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Disease Atlas · 耳鼻咽喉科 · 疾患

外リンパ瘻

Perilymphatic fistula

別名
Perilymph fistulaPLF
臓器系
耳鼻咽喉科
科目
ENT
トピック
耳鼻咽喉科 18:外耳・中耳・内耳の外傷耳鼻咽喉科 13:急性・慢性化膿性中耳炎の合併症
鑑別疾患
メニエール病上半規管裂隙症候群良性発作性頭位めまい症・前庭神経炎
症状
混合性難聴めまい耳鳴
元疾患
側頭骨骨折

🧠 全体像は、内耳の腔と中耳・のあいだに異常な交通ができ、が漏出する状態である。正常な内耳は骨で密閉された「閉鎖系」だが、の破裂やのびらんによってもう1つの「窓」ができると、本来閉じ込められているはずの振動エネルギーがそこから逃げてしまう(「第三の窓」病態)。結果として、(振動エネルギーの漏出)と感音成分(内耳障害)が同時に生じると、圧・音刺激に誘発されるめまい()が特徴的な症候群を形成する。誘因は・外傷・などので、診断はの誘発と画像検査を組み合わせて行うが、確定は術中の漏出の視認に委ねられることが多い。

病態

flowchart TD
    A["急激な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pressure overload'>圧負荷</span><br>(外傷・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='barotrauma'>気圧外傷</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='straining'>いきみ</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stapes surgery'>アブミ骨手術</span>など)"] --> B{"内耳の窓が破綻"}
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oval window'>卵円窓</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='round window'>正円窓</span>の破裂"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perilymphatic fistula'>外リンパ瘻</span>(狭義)"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cholesteatoma'>真珠腫</span>による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osseous labyrinth'>骨迷路</span>びらん"| D["迷路瘻孔(多くは<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lateral semicircular canal'>外側半規管</span>)"]
    C --> E["中耳・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mastoid antrum'>乳突洞</span>への異常な交通=「第三の窓」"]
    D --> E
    E --> F["振動エネルギーの漏出=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conductive component'>伝音成分</span>"]
    E --> G["内耳圧変化・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hair-cell loss'>有毛細胞障害</span>=感音成分"]
    F --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mixed hearing loss'>混合性難聴</span>"]
    G --> H
    E --> I["圧・音刺激で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endolymph'>内リンパ</span>が動く"]
    I --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fistula sign'>瘻孔症状</span>:Hennebert徴候(誘発眼振)<br>Tullio現象(音誘発性めまい)"]

内耳()は本来、で満たされたである。の破裂、あるいはによるのびらん(迷路瘻孔、に多い)が生じると、この閉鎖系が中耳・と異常に交通する。誘因は・飛行機搭乗・強い鼻かみなどの、重量挙げ・・くしゃみなどのである。原因不明の特発性例も20〜40%を占める1

臨床像

  • がともに低下しが残る。振動エネルギーの漏出によると、内耳障害による感音成分が同時に存在する点は、で扱う「1つの疾患が両方の経路を侵す」型の典型例である。
  • めまい・ 体動・圧変化で誘発される回転性めまいや浮動感。
  • (Hennebert徴候): への圧迫やでので誘発される眼振・めまいをHennebert徴候(誘発される所見自体はHennebert徴候、するめまいはHennebert症状)と呼ぶ。強大音でめまい・眼振が誘発される現象はTullio現象と呼ばれ、同じ「第三の窓」の病態生理を共有する。
  • 、自声強聴、変動するを伴うことがある。

診断

診断確定に単独で使える検査はなく、臨床像と画像・を組み合わせて総合的に判断する1

検査 所見・意義
瘻孔テスト( での陽圧/陰圧でHennebert徴候(誘発眼振)を確認
低下+残存=パターン
単独での検出感度は80%超。、内耳気体像があれば診断的
CT+MRI併用 検出感度はほぼ100%に達する
経鼓膜内視鏡 を直接観察し漏出を確認、cochlin-tomoprotein検査用に検体採取も可能
術中所見 多くの症例で診断の最終確定は術中の漏出の視認による

⚠️ 後に急性・進行性の感音難聴やめまいが出現し、などで症状が悪化する場合はを疑い、操作を直ちに中止して専門評価を急ぐ。

治療

  1. 保存的治療: 頭部挙上、安静(1〜2週間の床上安静が目安)、・重量挙げ・気圧変化を伴う活動の回避を第一に行う。
  2. 血液 血0.5 mL程度を外来でに注入する低侵襲手技。一時的な症状改善が得られれば、その後の開放術で良好なが期待できる指標になる。
  3. 閉鎖: 保存的治療で改善しない例、症状が高度な例が対象で、後耳介アプローチでを開放し、筋膜などでを補強する。⭐ 手術はめまい症状を確実に改善させるが、聴力が改善するのは9〜17%にとどまり、「手術=聴力回復」ではないことを術前に説明する1
  4. の意義: 後の症例では、症状出現から10日以内に探査した群で良好な聴力(40 dB以下)獲得率57.1%だったのに対し、10日を超えると33.3%に低下したとする報告があり、めまいは手術後に全例で直ちに消失したとされる2。診断が濃厚な例で保存的治療に反応しないときは、探査を先延ばしにしない。

鑑別

特徴
誘因 外傷・・術後 誘因なし( 誘因なし(ウイルス感染後が想定)
難聴の型 が残る) 感音性( なし
あり(Hennebert徴候陽性) なし なし
経過 外傷後急性〜進行性、変動もあり得る 発作性(20分〜12時間)、反復 急性発症、日単位で持続

まとめ

  • の破裂やのびらんによりが漏出し、「第三の窓」として振動エネルギーが逃げる病態である。
  • 外傷・が誘因で、特発性も20〜40%を占める。
  • と、Hennebert徴候・Tullio現象などのが診断の手がかりで、確定は多くの場合術中所見による。
  • 治療は安静・血液から閉鎖まで段階的に行い、手術はめまいを確実に改善させるが聴力改善は9〜17%にとどまる。早期の探査は聴力予後を改善しうる。

出典

  1. 1.Perilymphatic Fistula(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)外リンパ瘻は外傷性・医原性・特発性に分類され、原因が同定できない特発性が20〜40%を占めること。アブミ骨手術の約1%に生じ、真珠腫を伴う慢性中耳炎の4〜15%で骨迷路びらんが生じること。CT単独での検出感度は80%超、CTとMRIの併用でほぼ100%に達すること。治療は頭部挙上・安静から自家血による鼓室内血液パッチ、手術的閉鎖まで段階的に行い、手術はめまい症状を確実に改善させるが聴力改善は9〜17%にとどまること閲覧 2026-08-10
  2. 2.Effects of early surgical exploration in suspected barotraumatic perilymph fistulas(Clinical and Experimental Otorhinolaryngology・2012)圧外傷後の急性・進行性感音難聴とめまいを来した9例10耳の検討で、症状出現から10日以内に手術的探査を行った群は良好な聴力(40 dB以下)の獲得率が57.1%だったのに対し、10日を超えて手術した群では33.3%にとどまったこと。手術後は全例でめまいが直ちに消失し、平均聴力利得は27.0±14.9 dBだったこと閲覧 2026-08-10