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Disease Atlas · 循環器 · 病態

反射性失神

Reflex syncope

別名
神経調節性失神血管迷走神経性失神Neurally mediated syncopeVasovagal syncope
臓器系
循環器
科目
Internal MedicineCardiology, Heart Surgery, Angiology, Vascular Surgery
トピック
内科学 S-04:失神の鑑別診断循環器内科 A-35:ペースメーカーの適応と種類
鑑別疾患
徐脈性不整脈(洞不全症候群・房室ブロック)体位性起立頻脈症候群
治療薬
ミドドリン
症状
失神前失神悪心発汗蒼白

🧠 全体像:は、自律神経反射が引き起こす一過性の血管拡張・徐脈によってが急落し生じる失神で、失神全体の中で最も頻度が高い型である。血管迷走神経性・・という3つのに分かれるが、実務でいちばん重要なはそのものではなくかかという機序の違いであり、これがそのまま適応の有無を決める。失神という症候をどう切り分けるか(反射性・・の3分類、を疑うの見抜き方)は失神に譲り、本ノートはという病態そのものに絞って扱う。

3つの臨床型

は、誘因と発生状況によって3つの型に分けられる1。

型 典型的な誘因 特徴
長時間の立位、疼痛、恐怖、採血、暑熱、 最も頻度が高い型。若年〜高齢まで幅広く生じる
排尿、排便、咳嗽、嚥下、笑い 特定の生理的行為が直接の引き金になる
頸部の圧迫、、狭い襟のシャツ 高齢男性に多く、明らかな誘因なく起こることもある

いずれもとしての(悪心、発汗、蒼白、)を伴うことが多く、立位または座位で生じ、臥位になると回復が早いという共通点を持つ。

機序:心抑制型と血管抑制型の区別

は、(・からの異常な信号)が脳幹のを介して過剰な副交感神経活動と交感神経活動の低下を引き起こすことで生じる。このの効果がどちらに偏るかで、臨床的な意味合いが大きく変わる。

flowchart TD
    A["誘因刺激(疼痛・長時間立位・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='carotid sinus'>頸動脈洞</span>圧迫など)"] --> B["求心性の異常信号"]
    B --> C["脳幹<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vasomotor center'>血管運動中枢</span>の異常反応"]
    C --> D["副交感神経活動の亢進"]
    C --> E["交感神経活動の低下"]
    D --> F["高度徐脈・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sinus arrest'>洞停止</span>・房室ブロック<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardioinhibitory type'>心抑制型</span>)"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral vasodilation'>末梢血管拡張</span>による血圧低下<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vasodepressor type'>血管抑制型</span>)"]
    F --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='global cerebral perfusion'>全脳灌流</span>の急落・失神"]
    G --> H

⚠️ の適応は(または心抑制成分が優位な混合型)に限られる。 が優位なでは、徐脈を補正してもによる血圧低下そのものは防げないため、は無効である2。型の判別には、症状再現時の心拍数と血圧の変化を対比して記録することが不可欠になる。

頸動脈洞症候群と頸動脈洞マッサージ

は、への機械的刺激に対する反射が過敏になり、・徐脈または著明な血圧低下、あるいはその両方を来す病態である。診断はで行い、仰臥位・立位のそれぞれで左右別にを5〜10秒圧迫しながら心電図・血圧を連続監視する。は、反射機序に合致するがあり40歳を超える患者に適応となる1。

⚠️ は禁忌ではないが、・脳卒中の既往がある患者、または>70%が判明している患者では慎重に行う。 合併症はまれだが、を機械的に刺激することでを誘発するリスクがあるためである1。

診断:ヘッドアップティルト試験

が疑われるが病歴だけでは確定できない場合や、との鑑別が必要な場合には、を行う。で受動的に立位に近い角度まで体位を変換し、症状の再現とそのときの心拍数・血圧の変化を観察する。反射性の反応が誘発されれば、・・混合型のいずれであるかも同時に判定できる。

治療:非薬物療法が基本

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reflex syncope'>反射性失神</span>と診断"] --> B["病態の説明・誘因の同定と回避"]
    B --> C["水分・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='salt intake'>塩分摂取</span>の指導<br>(禁忌がなければ)"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='physical counterpressure maneuver'>身体的対抗圧迫法</span>の指導"]
    D --> E{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prodromal symptoms'>前駆症状</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='awareness (subjective)'>自覚</span>があるか"}
    E -->|"あり"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prodromal symptoms'>前駆症状</span>出現時に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leg crossing'>下肢交叉</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='handgrip'>用手握りしめ</span>などを実施"]
    E -->|"なし・再発を繰り返す"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardioinhibitory type'>心抑制型</span>が確認されれば<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pacemakers'>ペースメーカー</span>を検討"]

の治療は、まず病態の説明と教育、そして誘因の回避から始まる。禁忌(高血圧、心不全など)がなければ水分・量を増やし循環血液量を確保する。

⭐ の(、、上肢のなど)は、があり60歳未満の患者で有用な非薬物治療として考慮される。 をした時点でこれらの手技を行うことで、静脈還流とを高め、失神への進行を防ぐことができる1。薬物療法は全般に対する効果が限定的で、で制御できない選択例に限り、高血圧のない患者でなどのα1刺激薬が補助的に検討される。

⚠️ ペースメーカーの適応(心抑制型に限る)

40歳を超え、再発性・予測不能ながあり、の症候性(3秒超)・無症候性(6秒超)が記録された例、またはのが確認された例では、植込みが考慮される12。で性の反応が誘発された例にも植込みが検討されることがあるが、こちらは・のルートより推奨の強さが弱い1。詳細な適応区分・モード選択は(・房室ブロック)に譲るが、においてが有効なのはあくまで心抑制機序が確認された場合に限られるという前提を外さないことが重要である。

まとめ

  • は血管迷走神経性・・の3型に分かれ、いずれも・立位での発症・臥位での速やかな回復という共通の型を取る。
  • 機序は(高度徐脈・)と(による血圧低下)に分かれ、の適応はに限られる。
  • はの診断に用いるが、・脳卒中の既往や>70%が判明している患者では慎重に行う。
  • はの確定やとの鑑別に用いる。
  • 治療は誘因回避・水分と塩分の摂取指導・というが基本であり、はが確認された再発例に限って検討する。

出典

  1. 1.2018 ESC Guidelines for the diagnosis and management of syncope(European Society of Cardiology (ESC)・2018)反射性失神が血管迷走神経性失神・状況失神・頸動脈洞症候群の3型に分類されること、頸動脈洞マッサージが40歳超の反射機序に合致する原因不明の失神でClass I適応となる一方、TIA・脳卒中の既往または頸動脈狭窄>70%が判明している患者では禁忌ではなく慎重に行うべきとされること(頸動脈雑音や3か月以内という期間限定の記載はない)、等尺性の身体的対抗圧迫法が前駆症状のある60歳未満の患者でClass IIaとして考慮されること、恒久ペースメーカーが40歳超で自然発生の症候性心静止>3秒・無症候性心静止>6秒または心抑制性頸動脈洞症候群にはClass IIa、チルト試験誘発性の心静止性反応にはClass IIbで考慮されることを確認した(原文はEuropean Heart Journal 2018;39(21):1883–1948のp.1901・p.1918)。閲覧 2026-08-19
  2. 2.2021 ESC Guidelines on cardiac pacing and cardiac resynchronization therapy(European Society of Cardiology・2021)恒久ペースメーカーの適応が心抑制型(自然発生の心静止が記録された、または心抑制性の頸動脈洞症候群が確認された)反射性失神に限られ、血管抑制型が優位な反射性失神には推奨されないことを確認した。閲覧 2026-08-19