病理学

病理学 · B/17

腫瘍免疫/免疫監視

Tumor immunity and immune surveillance

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Mechanism / 機序High-yield / ポイント
応用トピック
頭頸部癌の集学的治療における治療選択肢

🧠 全体像:多くの癌が免疫正常者に生じるのは監視そのものが弱いからではなく、腫瘍が・NK細胞それぞれの攻撃経路を別々に回避する術(抗原陰性変異体の選択、MHC I喪失、免疫抑制、抗原、FasLによる逆襲)を身につけるからである。とNK細胞は互いに補完し合う(MHC Iの有無で標的が逆)ため、腫瘍は同じ手口で両方を同時には出し抜けない。

概念

= 免疫系が形質転換細胞を継続的に検出・除去すること。証拠:で癌がより多い。それでも多くの癌が免疫正常者に生じるのは、腫瘍が監視を回避するため。

💡 「」は現在では3段階からなる「」という枠組みに整理される——・平衡(equilibrium)・(escape)。 免疫系は腫瘍を抑える側であると同時に、生き残る腫瘍細胞を選抜し腫瘍が育ちやすい微小環境を作ってしまう促進側でもある、という二面性を統合した考え方である1。

⚠️ 免疫不全患者で癌が増えるのは事実だが、すべての癌種が一様に増えるわけではない。 米国の臓器移植175,732件のコホートで全体の癌リスクは一般人口のSIR 2.10だった。上昇幅が特に大きいのは関連のやHHV-8関連の(SIR 61.46)などのウイルス関連腫瘍だが、肺(1.97)・腎(4.65)・黒色腫(2.38)・口唇(16.78)など感染ととされる癌も増えていた。一方、・前立腺癌(SIR 0.92)はむしろ低く、著者は移植前のがん検診による見かけの低下の可能性を挙げている。の上昇もに限られていた2。

抗腫瘍エフェクター機構

細胞性免疫が主体。

エフェクター 作用
CD8+ MHC I上のを認識 → 殺傷。ウイルス発癌に対して重要
NK細胞 第一線、事前感作不要。MHC Iを低下させた細胞を殺す。傷害・腫瘍細胞上のストレス誘導リガンドで活性化
マクロファージ IFN-γ(T/NK細胞由来)で活性化 → ROS+ → 腫瘍殺傷

に注目:はMHC Iを必要とし、NK細胞はMHC Iが失われたときに攻撃する — よって腫瘍は同じ手口で両方を回避できない。

腫瘍の回避機構

  1. 抗原陰性変異体の選択的増殖 — のサブクローンが除去され、非の細胞が残る()。
  2. MHC Iの喪失・低下 — を回避(ただしNK感受性は残る)。黒色腫・肺癌・乳癌・・前立腺癌・など主なの約20〜60%でみられると総説はまとめている3。
  3. 免疫抑制 — TGF-β/TNF-βを分泌し、・(MDSC)を動員する。総説は抑制性サイトカインとしてIL-10・を挙げ、リンパ球由来のIFN-γに応答して腫瘍細胞がPD-L1を発現することも示している3。
  4. 抗原 — 厚い()が免疫のアクセスを遮断。
  5. の殺傷 — 腫瘍のFasLがT細胞のFasに結合 → T細胞アポトーシス。

治療的意義

⚠️ 免疫のブレーキを外す治療なので、自己免疫に似たが起こる。 たとえば・レラトリマブ配合剤の米国添付文書は、本剤がを破りうるとし、・大腸炎・肝炎・・皮膚障害・腎炎・心筋炎など、あらゆる臓器に重篤または致死的なが起こりうるとして、・クレアチニン・甲状腺機能を投与前と投与中に定期的に評価するよう求めている4。個々の薬の・監視項目は各薬剤の添付文書で確かめる。

💡 ポイント: エフェクター:CD8+ CTL(MHC I)、NK(MHC I低下を殺す)、マクロファージ(IFN-γ → ROS/)。回避:抗原陰性変異体、MHC I喪失、免疫抑制(、Treg)、抗原、FasLによるT細胞殺傷。治療 = (PD-1/PD-L1、CTLA-4)。

まとめ

  • は主に細胞性免疫が担い、CD8+(MHC I)、NK細胞(MHC I低下細胞を殺す)、IFN-γで活性化されたマクロファージが抗腫瘍エフェクターとして働く。
  • とNK細胞は相補的で、腫瘍は同じ手口で両方を回避できない。
  • 腫瘍の回避機構は抗原陰性変異体の選択的増殖()、MHC Iの喪失・低下、/Treg等による免疫抑制、抗原、FasLによるの殺傷の5つ。
  • 遮断療法(抗PD-1/PD-L1、抗CTLA-4、米国では黒色腫に抗LAG-3の配合剤も)は腫瘍誘発性のを逆転し抗を回復させるが、全身のさまざまな臓器にを起こしうる。
  • 移植後の免疫抑制ではウイルス関連腫瘍の増加が特に大きいが、感染ととされる癌も増え、乳癌・前立腺癌はむしろ低い。

出典

  1. 1.Cancer immunoediting: integrating immunity's roles in cancer suppression and promotion(Science・2011)免疫系は腫瘍を抑える側と促進する側の二面をもつ。免疫適格な宿主で生き延びられる腫瘍細胞を選抜し、腫瘍微小環境を腫瘍が育ちやすい状態に整えてしまう。この二面性を統合した枠組みが排除(elimination)・平衡(equilibrium)・逃避(escape)の3段階からなるがん免疫編集であることを確認した。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Spectrum of cancer risk among US solid organ transplant recipients(JAMA・2011)米国の臓器移植175,732件(腎58.4%・肝21.6%・心10.0%・肺4.0%)の移植登録と13の州・地域がん登録を連結したコホート研究(PMC全文で確認)で、全体の癌リスクは一般人口のSIR 2.10で、32種の悪性腫瘍でリスクが上昇しており、感染関連(非ホジキンリンパ腫SIR 7.54、カポジ肉腫SIR 61.46、肝SIR 11.56など)だけでなく感染と無関係とされる癌(肺1.97、腎4.65、黒色腫2.38、甲状腺2.95、口唇16.78など)も含まれたこと、肝癌リスクの上昇は肝移植レシピエントに限られ(SIR 43.83)移植後6か月以内に著しかったこと、乳癌(SIR 0.85)と前立腺癌(SIR 0.92)はむしろ低く、著者はこれを移植前のがん検診による見かけの低下の可能性として論じていることを確認した。閲覧 2026-08-27
  3. 3.Immune escape mechanisms as a guide for cancer immunotherapy(Clinical Cancer Research・2015)腫瘍免疫逃避機構に関するレビューで、悪性黒色腫・肺癌・乳癌・腎癌・前立腺癌・膀胱癌などの固形癌の約20〜60%でMHCクラスI分子の発現低下がみられること、腫瘍浸潤リンパ球由来のIFN-γが腫瘍細胞上のPD-L1発現を誘導しうること、制御性T細胞・骨髄由来抑制細胞(MDSC)・IL-10やTGF-βなどの免疫抑制性サイトカインが腫瘍免疫逃避の機構として関与することを確認した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.OPDUALAG (nivolumab and relatlimab-rmbw) injection — Full Prescribing Information(E.R. Squibb & Sons, L.L.C.(米国添付文書。DailyMed SPL)・2026)DailyMedのSPL(setid b22c9d83-3256-4e17-85f7-f331a504adc6、labeler は E.R. Squibb & Sons, L.L.C.。印字された改訂表示は Revised 6/2026)で、1 INDICATIONS AND USAGE が本剤を抗PD-1抗体ニボルマブと抗LAG-3抗体レラトリマブの配合剤とし、12歳以上の切除不能または転移性の悪性黒色腫に適応があるとしていること、5.1で本剤が末梢性免疫寛容を破りうること(逐語で「potentially breaks peripheral tolerance」)と、免疫介在性有害反応(肺臓炎・大腸炎・肝炎・内分泌障害・皮膚障害・腎炎・心筋炎など)はあらゆる臓器に起こり重篤または致死的になりうるとして、肝酵素・クレアチニン・甲状腺機能を投与前と定期的に評価するよう求めていることを確認した。閲覧 2026-09-23
  5. 5.Opdualag : EPAR - Product information(European Medicines Agency(EU製品概要。Bristol-Myers Squibb Pharma EEIG)・2026)EMAの製品情報PDF(4.1 Therapeutic indications)で、本剤の適応が逐語で「first-line treatment of advanced (unresectable or metastatic) melanoma in adults and adolescents 12 years of age and older with tumour cell PD-L1 expression < 1%」であることを確認した。PDF本体の改訂年月欄は空欄のため、yearはEMAの製品ページの「Last updated 21/07/2026」とPDFの作成日(2026年7月13日)から採った。閲覧 2026-09-24