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Drug Atlas · A13 Other / その他

LSD

lsd

分類
Other / その他
科目
Forensic Medicine
トピック
法医学 30:乱用薬物と薬物関連死
副作用
幻覚不安動悸発汗

🧠 全体像:LSD(酸ジエチルアミド)は由来の化合物で、として大脳皮質の知覚処理を変容させる。1950年代には末梢平滑筋標本でのから「抗セロトニン薬」と呼ばれたが、中枢での作用はへの作動()作用であることが現在確立している。マイクログラム単位の低用量で作用し、を形成しない点はオピオイドと対照的である。死は稀で、危険の本体は精神症状下の異常行動による外傷である。

同系統の薬物との比較

薬物 系統・受容体 LSDとの違い
LSD 由来の、5-HT2A部分作動 ・知覚変容が主体。承認された医療用途を持たない
天然、5-HT1B/1D+α作動(血管収縮) 同じ骨格だが作用は乏しく、として用いられる
合成トリプタン、5-HT1B/1D選択的作動 が主作用で作用はない
NMDA受容体拮抗( 受容体は異なるが解離・知覚変容を起こす。麻酔・という医療用途を持つ

LSDはと同じ骨格()を共有する「親戚」だが、作用する受容体はまったく別である。 が5-HT1B/1D作動と血管収縮を主作用にするのに対し、LSDは5-HT2A作動による知覚変容が主作用になる。

機序

flowchart TD
    A["LSD<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='ergot alkaloid'>麦角アルカロイド</span>由来の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='semisynthetic'>半合成</span>リゼルグ酸誘導体"] --> B["大脳皮質第V層<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pyramidal neurons'>錐体細胞</span>の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='5-HT2A receptor'>5-HT2A受容体</span>に結合"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='partial agonist'>部分作動薬</span>として受容体を活性化"]
    C --> D["視床・皮質の感覚フィルタリングが変化"]
    D --> E["知覚変容・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='visual hallucination(s)'>幻視</span><br>⭐マイクログラム単位の低用量で作用"]
    C --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sympathomimetic symptoms'>交感神経刺激症状</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='mydriasis'>散瞳</span>・頻脈・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='elevated blood pressure'>血圧上昇</span>・発汗・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperthermia'>高体温</span>"]
    C --> G["急速な耐性形成<br>数日の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='drug holiday (treatment interruption)'>休薬</span>で消失。<span class='jp-term jp-term-diagram' title='physical dependence'>身体依存</span>は形成しない"]
    E --> H["⚠️<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute intoxication'>急性中毒</span>死は稀<br>異常行動による外傷死が主なリスク"]

💡 「抗セロトニン薬」という歴史的な呼び名は、末梢の実験系で観察された現象に由来する誤解である。 LSDは末梢平滑筋のを阻害する一方、中枢神経系ではを強く作動させる。という主作用を説明するのは後者であり、末梢と中枢で逆のを示す点がこの薬の理解を難しくしてきた。

薬物動態

項目 値・特徴
吸収 経口摂取後、消化管から吸収される
作用発現・持続 摂取後30〜60分で発現し、8〜12時間程度持続する
代謝 主に肝で代謝される。臨床的に重要なは知られていない
耐性 連日使用で数日のうちに急速な耐性が形成されるが、すれば数日で消失する

医療用途があるか

現在、LSDを適応症として承認している国はない。1950〜60年代には精神医学領域で研究用に使われたが、強化とともに研究は停滞した。近年はMM120として・うつ病を対象としたが進み、米国FDAのを受けているが、2026年現在も承認薬ではなく段階にとどまる

⚠️ の進展は「安全性が確立した」ことを意味しない。 治験は医療者管理下・既知用量・スクリーニング済みの対象者で行われており、乱用時の状況とは前提が異なる。

乱用の実態と致死量の考え方

LSDはオピオイドのような「用量が閾値を超えると呼吸が止まる」型の死をほとんど起こさない。危険の本体は薬理毒性ではなく、知覚変容・判断力低下の間に生じる異常行動による外傷(・交通事故など)である。 極めて低用量で作用するため摂取量の推定が難しく、単一の「」を論じること自体が他の薬物と比べて臨床的意味を持ちにくい。反応の強さ・方向性(か強い不安・恐怖か)はが大きく、環境要因にも左右される。

急性中毒への対応と合併症

  • ⚠️ 急性の不安・恐怖反応(いわゆる「バッドトリップ」)には、静穏で安心できる環境での見守り(talking down)を基本とする
  • ・不安が強い場合はなどのを用いる。が強ければなどの抗精神病薬を追加する
  • ⚠️ などの既往・素因があると症状の顕在化・増悪を招きうるため使用を避けるべきである。LSDに拮抗する特異的なは存在せず、対応は対症療法が中心となる
  • HPPD()はに収載された正式な診断名で、知覚症状が使用中止後も遷延・する状態を指す。俗にいう「」はこの現象を指すことが多いが、HPPDは一過性の再体験にとどまらず日常生活に支障をきたす慢性状態である点で区別される

急性・慢性の健康被害と剖検所見

頻度・時期 内容
急性(自律神経症状) 発汗
急性(精神症状) 知覚変容・不安、まれにを失う重度の精神病様状態
稀・重篤 異常行動による外傷死
慢性 HPPD(知覚症状の遷延・

まとめ

  • LSDは由来の化合物で、大脳皮質のへの部分作動が作用の本体である。
  • 「抗セロトニン薬」という歴史的な呼称は末梢での観察に基づく誤解で、中枢での作用はの作動である。
  • マイクログラム単位の低用量で作用し、耐性は数日で急速に形成・消失する。は形成しない。
  • 死は稀で、危険の本体は知覚変容下の異常行動による外傷死である。単一のという考え方は臨床的意味を持ちにくい。
  • 急性期の対応は静穏な環境での見守り(talking down)を基本とし、必要に応じベンゾジアゼピン・抗精神病薬を用いる。
  • HPPDはに収載された正式な診断名で、俗にいう「」より広い慢性の知覚障害を指す。
  • 近年はMM120として・うつ病のが進むが、2026年現在も承認薬ではない。