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Symptoms · Published

毛細血管再充満時間延長

Delayed capillary refill time

臓器系
循環器全身小児
科目
PathophysiologyPediatrics
トピック
病態生理学 2-20:循環性ショックの定義と分類病態生理学 2-23:循環性ショックの進行小児科 2-19:小児ショックの認識・病型・治療小児科 2-20:小児の体液平衡異常、重度脱水と輸液療法
スコア
Gorelick score

🧠 全体像は、指先のを圧迫して虚血にし、解除後に赤みが戻るまでの秒数を測るだけの、器具を要さないベッドサイド所見である。測っているのは末梢の皮膚灌流であり、血圧はまだ保たれているのに末梢だけが先に犠牲にされるショックを、血圧が下がるより前に捉えられる数少ない徴候の1つになる。だからこそ小児の脱水スコア(Gorelick scoreなど)や敗血症の初期評価で繰り返し登場する。

定義と用語の整理

は、またはを白くなるまで数秒間圧迫し、圧迫を解除してから元の色調に戻るまでの時間を秒数で数える所見である。圧迫時間が長いほど再間も延びる傾向があり、測定のたびに同じ強さ・長さで圧迫することが結果のばらつきを抑える上で重要になる。

項目 目安
測定部位 指先()が標準。胸部・足で測ることもある
(指) 2秒以下1
(胸部・足) 4秒まで許容1
判定 圧迫解除後、上記の秒数を超えて赤みが戻らなければ「延長」

💡 部位でが違うことを忘れない。 指で測って2秒を超えていれば異常だが、同じ2秒でも胸部・足で測った値なら正常域に収まる。所見を記録するときは秒数だけでなく測定部位もセットで書く。

小児の脱水評価スコアであるGorelick scoreは、この所見を秒数ではなく「正常」「延長(戻りが遅い、またはほとんど戻らない)」という2値で採点に組み込む2。同じスコアの中でもの項目だけは「2秒超で戻る」と秒数の目安が示されており2、項目ごとに判定の粒度が揃っていない点に注意する。

⚠️ 評価者間のは測定法に依存してばらつく。 ストップウォッチを使った測定は目分量より再現性が高いとされ、圧迫の強さ・長さ、室温、患者の体温もすべて結果に影響する1。1回の測定値だけでを断定しない。

病態生理

flowchart TD
    A["前負荷・心拍出量の低下<br>または血管トーンの異常"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sympathetic nervous system'>交感神経系</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='compensatory'>代償的</span>活性化"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='systemic vascular resistance (SVR)'>全身血管抵抗</span>の上昇<br>末梢血管の選択的収縮"]
    C --> D["皮膚・末梢への血流を犠牲にし<br>脳・心臓への灌流を優先配分"]
    D --> E["末梢皮膚灌流の低下"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='capillary refill time (CRT)'>毛細血管再充満時間</span>の延長"]
    B --> G["心拍数の上昇"]
    C --> H["血圧はしばらく維持される<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='compensated stage'>代償期</span>"]
    H -->|"代償の破綻"| I["血圧低下<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='decompensated stage'>非代償期</span>・遅い徴候"]

延長の背景にあるのは、の代償機序そのものである。のように一次的に心拍出量が落ちる病態では、を上げてどうにか血圧を保とうとする。この血管収縮は全身一律ではなく、生命維持に不可欠な脳・心臓への灌流を優先し、皮膚・骨格筋・消化管などへの血流を先に絞る形で起こる。皮膚は「切り捨てられる」側の代表であり、末梢の延長として最初に表面化する。

小児は成人よりこの血管収縮による代償能力が強く、血圧が正常範囲のまま急激に破綻することがある。つまり延長は、血圧が下がるより前にショックを教えてくれる数少ない所見であり、正常血圧を「循環は安定している」と読み違えないための手がかりになる。

代償が尽きて負のフィードバックが枯渇すると、メディエーターの放出や血管壁自体の酸素不足により血管トーンが維持できなくなり、末梢だけでなく全身の灌流が悪循環的に悪化していく。この段階まで進むと延長はもはや「早期」ではなく、進行したショックの一所見にすぎなくなる。

ショック(など)では、初期に末梢血管が拡張してむしろ皮膚が温かく保たれ、が正常か短縮して見えることがある点に注意する。延長を「ショックがあれば必ず出る所見」として扱わず、皮膚が温かいままが破綻している病型があることを踏まえて評価する。

⚠️ 緊急・見逃してはいけないこと

  • 小児のショック。 血圧が保たれたまま延長・頻脈だけが先行することがあり、「血圧が正常だから大丈夫」と判断すると介入が遅れる。頻脈の減弱・尿量と組み合わせて評価する。
  • の初期。 延長・・皮膚のまだら模様は敗血症の全身・循環所見の1つとして繰り返し評価対象になるが、初期の血管拡張期には温暖な皮膚のままが正常〜短縮して見えることがあり、延長の欠如だけでを除外できない。
  • 重症脱水。 Gorelick scoreでは延長を含む3項目以上の異常で5%以上の脱水を予測する3設計であり、単独の所見だけで脱水の程度を断定しない。
  • ・末梢動脈の急性閉塞。 左右差や限局の延長はではなくそのものを示すことがあり、全身性の所見と混同しない。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiac resynchronization therapy'>CRT</span>延長を認める"] --> B{"全身性か<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='affected limb'>患肢</span>限局か"}
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='affected limb'>患肢</span>限局"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulselessness'>脈拍消失</span>・疼痛・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cold sensation'>冷感</span>の有無を確認"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute limb ischemia'>急性下肢虚血</span>など<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular occlusion'>血管閉塞</span>を疑い緊急で血管評価"]
    B -->|"全身性"| E{"血圧は保たれているか"}
    E -->|"保たれている"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='compensated stage'>代償期</span>ショックを疑う<br>頻脈・意識・尿量を併せて評価"]
    E -->|"低下している"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='decompensated stage'>非代償期</span>ショック<br>原因(出血・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiogenic'>心原性</span>・閉塞性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='distributive'>分布異常性</span>)を検索"]
    F --> H{"皮膚は冷たいか温かいか"}
    G --> H
    H -->|"冷たい・まだら"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vasoconstrictive'>低拍出型</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypodynamic/vasoconstrictive'>血管収縮型</span>を疑う<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypovolemic'>循環血液量減少性</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiogenic'>心原性</span>・閉塞性"]
    H -->|"温かい"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='distributive'>分布異常性</span>(敗血症性など)を疑う<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiac resynchronization therapy'>CRT</span>単独の正常化に頼らない"]

全身性か限局かを最初に分けるのは、前者が循環全体の問題、後者が局所のという別の・対応を要するためである。全身性であれば血圧の維持状況でかを見極め、皮膚が冷たいかまだらか温かいかで)か)かを絞り込む。の初期は皮膚が温かいままが延長しないことがあるため、皮膚所見が温かい方向に振れているからといっての破綻を除外しない。

対症療法の考え方

延長そのものを治療する処置は存在しない。低下という結果を作っている原因(・心拍出量低下・血管トーン異常)を治療し、はその効果を追跡する再評価指標として使う。

の成人を対象としたANDROMEDA-SHOCK試験では、の正常化を指標に輸液・を調整する蘇生戦略と、乳酸値の正常化を指標にする蘇生戦略を比較し、28日死亡率に統計的有意差はなかった(34.9% vs 43.4%、P=.06)が、を指標にした群では72時間後の臓器不全スコアが有意に低く、輸液量・の使用量も少なかった4。この結果は、が乳酸値と並ぶ、あるいはそれより過剰な蘇生を避けられる再評価指標になりうることを示す一方、死亡率そのものを改善するという証明ではない。

小児の脱水・ショックの再評価でも同様に、は単独のではなく、輸液のたびに心拍数・意識・尿量とあわせて確認する複数指標の1つとして使う3

まとめ

  • は指先を数秒圧迫し解除後の再間を測る所見で、は指で2秒、胸部・足で4秒。測定部位を明記しないと解釈を誤る。
  • 血圧が保たれたまま先に異常化しうる、ショックの早期指標である。小児は血管収縮による代償能力が強く、この落とし穴が特に重要になる。
  • 見逃してはいけないのは小児のショック、初期(皮膚が温かくが正常に見えることがある)、重症脱水、そして全身性ではなく限局なら
  • 鑑別は全身性か限局か、血圧が保たれているか、皮膚が冷たいか温かいかの順に絞り込む。
  • 延長そのものへの治療はなく、原因治療の効果を追う再評価指標として使う。ANDROMEDA-SHOCK試験ではを指標にした蘇生が乳酸値指標より過剰な輸液・を避けられる可能性を示したが、死亡率の有意な改善は示されなかった。

出典

  1. 1.The Diagnostic Value of Capillary Refill Time for Detecting Serious Illness in Children: A Systematic Review and Meta-Analysis(PLoS One・2015)小児での毛細血管再充満時間の測定基準として指での測定で2秒以下が正常、胸部・足での測定では4秒まで許容されること、CRT延長は死亡の予測において感度34.6%・特異度92.3%、陽性尤度比4.49であり、延長がある小児は正常な小児に比べ死亡リスクが4倍高いことを確認した。閲覧 2026-08-10
  2. 2.Validity and Reliability of Clinical Signs in the Diagnosis of Dehydration in Children(Pediatrics (American Academy of Pediatrics)・1997)Gorelick scoreが毛細血管再充満時間を含む10項目の臨床徴候の異常の数を数える方式であり、3項目以上の異常で5%以上の脱水を感度87%・特異度82%で予測することを確認した。閲覧 2026-08-10
  3. 3.Comparing the accuracy of the three popular clinical dehydration scales in children with diarrhea(International Journal of Emergency Medicine・2011)Gorelick score 10項目の1つである毛細血管再充満について、判定基準表が秒数を示さず「正常」/「延長、またはほとんど戻らない」の2値のみを与えていることを、原著(Gorelick)を引用した表から確認した。閲覧 2026-08-10
  4. 4.Effect of a Resuscitation Strategy Targeting Peripheral Perfusion Status vs Serum Lactate Levels on 28-Day Mortality Among Patients With Septic Shock: The ANDROMEDA-SHOCK Randomized Clinical Trial(JAMA・2019)敗血症性ショック患者424例を対象に、毛細血管再充満時間の正常化を指標とする蘇生戦略と乳酸値の正常化を指標とする蘇生戦略を比較したRCTで、28日死亡率に統計的有意差はなかったが(34.9% vs 43.4%、HR 0.75、P=.06)、副次評価項目の72時間後SOFAスコアは毛細血管再充満時間群で有意に低かった(平均差-1.00)ことを確認した。閲覧 2026-08-10