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Lab values · Published

聴性脳幹反応

Auditory brainstem response

別名
ABR脳幹聴覚誘発電位
臓器系
耳鼻咽喉科神経小児
科目
OtorhinolaryngologyNeurology
トピック
耳鼻咽喉科 06:客観的聴力検査、ティンパノメトリー、誘発反応聴力検査耳鼻咽喉科 23:難聴・聾児の症状、検査、治療と乳児聴覚スクリーニング神経内科 G2-23:臨床神経生理検査:EEG・EMG・ENG・TMS・誘発電位
関連疾患
感音難聴新生児黄疸・高ビリルビン血症聴覚ニューロパチースペクトラム障害

🧠 全体像:は、音刺激後およそ10 ms以内にから脳幹で生じる微小電位を頭皮電極で記録する検査である。から聴力を推定する用途と、から・障害を評価する用途を分けて読む。患者のボタン押しを必要としないが、をそのまま測る検査でも、脳幹よりの聴覚機能を保証する検査でもない。

何を測っているか

額またはと・などへ電極を置き、イヤホンからまたはを反復提示する。・・環境雑音に埋もれた小さな反応を多数回加算平均し、刺激後の再現性ある波形を抽出する。

刺激 特徴 主な用途
蝸牛側を中心に広い周波数帯を同期刺激し、明瞭な波形を得やすい 、、迅速な域の閾値推定
特定周波数を中心に刺激 周波数別の推定
刺激 で外耳・中耳を迂回 との切り分け

💡 ABRは全体を代表しない。 域の情報に偏るため、を含むが必要ならを追加する。

実施法と判定指標

診断的ABRでは強い刺激から始め、波形の再現性を確認しながら刺激レベルを下げる。各刺激レベルで少なくとも2回記録して再現性を確認し、電極、残留雑音、刺激極性・頻度を記録する。

指標 読み方
V波を再現性をもって確認できる最小刺激レベル。年齢・刺激・装置ごとの補正を用いて行動を推定する
刺激から各波までの時間。低下、伝音障害、年齢、体温などでも延長する
I–III、III–V、I–Vの時間。末梢伝音の影響を相対的に減らし、を評価する
両耳差 とくにV波・I–Vを左右比較する。非対称な障害の手がかりになる
波形・再現性 波の消失、分離不良、振幅、反復記録での一致を確認する

臨床で安定して追いやすいのはV波で、閾値推定でも最も低い刺激レベルまで残りやすい。I〜V波の発生源は概略的な局在を示すが、各波を単一の神経核へ一対一に対応させない。

結果の読み方

閾値推定

とを組み合わせると、行動反応が得られない乳幼児でも周波数別の聴力を推定できる。77例140耳の研究では、ABR閾値と2・4 kHz平均の相関は0.94、周波数別ABRと対応する行動閾値の相関は0.92を超えた1。ただし個々の耳では過大・過小評価があり、を単一の閾値だけで決めない。

波形パターン

パターン 主な解釈 確認事項
全波のが同程度に遅れ、は比較的保たれる 伝音遅延を示唆 、、ABR
刺激を強くしても波形が得られない 、神経同期不全、技術的不良のいずれか OAE、、電極・刺激条件、刺激
OAEはあるがABRが消失または著しく乱れる を疑う 、反復記録、発達に応じた語音・行動評価
I–V延長、V波の左右差、後続波の消失 障害を示唆 聴力左右差、、必要に応じ造影MRI
閾値付近まで再現性あるV波が残る その刺激の周波数域であり 年齢・刺激別補正を用いて行動閾値を推定

⭐ OAEとABRの不一致は局在情報になる。 OAEが保たれABRが異常なら、より中枢側の神経同期不全を疑う。ではこの組合せが典型で、OAE単独スクリーニングは診断を遅らせうる2。

新生児スクリーニングでの位置づけ

自動ABRは装置が所定の刺激レベルで反応を統計的に判定し、「通過/要再検」を返すスクリーニングである。診断的ABRのように全波形・複数周波数・閾値を詳しく解析するものではない。

flowchart TD
    A["自動ABRで要再検"] --> B["外耳・中耳状態と検査条件を確認"]
    B --> C["期限内に再スクリーニングまたは診断的評価"]
    C --> D["診断的ABR・OAE・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Tympanometry'>ティンパノメトリー</span>"]
    D --> E["年齢に合った<span class='jp-term jp-term-diagram' title='behavioral audiometry'>行動聴力検査</span>でクロスチェック"]
    E --> F["難聴の型・程度を確定して<span class='jp-term jp-term-diagram' title='early intervention'>早期介入</span>"]

要再検は難聴確定ではなく、通過も遅発性・進行性難聴を否定しない。入院児などのリスクが高い児では、OAE単独より自動ABRを含むスクリーニングが重要になる。

⚠️ 測定上・判読上の注意

  • 年齢と成熟を補正する。 早産児・新生児ではが未熟でが長い。成人基準をそのまま適用しない。
  • 体温・刺激条件でが変わる。 低体温、刺激、刺激頻度、極性、フィルタ設定、イヤホン導管の遅延を記録し、施設基準と比較する。
  • 外耳・中耳障害が閾値とを動かす。 やがあると蝸牛・脳幹が正常でもが上がる。とを先に確認する。
  • 静穏が必要である。 体動・筋緊張・電気雑音は波形を覆う。乳児は自然睡眠を優先し、鎮静が必要なら呼吸・循環リスクを評価できるで行う。
  • ABR正常でも機能は分からない。 皮質レベルの聴覚処理、語音理解、雑音下聴取、日常の聴覚行動は別に評価する。
  • 小さなを除外できない。 非画像スクリーニングのではABRの感度が37〜100%と大きくばらついた3。片側性・や片側からが疑われる場合、ABR陰性を理由に適応のあるを省略しない。

次に進むべき検査/使い分け

  • 機能を確認する:を組み合わせ、ABRとの一致・不一致からか神経同期不全かを絞る。
  • 中耳伝音を確認する:とを行い、必要ならABRでを切り分ける。
  • を詳しく推定する:ABRまたはを用いる。協力可能になれば・で確認する。
  • を疑う:ABRは機能異常の手がかりとし、造影MRIで・・の形態を評価する。

まとめ

  • ABRは音刺激後の〜脳幹の同期した電位を記録し、とを評価する。
  • は明瞭な波形と域の迅速評価に向き、にはを用いる。
  • OAEが保たれABRが異常ならを疑うが、技術条件・伝音障害も除外する。
  • 年齢、体温、刺激、電極、睡眠・体動、中耳状態が結果を動かすため、単一波形だけで診断しない。
  • ABRは小さなや聴覚障害を除外できず、・OAE・・と目的別に使い分ける。

出典

  1. 1.Using a combination of click- and tone burst-evoked auditory brain stem response measurements to estimate pure-tone thresholds(Ear and Hearing・2006)77例140耳で後日得られた行動聴力閾値と比較し、クリックABR閾値は2・4 kHz平均純音閾値と0.94、トーンバーストABRは対応する低周波閾値と0.92を超える相関を示した一方、正常聴力では行動閾値を過大評価し難聴例では過小評価する傾向があり、クリック単独では難聴を過小評価する例もあったことを確認した。閲覧 2026-08-30
  2. 2.Newborn hearing screening methodology impacts the timing of diagnosis for auditory neuropathy spectrum disorder(American Journal of Otolaryngology・2023)聴覚ニューロパチースペクトラム障害では耳音響放射が保たれてもABRが異常となること、264例の後方視的研究でABRによる新生児スクリーニング群はOAE群より早期に診断されたことを確認した。閲覧 2026-08-30
  3. 3.The diagnostic accuracy of non-imaging screening protocols for vestibular schwannoma in patients with asymmetrical hearing loss and/or unilateral audiovestibular dysfunction: a diagnostic review and meta-analysis(Clinical Otolaryngology・2017)MRIを基準とした12研究4969例の診断レビューで、ABRを評価した5研究の感度は37〜100%、特異度は57〜96%とばらつき、利用可能な非画像スクリーニング法はいずれも前庭神経鞘腫の検出精度が十分でないと結論されたことを確認した。閲覧 2026-08-30