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Symptoms · Published

混合性難聴

Mixed hearing loss

別名
混合難聴mixed hearing loss
臓器系
耳鼻咽喉科運動器
科目
ENT
トピック
耳鼻咽喉科 04:純音聴力検査・ティンパノメトリーと主観的・客観的聴力検査耳鼻咽喉科 17:耳硬化症の臨床像・診断・治療耳鼻咽喉科 05:補聴器の適応と種類耳鼻咽喉科 24:人工内耳と植込み型補聴器耳鼻咽喉科 10:急性・慢性滲出性中耳炎、鼓膜換気チューブ、鼓室硬化症
関連疾患
外リンパ瘻急性中耳炎・慢性中耳炎(滲出性中耳炎を含む)骨のパジェット病骨形成不全症耳硬化症側頭骨骨折

🧠 全体像は、と感音難聴が同一耳に同時に生じている状態を指す。の低下・の低下・の残存という3条件がそろって初めて診断できる。の大きさで、感音成分はそのものの低下量で、別々の物差しとして読む——ここを一体として扱うと、原因検索も治療のゴール設定も狂う。

定義と用語の整理

患者は「聞こえが悪い」としか訴えず、か感音性かかは自分では区別できない。この切り分けは難聴で述べたから始まるが、確定と定量はに委ねられる。のみに絞った原因の整理はの部位別表に譲る。

上、は次の3条件がそろった状態として定義される。

条件 意味
の低下 音が伝わる経路のどこかに障害がある
の低下 内耳(蝸牛)・自体にも障害がある
の残存 を差し引いてもなおの低下が説明しきれず、が残る

と感音成分は別々の物差しで読む。の大きさ=の重さそのものの低下量=感音成分の重さであり、とはこの2つが同時に存在する状態である。片方だけを見て「だけ」「感音難聴だけ」と決めつけない。

💡 ここに一つ落とし穴がある。では、2 kHz付近でが見かけ上低下するが現れることがある。これはによって耳小骨の共鳴が変化することで生じる測定上のであり、そのものの障害を示す真の感音難聴ではない1が再建されると、この見かけ上の低下は改善しうる。「が下がっている=感音成分がある」と機械的に読むと、のみの症例をと誤って分類しかねない。

病態生理

の原因は、機序で2つの群に分けて考えると整理しやすい。

考え方 代表例
1つの疾患が両方の経路を侵す 単一の病態が伝音路と感音路の両方に及ぶ まで病変が及んだ、内耳へ波及した
独立した2つの原因が併存する 感音路の慢性疾患と伝音路の急性・可逆的疾患がたまたま同じ耳に重なる が重なった状態

⭐ 「1つの疾患が両方を侵す」群の典型がである。病変が周囲にとどまればだけだが、側まで及ぶと感音難聴成分が加わりになる。も、頭蓋・病変がの両方を障害しうる点で同じ構造を持つ。のみと理解されがちだが、実際には経過とともに感音性成分が加わり、・感音性単独より高頻度に認めるとする報告がある2

💡 「独立した2つの原因が併存する」群は見逃しやすい。感音難聴という慢性の土台があると、後から乗ったの変化を「進行したの一部」としてしまうためである。のような慢性感音難聴に、による性のが重なることもある。このの消退やで改善しうる点で、不可逆的な感音成分とは治療可能性がまったく異なる。急に悪化した、あるいは片側だけ悪化した聞こえは、慢性感音難聴のでは説明せず、で可逆的な原因を必ず除外する。

⚠️ 見逃してはいけないもの

頻度でなく危険度で優先する。

  • の内耳侵襲・が耳小骨だけでなくまで破壊するとを来し、進展すれば髄膜炎・などのに至る。回転性めまいやを伴うは、中耳炎の項が扱うに準じて緊急評価する
  • 後に急性発症したは、によるによる感音成分が同時に生じている可能性があり、画像検査とへの緊急紹介を要する
  • の急速な低下を反復してが短期間で悪化している場合は、感音難聴の項に準じた時間との勝負の評価・治療が必要であり、「もともとだから」と経過観察で済ませてはならない

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mixed hearing loss'>混合性難聴</span>が疑われる聞こえの訴え"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Otoscopy'>耳鏡検査</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Tuning fork'>音叉検査</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Weber test'>ウェーバー検査</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Rinne'>リンネ検査</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='PTA'>純音聴力検査</span>で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='air conduction (AC)'>気導</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone-conduction threshold'>骨導閾値</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='air-bone gap'>気骨導差</span>を確認"]
    D --> E{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='air conduction (AC)'>気導</span>低下・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone conduction (BC)'>骨導</span>低下・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='air-bone gap'>気骨導差</span>の残存がそろうか"}
    E -->|"3条件がそろう"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Tympanometry'>ティンパノメトリー</span>で中耳機能を評価"]
    E -->|"そろわない"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conductive hearing loss'>伝音難聴</span>・感音難聴として<br>それぞれの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='common features'>総論</span>で評価する"]
    F --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='temporal bone CT'>側頭骨CT</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inner ear MRI'>内耳MRI</span>で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone lesions'>骨病変</span>・内耳病変を検索"]

対症療法の考え方

の治療でまず押さえるべきは、だけを外科的に取り除いても感音成分は残るという一点である。を閉じても、術後に到達できるの上限は元のまでであり、感音難聴成分そのものは手術では改善しない1。この上限を術前で説明しないまま手術に進むと、患者が期待する「元通りの聞こえ」と実際の結果の落差が大きくなる。

  • 軽度〜中等度で外耳道が保たれていれば、まずで伝音・感音の両成分をまとめて増幅する(種類の選び方は補聴器の適応と種類を参照)
  • 慢性が使えない場合は、頭蓋骨振動で外耳・中耳を迂回するを検討する
  • 補聴器でのが不十分なほど高度な感音成分を伴う例ではを評価する。適応と機器選択はと植込み型補聴器に譲る
  • 手術で是正しうるの穿孔など)があれば手術を検討するが、感音成分は残ることを前提に補聴器・との併用を見据えて計画する

まとめ

  • で、低下・低下・の残存という3条件がそろって診断される。
  • の大きさ、感音成分はの低下量で別々に読む。
  • ・内耳へ波及した/のように1つの疾患が両方を侵す群と、が重なる併存の群に分けて考える。
  • 測定上のであり、真の感音難聴ではない。
  • を外科的に取り除いても感音成分は残るため、術後に到達できる聴力にはによる上限がある。

出典

  1. 1.Stapes Surgery for Otosclerosis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)カーハート・ノッチは2 kHz付近でみられる見かけ上の気骨導差の狭小化で、アブミ骨固着による耳小骨共鳴の減弱に起因し、真の感音難聴を意味しない。また耳硬化症による感音難聴成分は手術では改善しないため、術後に到達できる気導閾値には骨導閾値による上限がある。閲覧 2026-08-02
  2. 2.Hearing Loss in Osteogenesis Imperfecta: Characteristics and Treatment Considerations(Genetics Research International・2011)骨形成不全症の難聴は伝音性のみにとどまらず、経過とともに感音性成分が加わり、混合性難聴を伝音性・感音性単独より高頻度に認めるとする報告。閲覧 2026-08-02