皮膚科学

皮膚科学 · 3-12

皮膚悪性黒色腫の病型・臨床徴候・予後因子

Cutaneous Melanoma Types, Clinical Signs and Prognostic Factors

前提:病態
メラノサイト系腫瘍癌のグレード分類と病期分類
疾患
悪性黒色腫爪下血腫日光黒子
症状
縦走性メラノニキア色素性病変の経時的変化非典型的な色素性病変
スコア
Breslow厚

🧠 全体像:は由来の悪性腫瘍で、早期から・を来し得る。診療の軸は、変化する病変をで診断し、と潰瘍、リンパ節・遠隔転移から病期を決め、手術と免疫・を組み合わせることである。

臨床的な見つけ方

ABCDEと他と異なる病変

項目 意味
A:非対称性 左右非対称
B:Border 、切れ込み、ぼやけ
C:Color 褐・黒・赤・白・青灰色などの不均一
D:径 6 mm超は手掛かりだが、小型悪性黒色腫もある
E:Evolution 大きさ、形、色、隆起、症状の変化。最重要の

同一患者の他の母斑と明らかに違う「」、新生病変、出血・潰瘍も重視する。は赤色・肌色となり、ABCDEの色調基準から外れる。

ではEFG、すなわち隆起、硬い(firm)、増大が有用である。直径6 mm以下でも、急速な垂直増大を見逃さない。

主要病型

病型 好発・臨床像
体幹・四肢の不整な多色性〜局面 比較的長い水平増殖後に真皮へ浸潤
急速増大する青黒色・赤色の結節、出血・潰瘍 水平増殖が目立たず早期からし、発見時に厚いことが多い
高齢者の顔面など慢性光線障害部。長年の不整内に丘疹・結節が出現 の表皮内増殖から真皮浸潤
手掌・足底・爪部。褐、結節、潰瘍 紫外線との関連が乏しく、すべての皮膚色で生じる

爪部では幅が増す、色むら、へ色素が広がる、破壊を評価する。外傷や血腫と決めつけず、を確認する。

診断と病理報告

疑わしい病変は原則として、1〜3 mm程度の狭い臨床でまで含むを行う。大きな顔面・末端・など完全切除が困難な場合は、最も疑わしい部位から十分なを行う。剃刀で表面だけを採り、最大厚を評価不能にしない。

病理項目 意義
上端またはから最深部腫瘍細胞までの垂直距離。局所病変で最重要
潰瘍 同じ厚さでも予後不良でT分類を上げる
追加切除範囲と局所制御を決める
とリスク評価に有用だが、第8版T1分類の定義項目ではない
微小衛星・・ 再発・転移リスクと病期に関係する

は解剖学的浸潤層をI〜Vで示す歴史的指標だが、現在は、潰瘍、リンパ節・遠隔転移の方が重要である。

病期評価

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='excisional biopsy'>完全切除生検</span>で悪性黒色腫"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Breslow thickness'>Breslow厚</span>・潰瘍・断端を確認"]
  B --> C["pT1a:0.8 mm未満・潰瘍なし"]
  B --> D["pT1bまたは0.8 mm以上"]
  C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='wide local excision'>広範囲切除</span>、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sentinel lymph node biopsy'>SLNB</span>は通常行わない"]
  D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sentinel lymph node biopsy, SLNB'>センチネルリンパ節生検</span>を相談・推奨"]
  F --> G["病期に応じ画像・分子検査"]
  G --> H["局所・所属リンパ節・遠隔病変を統合"]

の適応は4段階に分かれる。T1a(0.8 mm未満・潰瘍なし)ではに行わない。T1b(0.8〜1.0 mm、または0.8 mm未満で潰瘍あり)は利益と害を十分に話し合ったうえで考慮してよい。T2・T3(1.0 mm超4.0 mm以下)では推奨される。T4(4.0 mm超)は別立ての推奨で、話し合いのうえで推奨しうるという書き方になっており、「1 mm以上は一律に提案」とまとめない1。陽性でも所属リンパ節郭清を一律に追加せず、超音波監視と全身を含めて判断する。

原発巣の手術

の臨床
in situ 0.5〜1.0 cm
1.0 mm以下 1 cm
1.0 mm超2.0 mm以下 1〜2 cm
2.0 mm超 2 cm

1.0 mm超2.0 mm以下の帯域は1〜2 cmとされ、AADの表は「は機能上の配慮や解剖学的部位によって変更しうる」という脚注を全帯域に付けている2。部位と各国ガイドラインで調整するが、広すぎる切除で生存利益が増えるわけではない。

全身・補助療法

  • なIIIB〜IVでは、手術に先立つネオ(術前)最大3コース(200 mgを3週ごと)に続く切除と、術後最大15コースの併用が、術後のみのより優れる強い推奨として位置づけられている3。NCCNは同じ術前を、な病期III(臨床的リンパ節転移陽性)・病期III(臨床的な/)・局所の/in-transit再発・リンパ節再発に対するカテゴリー2Aの優先レジメンとして組み入れている4。⚠️ ネオの適用範囲は「病期III以上」と一括りにできない——ASCOはIIIA、NCCNは病期IVを含めていない。
  • 切除後病期IIIA〜Dのは、のまたはを52週行う。切除後病期IIB・IICでも同じ2剤が強い推奨である。と高用量はとしてルーチンに用いない3。
  • BRAF V600E/K変異陽性の切除後病期IIIA〜Dでは+の52週も同列の選択肢になる3。
  • ・転移性では抗PD-1を基盤とする免疫療法(併用、抗LAG-3抗体レラトリマブとの配合剤など)、BRAF V600変異例のBRAF+MEK阻害療法を・併存症から選ぶ。
  • 放射線療法は脳転移、、症状緩和、選択した局所制御に有用であり、「悪性黒色腫には無効」と一括しない。

、単剤、単剤は、現代の多くの場面で第一選択ではない。

予後因子

局所病変ではと潰瘍が中心で、病期全体では数・、、遠隔転移部位、などが予後を規定する。免疫療法への反応で予後は大きく変わるため、古い治療時代のをに用いない。

まとめ

  • ABCDEに加え、変化、、のEFGを用いて疑う。
  • で診断し、と潰瘍を必ず確認する。
  • はT1aでには行わず、T1bとT4は話し合いのうえ、T2・T3(1.0 mm超4.0 mm以下)では推奨される。
  • 現在の全身治療はと、BRAF V600変異例のBRAF+MEK阻害療法が中心である。

出典

  1. 1.Sentinel Lymph Node Biopsy and Management of Regional Lymph Nodes in Melanoma: American Society of Clinical Oncology and Society of Surgical Oncology Clinical Practice Guideline Update(American Society of Clinical Oncology / Society of Surgical Oncology(Wong SL ら。J Clin Oncol 36巻399-413頁)・2018)出版社サイトは素の取得ができないためWaybackのid_付きURLで全文を取得して確認した。推奨1.1がT1a(0.8mm未満で潰瘍なし)にセンチネルリンパ節生検を日常的には推奨せず、T1b(0.8〜1.0mm、または0.8mm未満で潰瘍あり)では利益と害を十分に話し合ったうえで考慮してよいとすること、推奨1.2が中等度の厚さ(T2・T3=1.0mm超4.0mm以下)では推奨するとし推奨の強さを moderate とすること、推奨1.3がT4(4.0mm超)では十分な話し合いのうえ推奨しうるという別立ての推奨であること閲覧 2026-09-17
  2. 2.Guidelines of care for the management of primary cutaneous melanoma(American Academy of Dermatology・2019)出版社サイトは素の取得ができないためWaybackのid_付きURLで全文を取得して確認した。Table IXの手術マージンが逐語で in situ 0.5-1 cm・1.0 mm以下 1 cm・1.0 mm超2.0 mm以下 1-2 cm・2.0 mm超 2 cm であること、同じ表の脚注が逐語で "Margins may be modified for functional considerations or anatomic location" と述べること、上皮内黒色腫(悪性黒子型)では0.5 cmを超えるマージンが必要になりうるとすること閲覧 2026-09-17
  3. 3.Systemic Therapy for Melanoma: ASCO Guideline Update(American Society of Clinical Oncology(Seth R ら。J Clin Oncol 41巻4794-4820頁)・2023)出版社サイトは素の取得ができないためWaybackのid_付きURLで全文を取得して確認した。推奨1.1が逐語で "clinical and resectable stage IIIB-IV cutaneous melanoma" にネオアジュバントのペムブロリズマブ(200mgを3週ごと最大3コース)に続く切除と術後ペムブロリズマブ(最大15コース)を強い推奨として提示すること、推奨2.1.1が切除後病期IIB・IICへのペムブロリズマブまたはニボルマブを強い推奨とすること、推奨2.2・2.3が切除後病期IIIA〜Dの補助療法を逐語で "nivolumab × 52 weeks OR pembrolizumab × 52 weeks"(BRAF V600E/K変異例では "OR dabrafenib plus trametinib × 52 weeks")と52週で規定すること、推奨2.2がイピリムマブと高用量インターフェロンを補助療法のルーチン使用として推奨しないこと閲覧 2026-09-17
  4. 4.NCCN Guidelines Insights: Melanoma: Cutaneous, Version 2.2024(National Comprehensive Cancer Network・2024)jnccn.orgの全文をブラウザUA付きcurlで取得して確認した。ネオアジュバント(術前)のペムブロリズマブがカテゴリー2Aの優先レジメンとして組み入れられた範囲が逐語で "resectable stage III (clinically positive nodes), stage III (clinically satellite/in-transit), local satellite/in-transit recurrence, and nodal recurrence" であり、病期IVは含まれないこと。この文書に補助療法の期間を1年とする記述は無く("1 year" は全文0件)、52週の語が出るのはネオアジュバント+術後のダブラフェニブ+トラメチニブの累積期間としてだけであること閲覧 2026-09-17