婦人科学

婦人科学 · 08

ホルモン避妊法と子宮内避妊具

Hormonal contraception. Intrauterine devices

前提:病態
プロゲスチン・抗プロゲスチン薬・避妊薬エストロゲンおよび抗エストロゲン薬
前提:正常
女性性内分泌学

🧠 全体像:避妊法は「効果」「エストロゲンの有無」「毎日の操作が必要か」「妊娠希望までの時間」で選ぶ。とは最も有効な可逆的避妊法だが、禁忌は方法ごとに異なり、の禁忌をへ一括適用してはいけない。

効果の見方

は100女性年当たりの妊娠数を表し、低いほど有効である。ただし、現在のではの1年間失敗率も用いる。

方法 の特徴
、 1%未満で、使用者の操作に左右されにくい
注射、、、腟リング 再投与・交換・服薬忘れで効果が低下
使用のたびに正しく装着する必要があるがリスクも低減

ホルモン避妊の機序

flowchart TD
    A["外因性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='progesterone'>黄体ホルモン</span>±エストロゲン"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gonadotropin-releasing hormone'>GnRH</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='follicle-stimulating hormone'>FSH</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='luteinizing hormone'>LH</span>を抑制"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='follicular development'>卵胞発育</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='luteinizing hormone'>LH</span>サージを抑える"]
    C --> D["排卵を抑制"]
    A --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cervical mucus'>頸管粘液</span>を粘稠化"]
    E --> F["精子通過を阻害"]
    A --> G["子宮内膜を菲薄化"]
    D --> H["避妊効果"]
    F --> H
    G --> H

複合ホルモン避妊法

  • 、週1回交換の、通常3週留置・1週の腟リングがある。
  • ・多相性、・連続投与があり、期の出血は自然月経ではなくである。
  • 月経痛・出血量、を軽減し、・卵巣癌リスクを低下させる。
  • 悪心、、、頭痛が起こりうる。リスクは非使用時より上がるが、製剤と個人リスクで異なる。

💡 は「エストロゲンの有無」だけでは決まらない。 はエストロゲン量との種類の両方に依存する。と腟リングのリスクはと同等かそれ以上で、「飲み薬でないから安全」ではない。1

エストロゲン含有法を避ける主な状況

  • 片頭痛の
  • 現在または高再発リスクの・
  • 35歳以上で多量喫煙
  • 重度高血圧、血管障害を伴う疾患
  • 脳卒中、
  • 活動性乳癌、肝硬変、一部の肝腫瘍

実際の判定は2024年米国医学的など、最新の方法別基準を用いる。

黄体ホルモン単独法

方法 使用法・期間 主な特徴
毎日。製剤ごとに服用遅延の許容時間が異なる 不規則出血。エストロゲン禁忌でも使えることが多い
DMPA注射 約13週ごと 無月経、体重変化、骨密度低下、最終注射後の排卵回復遅延。単独法だがリスクを上げると考えられ、LNG-IUSや低用量単独と同列に置けない1
上腕皮下に留置、通常3年 非常に高い有効性。不規則出血が主な中止理由

⚠️ インプラノン(Implanon/Nexplanon)はでありではない。

💡 エストロゲンが禁忌のときの選択肢。 と低用量単独には追加のリスクが無い。についてはデータが少ない。1

子宮内避妊具・子宮内システム

種類 作用 使用期間の目安 出血への影響
放出(LNG-) 粘稠化、内膜菲薄化、局所的な精子機能抑制 製品により3〜8年 出血量減少、無月経がありうる
(Cu-) と局所により精子機能・受精を阻害 製品により最長10年程度 月経量・月経痛が増えることがある

は「物理的にをせき止める障壁」ではない。主作用は受精前の精子機能・受精阻害である。

💡 出血プロファイルの差は中止理由に直結する。 20件のでは、Cu-に比べLNG-は妊娠(0.22)・(0.12)・出血増加(0.42)・過多出血(0.41)・月経困難(0.41)のリスクがいずれも低い。一方で無月経を理由とする中止はLNG-で大幅に多い(21.05)。継続率・脱出・満足度そのものには有意差が無い。2

IUD挿入を避ける主な状況

  • 妊娠
  • 子宮腔を著しく変形する解剖異常
  • 原因未評価の性器出血
  • 敗血症
  • 現在の化膿性、クラミジア、淋菌感染がある状態での新規挿入
  • LNG-では現在の乳癌、Cu-では代謝に関する個別状況を方法別に評価

⚠️ 血栓症・肝疾患・ホルモン依存性癌をすべてのへ一律の禁忌としてはならない。Cu-はホルモンを含まず、も2024 U.S. MECの一律禁忌には挙げられていない。

緊急避妊

方法 使用時期 要点
Cu- 避妊なし性交から5日以内。排卵日を推定できる場合は排卵後5日以内 最も有効で、経口の薬より有効。そのまま継続避妊になる3
(UPA)30 mg 120時間以内、早いほどよい 72時間以内でも1.4%対2.2%(0.58)とLNGより低い。72〜120時間の投与例では妊娠がいずれもLNG群で発生した4
(LNG)1.5 mg 120時間以内、特に早期ほど有効 主に排卵を遅らせる

薬は成立した妊娠を中断する薬ではなく、も予防しない。

💡 LNG-のは「有望だが未確定」。 711人のでは、LNG 52 mg の1か月後が0.3%(1/317)、Cu-が0%(0/321)でが示された。5 ただしCochraneレビューは該当研究が1件しかなくエビデンスはきわめて不確実とし、同等・優越・劣位のいずれともしていない。としてはCu-が依然として最も確実な選択肢である。3

まとめ

  • CHC、単独法、、LNG-、Cu-は作用と禁忌が異なるため、方法別MECで判断する。
  • はではなく、も物理的障壁として働くわけではない。
  • にはCu-(最も有効)、UPA、LNGがあり、避妊なし性交後はできるだけ早く対応する。UPAは72時間以内でもLNGより有効で、72〜120時間ではその差が明確になる。LNG-のはを示した試験があるが、エビデンスはまだ1件のみで不確実である。

出典

  1. 1.Estrogen, progestin, and beyond: thrombotic risk and contraceptive choices(Hematology - American Society of Hematology Education Program・2024)複合ホルモン避妊薬の血栓形成性が凝固因子と血管系の変化によるもので、**エストロゲン量とプロゲスチンの種類の両方**に依存すること。**経皮パッチと腟リングの静脈血栓塞栓症リスクは複合経口避妊薬と同等かそれ以上**であること。プロゲスチン単独薬のリスクは製剤で異なり、**デポ酢酸メドロキシプロゲステロン(DMPA)はリスクを上げると考えられる**一方、**レボノルゲストレル放出子宮内システムと低用量プロゲスチン単独経口薬には追加のリスクが無い**こと。皮下インプラントについてはデータが少ないこと閲覧 2026-08-21
  2. 2.Contraception with levonorgestrel-releasing intrauterine system versus copper intrauterine device: a meta-analysis of randomized controlled trials(eClinicalMedicine・2024)無作為化比較試験20件のメタ解析で、銅付加IUDに比べレボノルゲストレル放出IUDは妊娠(リスク比0.22)・異所性妊娠(0.12)・出血増加(0.42)・過多出血(0.41)・月経困難(0.41)・出血増加による中止(0.49)のリスクがいずれも低い一方、**無月経による中止のリスクが高い**(リスク比21.05、95%信頼区間8.83〜50.00)こと。継続率・脱出・満足度には有意差が無かったこと閲覧 2026-08-21
  3. 3.Progestin intrauterine devices versus copper intrauterine devices for emergency contraception(Cochrane Database of Systematic Reviews・2023)銅付加IUDが緊急避妊として最も有効な方法であり、経口の緊急避妊薬より有効であること。レボノルゲストレルIUDの緊急避妊については**該当する研究が1件しかなく、妊娠率の差についてのエビデンスはきわめて不確実**であること。同等・優越・劣位のいずれとも結論できず、追加の研究が必要であること閲覧 2026-08-21
  4. 4.Ulipristal acetate versus levonorgestrel for emergency contraception: a randomised non-inferiority trial and meta-analysis(The Lancet・2010)2,221人の無作為化非劣性試験と先行試験を合わせたメタ解析で、性交後72時間以内の妊娠率がウリプリスタル酢酸塩30 mg群1.4%(22/1,617)、レボノルゲストレル1.5 mg群2.2%(35/1,625)、オッズ比0.58(95%信頼区間0.33〜0.99、p=0.046)であったこと。**72〜120時間に投与された203人では妊娠3例がいずれもレボノルゲストレル群**であったこと閲覧 2026-08-21
  5. 5.Levonorgestrel vs. Copper Intrauterine Devices for Emergency Contraception(The New England Journal of Medicine・2021)避妊なし性交から5日以内に緊急避妊を求めた女性711人の無作為化非劣性試験で、レボノルゲストレル52 mg IUD群の1か月後妊娠率が0.3%(1/317)、銅T380A IUD群が0%(0/321)で、群間差0.3ポイント(95%信頼区間 −0.9〜1.8)と**非劣性が示された**こと閲覧 2026-08-21