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Symptoms · Published

腱黄色腫

Tendon xanthoma

別名
アキレス腱黄色腫tendinous xanthoma
臓器系
内分泌・代謝運動器
科目
Internal MedicineTranslational Medicine and Pathophysiology
トピック
内科学 E-12:糖質代謝異常の血糖管理・肥満・脂質異常症内科学 L-26:脂質異常症病態生理学 I-12:脂質異常症の分類;原発性高リポタンパク血症
関連疾患
脂質異常症脳腱黄色腫症

🧠 全体像:は、血中のLDLが腱の組織内へ入り込み、酸化されたLDLをマクロファージが取り込んでになることで、腱が結節状またはびまん性に太くなる所見である1。⭐ 見つけたら、まず(FH)を考える。ただしが無くてもFHは否定できず、が高くない人にもを起こす病気がある。 日本のFHでは「LDL-C高値」「または」「家族歴」の3項目のうち2項目以上でFHと診断し、はその1項目を占める2。

定義と他の黄色腫との違い

は、脂質を取り込んだが組織に集まったものである。腱に生じるものがで、の型によって背景の脂質異常が違うため、部位と形から病態を絞る。

型 好発部位・形 背景の脂質異常 FHでの扱い
が最多1。・肘・膝などの伸側の腱にも生じる2 (FH)。LDL-Cが高くない・もある 項目の1つ(・肘・膝等の、または)
肘・膝・・臀部など、機械的刺激が加わる部位2 。では若年から著明 と同じ項目に含まれる
上下眼瞼の内眼角寄り 高LDL-C・低HDL-C、正脂血症もある 含まれない。FH以外でも多く特異度が低い2
体幹・・に急速に多発する 著明な

病態生理

flowchart TD
    A["血中の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='LDL cholesterol'>LDLコレステロール</span>が長期に高い<br>(FHなど)"] --> B["LDLが腱の組織内へ入り込む"]
    B --> C["腱内でLDLが<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oxidized LDL'>酸化LDL</span>に変わる"]
    C --> D["腱内のマクロファージが<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oxidized LDL'>酸化LDL</span>を<br>活発に取り込み<span class='jp-term jp-term-diagram' title='foam cells'>泡沫細胞</span>になる"]
    D --> E["コレステロールが沈着した腱が<br>太くなる・結節をつくる(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tendon xanthoma'>腱黄色腫</span>)"]
    E --> F["触診・X線・超音波で肥厚として検出する"]
  • 「をマクロファージが取り込む」この過程は、のと共通する。と心血管疾患がを共有する可能性が指摘されている13。
  • 年齢とともに出現しやすくなる。 遺伝学的に診断されたFH 951人では、の頻度は20〜30歳で6.9%、51〜60歳で38.3%に達し、60歳を超えると低下した4。成人前のは軽度のことが多く、加齢とともに明確になる2。
  • のある人はない人よりLDL-Cが高くHDL-Cが低い。一方、LDL受容体遺伝子の変異の種類による差はなかった4。

診察と評価

方法 要点
触診・ はとして現れることが多く、診断には触診が重要。皮膚・は手・肘・などの伸側に好発する2
X線撮影(厚) 男性8.0 mm以上、女性7.5 mm以上で肥厚あり2
超音波(厚) 男性6.0 mm以上、女性5.5 mm以上で肥厚あり2。日常診療では超音波が第一選択とする総説がある1

⚠️ X線のは変更されている。 以前の日本のガイドライン(2017年版)は男女とも9 mm以上を採っていた。これは1977年に公表された値で、特異度は高いが感度が低いと懸念されたため、日本人986例(遺伝学的にFHと診断された485例を含む)の解析に基づき、2022年の改訂で男性8.0 mm以上・女性7.5 mm以上へ変更され、超音波での基準も採用された。2025年のフォーカスアップデートも同じ値を用いる。9 mmは旧基準として扱い、現行の値を使う2。

⚠️ 触診で見えない・測れない場合がある。 の後は判定が困難になる。FHではによる疼痛を訴えることがあり、の肥厚に石灰化を伴う場合は強くFHを疑う2。

⚠️ 落とし穴と見逃してはいけない病態

  • ⚠️ が無くてもFHは否定できない。 遺伝学的検査でFHと確定した患者の20〜30%はを認めない。が無いときは家族調査や遺伝学的検査が重要になる2。
  • ⚠️ LDL-Cが高くなくてもは起こる。 を持つ原発性として、FHのほかに次の2つを押さえる2。
病気 のほかの手がかり 確認する検査
知能低下、、、、。27α-水酸化酵素欠損による 血中高値。治療可能な疾患のため見逃さない
若年から皮膚・腱のが著明。で、はABCG5またはABCG8 (シトステロール、カンペステロール)の上昇。LDL-Cは正常のことが多いが、中等度以上に上がる例もあり、FHとの鑑別が必要

評価の進め方

flowchart TD
    A["腱に結節・肥厚を認める<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Achilles tendon'>アキレス腱</span>、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dorsum of the hand'>手背</span>、肘、膝)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Tophi'>痛風結節</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rheumatoid nodule'>リウマチ結節</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='giant cell tumor of the tendon sheath'>腱鞘巨細胞腫</span>など<br>他の腫瘤を除外する"]
    B --> C["未治療時のLDL-C・家族歴・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='premature coronary artery disease'>早発冠動脈疾患</span>を確認する"]
    C --> D{"LDL-Cは高いか"}
    D -->|"高い(180 mg/dL以上など)"| E["FHを評価する<br>(3項目中2項目以上で診断)"]
    D -->|"高くない"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebrotendinous xanthomatosis'>脳腱黄色腫症</span>(血中<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cholestanol'>コレスタノール</span>)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='sitosterolemia'>シトステロール血症</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plant sterol'>植物ステロール</span>)を考える"]
    E --> G["家族調査・遺伝学的検査<br>LDL-C低下療法・動脈硬化の評価"]
    F --> H["診断がつけば原疾患の治療<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebrotendinous xanthomatosis'>脳腱黄色腫症</span>は治療可能)"]

心血管リスクの意味

  • 遺伝学的にFHと診断された患者で、心血管疾患の報告はのある群で36.7%、ない群で13.8%だった。51歳未満では相対が男性3.60、女性17.1(が広く精度は低い)まで上がった4。
  • 22報のでは、遺伝学的にFHと確認された患者で、のある群の心血管疾患リスクは約3.2倍(95%2.12〜4.82)だった。と動脈硬化はを共有する可能性がある3。
  • 💡 の存在は、リスクの高いFHを見分ける手がかりになる。 の検出は、より積極的な脂質低下介入が必要だというと読む4。

治療の考え方

  • 治療の中心は、基礎にある異常の治療である。LDLアフェレシスやスタチンなどの治療は、主に原因の脂質異常を標的にしている1。
  • 日本のガイドラインでは、が皮膚・の退縮を促す効果を持つ(QT延長に注意)。FHのLDLアフェレシスは、下で血清が400 mg/dLを超え250 mg/dL以下に下がらず、を伴いが明らかな場合に保険適応となる2。
  • ではが治療薬になる(詳細は疾患ノートに譲る)。

まとめ

  • は、腱内に取り込まれたをが貯めて起こる腱の肥厚・結節で、に最も多く、年齢とともに増える。
  • 診察は触診が基本で、厚はX線で男性8.0 mm以上・女性7.5 mm以上、超音波で男性6.0 mm以上・女性5.5 mm以上を肥厚とする。旧基準の9 mmは使わない。
  • はFHの1項目だが、無くてもFHは否定できない。LDL-Cが高くない場合はとを考える。
  • のあるFHは心血管疾患リスクが高い(で約3.2倍)。見つけたら積極的なLDL-C低下療法と家族調査につなげる。

出典

  1. 1.Pathogenesis, detection and treatment of Achilles tendon xanthomas(European Journal of Clinical Investigation(Tsouli SG, et al.)・2005)抄録(PMID 15816992)で、腱黄色腫がFHに合併することが多いがほかの病態でも生じうること、アキレス腱が最も多い発生部位であること、循環中のLDLが腱に蓄積し酸化LDLへ変化して腱内のマクロファージが能動的に取り込むことで形成されること、触診で発見できるほかに複数の画像検査があり日常診療では超音波が第一選択であること、LDLアフェレシスやスタチンなどの治療は主に基礎にある脂質代謝異常を標的とすることを確認した。閲覧 2026-10-25
  2. 2.成人家族性高コレステロール血症診療ガイドライン フォーカスアップデート2025(日本動脈硬化学会(FH委員会)・2025)PDFを自分で取得して本文を確認した。FHの臨床診断で重要な身体所見が腱黄色腫と皮膚黄色腫で、腱黄色腫はアキレス腱肥厚として現れることが多く診断には触診が重要であること、遺伝学的検査でFHと確定した患者の20〜30%は黄色腫を認めず黄色腫が無くてもFHを否定してはならないこと、成人前の黄色腫は軽度で加齢とともに明確になるがアキレス腱断裂後は判定が困難であること、アキレス腱肥厚にアキレス腱炎の疼痛や石灰化を伴えば強くFHを疑うこと、皮膚・腱黄色腫は手・肘・膝関節などの伸側に好発すること、表1の診断基準で「腱黄色腫(手背・肘・膝等またはアキレス腱肥厚)あるいは皮膚結節性黄色腫」が3項目の1つで皮膚結節性黄色腫に眼瞼黄色腫は含まれず2項目以上でFHと診断し、アキレス腱肥厚はX線撮影で男性8.0 mm以上・女性7.5 mm以上、超音波で男性6.0 mm以上・女性5.5 mm以上と診断すること、従来のX線カットオフ9 mmは1977年に公表された値で特異度が高い一方で感度が低く、日本の986例(遺伝学的FH 485例)の解析に基づき2022年の改訂で男性8.0 mm以上・女性7.5 mm以上へ変更し超音波での評価も採用したこと、FCHLは腱黄色腫を合併しないこと、腱黄色腫を有する原発性脂質異常症としてシトステロール血症(ABCG5/ABCG8、LDL-Cは正常のことが多い)と脳腱黄色腫症(27α-水酸化酵素欠損による胆汁酸合成障害、血中コレスタノール高値で診断)が挙げられること、プロブコールが皮膚・腱黄色腫の退縮を促すこと、FHヘテロ接合体のLDLアフェレシスの保険適応に「黄色腫を伴い冠動脈病変が明らか」という条件が含まれることを確認した。閲覧 2026-10-25
  3. 3.Differences in characteristics and risk of cardiovascular disease in familial hypercholesterolemia patients with and without tendon xanthomas: A systematic review and meta-analysis(Atherosclerosis(Oosterveer DM, et al.)・2009)抄録(PMID 19439299)で、ヘテロ接合体FHの患者を対象に22報を解析した系統的レビュー・メタ解析において、遺伝学的にFHと確認された患者では黄色腫のある群の心血管疾患リスクが約3.20倍(95%信頼区間2.12〜4.82)であること、年齢・男性・LDL-C・トリグリセリドが黄色腫の存在と関連することを確認した。閲覧 2026-10-25
  4. 4.Tendon xanthomas in familial hypercholesterolemia are associated with cardiovascular risk independently of the low-density lipoprotein receptor gene mutation(Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology(Civeira F, et al.)・2005)抄録(PMID 16020744)で、遺伝学的にヘテロ接合体FHと診断された951人のうち278人(29.2%)に腱黄色腫があり、頻度は20〜30歳の6.9%から51〜60歳の38.3%まで年齢とともに増えて60歳超で低下すること、腱黄色腫のある群はない群より総コレステロール(439.0対400.6 mg/dL)・LDL-C(363.1対323.3 mg/dL)が高くHDL-Cが低いこと、LDL受容体遺伝子変異の種類には差がないこと、早発心血管疾患の報告は腱黄色腫のある群で36.7%、ない群で13.8%であること、結論として腱黄色腫の検出はより積極的な脂質低下介入の必要性を示すことを確認した。閲覧 2026-10-25