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Drug Atlas · B36 Targeted cancer therapy / 分子標的薬

ピシバニール

OK-432

分類
Other / その他
科目
Pharmacology
トピック
B36: Drugs used in cancer treatment VI (Large molecule signal transduction inhibitors. Immunostimulant anticancer drugs)
承認適応
リンパ管奇形胸水
副作用
発熱腫脹吸気性喘鳴

🧠 全体像:OK-432()は、Streptococcus pyogenes()Su株をで処理した製剤であり、でも抗菌薬でもなく・薬として使う。嚢胞内に注入すると局所の炎症反応を強く誘導し、続くサイトカイン産生と内皮細胞の透過性亢進によっての排出が促され、管腔が縮小する1——これが()への効き方である。病変によく効き、病変には効きにくいという効果の分かれ方が臨床上の最で、これはそのものより「注入した薬液が病変内にとどまり広範囲の嚢胞壁に接触できるかどうか」という物理的な構造の違いで説明される。製剤がを添加剤として含有するため、⚠️ によるショックの既往は禁忌、・への過敏症の既往は慎重投与の対象になる1。

⚠️ 日本の電子添文が一次資料である。 OK-432()は日本で開発・承認された製剤で、以下の適応・用法・禁忌はすべて日本の電子添文の記載である1。米国・で承認されているかはここでは確認していないので、「世界的に第一選択」といった国をまたぐ断定はできない。

薬効群の中での位置づけ

同じ「腫瘍・嚢胞性病変に薬液を局所注入する」薬でも、OK-432はではなく・薬という点で他の剤と一線を画す。

薬剤 分類 での役割
OK-432() () 病変に特に有効。局所炎症→サイトカインによる亢進→排出→管腔縮小
(として転用) 病型を問わず高い。に注意
ドキシサイクリン 抗菌薬(として転用) の選択肢の一つ

⭐ OK-432は「病変を殺す」薬ではなく「炎症を起こして治す」薬である。 のようにやを標的にするのではなく、細菌成分による強い局所炎症反応をに誘導し、その結果として嚢胞を縮小させる。

機序

flowchart TD
    A["OK-432を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymphatic malformation'>リンパ管奇形</span>の嚢胞内へ局所注入"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='group A streptococcus'>A群溶血性連鎖球菌</span>由来の菌体成分が<br>局所の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune cell'>免疫細胞</span>を強く刺激"]
    B --> C["炎症反応の惹起と<br>マクロファージ等の誘導"]
    C --> D["内皮細胞の透過性亢進作用をもつ<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumour necrosis factor'>TNF</span>等のサイトカイン産生"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymph'>リンパ液</span>の排出が促進される"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cystic space'>嚢胞腔</span>が縮小・消退"]
    G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='macrocystic'>大嚢胞性</span>病変:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='unilocular'>単房性</span>〜<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multilocular'>多房性</span>の<br>大きな嚢胞に薬液が広く接触"] --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='response rate'>奏効率</span>が高い"]
    I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='microcystic'>微小嚢胞性</span>病変:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spongiform (appearance)'>スポンジ状</span>の<br>小嚢胞に薬液が均等に届きにくい"] --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='response rate'>奏効率</span>が下がる"]

💡 電子添文が述べている機序は「線維化で潰す」ではなく「を排出させて管腔を縮める」である。 18.1.3 は、による炎症反応の惹起に続いてマクロファージ等が誘導され、内皮細胞の透過性亢進作用をもつ等のサイトカインが産生されることでの排出が促進され管腔が縮小する、と記載している1。一般で語られる「炎症→線維化→閉塞」という説明とは力点が違うので、機序を書くときは混ぜない。

💡 効果の差はの強弱ではなく、注入した薬液が病変内でどれだけ広く接触できるかという物理的な条件で決まる。 病変は〜の大きな腔があるため注入した薬液が嚢胞壁全体に接触しやすいが、病変はの小嚢胞がしており薬液が均等に行き渡りにくい。11研究352例のでも、OK-432のは病変で病変より有意に高かった(1.51、95%信頼区間1.298-1.764)2。

⚠️ この1.51はではなく観察研究11本の統合値で、も中等度(I²=51.2%)である。 さらに組入れ論文で「」の定義そのものが割れており、6論文は径2 cm超、5論文は径1 cm超をとしている。著者は径1 cm超で分類した5論文だけの部分集団でも有意差が残ること(1.37、95%信頼区間1.04-1.80)を示したうえで、径1 cm超の病変にOK-432を用いるべきとしている2。「かか」を判定するときは、どのの話かを確かめる。

適応

日本の電子添文が掲げる効能又は効果は次の4つで、それぞれに限定語が付いている1。

効能又は効果(電子添文の記載) 補足
() 病変へのとして特に有効2
消化器癌患者及び肺癌患者における癌性胸・腹水の減少 胸水だけでなく腹水も対象。内(・腹腔内)へ投与する
他剤無効の、(上顎癌、、咽頭癌、)及び 「他剤無効の」が掛かる。は4つの部位が列挙されている
胃癌(手術例)患者及び原発性肺癌患者における化学療法との併用による生存期間の延長 単剤での延命ではなく化学療法への。胃癌は手術例、肺癌は原発性に限られる

⚠️ 「胃癌・肺癌に延命効果がある」と縮めて書かない。 承認されているのは手術例の胃癌と原発性肺癌で、しかも化学療法との併用としてである1。

用法・用量

用法・用量は適応ごとに書き分けられている。平坦化すると投与量が1桁変わる1。

適応 用法・用量
0.05〜0.1 KE/mL濃度の懸濁溶解液を調製し、吸引した液と同量を局所に注入する。1回は2 KEを上限とし、年齢・症状により適宜増減
癌性胸・腹水の減少 1回5〜10 KEをで懸濁溶解し、週1〜2回、内に投与
他剤無効の・ 1回5〜10 KEを毎日又は数日に1回、腫瘍内又は腫瘍辺縁部に注入
化学療法との併用(胃癌手術例・原発性肺癌) 、皮下又は皮内に投与。初回0.2〜0.5 KEから始め、連日又は隔日1回で2〜3週間かけて2〜5 KEまで漸増。は1回2〜5 KE、週1〜2回
  • ⚠️ 同日内に同一患者に対し、2経路による投与は行わない1。
  • 癌性胸・腹水と・では、発熱などの感受性にがあるため少量投与から始めて漸増することが望ましいとされている1。

禁忌・注意

  • 禁忌は2項目だけである:①本剤によるショックの既往歴のある患者、②によるショックの既往歴のある患者(本剤はを含有している)1
  • ⚠️ 「ペニシリンアレルギー=禁忌」ではない。 への過敏症の既往(9.1.1)、への過敏症の既往(9.1.2)、本人・家族のアレルギー体質(9.1.3)は、禁忌ではなく特定の背景を有する患者に置かれている。禁忌に上がるのはショックの既往である1
  • ⚠️ ショック・アナフィラキシーを確実に予知する方法はない。 電子添文は、事前の十分な(を含有するので等によるアレルギー歴は必ず確認する)、救急処置のとれる準備、投与開始から終了後までの安静・観察、後に再開する場合は少量から、の4点を求めている1
  • ⚠️ 局所又は内への大量投与で、1〜数時間後の遅発性ショックが報告されている。 投与直後に問題がなくても観察を打ち切らない1
  • ⚠️ 発熱・局所腫脹は必発に近い高頻度の反応である。 への投与では腫脹79.3%、発熱86.1%と報告されており、これは失敗ではなく意図した炎症反応の表れである1
  • ⚠️ 気道近傍の病変では、炎症による腫脹が気道閉塞を起こしうる。 電子添文は、投与後の腫脹により注射部位(特に頸部)によっては気管圧迫・喘鳴の可能性があるため、投与量は必要最小限度にとどめ経過観察を十分行うよう求めている1
  • 重大な副作用はアナフィラキシーを含むショック、(発現・増悪とも)、の3項目で、いずれも頻度不明である1
  • 心疾患の疑いのある患者・患者は、動物で大量長期投与時に溶連菌感染症類似の所見(心障害・腎障害・)がみられていることから注意が要る1

副作用

⚠️ 頻度は適応ごとに別に集計されている。 電子添文の注記では、下表の百分率は注1=、注2=悪性腫瘍での値である。発熱はで86.1%、悪性腫瘍では23.1%と4倍近く違う1。

器官 5%以上 5%未満 頻度不明
過敏症 — 、発疹 紫斑
注射部位反応 腫脹(79.3%注1)、発赤(59.7%注1)、疼痛 、熱感 —
血液 (18.2%注1) 、貧血 —
肝臓 — 上昇、上昇、Al-P上昇 —
消化器 — 、悪心・嘔吐、下痢 —
腎臓 — 蛋白尿 上昇、クレアチニン上昇、
その他 発熱(86.1%注1、23.1%注2)、上昇(22.7%注1) 、頭痛、上昇、関節痛 —

注1) 注2)悪性腫瘍

まとめ

  • OK-432()はSu株をペニシリン処理した製剤で、ではなく・薬として使う。日本で承認された製剤であり、以下はすべて日本の電子添文の記載である1。
  • の嚢胞内注入で局所の炎症反応を起こし、等のサイトカインによる亢進を介しての排出が促進され管腔が縮小する。臨床的には病変によく効き病変には効きにくい(観察研究11本の統合で1.51)。
  • 他に癌性胸水・腹水の減少(内投与)、他剤無効の・(腫瘍内注入)、手術例の胃癌・原発性肺癌における化学療法併用での延命に適応がある。用法・用量は適応ごとに別で、1桁違う。
  • ⚠️ 禁忌は「本剤またはによるショックの既往」の2項目であり、・への過敏症の既往は特定の背景を有する患者の側に置かれている。発熱・局所腫脹は必発に近い反応で、気道近傍の病変では腫脹が気管圧迫・喘鳴を起こしうるため投与量を必要最小限度にとどめる。大量投与では1〜数時間後の遅発性ショックの報告がある。

出典

  1. 1.ピシバニール注射用1KE/ピシバニール注射用5KE 添付文書(医薬品医療機器総合機構(PMDA)・2022)2022年12月改訂(第1版)の電子添文で次を確認した。成分はストレプトコックス・ピオゲネス(A群3型)Su株のペニシリン処理凍結乾燥粉末で、添加剤としてベンジルペニシリンカリウムを含有する。禁忌は2項目のみ(2.1 本剤によるショックの既往歴、2.2 ベンジルペニシリンによるショックの既往歴)で、ペニシリン系・セフェム系抗生物質への過敏症の既往は禁忌ではなく9.1(特定の背景を有する患者)に置かれている。効能又は効果は「胃癌(手術例)患者及び原発性肺癌患者における化学療法との併用による生存期間の延長」「消化器癌患者及び肺癌患者における癌性胸・腹水の減少」「他剤無効の、頭頸部癌(上顎癌、喉頭癌、咽頭癌、舌癌)及び甲状腺癌」「リンパ管腫」の4つ。用法及び用量は適応ごとに書き分けられており、リンパ管腫は0.05〜0.1KE/mL濃度の懸濁溶解液を吸引リンパ管腫液量と同量局所注入し1回総投与量2KEを上限、癌性胸・腹水は1回5〜10KEを週1〜2回漿膜腔内、頭頸部癌・甲状腺癌は1回5〜10KEを毎日又は数日に1回腫瘍内又は腫瘍辺縁部、化学療法併用は初回0.2〜0.5KEから2〜3週間かけて2〜5KEまで漸増し維持量1回2〜5KEを週1〜2回、筋肉内・皮下又は皮内へ投与する(同日内に同一患者へ2経路による投与は行わない)。重大な副作用はショック・アナフィラキシー、間質性肺炎、急性腎障害でいずれも頻度不明。11.2のその他の副作用はリンパ管腫で腫脹79.3%・発赤59.7%・発熱86.1%・CRP上昇22.7%・白血球増加18.2%、悪性腫瘍では発熱23.1%。14.2.3はリンパ管腫への投与について、投与後の腫脹により注射部位(特に頸部)によっては気管圧迫・喘鳴の可能性があるため投与量は必要最小限度にとどめ経過観察を十分行うとする(事前の気道評価の指示はない)。15.1は局所又は漿膜腔内への大量投与により遅発性ショック(1〜数時間後)があらわれたとの報告を記載する。18.1.3のリンパ管腫に対する作用機序は、局所投与による炎症反応の惹起に続いてマクロファージ等の誘導と内皮細胞の透過性亢進作用をもつTNF等のサイトカイン産生が起こり、リンパ液の排出が促進されて管腔が縮小するものと考えられる、である。閲覧 2026-08-11
  2. 2.Efficacy of OK-432 sclerotherapy for different types of lymphangiomas: a review and meta-analysis(Brazilian Journal of Otorhinolaryngology・2023)11研究352例(いずれも無作為化比較試験ではなく観察研究)のメタ解析でOK-432(ピシバニール)硬化療法の奏効率が大嚢胞性リンパ管奇形で微小嚢胞性病変より有意に高いこと(相対リスク1.51、95%信頼区間1.298-1.764、異質性I2=51.2%)、ただし組入れ論文で大嚢胞性の定義が割れており6論文が径2cm超・5論文が径1cm超を大嚢胞性としていること、径1cm超で分類した5論文だけの部分集団でも有意(相対リスク1.37、95%信頼区間1.04-1.80)であること、結論として径1cm超の病変にOK-432を用いるべきと述べていること、組入れ論文が主に欧米で実施されており他地域への外挿は限界と著者自身が断っていることを確認した閲覧 2026-08-11