内科学

内科学 · L-28

不随意体重減少の鑑別診断

Differential diagnosis of involuntary weight loss

前提:病態
腫瘍の宿主への影響(悪液質・傍腫瘍症候群)
前提:正常
飢餓-摂食サイクルとその調節
疾患
サルコペニア悪液質
症状
体重減少
スコア
SARC-F

🧠 全体像:意図しない体重減少は、通常6〜12か月で元体重の5%以上を目安に臨床的意義を判断する1。癌だけでなく、摂取不足、、代謝亢進、慢性炎症、臓器不全、薬剤・物質、精神・認知・社会要因を機序別に評価する。

まず確認すること

  • 過去の実測体重、衣服サイズ、浮腫・利尿による見かけの変化を確認する。
  • 減量、食欲、食事量、嚥下、歯・口腔、悪心、便通、腹痛を聞く。
  • 発熱・、咳、出血、疼痛、・振戦、多尿・口渇、抑うつ、認知、薬剤、飲酒・物質、生活困窮を確認する。
  • 発熱、低血圧、脱水、急速な衰弱、進行する嚥下障害、消化管出血、局在は緊急評価する。

機序別鑑別

機序 主な原因
摂取低下 うつ、認知症、薬剤、口腔・嚥下障害、悪心、疼痛、・食料不安
吸収・喪失 セリアック病、、、、、腎・糖尿病性
代謝亢進 甲状腺機能亢進、未管理糖尿病、、、癌
・炎症 癌、結核、、心内膜炎、自己免疫疾患
臓器不全 心不全、、、肝硬変、神経筋疾患
薬剤・物質 関連薬、、stimulant、、ジゴキシン、アルコール、など

高齢者では「Meals on Wheels」のように、薬剤、情緒、嚥下、口腔、認知、甲状腺、消化器、慢性疾患、社会資源を漏れなく見る。

💡 「癌が何割か」は数字で押さえておく。 意図しない体重減少で外来診断ユニットへ紹介された2,677例(平均64.4歳)の前向きコホートでは、消化器の悪性疾患16%、消化器の非悪性疾患17%、精神要因16% が三大原因で、癌は原因の一部にすぎなかった2。⭐ 65歳以上では、口腔の問題が非血液系悪性腫瘍に次ぐ第2の原因であった2。歯・・・嚥下は「見落とすと最も惜しい」項目である。

診察

体重・・筋量、口腔・歯、甲状腺・リンパ節、皮膚、心肺、腹部腫瘤・肝脾、直腸/乳房/前立腺を適応に応じ評価する。・、、歩行でをみる(はスクリーニング→筋力評価→筋量での確認→重症度判定という4段階で進める)3。浮腫があると栄養不良を体重が隠す。

💡 体重減少そのものは診断名ではない。 GLIM基準はの診断を「が確認されたツールでのリスクスクリーニング」→「診断と重症度判定」の2段階に分け、表現型3項目(意図しない体重減少・低・筋量減少)と病因2項目(摂取量または吸収の低下・炎症または疾病負荷)から、それぞれ少なくとも1項目を満たすことを診断の条件とする1。体重が減った事実だけでは病因側が埋まらないため、「なぜ減ったか」の機序を必ず1つ指名する。

検査の進め方

flowchart TD
    A["実測で有意な体重減少を確認"] --> B["病歴・薬剤・食事・心理社会・全身診察"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complete blood count'>CBC</span>・生化学・肝腎機能・Ca・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyroid-stimulating hormone'>TSH</span>・尿"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='C-reactive protein'>CRP</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='erythrocyte sedimentation rate'>ESR</span>、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human immunodeficiency virus'>HIV</span>、胸部X線、便・消化器検査を適応追加"]
    D --> E{"手掛かりあり?"}
    E -->|"はい"| F["標的画像・内視鏡・専門検査"]
    E -->|"いいえ"| G["栄養介入+短期体重追跡・再評価"]

年齢相応のが未実施なら補う。全例へ無差別にや全身を行うより、病歴・診察・基本検査で標的化する。初期評価陰性でも減少が続く、赤旗が出る、基本検査異常がある場合は、内視鏡、感染・内分泌検査を拡張する。⚠️ 初回評価で原因不明でも、そこで終わりにしない。 前述のコホートでは初回評価で原因不明だった375例(全体の14%)のうち、紹介後28か月以内に悪性腫瘍が判明したのは19例(原因不明例の5%)にとどまったが、そのうち14例は剖検で初めて診断がついた2。原因不明の体重減少は短期的な緊急事態ではない一方、悪性腫瘍が死亡まで検出されないことがあるため、年1回程度の長期経過観察を続ける2。

管理

原因治療と同時に、、嚥下・歯科、、社会支援を組み合わせる。癌に伴う場合、は「通常の栄養サポートでは完全には戻せないの持続的減少」と定義され、**体重減少5%超、または <20 kg/m² もしくはが既にある場合の体重減少2%超がである4。・・という病期を経て進むため、⭐ **栄養だけで押し返せる段階のうちに介入するという発想が要る。評価は食欲低下、、筋量と筋力、機能・心理社会的障害の4領域で行う4。高エネルギー・高蛋白の、症状緩和、筋力運動を用いる。単なるは血栓、浮腫、せん妄などの害と比較し、原因評価の代わりにしない。

まとめ

  • 6〜12か月で5%以上の不随意減少は重要で、実測値と浮腫・利尿を確認する。
  • 癌だけでなく、摂取、吸収、代謝、炎症、臓器不全、薬剤、心理社会要因を機序別に検索する。
  • 基本評価から標的検査へ進み、原因治療と栄養・機能・社会支援を並行する。

出典

  1. 1.GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition - A consensus report from the global clinical nutrition community(Clinical Nutrition(Global Leadership Initiative on Malnutrition)・2019)低栄養の診断を2段階(妥当性の確認された任意のツールによるリスクスクリーニング、続いて診断と重症度判定)で行うこと、診断項目が表現型3項目(意図しない体重減少、低BMI、筋量減少)と病因2項目(摂取量または吸収の低下、炎症または疾病負荷)からなること、診断には表現型・病因それぞれ少なくとも1項目を要すること、表現型の程度により中等度(ステージ1)と重度(ステージ2)に分けることを確認した。閲覧 2026-08-25
  2. 2.Unintentional weight loss: Clinical characteristics and outcomes in a prospective cohort of 2677 patients(PLOS ONE・2017)意図しない体重減少を主訴に外来診断ユニットへ紹介された2,677例(平均64.4歳、男性51%)の前向きコホートで、原因の内訳が消化器の非悪性疾患17%・消化器の悪性疾患16%・精神社会的要因16%であったこと、65歳以上では口腔の問題が非血液系悪性腫瘍に次ぐ第2の原因であったこと、初回評価で原因不明だった375例(全体の14%)のうち紹介後28か月以内に悪性腫瘍が判明したのは19例(原因不明例の5%)にとどまり、そのうち14例は剖検で診断がついたこと、したがって原因不明の体重減少は短期的な緊急事態ではないが悪性腫瘍が死亡まで検出されないことがあるため年1回程度の長期経過観察を要すると結論したことを確認した。閲覧 2026-08-25
  3. 3.Sarcopenia: revised European consensus on definition and diagnosis(European Working Group on Sarcopenia in Older People 2 (EWGSOP2) / Age and Ageing・2019)サルコペニアの評価をFind(SARC-Fなどの質問票によるスクリーニング)・Assess・Confirm・Severityの4段階アルゴリズムで進めること。閲覧 2026-08-25
  4. 4.Definition and classification of cancer cachexia: an international consensus(The Lancet Oncology(国際コンセンサスパネル)・2011)癌悪液質を「通常の栄養サポートでは完全には回復せず、進行性の機能障害へ至る、骨格筋量の持続的減少(脂肪量減少を伴うことも伴わないこともある)を特徴とする多因子性症候群」と定義したこと、病態が摂取低下と代謝異常の組み合わせによる負の蛋白・エネルギー平衡であること、診断基準が体重減少5%超、またはBMI 20 kg/m²未満もしくはサルコペニアが既にある場合の体重減少2%超であること、前悪液質・悪液質・不応性悪液質という病期を経て進行しうること、重症度をエネルギー・蛋白の枯渇度(BMI)と進行中の体重減少の程度で分類すること、評価すべき領域が食欲低下・異化亢進・筋量と筋力・機能および心理社会的障害であることを確認した。閲覧 2026-08-25