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Imaging findings · Published

空虚トルコ鞍

Empty sella

別名
エンプティセラトルコ鞍の空洞化空トルコ鞍empty sella
臓器系
内分泌・代謝神経
科目
PathologyAnatomyInternal Medicine
トピック
病理学 C/84:視床下部・下垂体系の機能低下・亢進解剖学 7.3:頭部:頭蓋腔と髄膜内科学 S-07:下垂体機能低下症
関連疾患
シーハン症候群特発性頭蓋内圧亢進症

🧠 全体像は診断名ではなく、内へ入り込み下垂体がして見えるという画像所見である。大半は無症候ので治療を要さないが、が能動的に確かめるべきことは2点に絞られる。背景に頭蓋内圧亢進があるか、そして下垂体機能が落ちていないかである。この所見で決めるのは良悪性の判断ではなく、の評価と眼科評価へ進むか、経過観察でよいかという次の一手である。

所見の定義

内へ陥入し、下垂体実質が鞍底へすることで、内腔の大部分が脳脊髄液に置き換わって見える所見を指す。下垂体組織が鞍底に扁平ながらも見分けられる程度に残っている状態を、下垂体実質がほとんど同定できないほど菲薄化した状態をと呼び分けるが、両者は連続した所見であり明確な数値境界があるわけではない。は多くの場合保たれ正中に立って見える。の病変ではによるを来しやすいとされ、これを裏返すと、が保たれる機能やが障害されることはまれである。の偏位・そのものの所見ではなく、別の病態を疑う手がかりになる(後述)。

原発性と続発性を区別する

という所見の名前は原因を教えない。同じ画像所見でも、を覆う)がもともと脆弱なために生じたのか、下垂体組織が一度失われた跡なのかでが大きく変わるため、この切り分けを最初に行う。前葉実質の85%以上が失われるとを来すとされ、)はその原因の一つに位置づけられる。

原発性 続発性
機序 の先天的な欠損・脆弱性にが加わり下垂体をする 下垂体組織が一度損傷され、その跡にが入り込む
契機 特になし(中年以降の女性・肥満・多産に多い) 後、後、後など
関連疾患 頭蓋内圧亢進、特にとの関連が知られる 原因となった下垂体障害そのものが背景にある
機能低下の傾向 が目立つ が主体で、原発性より高頻度になりやすい

でも34%、では63.6%で何らかの機能低下がみられたとする報告があり、続発性のほうが頻度が高い1=無症候のと決めつけず、機能評価まで確認して初めて経過観察でよいと言える。

モダリティと写り方

写り方・評価のポイント
MRI・ 内腔が脳脊髄液と同信号(低信号)になる。で下垂体のの走行を評価する
MRI・ 同じく脳脊髄液と同信号。内部信号の均一性を嚢胞性病変との鑑別に用いる
CT 内腔が脳脊髄液相当の低吸収を示し、慢性例ではの拡大・鞍底の菲薄化を伴うことがある。ただし下垂体実質との評価は劣る

撮像法そのものの一般論(撮像条件、の原理、大きさによる病変の分類など)はに譲る。

リスクを上げる形態

下垂体そのものの所見に加えて、周囲の随伴所見が背景の原因検索を左右する。

  • の狭窄:いずれも頭蓋内圧亢進を示す随伴所見である。を伴わない場合のでは、を含むこの4所見のうち3つ以上を満たすことが支持的な神経画像所見として扱われる2
  • の偏位・単独では説明できない所見で、鞍上部腫瘤や既往の手術・を疑う
  • 視交叉の下方牽引(:高度なで生じうる。の原因になりうるため見逃さない
  • 鞍上部からのへ交通した結果で、髄膜炎のリスクになる

評価の進め方

過去画像がある場合はまず比較し、新出の所見か既知の所見の単なるかを確認する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='empty sella'>空虚トルコ鞍</span>を指摘"] --> B["過去画像があれば必ず比較"]
    B --> C["病歴で続発性の契機を確認<br>(下垂体手術・分娩時大量出血・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pituitary apoplexy'>下垂体卒中</span>の既往など)"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior pituitary'>下垂体前葉</span>機能をスクリーニング"]
    D --> E{"頭蓋内圧亢進を示す所見・症状があるか<br>(頭痛・視力<span class='jp-term jp-term-diagram' title='visual field defect'>視野障害</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='papilledema'>乳頭浮腫</span>など)"}
    E -->|"あり"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fundus examination (fundoscopy)'>眼底検査</span>・眼科紹介へ<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='idiopathic intracranial hypertension (IIH)'>特発性頭蓋内圧亢進症</span>を評価"]
    E -->|"なし・機能正常"| G["経過観察<br>定期的な内分泌検査の反復は要さない"]
    F --> H["内分泌科と連携し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='treatment strategy'>治療方針</span>を決定"]

初診時に下垂体機能が保たれていた患者では、その後の経過で新たに機能低下を来す例は少なく、機能正常が確認できれば定期的な内分泌検査の反復はされない1

⚠️ 紛らわしいもの

  • 「空虚」という名前ほど中身は失われていない。 下垂体組織は残存しており、機能も多くの患者で保たれる。所見の呼び名だけで機能低下を早合点しない。
  • 加齢による生理的な下垂体のを病的なと区別する。境界は曖昧で、臨床的意義に乏しい軽度のまで大げさに読まない。
  • などのとの違いは、内部信号が脳脊髄液と完全に一致するかどうかである。嚢胞性病変は内部にわずかな蛋白成分やレベル形成を伴い、純粋なからずれることが多い。
  • 薄いスライスを外れた撮像面でのは、実際には保たれている下垂体を過小評価させうる。
  • ⚠️ の急性期をと読まない。 出血・梗塞直後は腺腫がむしろ腫大し、周囲へのや出血に伴う信号変化を示す別の像を呈する。は組織が失われたとして数か月以上を経た慢性期に現れる所見であり、急性期のとは時間軸が異なる。

まとめ

  • は診断名ではなく、内陥入による下垂体という画像所見であり、が決めるのは内分泌評価・眼科評価に進むか経過観察かという次の行動である。
  • 原発性(の脆弱性ととの関連)と続発性(手術・分娩時大量出血・後など組織が失われた跡)の区別が、を左右する。
  • 続発性のほうが機能低下の頻度が高く副腎皮質系が主体になりやすいのに対し、原発性ではが目立つ。
  • 拡張・後部平坦化・を伴う場合はを積極的に疑い、眼科評価へ進む。
  • 初診時に下垂体機能が正常であれば、その後新たに機能低下を来す例は稀であり、定期的な内分泌検査の反復は必須ではない。

出典

  1. 1.Revised diagnostic criteria for the pseudotumor cerebri syndrome in adults and children(Neurology・2013)乳頭浮腫や外転神経麻痺を伴わない場合の偽性脳腫瘍症候群(特発性頭蓋内圧亢進症を含む)の診断において、空虚トルコ鞍・後部強膜の平坦化・視神経鞘くも膜下腔の拡張・横静脈洞狭窄という4つの神経画像所見のうち3つ以上を満たすことが支持的基準として用いられることを確認した。閲覧 2026-08-04
  2. 2.Pituitary function in patients with primary and secondary empty sella(Frontiers in Endocrinology・2025)原発性空虚トルコ鞍97例の34%、続発性空虚トルコ鞍22例の63.6%で下垂体前葉機能低下がみられ、原発性では性腺機能低下症、続発性では副腎皮質機能低下が最も頻度の高い異常であったこと、続発性の原因として下垂体腫瘍の手術切除・シーハン症候群・外傷性脳損傷・放射線治療が挙げられていること、初診時に機能が正常であった患者では5年間の経過観察中に新規発症したのはわずか2例のみであったこと、この結果から診断時に機能が保たれ無症候である患者に定期的な内分泌フォローアップを行うことは推奨されないと結論していることを確認した。閲覧 2026-08-04