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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

播種性フザリウム症

Disseminated fusariosis

別名
フザリウム症Invasive fusariosis
臓器系
感染症
科目
Medical Microbiology
トピック
微生物学 4/3:真菌の培養。真菌感染症の微生物学的診断
鑑別疾患
侵襲性アスペルギルス症
治療薬
ボリコナゾールアンフォテリシンB
原因微生物
Fusarium
症状
発熱丘疹皮膚結節皮膚壊死筋肉痛
検査値
好中球減少

🧠 全体像:は、好中球減少という土台が崩れた瞬間に、普段は角膜炎程度しか起こさない環境真菌が全身へ乗り込んでくる病態である。Fusarium属は血管を侵しながら胞子を作り続ける(血管侵襲+的分生子形成)ため、他の糸状菌感染と違って血液培養が陽性になりやすく、皮膚には播種を映す病変が次々に現れる。そして治療の主役は薬そのものより好中球の回復であり、これが起こらない限り死亡率はほぼ100%に達する。

病原体と播種の仕組み

Fusarium属は土壌・植物・水系に広く分布するで、免疫正常者では角膜炎などにとどまるが、後やの後などで持続的な好中球減少が生じると、血管壁へ浸潤して血流に入り全身へ播種する1。

flowchart TD
    A["持続的好中球減少<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hematopoietic stem cell transplantation, HSCT'>造血幹細胞移植</span>後・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute leukemia'>急性白血病</span>治療後)"] --> B["Fusarium属が血管壁へ浸潤"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fungemia'>血流感染</span>"]
    C --> D["皮膚への播種<br>(有痛性丘疹・結節、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='comedo necrosis'>中心壊死</span>を伴うことがある)"]
    C --> E["肺・副鼻腔などへの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multiorgan involvement'>多臓器病変</span>"]
    D --> F["好中球が回復しない限り<br>制御できない"]
    E --> F

⭐ 血液培養の陽性率が他の糸状菌感染より高い。 では血液培養陽性が稀なのに対し、侵襲性では単施設84例の解析で55%、233例の国際でも37%が陽性となる2。この違いは、Fusarium属が血管内でも分生子形成を続けるという性質に由来するとされる。

臨床像

部位 所見
血流 発熱を伴う。他の糸状菌感染と違い血液培養が陽性化しやすい2
皮膚 多発する有痛性の丘疹・結節。壊死を伴う病変と伴わない病変が同時期に混在することが多い。259例中72%の免疫低下患者にみられる2
全身 筋肉痛を訴える患者が多い2
肺・副鼻腔 と類似した肺病変・副鼻腔病変を来しうる

💡 皮膚病変は「播種を映す鏡」である。 血管侵襲を起こした菌が皮膚の毛細血管へ達して転移性病変を作るため、新旧さまざまな段階の丘疹・結節が同時に存在する所見自体が播種の証拠になる。

診断

  • 血液培養が他の侵襲性糸状菌感染より有用で、播種例では陽性率が上がる2。
  • 皮膚病変の生検・培養は診断確定との両方に有用。皮膚以外の病変からのアクセスが難しい場合、皮膚生検が最も検体を得やすい経路になる。
  • (Fusarium solani species complex・Fusarium oxysporum species complexなど)は感受性の傾向をする参考になるが、後述のとおりin vitro感受性そのものがを直接決めるわけではない。

治療

⚠️ の結果だけで治療薬を選べない。 Fusarium solani species complex・Fusarium oxysporum species complexはいずれも・に対する株間のの幅が広く、88例の侵襲性でと臨床転帰の相関を検討しても明確な相関は認められず、単剤治療を受けた22例に限ったMIC50の比較(生存例4 µg/mL対死亡例8 µg/mL)でもはなかった(p=0.68)2。

治療 位置づけ
233例の国際研究で90日60%と最も良好。ガイドラインの推奨薬の一つ2
型 同研究で90日53%。とならぶ推奨薬2
型 同研究で90日28%と他の2剤より劣る2

⭐ 予後を決めるのは薬より好中球の回復である。 84例の解析では、持続的好中球減少に副腎皮質ステロイド使用が重なると90日は0%、持続的好中球減少単独でも4%にとどまる一方、非好中球減少下でのステロイド使用では30%、いずれにも該当しなければ67%まで改善する12。持続的好中球減少患者では実質的にほぼ全例が死亡するとされ、などによる好中球回復を図ることが抗真菌薬の選択そのものより重要になる。

鑑別

臨床像・宿主背景が重なるが主要な鑑別に挙がる。血液培養陽性率の違い(で高い・で稀)と、皮膚への播種病変の頻度の高さがを疑う手がかりになる2。

まとめ

  • は、持続的好中球減少を背景にFusarium属が血流へ侵入し全身へ播種する日和見感染。
  • と違い血液培養が陽性化しやすい(37〜55%)。皮膚には有痛性の丘疹・結節が新旧混在して現れる。
  • 治療はまたは型。⚠️ の結果と臨床転帰は相関しないため、感受性のみで薬剤を選ばない。
  • 予後を決める最大の因子は好中球の回復。持続的好中球減少が続く限り死亡率はほぼ100%に達する。

出典

  1. 1.Fusarium Infections in Immunocompromised Patients(Clinical Microbiology Reviews・2007)Fusarium属は土壌・植物・水系に広く分布し、免疫正常者では外傷・熱傷・コンタクトレンズ装用に伴う局所感染(角膜炎など)を起こす一方、免疫低下患者では播種性感染がフザリウム症全体の約70%を占める。播種性病変を持つ持続的好中球減少患者の死亡率はほぼ100%。別に、血液疾患患者84例の解析では診断後30日・90日の生存率がそれぞれ50%・21%であった。閲覧 2026-09-07
  2. 2.Invasive Fusariosis in Patients with Hematologic Diseases(Journal of Fungi (MDPI)・2021)血液疾患を背景とする侵襲性フザリウム症では、単施設84例の解析で血流感染(fungemia)が55%に生じ、233例の国際多施設研究でも37%であったこと。侵襲性アスペルギルス症では血液培養陽性が稀であるのに対し、フザリウム症では頻繁にみられるという対比が示されていること。皮膚病変は259例中72%の免疫低下患者にみられ、有痛性の丘疹・結節が壊死を伴う場合と伴わない場合の両方があり、経過の異なる病変が同時に混在すること(多発性・播種性が主体)。233例の国際研究(2001〜2011年)では90日生存率がボリコナゾール群60%、リポソーム型アムホテリシンB群53%、デオキシコール酸型アムホテリシンB群28%であり、ガイドラインはリポソーム型アムホテリシンBまたはボリコナゾールを推奨すること。Fusarium solani species complex・Fusarium oxysporum species complexともにアムホテリシンB・ボリコナゾールに対し株間でMICの幅が広く(それぞれ0.25〜16 µg/mL、0.5〜16 µg/mL超)、88例の侵襲性フザリウム症を対象にMICと臨床転帰の相関を検討しても明確な相関はみられず、ボリコナゾール単剤治療を受けた22例に限ったMIC50の比較(生存例4 µg/mL対死亡例8 µg/mL)でも統計学的有意差はなかった(p=0.68)ため、感受性試験の結果のみで治療薬を選ぶべきではないとされること。84例の解析では持続的好中球減少にステロイド使用が重なると90日生存率0%、持続的好中球減少単独で4%、非好中球減少でのステロイド使用で30%、いずれも該当しない群で67%であり、持続的好中球減少患者では実質的に100%が死亡すると明記されていること。閲覧 2026-09-07