産科学

産科学 · 15

分娩時の子宮活動と陣痛異常

Uterine activity during labor. Characteristics of contractions, their anomalies.

前提:病態
平滑筋作用薬・子宮収縮作用薬
前提:正常
胎児期と胎盤:分娩骨盤・会陰:骨と関節
疾患
難産(陣痛異常・児頭骨盤不均衡)
症状
陣痛

🧠 全体像:正常分娩では、の規則的収縮が次第に強くなり、と胎児下降を進める。進行不良を評価するときは、陣痛のだけでなく産道と胎児を同時に確認し、は6 cm以降の現行基準で診断する。

分娩への準備

所見 真の陣痛
収縮 不規則で強さが一定 規則的で頻度・持続・強度が増す
疼痛 軽く、休息で軽快しやすい 持続し、腰背部から下腹部へ広がることがある
頸管 進行性変化なし ・開大が進行
胎児下降 なし 分娩進行に伴い下降

妊娠末期にはが増える。頸管は水分増加とコラーゲンで軟化し、側から短くなる頸管が進む。

正常な子宮収縮

  • 収縮は子宮底で強く、下部へ向かって弱くなるを示す。
  • 分娩進行に伴い、収縮は一般に強く、長く、頻回になる。
  • 第2期では子宮収縮に母体のが加わり、胎児を下降させる。

古典的は4 cmから急速に開大するS字曲線を示したが、現代の集団では進行はより緩徐で、は6 cmからと扱う1。1.2〜1.5 cm/時という一律の開大速度を帝王切開の根拠にしない。

分娩進行異常の枠組み

3P 評価内容 代表的問題
収縮頻度・持続・強度、 低、頻収縮、疲労、鎮痛の影響
産道 骨盤、軟産道、膀胱 骨盤狭窄、腫瘤、
胎児 大きさ、、、回旋 、、、

活動期遷延と停止

  • は6 cm以降の進行が遅い状態で、母児が安定し進行があれば時間をかけて評価する。
  • は、6 cm以上かつ破水後に、次のいずれかを満たす場合とする2。
    • 十分な子宮活動が4時間続いても開大しない。
    • オキシトシン増強下でも不十分な子宮活動が6時間続き、開大しない。
  • 破水後ででは強度が判断できない場合、で評価し、200 Montevideo units/10分以上が十分な活動の参考となる。

子宮活動異常

低緊張性子宮機能不全

収縮の方向性は保たれるが、強度または頻度が不十分で・下降が進まない。

  1. 、、、感染、薬剤を再評価する。
  2. 適応があればとオキシトシンで増強する。
  3. 胎児心拍と頻収縮を監視する。
  4. 停止基準を満たす、または母児が悪化すれば分娩方法を変更する。

子宮頻収縮

は、30分間の平均で10分に5回を超える収縮をいう。を伴うかを必ず併記する。

💡 オキシトシンは頻収縮の主要な原因薬剤である。 米国の単一病院システムの50,335分娩のコホートでは、オキシトシンやの使用で頻収縮の発生が増えな関連があり、頻収縮事象の約4分の1で胎児心拍変化を伴ったと報告されている3。

flowchart TD
    A["10分に5回を超える収縮"] --> B["胎児心拍と原因薬剤を確認"]
    B --> C["オキシトシンを減量・中止<br>除去可能なプロスタグランジンを除去"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='repositioning of the body'>体位変換</span>、低血圧補正、輸液を個別化"]
    D --> E{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='abnormal fetal heart rate'>胎児心拍異常</span>が持続するか"}
    E -->|"いいえ"| F["収縮と胎児心拍を再評価"]
    E -->|"はい"| G["短時間作用型<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tocolysis'>子宮収縮抑制</span>を検討<br>緊急分娩の準備"]

古典的な「疝痛性子宮」「性下部子宮」という分類だけで鎮静薬やを機械的に投与しない。胎盤早期剥離、、オキシトシン過量など危険な原因を先に除外する。

第2期進行不良

  • 胎児下降・回旋、、収縮、鎮痛、疲労、児頭骨盤関係を評価する。
  • やでは、超音波がよりを正確に示すことがある。
  • 母児が安定し下降・回旋が続く場合は、時間だけで直ちに帝王切開としない。
  • 停止時には熟練者による回旋・の適否を評価し、安全条件を満たさなければ帝王切開とする。

まとめ

  • 正常収縮はで、と胎児下降を進める。
  • は6 cmからとし、の一律速度を停止診断に用いない。
  • は破水後、十分な収縮4時間または不十分な収縮6時間でも開大しない場合である。
  • 頻収縮では原因薬剤を止め、の有無を軸に緊急対応する。

出典

  1. 1.Contemporary patterns of spontaneous labor with normal neonatal outcomes(Obstetrics and Gynecology・2010)米国19施設・62,415例(単胎・正期・自然発来・頭位・経腟分娩・正常新生児転帰)のConsortium on Safe Laborデータで、頸管開大は6 cm以降に加速し、4〜6 cmの進行は従来の教育より遅いことを示した。この知見が活動期の開始を6 cmとする根拠になっている。閲覧 2026-08-26
  2. 2.Safe Prevention of the Primary Cesarean Delivery: ACOG and SMFM Change the Game(Journal of Perinatal Education・2014)2014年のACOG/SMFM Obstetric Care Consensus(米国)の内容を解説し、活動期停止を「頸管開大6 cm以上・破水後に、4時間の十分な子宮活動、または6時間のオキシトシン投与下で不十分な子宮活動があっても頸管開大が進まない場合」と定義したこと、Friedman基準ではなくConsortium on Safe Laborデータ(Zhang 2010)が根拠であることを述べる。閲覧 2026-08-26
  3. 3.Tachysystole in term labor: incidence, risk factors, outcomes, and effect on fetal heart tracings(American Journal of Obstetrics and Gynecology・2013)米国の単一病院システムで28か月間・50,335分娩(48,529例)を後方視的に解析し、オキシトシンまたはミソプロストールの使用で子宮頻収縮の発生が増加し用量依存的な関連を認め、頻収縮事象の約4分の1で胎児心拍変化を伴い、頻収縮の存在が複合新生児不良転帰の増加と関連したと報告した。閲覧 2026-08-26