禁忌
米国 CONTRAINDICATIONS: None. ——禁忌の項に挙がっているものは無い1
日本 ①本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者 ②妊婦又は妊娠している可能性のある女性(2項目)2
  • ⚠️ QT延長・:投与前の電解質(カリウム・)補正が必須。・重大な心疾患の既往がある患者では特に注意し、ベースラインおよび投与中の心電図評価を行う
  • ⚠️ 骨髄抑制:血小板減少・好中球減少・・貧血が高頻度に生じるため、サイクルごとの血算モニタリングが必要。日本の電子添文の重大な副作用では97.9%・83.3%・81.3%・好中球減少症81.3%・貧血33.3%と、ほぼ全例に何らかの血球減少が起こる2
  • ⚠️ 重篤な感染症:肺炎・敗血症・を含む致死的な感染症の報告があり、感染徴候の早期評価が重要。日本の電子添文は投与に先立ちB型肝炎ウイルス感染の有無を確認し、投与開始後も肝機能検査と肝炎ウイルスマーカーを継続してモニタリングするよう求めている2
  • :・の多い患者でリスクが高い。米国の添付文書が挙げる1%という数字はの患者についての値である1。⚠️ 全体の頻度ではない(日本の電子添文では6.3%が重大な副作用として挙がる2)
  • 肝機能低下:米国の添付文書はそのものを下げるよう指示し、中等度(がの1.5倍超〜3倍以下)で 7 mg/m²、重度(3倍超)で 5 mg/m²、軽度では調節不要としている1。日本の電子添文は「減量を考慮するとともに、患者の状態をより慎重に観察」とするだけで具体的な用量は示していない2
  • 妊娠:でが示されている。米国の添付文書は妊娠可能な女性と、妊娠可能な女性をパートナーにもつ男性の双方に、投与中および最終投与後1か月間の有効な避妊を指導するよう求める1。日本では妊婦・妊娠している可能性のある女性が禁忌である2

副作用

頻度 内容
高頻度(≥30%) 悪心、疲労、感染症、嘔吐、、心電図ST-T変化、、便秘、掻痒
注意 血小板減少・好中球減少・・貧血(Grade 3-4が10%以上)
重篤・まれ 重篤感染症、、QT延長・

まとめ

  • に承認された2剤目の阻害薬。クラスI (とくにHDAC1・2)に選択的な、細胞内で活性化されるの。
  • 経口のに対し、(28日サイクルの1・8・15日目)というの違いが臨床上の最大の対比点。
  • 適応は1種類以上の全身治療歴がある(米国)。既治療 71例の第2相試験で34%だった。
  • 日本国内のはPTCLのみでを含まない——国によってが異なる代表例。米国にも2021年3月改訂の版まではPTCLのによる適応が併記されており、2021年7月の改訂で取り下げられた。
  • ⚠️ には承認が無い。 Celgene Europe が PTCL を対象に申請したが、CHMPの否定的見解が再審査でも維持され、2013年2月12日付で販売承認が拒否された(では臨床的有用性をできないというのが理由)。⭐ 同じ薬の同じ疾患で、米国はののち取り下げ・日本は承認・は拒否という3通りのが並ぶ。Istodax は米国の商品名であっての商品名ではない。
  • 禁忌も国で違う。米国は「None」、日本は成分過敏症と妊婦の2項目である。
  • QT延長・、骨髄抑制、重篤感染症、が臨床上の主な注意点で、投与前の電解質確認とサイクルごとの血算モニタリングが欠かせない。

出典

  1. 1.ISTODAX (romidepsin) for injection — Highlights of Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration / Celgene Corporation・2021)補正s017のPDF全文を取得して確認した。本文の改訂表示は「Revised: 7/2021」で、RECENT MAJOR CHANGES 欄に逐語で「Indications and Usage, Peripheral T-cell Lymphoma (1.2) Removed 7/2021」とある。この版の適応は「cutaneous T-cell lymphoma (CTCL) in adult patients who have received at least one prior systemic therapy」の1つだけで、末梢性T細胞リンパ腫は挙がっていない(1つ前の補正s016=Revised 3/2021 には迅速承認によるPTCLの適応1.2が載っていた)。用法・用量は14mg/m²を28日サイクルの1・8・15日目に4時間かけて点滴静注。CONTRAINDICATIONS は逐語で「None」。肝機能障害では開始用量を減らし、中等度(総ビリルビンが基準上限の1.5倍超〜3倍以下)は7mg/m²、重度(3倍超)は5mg/m²、軽度では調節不要。腫瘍崩壊症候群は逐語で「in 1% of patients with tumor stage CTCL」=腫瘤期CTCLの1%。検査値異常を除く30%以上の副作用は悪心・疲労・感染症・嘔吐・食欲不振・心電図ST-T変化・味覚障害・便秘・掻痒、Grade 3-4の検査値異常(10%以上)はリンパ球減少・好中球減少・貧血・血小板減少。妊娠可能な女性と、妊娠可能な女性をパートナーにもつ男性には、投与中および最終投与後1か月間の有効な避妊を指導する閲覧 2026-09-13
  2. 2.イストダックス点滴静注用10mg 電子添文(医薬品医療機器総合機構(PMDA)/ブリストル・マイヤーズ スクイブ・2022)本文を取得して確認した。第2版(2022年7月改訂)。4. 効能又は効果は「再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫」の1つだけで、皮膚T細胞リンパ腫・菌状息肉症は国内の効能・効果に含まれない。2. 禁忌は「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」と「妊婦又は妊娠している可能性のある女性」の2項目で、適応別の見出しは付いていない。1. 警告は緊急時に対応できる施設・造血器悪性腫瘍の治療に十分な知識と経験をもつ医師のもとでの投与を求める。6. 用法及び用量は14mg/m²を1・8・15日目に4時間かけて点滴静注し16〜28日目は休薬、この28日間を1サイクルとして繰り返す。11.1 重大な副作用は骨髄抑制(血小板減少症97.9%・リンパ球減少症83.3%・白血球減少症81.3%・好中球減少症81.3%・貧血33.3%)、感染症、QT間隔延長4.2%、腫瘍崩壊症候群6.3%、過敏症。9.3 肝機能障害患者では減量を考慮するとされるだけで、米国の添付文書のような総ビリルビン別の開始用量は示されていない閲覧 2026-09-13
  3. 3.Phase II multi-institutional trial of the histone deacetylase inhibitor romidepsin as monotherapy for patients with cutaneous T-cell lymphoma(Journal of Clinical Oncology・2010)既治療歴中央値4回、87%が進行期(stage IIB以上)の再発・難治性CTCL 71例を対象とした第2相試験で、全奏効率が34%(完全奏効4例・部分奏効20例)、奏効期間中央値が13.7か月であったこと、主な有害事象が悪心・嘔吐・疲労・一過性の血小板減少と顆粒球減少であったことを確認した閲覧 2026-08-10
  4. 4.Istodax (romidepsin) — Refusal of the marketing authorisation (European public assessment report)(European Medicines Agency・2013)EMAの医薬品ページ全文を取得して確認した。ページ上部の状態表示が逐語で「Refused」「This medicine has been refused authorisation」であり、右欄の書誌が Marketing authorisation applicant「Celgene Europe Ltd.」/Opinion adopted「15/11/2012」/Refusal of marketing authorisation「12/02/2013」であること。経緯は、2012年7月19日にCHMPが末梢性T細胞リンパ腫を対象とするIstodaxの販売承認を拒否する否定的見解を採択し、申請者の再審査請求を受けて再検討したうえで2012年11月15日に拒否を確認した、というものである(逐語「the CHMP confirmed its initial negative opinion」)。拒否の理由は、主要試験(既治療の末梢性T細胞リンパ腫131例)が対照を置かない単群試験であったため全生存期間・無増悪生存期間の観点から臨床的有用性を結論できなかったこと(2012年7月にはGMP証明書の不備も挙がったが、再審査でこの懸念は取り下げられた)。⚠️ 想定されていた適応は末梢性T細胞リンパ腫であり、皮膚T細胞リンパ腫ではない。本剤は2005年10月28日に同疾患の希少疾病用医薬品に指定されていた。閲覧 2026-09-13
  5. 5.ROMIDEPSIN- romidepsin injection, powder, lyophilized, for solution — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration / Fresenius Kabi USA・2021)DailyMedの本文を取得して確認した。set_id は 73a2028d-6735-4cd4-b63d-d072df9927a1、labeler は Fresenius Kabi USA, LLC(ANDA206254)。⚠️ 添付文書に印字された改訂表示は Highlights 末尾が逐語「Revised: 11/2021」、患者向け情報末尾が「Revised: September 2021」で、ページ上部の Updated April 29, 2026(DailyMed Version 9)は掲載側の更新であって改訂年ではない。適応は逐語で「Romidepsin for injection is indicated for the treatment of cutaneous T-cell lymphoma (CTCL) in adult patients who have received at least one prior systemic therapy」の1つだけで、末梢性T細胞リンパ腫は挙がっていない。同じ検索で返る米国のロミデプシン製剤は先発品ISTODAX(Celgene)と後発品2件の計3件で、3件とも適応はCTCLのみである閲覧 2026-09-17