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Lab values · Published

直接抗グロブリン試験

Direct antiglobulin test

別名
直接クームス試験DAT
臓器系
血液免疫・膠原病
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 H-05:溶血性貧血
関連疾患
遺伝性・後天性溶血性貧血(遺伝性球状赤血球症・G6PD欠乏症・自己免疫性溶血性貧血・発作性夜間ヘモグロビン尿症)寒冷凝集素症

🧠 全体像は「すでに攻撃を受けている」ことを示す検査である。患者の赤血球そのものを検体にし、表面にすでに結合しているIgGまたは補体C3を検出する——血清中の遊離抗体(まだ結合していない武器)を試薬赤血球で炙り出す間接試験()とは対照的である。輸血前検査で使うのはであり、は溶血性貧血の原因検索に使う。抗IgGと抗C3dのどちらが陽性かで溶血性貧血の型が分かれるという一点が、この検査を読むときの軸になる。

何を測っているか

は患者赤血球を洗浄したうえで、ヒトIgGのおよびC3dに結合する(ポリスペシ:抗IgG+抗C3)を加え、赤血球表面にすでに結合しているIgGまたはC3の有無を凝集の有無で検出する1。ポリスペシ試薬で陽性となった場合、抗IgG単独・抗C3単独のモノスペシ試薬で再検し、どちらが陽性かを確認する。

flowchart TD
    A["患者赤血球を採取・洗浄"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antihuman globulin reagent'>抗ヒトグロブリン試薬</span>(抗IgG+抗C3)を添加"]
    B --> C{"凝集の有無"}
    C -->|"陽性"| D["モノスペシ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Fick'>フィック</span>試薬で再検"]
    D --> E["抗IgG単独陽性"]
    D --> F["抗C3単独陽性"]
    D --> G["抗IgG+抗C3ともに陽性"]
    C -->|"陰性"| H["赤血球表面に抗体・補体の結合なし"]

陽性パターンの読み方——抗IgGか抗C3dか

抗IgGと抗C3dのどちらが陽性かで、の型が分かれる。

病態・機序 パターン 手掛かり
温式 抗IgG陽性(±抗C3d) 37℃で反応、脾でのマクロファージ貪食(
抗C3dのみ強陽性、抗IgGは陰性(最大20%で弱陽性) で誘発、肝Kupffer細胞でのが主座2
薬剤性(機序) 抗IgG陽性・抗C3陰性 高用量投与など3
薬剤性(免疫複合体機序) 抗C3陽性・抗IgG陰性 系など3
児の赤血球で抗IgG陽性 母体由来IgGの
溶血性 抗IgG・抗C3陽性( 輸血歴、反応の

で抗IgGが陽性となるのとは対照的に、では抗IgGは陰性〜最大20%で弱陽性にとどまり、抗C3dのみが強陽性になる——この非対称なパターンが両者を鑑別する最も確実なである2

直接法と間接法の役割分担

検体 赤血球 血清
検出対象 赤血球表面にすでに結合している抗体・補体 血清中の遊離抗体
代表的な適応 溶血性貧血の原因検索(自己免疫性・薬剤性)、輸血後の児側検体 輸血前の、妊婦の抗体管理

原因不明の溶血性貧血の精査では、で赤血球表面の抗体・補体の有無を確認し、パターンによって・薬剤性を振り分ける。遺伝性・後天性溶血性貧血の鑑別では、陽性なら免疫性溶血、陰性なら膜異常・酵素異常・PNHへと検索を進める。

測定上の注意

⚠️ 陽性でも溶血が無いことがある。 健常な非入院者コホートでは溶血の証拠を伴わない陽性が0.1%にとどまるが、入院患者では偽陽性が最大7〜8%に及ぶ1陽性という結果だけで溶血性貧血と診断せず、LDH上昇、低下、増加など溶血の証拠と併せて解釈する。

  • モノスペシ試薬による抗IgG・抗C3の区別が、原因の絞り込みに直結する。ポリスペシ試薬の陽性だけで型を判定しない。
  • 陰性は免疫性溶血を完全には除外しない。の抗体はを下回ることがある。
  • 直近の輸血歴があると、輸血された赤血球由来の反応が結果を複雑にすることがある。

経時変化とモニタリング

は「今、赤血球表面に抗体・補体が結合しているか」という単回のスナップショットであり、陽性度の強弱だけで治療反応やを追う検査ではない。治療効果やの推移は、溶血マーカー(LDH・)の連続測定で追う。

まとめ

  • は赤血球表面にすでに結合している抗体・補体を検出し、血清中の遊離抗体を検出するとは検体・対象が対照的。輸血前検査に使うのはである。
  • 抗IgGと抗C3dのどちらが陽性かで型が分かれる——は抗IgG陽性、は抗C3dのみ陽性で抗IgGは陰性(最大20%で弱陽性)。
  • 薬剤性溶血も機序(抗IgG陽性)と免疫複合体機序(抗C3陽性)でパターンが分かれる。
  • ⚠️ 陽性でも溶血が無いことがある(健常者の一定割合)ため、溶血の証拠(LDH・)と併せて解釈する。
  • 陽性度そのものは溶血の重症度や治療反応の推移を表さない。モニタリングは溶血マーカーの連続測定で行う。

出典

  1. 1.Coombs Test(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)直接抗グロブリン試験(DAT)が赤血球を検体とし、洗浄後に赤血球表面へすでに結合しているIgG・補体C3をポリスペシフィック試薬で検出する一方、間接抗グロブリン試験(IAT)は患者血清中の遊離抗体を試薬赤血球と反応させて検出する対照的な検査であること、DATの適応が自己免疫性溶血性貧血・薬剤性免疫性溶血性貧血・同種抗体による溶血性輸血反応・新生児溶血性疾患・全身性エリテマトーデス(溶血を伴わない例を含む)であること、溶血の証拠を伴わないDAT陽性が健常な非入院者コホートで0.1%、入院患者では最大7〜8%の頻度で認められることを確認した(Interfering Factors節)閲覧 2026-08-12
  2. 2.Drug-induced immune hemolytic anemia — the influence of selected drugs on immunohematology testing(Journal of Transfusion Medicine and Hemostasis・2025)薬剤性免疫性溶血性貧血のハプテン機序ではDATが抗IgG陽性・抗C3陰性、免疫複合体機序では抗C3陽性・抗IgG陰性という対照的なパターンを示すこと(Pathomechanism節)、温式自己免疫性溶血性貧血はDATが抗IgG陽性またはIgG+C3d陽性のパターンを示すこと(Table 1)を確認した閲覧 2026-08-12
  3. 3.Cold agglutinin disease(Hematology, American Society of Hematology Education Program・2016)寒冷凝集素症の直接抗グロブリン試験は抗C3が強陽性で抗IgGは陰性〜弱陽性(最大20%で弱陽性)にとどまるという、温式自己免疫性溶血性貧血とは対照的なパターンを示すことを確認した閲覧 2026-08-12