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Drug Atlas · B1 Thrombolytics / 血栓溶解薬 · 必修

テネクテプラーゼ

tenecteplase

分類
Thrombolytics / 血栓溶解薬
商品名(EU)
Metalyse
科目
Pharmacology
トピック
B1: Drugs influencing blood coagulation I: Antiplatelet agents. Fibrinolytic drugs. Drugs inhibiting bleeding
禁忌疾患
中枢神経系腫瘍(成人・小児)大動脈解離
副作用
出血

🧠 全体像(組換えt-PA)にわずか3か所のアミノ酸置換を加えた改変体で、この改変が「を上げる」「PAI-1(内因性の失活因子)への抵抗性を80倍に高める」という2つの効果を同時にもたらし、結果として単回5秒だけで完結するになった。2000年にSTEMI治療薬として承認されて以来ずっとと並ぶ「が簡便な」だったが、2025年3月、米国で約30年ぶりの新規脳卒中治療薬としてにも承認されの牙城だった脳卒中領域に正式に加わった。2026年のAHA/ASA脳卒針はこの2剤を同格の選択肢として扱っており、現在進行形で立ち位置が動いている薬である。

薬効群の中での位置づけ

薬剤 分子設計 投与法 主な適応
組換えt-PA(フルレングス) +1時間 ・広範囲PE・STEMI
t-PAに3か所のアミノ酸置換(↑・PAI-1抵抗性↑) 単回5秒のみ STEMI(2000年〜)+(2025年〜)
t-PAの一部ドメインを欠失させた改変体 を2回、間隔をあけて投与 に限定

同じ「だけで済む」との違いは、脳卒中に使えるかどうか。 はSTEMI専用にとどまるが、と同じ土俵(脳卒中・STEMI)に立つ数少ない改変t-PAである。ただしFDA添付文書上の脳卒中への投与開始は発症3時間以内と定められ1の4.5時間より狭い——一方で2026年AHA/ASA指針は0.25 mg/kgを0.9 mg/kgと同格の第一選択として扱い、画像でが確認できれば4.5〜9時間、LVO例ではさらに24時間まで対象を広げている2添付文書とガイドラインのが一致しないという点が、この薬の現在地を理解するうえで欠かせない。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tenecteplase'>テネクテプラーゼ</span>(改変t-PA)を投与"] --> B["血栓中のフィブリンに結合"]
    B --> C["フィブリン上で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plasminogen'>プラスミノーゲン</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plasmin'>プラスミン</span>へ変換"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plasmin'>プラスミン</span>がフィブリンを分解(線溶)"]
    D --> E["血栓が溶解し血流が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='recanalization'>再開通</span>する"]
    F["kringle 1ドメインの2アミノ酸置換<br>(T103N・N117Q)"] --> G["フィブリンへの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='binding affinity'>結合親和性</span>が約15倍に上昇"]
    H["protease ドメインの4アミノ酸置換<br>(KHRR296-299→AAAA)"] --> I["PAI-1による失活への抵抗性が約80倍に上昇"]
    G --> J["フィブリン非存在下での全身性活性化が抑えられる"]
    I --> K["血中からの消失が遅くなり<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='repeated/continuous dosing'>持続投与</span>なしでも治療域を維持できる"]
    J --> L["単回<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bolus administration'>ボーラス投与</span>だけで完結"]
    K --> L

💡 と最終効果(フィブリン分解)は同じだが、「どれだけ効率よく・長く効くか」がまったく違う。 の上昇は全身性のを抑える方向に働き、PAI-1抵抗性の上昇はを延ばして単回投与を可能にする方向に働く——2つの変異が別々の目的で効いている点が試験で問われやすい3

薬物動態

項目 値・特徴
経路 IV単回(5秒)
90〜130分(より明らかに長く、を不要にする)4
消失 主に肝クリアランス
より高い(約15倍)3

適応

領域 使いどころ
循環器 (STEMI)でが120分以内に施行できない場合の(2000年FDA承認)
脳神経 。FDA添付文書上は発症3時間以内の投与開始1。2026年AHA/ASA指針では4.5時間以内はと同格の選択肢、画像でが確認できればさらに広いも対象になりうる2

肺塞栓症・(MIST2レジメン)はで確立した用途であり、には含まれない。

用法・用量

STEMI:体重帯で5段階に分かれた単回5秒(60 kg未満30 mg、60〜70 kg未満35 mg、70〜80 kg未満40 mg、80〜90 kg未満45 mg、90 kg以上50 mg)4:FDA添付文書は体重換算の単回最大25 mgとし、2026年AHA/ASA指針もAcT試験で用いられた0.25 mg/kg(最大25 mg)を推奨用量とする42。いずれもを要さない点がとの実務上の最大の違いである。実際の用量計算・は施設のプロトコル・添付文書で必ず確認する。

禁忌・注意

  • 両適応に共通する禁忌:活動性内出血、出血性素因、2か月以内の頭蓋内/脊髄手術・外傷、出血リスクを高める頭蓋内病変(・脳)、重度の制御不良高血圧4
  • 適応ごとに追加される禁忌では活動性、STEMIではの既往と3か月以内の4。⭐ 脳卒中の既往」を一律の禁忌として覚えない——脳卒中適応が加わる前の旧添付文書の記載であり、現行添付文書ではSTEMI適応に限った条件になっている
  • ⚠️ をACSと誤認して投与すると致命的出血を招くと共通の注意点)。は禁忌
  • ⚠️ FDA添付文書とAHA/ASA指針で脳卒中のが一致しない。 添付文書は3時間以内、指針は4.5時間以内(画像所見によりさらに延長)を推奨しており、施設のプロトコルがどちらに準拠するか確認する

副作用

頻度 内容
高頻度 出血・粘膜出血など)
重篤・まれ 症候性(約2.9%、の約2.7%と同程度)3

まとめ

  • に3か所のアミノ酸置換を加えた改変t-PA。の向上とPAI-1抵抗性の上昇(半減期延長)により単回5秒だけで完結する。
  • 2000年にSTEMI治療薬として承認。2025年3月、にもFDA承認され、米国で約30年ぶりの新規脳卒中薬となった(AcT試験に基づく)。
  • 同じ系のと違い、と同じ脳卒中・STEMIの両方をカバーする。
  • FDA添付文書の脳卒中投与開始は発症3時間以内だが、2026年AHA/ASA指針は4.5時間以内(画像所見でさらに延長)でと同格に推奨——添付文書とガイドラインのの不一致が実務上の要点。
  • 禁忌・出血リスクの考え方はに準じ、の除外が禁忌チェックの核心になる。

出典

  1. 1.Tenecteplase(StatPearls(NCBI Bookshelf)・2024)テネクテプラーゼがアルテプラーゼを遺伝子改変した変異体で、PAI-1(プラスミノーゲン活性化因子インヒビター1)への抵抗性とフィブリン選択性の向上という2点が特徴であること、半減期が20〜25分でありボーラス単回投与を可能にしていること、絶対禁忌に活動性出血・脳卒中の既往・2か月以内の頭蓋内/脊髄手術外傷・頭蓋内腫瘍/動静脈奇形/動脈瘤・出血性素因・重度制御不良高血圧が含まれること、症候性頭蓋内出血の頻度が本剤約2.9%・アルテプラーゼ約2.7%と同程度であることを確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.FDA Approves Genentech's TNKase in Acute Ischemic Stroke in Adults(Genentech・2025)2025年3月3日にFDAがTNKase(テネクテプラーゼ)を成人の急性虚血性脳卒中に承認したこと(米国で約30年ぶりの新規脳卒中治療薬)、単回5秒静注ボーラスで投与しアルテプラーゼの単回ボーラス+60分持続投与より簡便であること、承認の根拠がAcT試験(テネクテプラーゼ0.25 mg/kg対アルテプラーゼ0.9 mg/kgの非劣性試験、カナダ22施設・約1,600例)であること、添付文書上の投与開始が発症後3時間以内とされていることを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.TNKASE (tenecteplase) — full prescribing information(U.S. FDA(DailyMed収載)/ Genentech・2025)2025年2月改訂の現行添付文書が急性虚血性脳卒中とSTEMIの2適応を持つこと、脳卒中では発症後3時間以内に開始し体重換算で最大25 mgを単回ボーラス投与すること、STEMIの用量が体重帯で30/35/40/45/50 mgと5段階に分かれた単回5秒ボーラスであること(60 kg未満30 mg、60〜70 kg未満35 mg、70〜80 kg未満40 mg、80〜90 kg未満45 mg、90 kg以上50 mg)、終末相半減期が90〜130分であること、枠組み警告の節が無いこと、両適応共通の禁忌が活動性内出血・2か月以内の頭蓋内/脊髄手術外傷・出血性素因・重度の制御不良高血圧・出血リスクを高める頭蓋内病変(腫瘍/動静脈奇形/動脈瘤)であり、脳卒中適応では活動性頭蓋内出血が、STEMI適応では頭蓋内出血の既往と3か月以内の虚血性脳卒中が追加されることを確認した閲覧 2026-08-10
  4. 4.Update: What are Major Pharmacotherapy Updates from the 2026 AHA/ASA Stroke Guidelines?(University of Illinois Chicago, Drug Information Group・2026)2026年AHA/ASA急性期脳卒中ガイドラインが発症4.5時間以内のIVT適格例でテネクテプラーゼ0.25 mg/kg(最大25 mg)とアルテプラーゼ0.9 mg/kgを同格の選択肢として推奨していること、高度脳血管閉塞(LVO)例では単回ボーラスで済む実務上の利点が強調されていること、高度画像診断でサルベージ可能な虚血性ペナンブラが確認できれば4.5〜9時間、EVT非適応のLVO例では4.5〜24時間まで対象を広げうることを確認した閲覧 2026-08-10