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Drug Atlas · B36 Targeted cancer therapy / 分子標的薬

アベルマブ

avelumab

分類
Targeted cancer therapy / 分子標的薬Biologics & immunomodulators / 生物学的製剤
商品名(日本)
バベンチオ
商品名(EU)
Bavencio
科目
Pharmacology
トピック
B36: Drugs used in cancer treatment VI (Large molecule signal transduction inhibitors. Immunostimulant anticancer drugs)
承認適応
メルケル細胞癌尿路上皮癌腎細胞癌
副作用
悪心倦怠感下痢皮疹呼吸困難
影響検査値
甲状腺刺激ホルモン

🧠 全体像:は・と同じである。標的も機序も共通するが、この薬を他と分けているのは適応の性格の方——①有効な薬が長く無かった希少癌であるで最初に道を開いた薬であり、②では「叩く薬」ではなく化学療法で得た寛解を守る維持療法としてを延ばした。⚠️ さらにこの薬は承認の内容が国でずれている代表例でもあり、適応・年齢・用量のいずれも米国・・日本で一致しない。

薬効群の中での位置づけ

代表薬 結合する側
CTLA-4 ・ T細胞側(リンパ節での)
PD-1 ・・ T細胞側
PD-L1 ・・ 腫瘍・側

⭐ 3剤は「標的が同じで、居場所が違う」と覚える。 は化学療法・との併用、は後の、はとの維持療法が持ち場になる。

💡 の添付文書は本剤を「ヒトλモノクローナル抗体」と記載し、Fcの改変には触れていない1。の中でFc機能(=)が保たれているかどうかは、この系統を比べるときによく持ち出される論点である。⚠️ ただし構造上の差が臨床効果の差として示されているわけではない——分類の手掛かりとして押さえ、薬剤選択の根拠には使わない。

機序

flowchart TD
    A["腫瘍細胞・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antigen-presenting cell (APC)'>抗原提示細胞</span>がPD-L1を発現"] --> B["PD-L1がT細胞のPD-1に結合し<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='inhibitory signal'>抑制シグナル</span>が入る"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='T-cell exhaustion'>T細胞疲弊</span> → 腫瘍が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune surveillance'>免疫監視</span>から逃れる"]
    D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='avelumab'>アベルマブ</span>がPD-L1に結合"] -.->|"PD-1およびB7.1との結合を阻止"| B
    D --> E["T細胞への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inhibitory signal'>抑制シグナル</span>が解除される"]
    E --> F["腫瘍局所でのT細胞の抗腫瘍応答が回復"]
    E --> G["自己への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune tolerance'>免疫寛容</span>も同時に緩む"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune-related adverse events'>免疫関連有害事象</span>(irAE)"]

はPD-L1に結合し、PD-L1とその受容体であるPD-1およびB7.1の相互作用をどちらも遮断する1。PD-1側を塞ぐ薬と最終的に断ち切る相互作用は同じであり、irAEの機序・もPD-1阻害薬と共通する。

適応は国で一致しない

⚠️ 同じ薬で、承認されている・年齢・用量が米国・・日本で異なる。 「の適応」を一つの表として覚えると必ずどこかで外れる。

米国()1 EU(EMA)2 日本(PMDA)3
転移性MCC、12歳以上の小児と成人 転移性MCC、成人単剤 なMCC(成人)
・維持療法 一次で増悪しなかった局所進行・転移性UC 同左(成人) なにおける化学療法後の維持療法
・既治療 あり(中/後の増悪、または術前・術後補助後12か月以内の増悪) なし なし
併用で進行RCCの一次治療 同左(成人) 併用で・転移性RCC
用法 800 mgを60分かけて2週毎(体重によらない固定用量) 同左 1回10 mg/kgを1時間以上かけて2週毎(体重換算)

💡 固定用量と体重換算用量が併存している理由は開発の経緯にある。 承認の根拠となったJAVELIN Merkel 200試験もJAVELIN Bladder 100試験も10 mg/kg 2週毎で実施された1。米国・はその後の解析にもとづき固定用量800 mgへ移行したが、日本の添付文書は10 mg/kgのままである3。⚠️ 「は800 mg」と一律に覚えない。

効いた根拠

メルケル細胞癌 — 希少癌で最初に道を開いた

JAVELIN Merkel 200試験は単群・ので、既治療のパートA(88例)で33%(11%・22%)、の中央値は40.5か月、未治療のパートB(116例)で40%(16%・23%)、の中央値18.2か月だった1。

⭐ 注目すべきはよりもの長さである。 化学療法はこそ高いがが数か月で崩れる病気なので、「した人のが年単位で続く」ことが治療の意味を変えた。はPD-L1発現の有無、の有無によらず観察されている1——ウイルス状態やPD-L1で患者を選り分ける根拠にはなっていない。

⚠️ パートBのは「どの時点の解析か」で大きく違う。 米国添付文書が載せているのは116例・40%(95%信頼区間31〜49)である1。一方、総説などでは29例・62%という値が引用されてきたが、これはパートBのあらかじめ計画されたの数値であり、⚠️ 添付文書には記載がない。⭐ ののをそのまま最終成績として引かない。

尿路上皮癌 — 「維持療法」という使い方そのものが成果

JAVELIN Bladder 100試験は、一次(4〜6コース)で増悪しなかった局所進行・転移性700例を、単独と+にしたである。の中央値は21.4か月対14.3か月(0.69、95%信頼区間0.56〜0.86)、PD-L1陽性集団では0.56(0.40〜0.79)とさらに大きかった4。

💡 「増悪してから次の薬」ではなく「増悪していないうちに切り替える」。 化学療法を続けると毒性が積み上がり、すれば再増悪する——その隙間に毒性プロファイルの違う薬を差し込むのが、この「切り替え型の維持療法」の発想である。⚠️ ただし無料ではない:Grade 3以上の有害事象は47.4%対25.2%と、支持療法だけの群のほぼ倍だった4。

用法・用量

米国・では800 mgを60分かけて2週毎にし、初回から4回目までは抗ヒスタミン薬とを前投与する(以後は必要に応じて)1。日本では1回10 mg/kgを1時間以上かけて2週毎で、を軽減するため投与前に抗ヒスタミン剤・剤等を投与する3。では(経口)と併用する。実際の用量・レジメンは適応・施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意・副作用

  • 日本の禁忌は本剤の成分に対する過敏症の既往歴のみである3
  • ⚠️ の頻度がこの薬の実務上の特徴になっている。 米国の添付文書で26%(Grade 3〜4は0.7%)1、日本の添付文書で22.9%3。が用法の一部として明記されているのはこのためで、他のとは運用が違う
  • ⚠️ 日本の添付文書は欄にによる死亡例を挙げている(重大な副作用としての頻度2.1%)。・呼吸困難・咳嗽の初期症状と胸部X線での観察が求められる3
  • irAEの(ステロイドが基本、は不可逆的なことが多い)はPD-1/PD-L1阻害薬に共通する。重大な副作用として甲状腺機能障害19.6%(低下症16.3%・亢進症5.1%)、12.7%、大腸炎1.7%・重度の下痢2.5%、心筋炎0.2%、重症筋無力症0.1%、1型糖尿病0.3%が記載されている3
  • 高頻度の副作用は下痢31.4%、疲労24.4%、悪心15.8%3
  • ⚠️ 併用でに用いる場合は(MACE)が7%に生じている1——併用相手の血管毒性がされる文脈として押さえる

まとめ

  • 。PD-L1とPD-1・B7.1の相互作用をどちらも遮断し、を解除する。irAEの構図はPD-1阻害薬と共通。
  • 持ち場はとの維持療法、そして併用によるの一次治療。
  • ⚠️ 適応・年齢・用量が国で一致しない。 米国のみ既治療の適応を持ち、米国のみ12歳以上の小児を含み、日本だけ体重換算の10 mg/kg(米国・は固定用量800 mg)。
  • ではそのものよりの持続(既治療例で中央値40.5か月)が意味を変えた。PD-L1発現・ウイルス状態で患者を選り分ける根拠にはなっていない。
  • では切り替え型の維持療法としてを21.4か月対14.3か月へ延長したが、Grade 3以上の有害事象は倍近くに増える。
  • が20%台と高く、が用法の一部として添付文書に書かれている点が実務上の特徴。

出典

  1. 1.BAVENCIO (avelumab) injection, for intravenous use — Highlights of Prescribing Information(DailyMed(U.S. National Library of Medicine)/EMD Serono・2026)アベルマブがPD-L1に結合してPD-L1とPD-1およびB7.1との相互作用を遮断すること、DESCRIPTION節が本剤を「human IgG1 lambda monoclonal antibody」と記載しFcの改変に言及していないこと、米国の承認適応が①12歳以上の小児および成人の転移性メルケル細胞癌、②白金製剤を含む一次化学療法で増悪しなかった局所進行・転移性尿路上皮癌の維持療法、③白金製剤を含む化学療法中・後に増悪した、または術前・術後補助白金製剤治療から12か月以内に増悪した局所進行・転移性尿路上皮癌、④アキシチニブとの併用による進行腎細胞癌の一次治療であること、用法が800 mgを60分かけて2週毎に点滴静注し初回4回までは抗ヒスタミン薬とアセトアミノフェンを前投与することであること、infusion reactionが26%(Grade 3〜4は0.7%)に生じたこと、進行腎細胞癌患者の7%に主要心血管有害事象(MACE)が生じたこと、JAVELIN Merkel 200試験の既治療パートA 88例で奏効率33%(完全奏効10例=11%・部分奏効19例=22%、奏効期間中央値40.5か月)、未治療パートB 116例で奏効率40%(完全奏効19例=16%・部分奏効27例=23%、奏効期間中央値18.2か月)であり奏効がPD-L1発現・MCV有無によらず観察されたこと、同試験の投与量が10 mg/kgを2週毎であったことを確認した(添付文書の改訂は2026年7月)。閲覧 2026-09-04
  2. 2.Bavencio (avelumab) — European Public Assessment Report(European Medicines Agency・2026)2026年9月4日の閲覧時点で掲載されているEUの承認適応が、①転移性メルケル細胞癌に対する成人単剤療法、②アキシチニブ併用による進行腎細胞癌の成人一次治療、③白金製剤ベース化学療法後に増悪していない局所進行・転移性尿路上皮癌の成人一次維持療法の3つであり、いずれも成人に限られていること、米国にある「既治療の尿路上皮癌」の適応はEUの承認範囲に含まれないこと、EUの販売承認日が2017年9月18日であることを確認した。閲覧 2026-09-04
  3. 3.バベンチオ点滴静注200mg 添付文書(医薬品医療機器総合機構(PMDA)/メルクバイオファーマ・2026)日本の効能・効果が「根治切除不能なメルケル細胞癌」「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」「根治切除不能な尿路上皮癌における化学療法後の維持療法」の3つであること、用法・用量がいずれの適応でも成人に1回10 mg/kgを2週間間隔で1時間以上かけて点滴静注であること(腎細胞癌ではアキシチニブと併用)、infusion reactionを軽減するため投与前に抗ヒスタミン剤・解熱鎮痛剤等を投与すること、警告に間質性肺疾患による死亡例が挙げられていること、禁忌が本剤成分への過敏症の既往のみであること、重大な副作用として間質性肺疾患2.1%・肝機能障害12.7%・甲状腺機能障害19.6%(甲状腺機能低下症16.3%・亢進症5.1%)・大腸炎1.7%・重度の下痢2.5%・心筋炎0.2%・重症筋無力症0.1%・1型糖尿病0.3%・infusion reaction 22.9%が記載されていること、その他の副作用として下痢31.4%・疲労24.4%・悪心15.8%が記載されていることを確認した(2026年8月改訂・第16版)。閲覧 2026-09-04
  4. 4.Avelumab Maintenance Therapy for Advanced or Metastatic Urothelial Carcinoma(The New England Journal of Medicine・2020)白金製剤(ゲムシタビン+シスプラチンまたはカルボプラチン4〜6コース)で増悪しなかった切除不能局所進行・転移性尿路上皮癌700例を、最良支持療法単独と最良支持療法+アベルマブ維持療法へ無作為割付した第III相試験で、全体集団の全生存期間中央値が21.4か月対14.3か月(死亡のハザード比0.69、95%信頼区間0.56〜0.86、P=0.001)、1年生存が71.3%対58.4%であったこと、PD-L1陽性集団では1年生存79.1%対60.4%(ハザード比0.56、95%信頼区間0.40〜0.79、P<0.001)であったこと、無増悪生存期間中央値が全体集団で3.7か月対2.0か月であったこと、Grade 3以上の有害事象が47.4%対25.2%であったことを確認した(抄録を閲覧しており全文は未取得)。閲覧 2026-09-04