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Drug Atlas · B3 Other / その他

トロフィネチド

trofinetide

分類
IGF-1 pathway peptides / IGF-1関連ペプチド
科目
Medical Genetics and Immunology (Genetics)
トピック
4.2: Role of sex in inheritance
承認適応
レット症候群
副作用
下痢嘔吐発熱体重減少不安
監視検査値
クレアチニン
相互作用
ロペラミド

🧠 全体像:は、(IGF-1)のN末端3残基から生理的に切断される天然ペプチド(GPE)を、代謝されにくくできるようしたである。2023年に米国でに対する初の承認薬となったが、添付文書上は「作用機序は不明」と明記されており、GPE/IGF-1経路を介した神経・グリア機能の是正という考え方は知見に基づく仮説の域を出ない。学習上の核心は、臨床的な効果(RSBQ・の改善)との問題(下痢82%・体重減少12%)の両方が確立している一方、「なぜ効くか」は未解明という非対称にある。

薬効群の中での位置づけ

の薬物治療は、これまで発作・・など合併症それぞれへの対症療法が中心だった。は、という疾患そのものを標的とする初の承認薬という点で、既存の対症療法薬(、様のなど)とは位置づけが異なる。IGF-1経路に着目した点は、同じくIGF-1シグナルの是正を狙う研究段階の治療薬と発想を共有するが、自体はホルモン補充ではなくGPEという内因性ペプチド断片のアナログである点が独自である。

機序

flowchart TD
    A["IGF-1のN末端3残基<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='glycine-proline-glutamate (GPE)'>グリシン-プロリン-グルタミン酸</span>(GPE)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proline residue'>プロリン残基</span>をメチル化し<br>分解耐性・経口吸収性を高めた<span class='jp-term jp-term-diagram' title='synthetic analog'>合成アナログ</span><br>=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trofinetide'>トロフィネチド</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral'>経口投与</span>・血液脳関門を通過"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='preclinical'>前臨床</span>(Mecp2欠損マウス):<br>GPEで<span class='jp-term jp-term-diagram' title='synaptic morphology'>シナプス形態</span>・機能が改善し<br>Rett様症状が部分的に軽快"]
    D --> E["ヒトでの作用機序は<br>添付文書上「不明」"]

💡 「機序仮説」と「添付文書上の見解」を混同しない。 GPE/IGF-1経路を介した神経成熟・の是正やグリア炎症の軽減という説明は、データと化学構造から導かれた仮説であり、添付文書自体は機序を明記していない12。

薬物動態

項目 特徴
吸収 量の少なくとも84%が吸収される。Tmaxは投与後約2〜3時間。で()は変化しないがCmaxは約20%低下する
分布 見かけのは約80 L。は6%未満と低い
代謝 による代謝をほとんど受けない(は主要なではない)
消失 半減期は約1.5時間
排泄 未変化体のまま約80%が尿中に排泄される。中等度( 30〜59 mL/min)でが約80%増加する
相互作用 CYP3Aの弱い阻害薬かつP-gp阻害薬。(CYP3A/P-gp基質)併用でが1.73倍・Cmaxが1.95倍に上昇する

1

適応

(2歳以上の成人・小児)が唯一のである1。第3相LAVENDER試験(の女児・女性184例、12週間)では、Rett Syndrome Behaviour Questionnaire(RSBQ)総スコアの変化が群−4.9点対プラセボ群−1.7点、()が3.5対3.8と、いずれも群で有意に良好だった2。

用法・用量

体重区分ごとに1日2回(朝・夕、食事の有無を問わない)経口またはG()管から投与する。嘔吐後の追加投与はしない。

体重 通常用量 中等度時
9〜12 kg未満 5,000 mg × 2回/日 2,500 mg × 2回/日
12〜20 kg未満 6,000 mg × 2回/日 3,000 mg × 2回/日
20〜35 kg未満 8,000 mg × 2回/日 4,000 mg × 2回/日
35〜50 kg未満 10,000 mg × 2回/日 5,000 mg × 2回/日
50 kg以上 12,000 mg × 2回/日 6,000 mg × 2回/日

1

⚠️ 重度( 30 mL/min未満)には推奨されない。 中等度ではが約80%増加するため上表のとおり減量し、軽度( 60〜89 mL/min)では調整不要である1。

禁忌・注意

  • 禁忌:特になし(添付文書上、は設定されていない)1
  • ⚠️ 下痢を前提とした患者説明とモニタリングが必須。 開始前にを中止させ、下痢が起こればの開始・水分摂取増量を検討し、重度下痢や脱水が疑われれば減量・中断・中止する1
  • ⚠️ 体重減少をモニタリングする。 ベースラインから7%を超える体重減少が生じうるため、定期的に体重を測定し有意な減少があれば減量・中断・中止を検討する1
  • ⚠️ 嘔吐後の誤嚥に注意する。 の患者は元来誤嚥・のリスクが高く、本剤投与後の嘔吐に続発するが市販後に報告されている1
  • CYP3A・P-gp基質(等)との併用では、これらの薬剤の血中濃度上昇によるリスクに注意する1

副作用

頻度(Study 1、群対プラセボ群) 内容
高頻度 下痢82%対20%、嘔吐29%対12%
中頻度 発熱9%対4%、発作9%対6%、不安8%対1%、8%対2%、倦怠感8%対2%
その他 5%対1%。体重減少(7%超)が12%対4%に発現した

1

有害事象により投与群の19%が試験を中止し、そのうち最も多い要因が下痢(15%)だった1。

まとめ

  • は、IGF-1のN末端3残基GPE()をしたで、2023年に米国でに対する初の承認薬となった。
  • 添付文書上「作用機序は不明」であり、GPE/IGF-1経路を介した神経・グリア機能是正という説明は知見に基づく仮説にとどまる。
  • 2歳以上のに、体重区分に応じて1日2回経口またはG管投与する。中等度では減量、重度には推奨されない。
  • はないが、下痢(82%)・体重減少(7%超が12%)・嘔吐後の誤嚥という3つの有害事象を前提としたモニタリングとが中核になる。
  • CYP3Aの弱い阻害薬かつP-gp阻害薬で、などの血中濃度を上げうる。

出典

  1. 1.DAYBUE (trofinetide) oral solution and DAYBUE STIX (trofinetide) for oral solution, prescribing information(U.S. Food and Drug Administration (DailyMed)・2026)DailyMedの添付文書全文を取得した(Revised 3/2026)。DAYBUE/DAYBUE STIXが2歳以上の成人・小児のレット症候群治療薬として適応を持つこと、用量が体重区分(9〜12kg未満5,000mg・12〜20kg未満6,000mg・20〜35kg未満8,000mg・35〜50kg未満10,000mg・50kg以上12,000mg)ごとに1日2回(朝・夕、食事の有無を問わない)経口またはG管投与であること、中等度腎機能障害(eGFR 30〜59 mL/min)では用量を約半分〜3分の2に減量し重度腎機能障害(eGFR 30 mL/min未満)には推奨されないこと、嘔吐後に追加投与しないこと、下痢・脱水・有意な体重減少・重度嘔吐時には減量・中断・中止を検討すること、禁忌が「None」と明記されていること、警告として下痢(Study 1で85%に発現、49%が持続または再発、重症度は96%が軽症〜中等症)・体重減少(Study 1でベースラインから7%超の減少が投与群12%対プラセボ群4%、長期試験で2.2%が体重減少により中止)・嘔吐(Study 1で29%対12%、誤嚥・誤嚥性肺炎の市販後報告あり)が挙げられていること、Study 1で有害事象により投与群の19%(18例)が試験を中止し中止理由として最も多かったのが下痢(15%)であったこと、Study 1(93例対プラセボ94例)での頻度5%以上かつプラセボより2%以上多い副作用が下痢82%対20%・嘔吐29%対12%・発熱9%対4%・発作9%対6%・不安8%対1%・食欲減退8%対2%・倦怠感8%対2%・鼻咽頭炎5%対1%であること、機序が「不明(unknown)」と明記されていること、トロフィネチドがCYP3Aの弱い阻害薬かつP糖蛋白(P-gp)阻害薬であり、CYP3A/P-gp基質であるロペラミド4mgとの併用でロペラミドのAUCを1.73倍・Cmaxを1.95倍に上昇させたこと、薬物動態が線形で用量比例的でありTmaxが投与後約2〜3時間、経口投与量の少なくとも84%が吸収されること、高脂肪食との併用で総曝露(AUC)は変化しないがCmaxが約20%低下すること、分布容積が約80L・血漿蛋白結合率6%未満であること、消失半減期が約1.5時間であること、CYP450による代謝を受けず未変化体のまま約80%が尿中に排泄されること、軽度腎機能障害(eGFR 60〜89 mL/min)では正常腎機能と比べ曝露に有意な影響がなく用量調整が不要であること、中等度腎機能障害でAUCが正常腎機能と比べ約80%増加することを確認した。閲覧 2026-09-02
  2. 2.Trofinetide for the treatment of Rett syndrome: a randomized phase 3 study(Nature Medicine・2023)PMC全文(PMC10287558)で確認した。トロフィネチドが、インスリン様成長因子1(IGF-1)のN末端3残基から生理的に切断される天然ペプチドであるグリシン-プロリン-グルタミン酸(GPE)の合成アナログであり、GPEより薬物動態プロファイルを改善するよう設計されたこと、前臨床のMecp2欠損マウスモデルでGPEがレット症候群様症状を部分的に改善し生存・シナプス形態と機能を強化したこと、レット症候群女児・女性を対象とした第3相二重盲検プラセボ対照試験(LAVENDER試験、184例)の12週時点でRett Syndrome Behaviour Questionnaire(RSBQ)総スコアの変化がトロフィネチド群−4.9対プラセボ群−1.7(効果量d=0.37)、Clinical Global Impression-Improvement(CGI-I)がトロフィネチド群3.5対プラセボ群3.8(効果量d=0.47)でともにトロフィネチド群が有意に改善したこと、有害事象の頻度が下痢80.6%対19.1%(ほとんどが軽症〜中等症)・嘔吐26.9%対9.6%であり下痢を主因にトロフィネチド群の12.9%が試験を中止したことを確認した。閲覧 2026-09-02