内科学

内科学 · L-26

脂質異常症

Dyslipidemia

前提:病態
脂質異常症の分類;原発性高リポタンパク血症続発性高リポタンパク血症に関連する症候群脂質代謝に作用する薬・体重管理薬
前提:正常
コレステロールの代謝;血中コレステロール輸送
疾患
メタボリックシンドローム家族性異常βリポ蛋白血症家族性高カイロミクロン血症家族性高トリグリセリド血症家族性複合型高脂血症脂質異常症多因子性カイロミクロン血症症候群脳腱黄色腫症

🧠 全体像:は、トリグリセリド、、などの異常で、治療の中心は低下による予防である。単一の「正常値」で治療を決めず、既往、糖尿病、、(FH)と総リスクから目標・治療強度を決める。

評価

  • 脂質profile:、、、トリグリセリド、。高TGや極低では直接またはapoBを検討する。
  • 二次性原因:、糖尿病、・ネフローゼ、胆汁うっ滞、肥満、飲酒、妊娠、薬剤。
  • 家族歴、若年、、からFHを疑い、などの加点方式で評価する。直接スクリーニングでの頻度はおよそ1/200で、従来言われた1/500より高い1。
  • は遺伝的に規定されるため、成人で少なくとも生涯1回測定しリスクとして扱う。この「生涯1回」は2019年版のクラスIIa・Cの推奨で、180 mg/dL(430 nmol/L)を超える遺伝性の例を拾うことが目的として挙げられている2。2025年フォーカスドアップデートが新たに置いた推奨は測定の頻度ではなく判定の閾値で、50 mg/dL(105 nmol/L)を超えるは全成人で心血管リスクの増強因子とみなす(クラスIIa・B)とした3。

主な表現型

表現型 主な原因・危険
優位高値 、FH、、ネフローゼ。リスク
高トリグリセリド 肥満、糖尿病、飲酒、薬剤、家族性。で
混合型 、糖尿病、
低 インスリン抵抗性、喫煙、高TG。を薬で上げること自体をにしない

Fredrickson表現型分類

は、増加するリポ蛋白のパターンをI〜V型で表す歴史的な表現型分類である。現在の診療では、apoB、、TG、家族歴と臨床リスクを直接評価するため、この型だけで治療を決めない。

型 主に増えるリポ蛋白 代表的病態・機序 臨床の手掛かり
I ;またはapoC-II機能不全など 著明高TG、反復性膵炎、腹痛、、肝脾腫、。は目立たない
IIa ;受容体/apoB関連 、、著明高、
IIb + コレステロールとTGがともに上昇し、を来し得る
III (・) (dysbetalipoproteinemia);apoE異常 、結節性/、
IV 家族性、肝過剰産生 高TG、、、では
V + 混合型 著明高TG、、腹痛・膵炎、

代謝症候群

は、、高血糖、高TG、低が集積し、2型糖尿病とのリスクが高い状態である。 1999基準では、/糖尿病/インスリン抵抗性に加えて、血圧≥140/90 mmHg、TG ≥1.7 mmol/L、低、、のうち2項目以上を用いる。これは歴史的基準であり、現在は2009年の基準——を必須項目とせず、・血圧・・TG・の5項目中3項目で診断し、のだけは国・人種別の基準を使い、残り4項目は単一のカットポイントを用いる——が広く使われる4。いずれにせよ採用基準を明示し、構子を個別に治療する。

LDL-C目標の考え方

/EASではリスクが高いほど低い目標を用いる。代表的に、非常に高リスクではベースラインから50%以上低下かつ <1.4 mmol/L(55 mg/dL未満)、高リスクでは50%以上低下かつ <1.8 mmol/L(70 mg/dL未満)を目指す2。は <2.6 mmol/L(100 mg/dL未満)、低リスクは <3.0 mmol/L(116 mg/dL未満)で、この4段階の目標値は2019年版から2025年のフォーカスドアップデートまで変わっていない3。

反復イベントではさらに低い目標を検討する。2019年版は、最大量のスタチンを基礎とする治療下で2年以内に2回目の(1回目と同じ種類とは限らない)を来した例に <1.0 mmol/L(40 mg/dL未満)を考慮してもよいとしていた(クラスIIb・B)2。⚠️ この40 mg/dL未満という目標は2025年に新設されたものではない。 2025年のフォーカスドアップデートで変わったのは、のがこの層に「極めて高いリスク」という区分名(図中の表記は Extreme risk)を与え、対象に多(例:冠動脈と末梢動脈)の動脈疾患を加え、反復イベント側の「2年以内」という限定を図の文言から外したことである3。⚠️ ただしこの区分は図にしか現れず対応する推奨表は置かれておらず、推奨の強さは「考慮してもよい」(クラスIIb)のままである。

⚠️ 地域指針で目標値・器が異なるため、採用基準を明示する。 米国の指針は長らく「目標値ではなく低下率と閾値」で組み立てられていたが、2026年のACC/AHA/多学会ガイドラインが2018年の血液コレステロールガイドラインを廃止・置換し、だけでなくと高値を含む「」全体を扱う枠組みに変わった5。欧米いずれの数値を答えるべきかは設問の出典によるので、どちらの体系に基づくかを先に決めてから数値を出す。

LDL-C低下治療

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atherosclerotic cardiovascular disease'>ASCVD</span>リスク・二次性原因を評価"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='maximum tolerated dose, MTD'>最大耐用量</span>スタチン+生活介入"]
    B --> C{"目標達成?"}
    C -->|"いいえ"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ezetimibe'>エゼチミブ</span>追加"]
    D --> E{"なお未達?"}
    E -->|"はい"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proprotein convertase subtilisin/kexin type 9'>PCSK9</span>阻害薬/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inclisiran'>インクリシラン</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bempedoic acid'>ベンペド酸</span>を個別選択"]
    C -->|"はい"| G["継続・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adherence'>アドヒアランス</span>と安全性確認"]

は、を中心に選び、筋症状、相互作用、肝疾患を評価する。上昇のない筋症状もあり、・再投与・別スタチン・で真の不耐性を検証する。、モノクローナル抗体(・)、、をリスク・必要低下量・費用に応じ追加する。⭐ 順序ではなく「目標までの残り低下量」で決める。 スタチンでも目標に届かない距離が大きいほど、で止めず系まで一気に進める判断になる。「極めて高いリスク」(反復する、多の動脈疾患)では 40 mg/dL未満まで下げることを考慮してもよい(クラスIIb)3。

高トリグリセリド血症

二次性原因、特に飲酒・高血糖・薬剤を修正する。(概ね ≥5.6 mmol/L、特に≥10 mmol/L)では膵炎予防を優先し、超、、、、処方オメガ3を検討する。高リスクでスタチン治療中もTGが中等度高値なら、を適格例で考える。を「を上げる薬」として一律追加しない。

生活介入

  • 飽和脂肪酸/を減らし、、ナッツ、魚、不飽和脂肪を増やす。
  • 体重減少、週150分程度の運動、禁煙、飲酒削減を行う。
  • 薬を開始しても生活介入を継続し、4〜12週後に脂質と服薬を再評価する。

まとめ

  • 脂質治療は単独値ではなく、・糖尿病・・FHを含む総リスクで決める。
  • スタチンを軸に、系などを必要低下量に応じ追加する。
  • 高TGでは二次性原因を除き、ではより先に膵炎予防を行う。

出典

  1. 1.Familial hypercholesterolaemia is underdiagnosed and undertreated in the general population: guidance for clinicians to prevent coronary heart disease: consensus statement of the European Atherosclerosis Society(European Atherosclerosis Society・2013)家族性高コレステロール血症の臨床診断に用いる基準(家族歴・身体所見・LDL-C値・遺伝子検査への加点方式)と、直接スクリーニングでの頻度がおよそ1/200であったこと。閲覧 2026-08-25
  2. 2.2019 ESC/EAS Guidelines for the management of dyslipidaemias: lipid modification to reduce cardiovascular risk(European Heart Journal(Mach F, et al., 2020, DOI 10.1093/eurheartj/ehz455)・2020)ジュネーヴ大学のリポジトリ archive-ouverte.unige.ch から誌上版PDF(80頁)を自分で取得して確認した。超高リスクではLDL-Cをベースラインから50%以上下げたうえで1.4 mmol/L(55 mg/dL)未満(二次予防はI・A、FHのない一次予防はI・C、FHのある一次予防はIIa・C)、高リスクでは50%以上低下かつ1.8 mmol/L(70 mg/dL)未満(I・A)、中等度リスクは2.6 mmol/L(100 mg/dL)未満、低リスクは3.0 mmol/L(116 mg/dL)未満とする層別目標を定めたこと。逐語で `For patients with ASCVD who experience a second vascular event within 2 years (not necessarily of the same type as the first event) while taking maximally tolerated statin-based therapy, an LDL-C goal of <1.0 mmol/L (<40 mg/dL) may be considered.` とあり、Class IIb・Level B で、40 mg/dL未満という目標がこの2019年版に既に存在すること。ただしこの版に `polyvascular` と `extreme risk` は全文0件で、治療目標の図(Figure 4B)は低・中等度・高・超高の4段階しか持たないこと。Lp(a) の「成人で生涯に少なくとも1回の測定を考慮する」はこの2019年版のClass IIa・Level C で、180 mg/dL(430 nmol/L)超の遺伝性著明高値例の同定が目的と明記されていること閲覧 2026-09-17
  3. 3.2025 Focused Update of the 2019 ESC/EAS Guidelines for the management of dyslipidaemias(European Society of Cardiology / European Atherosclerosis Society・2025)Internet Archive 経由(web.archive.org の id_ 付きURLが academic.oup.com の advance-article-pdf を watermark02.silverchair.com へ転送する)で advance article 版PDF(20頁)を自分で取得して確認した。本文に `It is important to note that the LDL-C treatment goals (Figure 1) and therapeutic guidance (Table 4) for persons in each risk category have not changed from the 2019 ESC/EAS Guidelines.` とあり、4段階の目標値が2019年版から不変であること。Figure 1 がその下に `Extreme risk` という区分を置き、`Patients with ASCVD who experience recurrent vascular events while taking maximally tolerated statin-based therapy` と `Patients with polyvascular (e.g. coronary and peripheral) arterial disease` を対象として<1.0 mmol/L(<40 mg/dL)をClass IIbで示すこと。⚠️ この区分は Figure 1 にしか現れず、対応する Recommendation Table は無いこと。Recommendation Table 4 の新推奨は `Lp(a) levels above 50 mg/dL (105 nmol/L) should be considered in all adults as a CV risk-enhancing factor, with higher Lp(a) levels associated with a greater increase in risk.` でClass IIa・Level B であり、「生涯に少なくとも1回の測定」の側は本文が2019年版(参考文献1)に帰属させていること閲覧 2026-09-17
  4. 4.Harmonizing the metabolic syndrome: a joint interim statement of the International Diabetes Federation Task Force on Epidemiology and Prevention; National Heart, Lung, and Blood Institute; American Heart Association; World Heart Federation; International Atherosclerosis Society; and International Association for the Study of Obesity(Circulation・2009)腹囲(中心性肥満)を必須項目とせず、5項目中3項目の異常でメタボリックシンドロームと診断すること、腹囲のカットオフは国・人種ごとの基準を用い、それ以外の4項目は単一のカットポイントを用いることで各団体が合意したこと。閲覧 2026-08-25
  5. 5.2026 ACC/AHA/AACVPR/ABC/ACPM/ADA/AGS/APhA/ASPC/NLA/PCNA Guideline on the Management of Dyslipidemia: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Joint Committee on Clinical Practice Guidelines(Circulation(American College of Cardiology / American Heart Association 合同委員会)・2026)2026年に公表されたこのガイドラインが「2018 AHA/ACC Guideline on the Management of Blood Cholesterol」を廃止・置換したこと、対象が高コレステロール血症だけでなく高トリグリセリド血症とリポ蛋白(a)高値を含む脂質異常症全般の評価・管理・モニタリングに拡張されたこと、系統的文献検索が2024年10〜12月に行われたことを抄録で確認した。個々の目標値・推奨クラスは本文を参照する必要がある。閲覧 2026-08-25