内科学

内科学 · L-27

肥満症

Obesity

前提:病態
脂質代謝に作用する薬・体重管理薬
前提:正常
エネルギー平衡と食物摂取の調節
疾患
肥満症臨床的肥満

🧠 全体像:肥満は過剰な脂肪蓄積が健康を損なう慢性・再発性疾患で、意思の弱さではなく遺伝、神経内分泌、薬剤、睡眠、心理社会、食環境の相互作用で生じる。とだけでなく、代謝・心血管・呼吸・運動器・精神への影響を評価し、生活支援、薬物、を長期的に組み合わせる。

診断と分類

BMIは 体重(kg)÷身長²(m²) で、成人では <18.5、標準域18.5–24.9、 25.0–29.9、肥満 ≥30 kg/m² とする。

分類
肥満class I 30.0–34.9
肥満class II 35.0–39.9
肥満class III ≥40

欧州系成人のでは、女性≥80 cm・男性≥94 cmをリスク増加、女性≥88 cm・男性≥102 cmをさらに高いリスクの目安とする基準がある。は民族・地域で異なり、アジア人などではより低い値を用いるため、採用する基準を明示する。

は、浮腫、、民族差を反映しない。、体重推移、血圧、、脂質、肝機能、睡眠時無呼吸、身体機能を併用する。とくに 25〜34.9 kg/m²の範囲と南アジア系などの集団では誤分類が起こりやすく、に加えて年齢・性別・民族に応じた基準の・/・/身長比のいずれかで過剰脂肪を確認することが勧められる1。

💡 2025年に「」という新しい枠組みが提案された。 Lancet Diabetes & Endocrinology の国際委員会は、だけで肥満を診断するのをやめ、まず過剰脂肪を確認(体脂肪の直接測定、またはに加えて上記の指標を少なくとも1つ。 40 kg/m²超なら追加確認は不要)、次に臓器・組織の機能低下または年齢補正したの制限があるかを確認する2段階を提唱した2。機能障害があるものを(慢性の全身性疾患)、無いものを(リスク状態)と呼び分け、前者には速やかな治療を、後者には健康と経過観察を当てる2。成人ののは18項目からなる。単独は集団レベルのリスク評価・疫学研究・スクリーニングに限って使うべき、というのがこの枠組みの中心である2。詳細はのノートに譲る。

病態

視床下部の、、の、腸管・脂肪組織ホルモン、が摂食と消費を調節する。減量後は食欲増加と消費低下が起こるため、維持には長期治療が必要である。

合併症

  • 代謝・心血管:2型糖尿病、高血圧、脂質異常、、心不全、心房細動、VTE。
  • 呼吸:、。
  • 肝・消化器:、GERD、胆石。
  • 運動器:、、低下。
  • 生殖・内分泌:、不妊、妊娠合併症、。
  • 悪性腫瘍:子宮内膜、閉経後乳房、大腸、腎、膵など。
  • 心理社会:うつ、不安、摂食障害、、医療格差。

治療

flowchart TD
    A["合併症・原因薬・生活背景を評価"] --> B["栄養・活動・行動・睡眠支援"]
    B --> C{"健康改善が不十分?"}
    C -->|"はい"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-obesity drug'>抗肥満薬</span>を追加"]
    D --> E{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='severe obesity'>高度肥満</span>/代謝疾患?"}
    E -->|"はい"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='metabolic and bariatric surgery'>代謝・肥満外科</span>を評価"]
    C -->|"いいえ"| G["維持支援・再発予防"]

生活・行動療法

個別化したエネルギー赤字を作り、蛋白・を確保する。週150分以上のと筋力運動を目標に漸増し、自己記録、睡眠、ストレス、環境整備を支援する。5〜10%減量でも血糖、血圧、、睡眠時無呼吸が改善し得る。

薬物療法

一般に ≥30、または≥27で合併症がある場合、生活支援に追加する1。、、、/、/、などから、糖尿病、CVD、胆道・膵疾患、妊娠可能性、精神・薬物歴、費用を踏まえ選ぶ。糖尿病を伴う・肥満では、減量効果の大きいまたはを優先する1。

⭐ 減量幅の実数を覚えておく。 糖尿病のない・肥満成人1,961例のSTEP 1試験では、週1回2.4 mgの68週後の体重変化が平均マイナス14.9%(はマイナス2.4%、群間差マイナス12.4ポイント)だった3。同じく糖尿病を除く2,539例のSURMOUNT-1試験では、週1回の72週後の体重変化が5 mgでマイナス15.0%、10 mgでマイナス19.5%、15 mgでマイナス20.9%(はマイナス3.1%)で、15 mg群の57%が20%以上の減量に達した4。糖尿病がある人での減量幅は、同じ体重の糖尿病がない人より小さくなる点に注意する1。

⚠️ 中止すると戻る。は「長期治療」である。 開始後3か月で5%超の減量が得られた例は長期継続し、5%未満なら血糖反応・・他の選択肢・治療負担を踏まえて継続の是非を検討する1。・を急に中止すると、1年以内に減量分の2分の1〜3分の2が戻り、心血管代謝の改善も失われる1。妊娠中・妊娠希望中は禁忌で、はにより経口の効果を下げうるため、開始後および各増量後の4週間は非経口避妊法かの併用を要する1。

代謝・肥満外科

2022 ASMBS/IFSOではBMI ≥35で合併症の有無を問わず推奨し、 30〜34.9でも代謝疾患または非で十分な改善がない場合に検討する5。糖尿病側から見ると適応はさらに下がり、ADAは2型糖尿病では** ≥30.0(アジア系米国人では ≥27.5)**でを考慮するとしている1。術式選択、、骨、妊娠、心理、長期補充・追跡を多職種で管理する。

内視鏡・デバイス治療

などの内視鏡的減量治療は、生活・薬物療法と外科の間を埋める選択肢となり得る。、胃内容吸引システム、電気刺激機器なども開発・使用されてきたが、長期効果、合併症、再介入、地域の承認状況が異なる。いずれも単独で完結する治療ではなく、肥満診療チームによる選択と長期生活支援を要する。

まとめ

  • 肥満は慢性・再発性疾患であり、に、合併症、機能を組み合わせて評価する。
  • 生活支援を土台に、適応があればを長期治療として追加する。
  • の現行適応は古い 40/35基準だけに限定されない。

出典

  1. 1.8. Obesity and Weight Management for the Prevention and Treatment of Diabetes: Standards of Care in Diabetes–2026(American Diabetes Association・2026)BMIが脂肪組織量の完全な指標ではなく脂肪分布も機能も測れないこと、筋肉量の多い人・少ない人および体組成と心血管代謝リスクが異なる集団で誤分類が起こりやすいこと、特にBMI 25〜34.9 kg/m²の例や南アジア系ではBMIに加えて年齢・性別・民族に応じたウエスト周囲径・ウエスト/ヒップ比・ウエスト/身長比のいずれかで過剰脂肪を確認することが推奨されること、抗肥満薬の米国での承認適応がBMI 30 kg/m²以上またはBMI 27 kg/m²以上で肥満関連合併症を1つ以上もつ場合であること、推奨8.18で糖尿病を伴う過体重・肥満では減量効果の大きいセマグルチドまたはチルゼパチドを優先すること(グレードA)、開始後3か月で5%超の減量が得られた例は長期継続し、5%未満なら継続の是非を再検討すること、セマグルチド・チルゼパチドの突然の中止で1年以内に減量分の2分の1〜3分の2が戻り心血管代謝の改善も失われること、チルゼパチドは胃排出遅延により経口ホルモン避妊薬の効果を下げうるため開始後および各増量後4週間は非経口法または併用のバリア法を要すること、推奨8.22で2型糖尿病ではBMI 30.0 kg/m²以上(アジア系米国人では27.5 kg/m²以上)で代謝外科手術を考慮すること(グレードA)を確認した。閲覧 2026-08-25
  2. 2.Definition and diagnostic criteria of clinical obesity(Lancet Diabetes & Endocrinology(国際委員会報告)・2025)BMI単独での診断をやめ、体脂肪の直接測定またはBMIに加えた身体計測指標(ウエスト周囲径、ウエスト・ヒップ比、ウエスト・身長比)の少なくとも1つで過剰脂肪を確認したうえで、臓器・組織の機能低下または年齢補正した日常生活動作の制限があるものを「臨床的肥満」(慢性の全身性疾患)、機能が保たれているものを「前臨床的肥満」(リスク状態)と区別する診断枠組みを提唱したこと、BMIが40 kg/m²を超える場合は追加確認を要さないこと、BMI単独は集団レベルのリスク評価・疫学研究・スクリーニングに限って用いるべきとすること、成人の臨床的肥満の診断基準が18項目であること、臨床的肥満には速やかな根拠に基づく治療を、前臨床的肥満には健康カウンセリングと経過観察を行うこと。閲覧 2026-08-25
  3. 3.Once-Weekly Semaglutide in Adults with Overweight or Obesity(The New England Journal of Medicine(STEP 1 試験、NCT03548935)・2021)糖尿病のないBMI 30以上(体重関連合併症が1つ以上あればBMI 27以上)の成人1,961例を2対1で無作為化し、週1回皮下セマグルチド2.4 mgを生活介入に追加した68週後の体重変化が平均マイナス14.9%、プラセボがマイナス2.4%で、群間差はマイナス12.4ポイント(95%CI マイナス13.4〜マイナス11.5)であったこと。閲覧 2026-08-25
  4. 4.Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity(The New England Journal of Medicine(SURMOUNT-1 試験)・2022)糖尿病を除くBMI 30以上(体重関連合併症が1つ以上あればBMI 27以上)の成人2,539例を週1回皮下チルゼパチド5・10・15 mgまたはプラセボへ1対1対1対1で無作為化し、72週後の平均体重変化がそれぞれマイナス15.0%・マイナス19.5%・マイナス20.9%、プラセボがマイナス3.1%であったこと、5%以上減量した割合が85〜91%対プラセボ35%、20%以上減量した割合が10 mg群50%・15 mg群57%対プラセボ3%であったこと、主な有害事象は用量漸増期に多い軽〜中等度の消化器症状であったこと。閲覧 2026-08-25
  5. 5.2022 American Society of Metabolic and Bariatric Surgery (ASMBS) and International Federation for the Surgery of Obesity and Metabolic Disorders (IFSO) Indications for Metabolic and Bariatric Surgery(Obesity Surgery・2023)BMI 35 kg/m²超では併存疾患を問わず手術を推奨し、BMI 30〜34.9 kg/m²では代謝疾患を伴う場合に検討する適応基準。閲覧 2026-08-25