内科学

内科学 · L-29

甲状腺機能亢進症

Hyperthyroidism

前提:病態
甲状腺機能亢進症の発症機序と症状甲状腺・抗甲状腺薬
前提:正常
甲状腺ホルモンの産生と作用・分泌調節
疾患
アミオダロン誘発性甲状腺中毒症バセドウ病一過性妊娠性甲状腺機能亢進症甲状腺ホルモン抵抗性中毒性多結節性甲状腺腫
症状
振戦
スコア
Burch-Wartofskyスコア

🧠 全体像:は組織が過剰な甲状腺ホルモンに曝露された状態で、甲状腺が過剰合成する甲状腺機能亢進症はその一部である。・・T3で生化学的に確認し、TRAbと放射性ヨウ素摂取/血流からGraves病、、甲状腺炎、外因性を分ける。

原因

機序 原因 取込みの特徴
合成亢進・びまん性 Graves病 びまん性高取込み、TRAb陽性
合成亢進・結節性 、 局所または斑状高取込み
ホルモン漏出 無痛性・産後・、 低取込み
外因性・ヨウ素 甲状腺ホルモン摂取、、造影剤 通常低取込み
中枢性 産生、 が抑制されない

臨床像

  • 体重減少、暑がり、発汗、振戦、、頻回便、、不眠・不安。
  • 頻脈、、心房細動、心不全、骨量低下。
  • Graves病特異的所見:、、。
  • 高齢者では振戦・興奮が乏しく、体重減少、心房細動、抑うつ・だけのことがある。

診断

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyrotoxicosis'>甲状腺中毒症</span>を疑う"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyroid-stimulating hormone'>TSH</span>測定"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyroid-stimulating hormone'>TSH</span>低値:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='free thyroxine'>FT4</span>・T3"]
    C --> D["TRAb"]
    D -->|"陽性"| E["Graves病"]
    D -->|"陰性/不明"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='uptake'>摂取率</span>スキャンまたはドプラ"]
    F --> G["高取込み:合成亢進"]
    F --> H["低取込み:甲状腺炎・外因性"]

は結節・構造と血流評価に有用だが、全の「」ではない。外因性では低値、甲状腺炎では/・疼痛が手掛かりになる。妊娠・授乳中はを用いない。

治療

  • 症状:禁忌がなければ、などで頻脈・振戦を抑える。
  • :通常()を優先し、ETA 2018は新規発症Graves病を12〜18か月ので治療することを標準とする1。とではを用いる場面がある。⚠️ が限定される理由は肝障害の「頻度」ではなく「重さ」である。 肝障害そのものの頻度は0.3%・PTU0.15%とむしろで高いが、肝不全に至る率はで高い2。発熱・ではを疑い中止して血算、黄疸・では肝障害を評価する。
  • は服用者の0.2〜0.5%に生じ、大半は開始3か月以内に高熱と強いで突然発症する( 2016は、デンマークの研究で 0.27%・0.11%、日本の全国データベースで0.1〜0.15%、成人の服用者全体で約0.3%という値を挙げ、はどの用量でも低用量より起こしやすいとする3)。ガイドラインは・肝機能の定期的な監視を推奨しておらず、代わりに「発熱・が出たら直ちに服薬を止めて受診する」ことを投与前に説明する義務を課している2。
  • :Graves病・の根治選択。妊娠・授乳は禁忌。活動性の中等度〜重度、またはを伴う例では原則として避け、または手術を優先する。軽度の活動性であえて選ぶ場合はグルココルチコイド予防投与を併用する34。甲状腺炎には無効。
  • 手術:大きな甲状腺腫、圧迫、癌疑い、薬剤不耐、早期根治希望など。熟練外科で全摘/準全摘を行う。
  • 甲状腺炎:β遮断薬と疼痛への/ステロイドが中心で、中毒症にを用いない。

💡 (無症候性)甲状腺機能亢進症は、の下がり方と年齢で治療の可否が決まる。 ETA 2015はTSH 0.1 mIU/L未満をgrade 2、0.1〜0.39 mIU/Lをgrade 1と分ける。65歳超のgrade 2は、冠動脈疾患死・心房細動・心不全・骨折・死亡の増加と関連するため治療の適応となる。65歳超のgrade 1は心房細動リスクから治療を考慮してよく、65歳未満でも症状があるgrade 2なら治療は妥当だが、65歳未満で無症状のgrade 1を治療する根拠は無く、化リスクも低いので無治療で経過観察する5。は無く、根拠はと前向きコホートである点も添えて覚えるとよい。

甲状腺クリーゼ

発熱、著明頻脈、意識障害、心不全、消化器・肝障害を伴う臨床診断で、の高さだけでは決めない。感染、手術、薬中断、出産などを誘因とする。

は・・消化器・頻脈・・心房細動・誘因を合計140点満点で点数化し、45点以上で可能性が高い、25〜44点で切迫状態、25点未満で可能性が低いと読む6。⚠️ 点数は治療を始めるかどうかの判断材料であって、確定・のではない。 25点未満でも臨床像から強く疑えば治療を開始する。

  1. で気道・循環・冷却・輸液を支持し、誘因を治療する。
  2. β遮断を循環状態に合わせ慎重に行う。
  3. またはで新規合成を抑える。
  4. 投与から少なくとも1時間後にヨウ素を投与し、放出を抑える。
  5. グルココルチコイドでT4→T3変換と副腎不全リスクに対応する。

まとめ

  • とホルモン合成亢進を区別し、低取込みの甲状腺炎にを用いない。
  • ・・T3、TRAb、摂取/血流からGraves病、結節、甲状腺炎、外因性を分類する。
  • クリーゼでは支持療法、β遮断、、1時間後のヨウ素、ステロイド、誘因治療を並行する。

出典

  1. 1.2018 European Thyroid Association Guideline for the Management of Graves' Hyperthyroidism(European Thyroid Association(Kahaly et al.)・2018)新規発症のGraves病はメチマゾール(MMI)を第一選択の抗甲状腺薬として通常12〜18か月治療すること、メチマゾール投与中の女性は妊娠を計画する時点と妊娠第1三半期にプロピルチオウラシルへ切り替えること、抗甲状腺薬中止前にTSH受容体抗体を測定すること、放射性ヨウ素は活動性・重症の甲状腺眼症がある例では禁忌であり軽度・活動性の眼症で行う場合はステロイド予防投与を要すること、甲状腺全摘は高手術量の甲状腺外科医が行うことを抄録で確認した。閲覧 2026-08-25
  2. 2.Management of Graves Thyroidal and Extrathyroidal Disease: An Update(The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism(Kahaly GJ)・2020)無顆粒球症は抗甲状腺薬服用者の0.2〜0.5%に生じ大半は開始3か月以内に高熱と強い咽頭痛で突然発症すること、肝障害の頻度はメチマゾール0.3%・プロピルチオウラシル0.15%でむしろメチマゾールに多い一方、肝不全に至る率はプロピルチオウラシルで高いこと、ガイドラインは抗甲状腺薬服用中の肝機能・白血球数の定期監視を推奨せず代わりに患者への十分な情報提供を求めていること、抗甲状腺薬による先天異常はメチマゾール3〜4%・プロピルチオウラシル2〜3%で臨界期が妊娠5〜6週から10週であることを本文で確認した。閲覧 2026-08-25
  3. 3.2016 American Thyroid Association Guidelines for Diagnosis and Management of Hyperthyroidism and Other Causes of Thyrotoxicosis(American Thyroid Association・2016)活動性の中等度〜重度または視神経症を伴う甲状腺眼症がある甲状腺機能亢進症患者では、放射性ヨウ素より抗甲状腺薬または甲状腺摘出術を優先すべきとした。また、無顆粒球症の頻度はデンマークの研究でプロピルチオウラシル0.27%・メチマゾール0.11%、日本の全国データベースで0.1〜0.15%と推定され、小児の節は成人でメチマゾールまたはプロピルチオウラシル服用者の約0.3%と記すこと、プロピルチオウラシルはどの用量でも低用量メチマゾールより無顆粒球症を起こしやすく、メチマゾールでは用量依存性であることを、全文(出版社PDFのWayback保存版、2020-03-07取得分)で確認した。閲覧 2026-09-24
  4. 4.Comparison of the 2021 EUGOGO guidelines and the 2022 ATA/ETA consensus statement for the management of Graves' orbitopathy(European Thyroid Journal(Bartalena et al.)・2025)軽度の活動性甲状腺眼症患者に放射性ヨウ素治療を行う場合は、低用量経口グルココルチコイド(プレドニゾンなど)の予防投与を併用すべきとした。閲覧 2026-08-02
  5. 5.The 2015 European Thyroid Association Guidelines on Diagnosis and Treatment of Endogenous Subclinical Hyperthyroidism(European Thyroid Association(Biondi et al., European Thyroid Journal)・2015)内因性の潜在性甲状腺機能亢進症をTSH 0.1 mIU/L未満(grade 2)と0.1〜0.39 mIU/L(grade 1)に分けること、grade 2は冠動脈疾患死・心房細動・心不全・骨折・死亡の増加と関連するため65歳超のgrade 2には治療が適応となること、65歳超のgrade 1は心房細動リスクから治療を考慮してよいこと、65歳未満でも症状のあるgrade 2は治療が妥当なこと、65歳未満の無症状のgrade 1を治療する根拠は無く無治療で経過観察すべきことを抄録で確認した。閲覧 2026-08-25
  6. 6.Thyroid Storm(StatPearls Publishing(Pokhrel B, Aiman W, Bhusal K)・2022)Burch-Wartofskyスコアが体温調節障害・中枢神経症状・消化器肝機能障害・頻脈・うっ血性心不全・心房細動・誘因を合計140点満点で点数化し、45点以上で甲状腺クリーゼの可能性が高い、25〜44点で切迫状態、25点未満で可能性が低いと解釈することを確認した閲覧 2026-08-25