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Disease Atlas · 循環器 · 先天性疾患

総動脈幹遺残

Truncus arteriosus (persistent truncus arteriosus)

別名
総動脈幹症PTAPersistent truncus arteriosusCommon arterial trunk
臓器系
循環器小児
科目
Microscopic Anatomy and Embryology (Embryology)PediatricsPathology
トピック
発生学 12.6:心血管系:臨床小児科 3-55:チアノーゼ性先天性心疾患病理学 B/27:先天性心疾患
上位概念
先天性心疾患(非チアノーゼ性・チアノーゼ性)
続発疾患
慢性心不全肺高血圧症
関連疾患
原発性免疫不全症候群(SCID・ディジョージ症候群など)
治療薬
フロセミドジゴキシンアルプロスタジル
症状
チアノーゼ
画像所見
心陰影

🧠 全体像:は、大動脈と肺動脈への流出路中隔化が起こらないために、1本の共通動脈幹が両心室からの血流をまとめて受け、体循環・の双方へ配分する疾患である。他の「5つのT」の多くが閉塞(・大血管の位置異常)によってチアノーゼが決まるのに対し、には流出路の狭窄という歯止めが無い。だから出生直後はが高いために軽いチアノーゼで済んでいても、が生理的に下がり始めた瞬間から歯止めなくが増え、他のどのよりも早く、として破綻する。この「閉塞が無いこと」こそが、のうちの単回修復が絶対条件になる理由である。

分類

大動脈・肺動脈の起始パターンで2系統の分類が使われる1。

分類体系 着眼点 概要
Collett-Edwards分類 肺動脈の起始パターン I〜IV型。IV型は肺動脈が動脈幹から起始せず由来の血流に依存する型で、現在は真のではなくの一型として再分類されている
Van Praagh分類 上記に大動脈側の異常を追加 A1〜A4型。A4型はを合併する型で、下半身への血流が動脈管に依存するになる

⚠️ のほとんどは動脈管非依存性だが、Van Praagh A4型(合併)だけは例外である。 この型ではへの血流の大部分を動脈管が担うため、体循環がPGE1(アルプロスタジル)によるに依存する。

病態

flowchart TD
    A["流出路(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conotruncus'>円錐動脈幹</span>)の中隔化が起こらない"] --> B["1本の共通動脈幹が両心室から起始<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='high'>高位</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ventricular septal defect (VSD)'>心室中隔欠損</span>を伴う"]
    B --> C["体循環・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary circulation'>肺循環</span>双方への<br>血流をこの1本が担う"]
    C --> D["出生直後:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary vascular resistance'>肺血管抵抗</span>が高く<br>軽度〜中等度のチアノーゼにとどまる"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary vascular resistance'>肺血管抵抗</span>が生理的に低下"]
    E --> F["歯止めなく<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary blood flow'>肺血流</span>が増加<br>(流出路狭窄という制限が無いため)"]
    F --> G["早期の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='congestive heart failure (CHF)'>うっ血性心不全</span>"]
    F --> H["未修復のまま放置すると<br>急速に不可逆的な肺<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular occlusion'>血管閉塞</span>性病変"]
    B --> I{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='truncal valve'>動脈弁</span>の性状は"}
    I -->|"高度の逆流・狭窄を伴う異形成弁"| J["容量・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pressure overload'>圧負荷</span>が加わり<br>心不全がさらに増悪"]

大動脈・肺動脈の共通の起始部にある1つのは、しばしば3尖よりも数が多い異形成弁で、逆流や狭窄を伴うことがある。この弁の性状が良好かどうかは、心不全の進行速度と外科修復の難易度を左右する。

臨床像

出生直後はが高いため、混合血であってもはそれほど下がらず、軽度のチアノーゼにとどまることが多い。しかし全体に共通する出生後の低下という生理的変化が、では他の病変よりも急速にという形で表面化する——頻呼吸、、発汗、体重増加不良である1。

では単一の第II音(大血管の位置異常で肺動脈成分を欠く)が特徴的で、動脈幹弁の逆流・狭窄があれば対応する雑音を伴う。

22q11.2欠失(DiGeorge症候群)との関連

⭐ の12〜35%は22q11.2を合併する1。(流出路)と由来の胸腺・副甲状腺が同じ時期にを受けるためで、と診断したら()を念頭に置いた評価——のスクリーニング、胸腺低形成に応じたT細胞機能評価、非照射・陰性の使用——をに組み込む必要がある。

診断

心エコーが診断の中心で、動脈幹弁の形態・逆流/狭窄の程度、肺動脈の起始パターン(Collett-Edwards分類)、の(Van Praagh A4型の除外)、冠動脈起始異常の有無を評価する。胸部X線ではの拡大と肺血管陰影の増加がみられる。22q11.2欠失を検出する・検査も診断時に併せて行う。

治療

⭐ は生後1か月以内の単回手術(動脈幹を大動脈側に温存し、右室-肺動脈導管で肺動脈へ新たな流出路を作る術式)で行うのが標準である。 未治療のまま経過すると生後1年までの生存は20%未満ときわめて不良である1。

  • 術前の心不全管理には・ジゴキシンなどを用いる。
  • Van Praagh A4型(合併)では、体循環が動脈管に依存するため診断確定を待たずアルプロスタジル(PGE1)でを維持する。
  • 動脈幹弁に高度の逆流・狭窄がある例は、またはを同時に検討する。

⚠️ そのものが予後を左右する。 米国15施設・216例のでは、新生児退院までに診断されなかったことが術後の主要有害心事象(3.1)の独立した危険因子であり、時間150分超(3.5)、右室-肺動脈導管径があたり50mm超(4.7)も同様に危険因子であった。この研究全体では主要有害心事象が20%、手術死亡が7%に生じている2。

術後は成長に応じて右室-肺動脈導管が相対的に狭小化するため、カテーテルによる拡張や、による導管交換を要することが多い。

まとめ

  • は流出路の中隔化が起こらないために生じ、1本の共通動脈幹が体循環・双方の血流を担う。流出路狭窄という歯止めが無いため、他のより早くに至る。
  • 分類はCollett-Edwards(肺動脈起始パターン)とVan Praagh(大動脈側の異常を含む)の2系統があり、Van Praagh A4型(合併)だけがである。
  • 22q11.2()を12〜35%に合併するため、診断時に・T細胞機能・の選択を含めた評価を行う。
  • 標準治療は生後1か月以内の単科修復で、未治療の1年は20%未満。新生児退院前のが術後転帰を左右する。
  • 動脈幹弁の性状(逆流・狭窄)が心不全の進行速度と手術難易度を左右し、術後は右室-肺動脈導管の再介入をしばしば要する。

出典

  1. 1.Truncus Arteriosus(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)総動脈幹遺残の分類にはCollett-Edwards分類(肺動脈の起始パターンによるI〜IV型、現在IV型は真の総動脈幹遺残ではなく肺動脈閉鎖として再分類)とVan Praagh分類(大動脈側の異常も加味したA1〜A4型)の2系統があること、22q11.2微小欠失(DiGeorge症候群)を12〜35%に合併すること、単一の動脈幹が体循環・肺循環双方への血流を担うため出生直後は肺血管抵抗が高く軽度のチアノーゼにとどまるが、肺血管抵抗が生理的に低下するにつれて肺血流過多からうっ血性心不全に至ること、外科的修復は生後1か月以内の単回手術で行うのが標準であること、未治療では生後1年までの生存が20%未満と予後が極めて不良であることを確認した(2024年3月10日最終更新のNCBIライブページで確認)。閲覧 2026-09-07
  2. 2.Characteristics and operative outcomes for children undergoing repair of truncus arteriosus: A contemporary multicenter analysis(The Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery・2019)米国15施設で2009〜2016年に総動脈幹遺残の修復術を受けた216例の多施設後方視的研究で、主要有害心事象(術後ECMO・心肺蘇生・手術死亡の複合)が44例(20%)に生じ、手術死亡は15例(7%)であったこと、多変量解析で新生児退院までに総動脈幹遺残と診断されなかったこと(オッズ比3.1)、人工心肺時間150分超(オッズ比3.5)、右室-肺動脈導管径が体表面積あたり50mm超(オッズ比4.7)が主要有害心事象の独立した危険因子であったことを確認した閲覧 2026-09-07