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Imaging findings · Published

神経根圧迫のMRI所見

Nerve root compression on MRI

別名
神経根圧排所見椎間板ヘルニアによる神経根圧迫nerve root compression
臓器系
運動器神経
科目
Macroscopic Anatomy and Embryology (Macroscopic Anatomy)Neurology
トピック
解剖学 1.4:背部・脊柱:脊髄と髄膜神経内科 G1-25:脊柱管・脊髄の占拠性病変神経内科 G1-38:神経根症候群(頸腕痛・腰坐骨神経痛)
関連疾患
Tarlov嚢胞腰部脊柱管狭窄症馬尾症候群頸髄症頸椎・腰椎椎間板ヘルニアによる神経根症頸椎症性筋萎縮症

🧠 全体像:のが答えるのは「圧迫があるか」ではなく「症状とが一致するか」である。無症候者にもの膨隆・突出は高頻度に存在するため、圧迫所見が写っているというだけで手術適応を決めない。が決めるのは次の一手──保存療法の継続か、か、手術紹介か、か──であり、の(・筋節・反射)と対応づけて初めて画像は意味を持つ。

所見の定義

北米脊椎学会(NASS)・米国脊椎放射線学会(ASSR)・米国神経放射線学会(ASNR)合同タスクフォースによるLumbar Disc Nomenclature 2.0は、の突出の程度を「大きさ」ではなく基部の幅と先端の幅の関係で4段階に分ける1。

  • 膨隆:組織が円周の25%以上にわたって椎体辺縁を超えて広がる状態。ヘルニアには数えない
  • 突出:基部(内で組織が連続する部分の幅)がヘルニア先端の最大幅より広い
  • 脱出:先端幅が基部幅より広い、または内の組織とがない
  • :脱出した組織が母からを失い、遊離した状態

⭐ この区分は基部が狭ければ小さくても脱出、基部が広ければ大きくても突出と判定される。「大きい/小さい」で読み替えない。

部位は中心性・傍中心性・内・外に分け、傍中心性が最多の好発部位である1。

💡 とでは、同じのヘルニアが圧迫する神経根の番号が違う。 脊髄はL1/2でとして終わり、それ以下はとなって下降するため、のをその高さで通過していく神経根()は、そのを出る神経根()より1つになる。したがってのはのを、は同のを圧迫する(L4/5の→L5根、L4/5の→L4根)。はが8対あるのに骨は7個しかないためさらに番号がずれ、C5/6のヘルニアはC6根()を圧迫する。別の・筋節・反射の対応と合わせて読むと、画像のとが一致するかを判断しやすい。

モダリティと写り方

写り方・使いどころ
高信号のを背景に・神経根を明瞭に描出する。ヘルニアの検出そのものに最も有用
(など) ・骨髄のを強調する
(単純) 骨髄脂肪・骨構造の評価、造影前の基準画像
術後のとの鑑別に必須。 はから比較的均一にするが、脱出した自体は無血行性のため辺縁のみが遅れてする
・ 禁忌(など)例の代替。骨性の・石灰化の評価に有利。は信号でなく減弱で評価し、とを区別して記載する
単純X線 での不安定性、、の評価に用いる。神経根そのものは描出できない

リスクを上げる形態

  • 脱出・:基部が狭く、突出したがで移動しうるため、突出より神経根への機械的圧迫が強く、自然吸収も起こりうるが症状がになりやすい
  • 高度なとの:中心性の脱出がの大部分を占めるとのリスクが上がる。円錐・の・の診察と対応させて評価する
  • :ヘルニアでにがあればの指標であり、圧迫の程度だけでなく脊髄そのものの障害を示唆する
  • 複数の圧迫:の絞り込みが難しくなり、との一致をより慎重に確認する必要がある

評価の進め方

進行する麻痺や膀胱直腸障害を伴うの赤旗があるかどうかが最初のになる。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='radiculopathy'>神経根症</span>を疑う症状"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myelopathy'>脊髄症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cauda equina syndrome'>馬尾症候群</span>・感染・腫瘍を示す赤旗があるか"}
    B -->|"ある"| C["緊急<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>"]
    B -->|"ない"| D["保存療法を先行"]
    D --> E{"改善しないまま経過するか"}
    E -->|"はい"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>を施行"]
    E -->|"いいえ"| G["臨床経過で完結"]
    C --> H["過去画像があれば必ず比較"]
    F --> H
    H --> I{"所見の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='responsible level'>責任高位</span>が症状・診察所見と一致するか"}
    I -->|"一致する"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nerve block'>神経ブロック</span>・手術紹介など介入を検討"]
    I -->|"不一致・所見が乏しい"| K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='electrophysiologic study'>電気生理検査</span>や他疾患の検索へ"]

赤旗のない典型例で早期からを撮る必要はなく、保存療法に反応しなければを検討するという位置づけはの診断方針と共通する2。過去画像との比較は新規病変か既存病変の増悪かの判断に必須で、初回だけで完結させない。

⚠️ 紛らわしいもの

  • 無症候者にもの膨隆・変性は高頻度に存在する。 20歳代でも膨隆30%・変性37%が見られ、80歳代では膨隆84%・変性96%に達するとの報告があり、加齢に伴う正常変化としての側面が大きい3。画像で圧迫所見があること自体は手術適応の証明にならない。
  • ・を痛みの原因と即断しない。 のは加齢や機械的負荷でも生じ、の原因かどうかはと合わせて判断する。
  • 術後のとは単純だけでは区別しにくい。 造影でが早期からするのに対し、のは辺縁のみ遅れてするという違いを利用する。
  • 体位で所見が変わりうる。 通常のは臥位で撮影するため、立位・座位で症状が誘発される患者では臥位の画像が症状と一致しないことがある。
  • など神経根近傍に偶発的に見つかる嚢胞性病変を、そのままとしない。多くは無症候のである。⚠️ ただし「正常変異」ではない——大きな嚢胞は腹側を圧迫して筋力低下・を来しうる。

まとめ

  • のが決めるのは良悪性の断定ではなく、症状とが一致するかを踏まえた次の行動である。
  • 膨隆・突出・脱出・は大きさではなく基部幅と先端幅の関係で区別し、部位(中心性・傍中心性・内・外)でどの神経根が当たるかが決まる。
  • とでは同じのヘルニアが圧迫する神経根の番号が異なるため、機械的に当てはめない。
  • 脱出・、高度な、、多椎間の圧迫はリスクを上げる所見である。
  • 無症候者にも所見は高頻度に存在し、画像陽性は手術適応を証明しない。過去画像との比較と、造影による術後瘢痕・の鑑別を欠かさない。

出典

  1. 1.Lumbar Disc Nomenclature 2.0(The Radiology Assistant(Robin Smithuis, Alrijne Hospital)・2017)北米脊椎学会(NASS)・米国脊椎放射線学会(ASSR)・米国神経放射線学会(ASNR)合同タスクフォースによるLumbar Disc Nomenclature 2.0(Fardonら2014)の定義として、膨隆は円周の25%以上に椎間板組織が椎体辺縁を超えて広がる状態でヘルニアに数えないこと、突出は基部(椎間板腔内で組織が連続する部分)の幅がヘルニア先端の最大幅より広い状態、脱出は先端幅が基部幅より広いか椎間板腔内の組織と連続性がない状態、遊離脱出は脱出した組織が母椎間板から連続性を失った状態と定義されること、位置分類として中心性・傍中心性・椎間孔内・椎間孔外があり傍中心性が椎間板ヘルニアの好発部位であることを確認した。閲覧 2026-08-04
  2. 2.ACR Appropriateness Criteria® Low Back Pain: 2021 Update(American College of Radiology・2021)赤旗のない急性腰痛・根性痛では初期MRIを含む画像検査はいずれも「通常不適切」とされること、6週間の最適な保存療法に反応しない手術・介入候補例では単純MRIが「通常適切」とされること、馬尾症候群疑い・悪性腫瘍や感染症疑いでは単純/造影MRIが「通常適切」とされることを確認した。閲覧 2026-08-04
  3. 3.Systematic Literature Review of Imaging Features of Spinal Degeneration in Asymptomatic Populations(American Journal of Neuroradiology・2015)33件の研究・無症候者3,110人を対象としたシステマティックレビューで、椎間板膨隆の有病率が20歳代で30%・80歳代で84%、椎間板突出の有病率が20歳代で29%・80歳代で43%、椎間板変性の有病率が20歳代で37%・80歳代で96%と年齢とともに上昇し、無症候者でも若年層から高頻度に認められることを確認した。閲覧 2026-08-04