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Drug Atlas · A22 Other / その他

オマベロキソロン

omaveloxolone

分類
Other / その他
科目
Pharmacology
トピック
Core35: Orphan drugs
承認適応
Friedreich失調症
副作用
頭痛悪心
監視検査値
アミノトランスフェラーゼナトリウム利尿ペプチド脂質パネル

🧠 全体像:はの活性化薬で、に対して2023年に米国で初めて承認されたである1。欠乏の下流で起こる増大という機序に直接介入する設計で、対症療法しかなかったこの疾患の治療体系に変化をもたらした。一方で、上昇・上昇・脂質異常という3系統のモニタリング項目を抱え、中等度以上の阻害薬・はいずれも「併用を避ける」という強い相互作用のがあり、さらに自身が弱いとしての効果を下げる、というのがこの薬の実務上の骨格になる12。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='frataxin'>フラタキシン</span>欠乏(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Friedreich ataxia'>Friedreich失調症</span>)"] --> B["ミトコンドリアの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='iron-sulfur cluster'>鉄硫黄クラスター</span>合成障害"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='respiratory chain'>呼吸鎖</span>障害・鉄蓄積"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oxidative stress'>酸化ストレス</span>の増大"]
    D --> E["神経・心筋の変性進行"]
    F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='omaveloxolone'>オマベロキソロン</span>"] --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nuclear factor erythroid 2-related factor 2'>Nrf2</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transcription factor'>転写調節因子</span>)を活性化"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antioxidant response'>抗酸化応答</span>遺伝子群の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='induction of gene expression'>発現誘導</span>"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oxidative stress'>酸化ストレス</span>に対する細胞保護・ミトコンドリア機能の改善"]
    I -.->|"下流の変性進行を抑制"| E

💡 原因(欠乏)そのものを補うのではなく、その下流のに介入する。 は細胞質でに結合し分解される負の制御を受けているが、下では核内に移行し遺伝子群の転写を誘導する。はこの経路を薬理学的に活性化し、欠乏が引き起こすの結果に対抗する。

薬物動態

項目 値・特徴
経口(カプセル)
代謝 主にCYP3A4で代謝される(併用でが約4倍、Cmaxが約3倍)2
併用薬が本剤に与える影響 強力・中等度いずれの阻害薬もも「併用を避けることが推奨される」。 阻害薬をやむを得ず併用する場合のみ減量する(下記)。(中等度)でが約49%低下12
本剤が併用薬に与える影響 弱い・CYP2C8・BCRP。 のを約45%、を約35%、を約30%低下させる2
食事・ 空腹時投与。(果実・果汁)は阻害作用があるため避ける2

適応

16歳以上のの成人・青少年に適応がある。米国とで適応年齢は一致している(米国:adults and adolescents aged 16 years and older、 SmPC 4.1:同文)12。16歳未満の安全性・有効性は確立していない。日本での承認状況はここでは確認していない。

登録的であるMOXIe試験(16〜40歳、遺伝学的に確定した患者、ベースライン 20〜80、)では、の(modified Friedreich Ataxia Rating Scale)が群でベースラインから-1.55点(改善)、プラセボ群で+0.85点(悪化)と変化し、群間差-2.40点(p=0.014)で群が有意に良好だった3。

⚠️ この-2.40点はされた103例全員の値ではない。 主要評価の全解析集団は(pes cavus)を持たない患者でベースライン後測定が1回以上ある者に限られ、82例(40例・42例)である。は別の表現型を反映しうるという先行研究の所見から、組入れは全体の20%までに制限され、層別化因子にもなっていた3。

臨床的に重大な心疾患のある患者は登録時点で除外されたが、試験中に不整脈などを発症した患者は本人が離脱を選ばない限り継続できた3。心筋症はに高頻度で合併するので、試験の集団は実臨床より心疾患が軽い側に寄っていることを踏まえて読む。

用法・用量

通常用量は1日1回150 mg(50 mgカプセル3個)をする。 服用は空腹時で、食前1時間以上または食後2時間以降とする(カプセルを開けてリンゴソースに混ぜる場合も同じ)12。

⚠️ 阻害薬との併用は「減量すればよい」ではなく、まず「避ける」である。

併用薬 推奨
強力な阻害薬 併用を避ける。やむを得ない場合は1日1回50 mgへ減量し有害事象を注意深く観察する。有害事象が出たら併用を中止する
中等度の阻害薬 併用を避ける。やむを得ない場合は1日1回100 mgへ減量し、有害事象が出ればさらに50 mgへ減量する
強力または中等度の 併用を避ける(減量では対応しない。効果が失われる)

では用量が変わる12。

分類 用量
軽度(A) 1日1回150 mg(調節不要)
中等度(B) 1日1回100 mgへ減量し、有害事象が出れば50 mgを考慮
重度(C) 使用を避ける

💡 肝障害で減量する理由と、を毎月測る理由は別である。 前者はが上がるための上の調節、後者は本剤自体がを上げるための安全性監視である。中等度・重度のでは血中濃度が上昇する2。

禁忌・注意

⚠️ 禁忌の記載は国で違う。 4.3はまたは添加剤への過敏症を禁忌とするのに対し、米国添付文書の 4 CONTRAINDICATIONS は None である21。「この薬に禁忌はない」と書けるのは米国の文書についてだけで、には禁忌がある。

  • ⚠️ (・)とのモニタリングが必須。 投与前、投与開始後3か月は毎月、以後は定期的に測定する。またはが基準値上限の5倍を超えたら、あるいは3倍超での所見(など)を伴えばただちに中止し、安定・改善すれば監視頻度を上げて再開しうる1。MOXIe試験では群の15例(29%)がの最大値で基準値上限の3倍以上を示し、うち12例(12/15)が中止後4週以内に正常化、群平均の・も4週以内にベースラインへ復した3。
  • ⚠️ 上昇は心不全を示唆しうる。投与開始前にを測定しておく。 米国添付文書は開始前の測定を求めたうえでの徴候(1日1.4 kg(3ポンド)以上、または1週2.3 kg(5ポンド)以上の体重増加、、、)を監視し、徴候が出たらと心機能を評価するとする。はさらに投与中も定期的にをモニタリングすることを求め、時はBNPまたはNT-proBNPを測り、その管理中は本剤を中断するとしている12。
  • 💡 ただし上昇の意味づけには、出典自身が留保を付けている。 試験1でが基準値上限(100 pg/mL)を超えたのは14%(4%)、200 pg/mL超は4%だが、 200 pg/mL超の患者と臨床的に重大な左心疾患のある患者はもともと除外されているため、上昇が本剤によるものかに伴う心疾患によるものかは不明であると米国添付文書自身が明記している。はさらに「や・の事象を伴わなかった」と述べている12。
  • 💡 警戒の根拠は同系統化合物の別の試験にある。 は、近縁化合物を糖尿病性患者で試験した際に4の患者でによる心不全イベントが過剰に生じ、ベースライン 200 pg/mL超と心不全による入院歴が危険因子として同定されたこと(3bでは同定されず)を挙げている2。
  • ⚠️ 脂質異常。 48週時点でコレステロールが平均+23.5 mg/dL、コレステロールが平均-5.3 mg/dL。変化は投与開始2週以内に現れ、中止後4週以内にベースラインへ戻る。投与前・投与中に脂質をモニタリングし、異常は標準的な診療指針に従って管理する1。
  • ⚠️ 体重減少(EU 4.4)。 は軽度の体重減少と関連づけ、患者に定期的な体重測定を勧め、原因不明または臨床的に問題となる減少があれば精査するよう求める2。⭐ の監視で追うのは体重増加、こちらは体重減少で、向きが逆である。
  • ⚠️ 過敏症反応(蕁麻疹・発疹)。 51例では頻度が very common(10%以上)で、いずれも非重篤・軽度、発現までの平均135日(3〜360日)。市販後には重篤例が1例報告されている。米国添付文書でも6.2の市販後経験に追加された21。
  • ⚠️ 妊娠・避妊。 は、妊娠中および避妊していない妊娠可能女性には使用しないとし、治療開始前・治療中・中止後28日間の有効な避妊を求める。⭐ 本剤は弱いなので(・・膣リング・・単独薬)の効果を下げうる——併用を避け、非ホルモン法(非)または追加の非ホルモン法()を中止後28日間まで併用する21。
  • 阻害薬・は、中等度以上ならいずれも「併用を避ける」が第一の指示である(上の表を参照)12。

副作用

4.8が挙げる最頻の副作用は、で150 mg/日を48週投与した51例での値である2。

頻度区分 内容
very common(10%以上) 上昇・頭痛 各37.3%、体重減少 34.0%、悪心 33.3%、上昇・疲労 各21.6%、下痢 19.6%、口腔咽頭痛 17.6%、嘔吐 15.7%、・・インフルエンザ 各13.7%、 11.8%、過敏症(蕁麻疹・発疹)
common(1〜10%未満) 尿路感染、、上昇、上腹部痛・腹痛、上昇、、上昇(200 pg/mL超で定義)
の監視項目 上昇(可逆的)、異常、BNP上昇

⚠️ 上昇は、どの閾値で数えるかで頻度が3倍以上変わる。 4.8の表が common(1〜10%未満)に置く「上昇」は脚注で200 pg/mL超と定義されており、実測は3.9%(米国添付文書では4%)である。一方、4.4・5.2が挙げる基準値上限100 pg/mL超での上昇は13.7%(米国14%、3.8〜4%)で、very common の帯に入る。同じ「上昇」でも閾値の違う2つの数字があるので、引くときにどちらかを確かめる21。

まとめ

  • は活性化薬で、欠乏の下流にある増大という機序に介入する、に対する2023年米国初承認の。適応年齢は米国・とも16歳以上で一致する。
  • MOXIe試験(第II相)での有意な改善(群間差-2.40点、p=0.014)を示した。⚠️ ただし主要評価の解析集団はのない82例で、された103例全員ではない。
  • ⚠️ ・・という3系統のモニタリングが必須。 は投与前・最初の3か月は毎月・以後定期的に、脂質は投与前と投与中に定期的に、は投与開始前(はさらに投与中も定期的に)測る。
  • ⚠️ 中等度以上の阻害薬・はいずれも「併用を避ける」が第一の指示で、減量(強力な阻害薬で50 mg、中等度で100 mg)はやむを得ない場合の次善策である。中等度のでは100 mg、重度では使用を避ける。
  • ⚠️ 禁忌の記載は国で違う(は過敏症、米国は None)。本剤自身が弱いでの効果を下げるため、妊娠可能女性にはを中止後28日間まで併用する。

出典

  1. 1.SKYCLARYS (omaveloxolone) capsules, for oral use — Prescribing Information(DailyMed(U.S. National Library of Medicine、FDA承認添付文書。labeler は Biogen)・2026)本文に印刷された改訂表示(Revised)が無いため、SPLのeffectiveTime 2026-04-06(version 9、DailyMed掲載2026-04-17)を年の根拠とした。現行のlabelerはBiogenで、Reata Pharmaceuticals名義のsetid f1a1100e-… は2024年2月8日版で止まっている。内容は次のとおり。適応は16歳以上のFriedreich失調症の成人・青少年。4 CONTRAINDICATIONS は None。2.1は投与前および投与中にALT・AST・ビリルビン・BNP・脂質パラメータを測定するとし、5.1はALT・AST・総ビリルビンを投与前、最初の3か月は毎月、以後は定期的にモニタリングするとする(試験1でALTまたはASTの5×ULN超が16%、3×ULN超が31%)。5.2はBNPが心不全を示唆しうるため投与開始前にBNPを確認し、体液貯留の徴候(1日1.4kg(3ポンド)以上または1週2.3kg(5ポンド)以上の体重増加、末梢浮腫、動悸、息切れ)を監視し、徴候が出れば BNP と心機能を評価するとする(試験1でBNPが基準値上限100pg/mLを超えた者14%対プラセボ4%、200pg/mL超は4%)。5.3の脂質はLDLコレステロールが平均+23.5mg/dL、HDLコレステロールが平均-5.3mg/dL(いずれも48週時)。2.4のTable 1は強力および中等度のCYP3A4阻害薬・誘導薬とも「併用を避けることが推奨される」としたうえで、やむを得ない場合の減量を強力な阻害薬50mg、中等度の阻害薬100mgと定める。2.5のTable 2は肝機能障害で軽度150mg、中等度100mg、重度は使用回避。投与は空腹時で食前1時間以上または食後2時間以降(2024年版の「食前1時間以上」から追記されている)。7.2はオマベロキソロンが弱いCYP3A4・CYP2C8誘導薬でホルモン避妊薬の効果を下げうるため併用を避けるよう助言するとし、6.2の市販後経験に過敏症(蕁麻疹・発疹)が追加されている。閲覧 2026-09-14
  2. 2.Skyclarys 50 mg hard capsules — Summary of Product Characteristics (Annex I)(European Medicines Agency(EMA、EU製品概要)・2024)EUの製品概要で次を確認した。4.1の適応は16歳以上のFriedreich失調症の成人・青少年で米国と同じ。4.3の禁忌は有効成分または添加剤への過敏症で、米国添付文書が4 CONTRAINDICATIONS を None とするのと違う。4.2の推奨用量は1日1回150mgで、強力なCYP3A4阻害薬・中等度のCYP3A4阻害薬とも「併用を避けることが推奨される」、やむを得ない場合は強力な阻害薬で50mg、中等度の阻害薬で100mgへ減量する。強力または中等度のCYP3A4誘導薬も併用を避ける。肝機能障害は軽度(Child-Pugh A)150mg、中等度(B)100mg(有害事象があれば50mgへ)、重度(C)は使用を避ける。投与は空腹時で食前1時間以上または食後2時間以降。4.4はアミノトランスフェラーゼ上昇(ALTまたはAST 3×ULN以上が29.4%)、BNP上昇、脂質異常、体重減少、過敏症反応(蕁麻疹・発疹。無作為化試験51例では very common)を挙げ、BNPは投与前および投与中に定期的にモニタリングし、体液貯留の徴候(1日1.4kg以上または1週2.3kg以上の急な体重増加、末梢浮腫、息切れ)があればBNPまたはNT-proBNPを測って管理し、その間は本剤を中断するとする。ただしBNP上昇は血圧上昇や体液貯留・うっ血性心不全の事象を伴わなかったとも明記している。4.5はオマベロキソロンが弱いCYP3A4・CYP2C8・BCRP誘導薬でミダゾラムのAUCを約45%、レパグリニドを約35%、ロスバスタチンを約30%低下させること、グレープフルーツを避けること、4.6は妊娠中および避妊していない妊娠可能女性には使用しないこと、ホルモン避妊薬の効果を下げるため併用を避け非ホルモン法を治療中および中止後28日間併用することを求める。10のDATE OF REVISION OF THE TEXT欄は空欄で、9のDate of first authorisationは2024年2月9日。閲覧 2026-09-14
  3. 3.Safety and Efficacy of Omaveloxolone in Friedreich Ataxia (MOXIe Study)(Annals of Neurology(Lynch DR, et al.、MOXIe試験)・2021)全文(PMC7894504)で次を確認した。組入れ基準は16〜40歳・遺伝学的に確定したFriedreich失調症・ベースラインmFARS 20〜80・リカンベントエルゴメータで最大運動負荷試験を完遂できること。除外基準はコントロール不良の糖尿病、臨床的に重大な心疾患、活動性感染症、著しい検査値異常等で、試験中に糖尿病や不整脈などの心疾患を発症した患者は本人が離脱を選ばない限り継続した。無作為化は103例(オマベロキソロン51例・プラセボ52例)だが、主要評価の全解析集団(FAS)は凹足(pes cavus)のない患者でベースライン後測定が1回以上ある者に限られ82例(40例対42例)である。mFARSのベースラインからの変化はオマベロキソロン群-1.55±0.69対プラセボ群+0.85±0.64で群間差-2.40±0.96(p=0.014)。安全性は全無作為化例で解析され、オマベロキソロン群の15例(29%)がALTの最大値で基準値上限の3倍以上を示した(プラセボ群は0例)。うち12/15例は投与中止後4週以内にALTが正常化し、群平均のALT・ASTも4週以内にベースラインへ復した。閲覧 2026-08-11