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Lab values · Published

デスモプレシン試験

Desmopressin stimulation test

別名
DDAVP試験デスモプレシン刺激試験DDAVP刺激試験デスモプレシン負荷試験
臓器系
内分泌・代謝
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 L-32:Cushing症候群内科学 E-06:糖質コルチコイド欠乏と過剰内科学 S-09:尿崩症と抗利尿不適合症候群
関連疾患
クッシング症候群尿崩症

🧠 全体像:「試験」という同じ名前で、まったく異なる2つの検査を指すことがある。ひとつはがACTH依存性と確定した後に下垂体性()かかを鑑別する検査で、細胞が異所性に発現する受容体を介したACTH・コルチゾールのな上昇をみる。もうひとつはの精査でに続けて行う検査で、に応じて尿を濃縮できるかをみる。前者は血中ホルモンの反応を、後者は尿の濃縮反応を指標にしており、見ている臓器も生理機序もまったくの別物である。同じ薬を使うという一点だけで両者を混同すると、検査の解釈も適応もかみ合わなくなる。

何を調べる検査か

の鑑別に使う試験 の鑑別に使う投与
見ている臓器 下垂体(腺腫細胞)
機序 したACTH産生細胞が異所性に発現する受容体を介した反応 を介した正常な生理反応
測るもの 血中ACTH・コルチゾール 尿浸透圧
判定 下垂体性でACTH・コルチゾールが上昇 中枢性で尿浸透圧が上昇、腎性で上昇しない

正常なのACTH産生細胞)は、V1b(V3)受容体を介したCRHへの反応が主体で、にはほとんど反応しない。の原因となる腺腫細胞の一部は、の過程でV1b(V3)受容体の発現が亢進する、あるいは本来には乏しいを異所性に発現するようになり、これが投与へのなACTH・コルチゾール反応の根拠になるとされる1。この受容体の変化はに限らず、一部のにも起こりうる点が、後述する偽陽性の温床になる。

一方、主細胞のの有無にかかわらず正常に存在する。は視床下部・からの内因性AVP分泌が不足しているだけで、腎臓側の受容体・は健全なため、外因性のを補えば集合管は正常に反応し尿を濃縮できる。は受容体やを介する下流の自体が障害されているため、をいくら投与しても尿は濃縮されない。詳しい病態はの項を参照。

適応と使いどころ

の鑑別がACTH依存性であることが生化学的に確定した後、下垂体性かかを絞り込む補助として使う。CRH刺激試験が入手困難な地域・施設での代替、あるいはCRH刺激試験やと組み合わせて用いられてきた経緯がある。単独では確定できず、結果が食い違えば(IPSS)に進む。

⭐ もうひとつの使いどころが、術後再発モニタリングである。術前にへの反応が陽性だった症例では、術直後に反応が消失していればを予測し、経過観察中に反応が再出現すれば再発の早期の指標となりうるとされる1。ただしを鑑別する役割そのものは確立していない点には注意する1

の鑑別:古典的にはで尿を十分濃縮できないことを確認したのち、を投与して中枢性・を分ける。ただし現在は、の診断そのものにおいてを用いた検査(特に)の精度がを上回ることが示され、可能な施設では第一選択になりつつある2に優れる試験も選択肢に加わったが、頭対頭比較ではの精度になお及ばない3測定が利用できない施設では、後の反応性評価が依然として用いられる(詳しくはの診断の項)。

検査の流れ

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='desmopressin'>デスモプレシン</span>を投与する目的は?"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Cushing syndrome'>クッシング症候群</span>の鑑別か<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='diabetes insipidus, DI'>尿崩症</span>の鑑別か"}
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ACTH-dependent Cushing syndrome'>ACTH依存性クッシング症候群</span>の<br>下垂体性・異所性鑑別"| C["ACTH依存性が<br>生化学的に確定済み"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='desmopressin'>デスモプレシン</span>を静注"]
    D --> E["投与前後の複数時点で<br>ACTH・コルチゾールを採血"]
    E --> F{"ACTH・コルチゾールが<br>顕著に上昇するか"}
    F -->|"はい"| G["下垂体性を支持<br>(特異度は高くない)"]
    F -->|"いいえ"| H["下垂体性を否定できない<br>単独で判断しない"]
    B -->|"中枢性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nephrogenic diabetes insipidus'>腎性尿崩症</span>の鑑別"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='water deprivation test'>水制限試験</span>で尿を<br>十分濃縮できないことを確認"]
    I --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='desmopressin'>デスモプレシン</span>を投与"]
    J --> K["投与後の尿浸透圧を再測定"]
    K --> L{"尿浸透圧がさらに<br>50%以上上昇するか"}
    L -->|"はい"| M["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='central diabetes insipidus'>中枢性尿崩症</span>を支持"]
    L -->|"いいえ"| N["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nephrogenic diabetes insipidus'>腎性尿崩症</span>を支持"]

⚠️ 側の検査では、飲水制限と並行してを投与することになる。 作用が強く出ている状態で自由に飲水するとに至りうるため、検査中は飲水量を管理し血清Naをモニタリングする(の項も参照)。

結果の解釈

目的 指標 目安 意味
の鑑別 血中ACTH 研究によりまちまち(基礎値から30〜50%超など)4 下垂体性を示唆
の鑑別 血中コルチゾール 研究によりまちまち(基礎値から18〜20%超など)4 下垂体性を示唆
の鑑別 尿浸透圧 投与後にさらに50%以上上昇 を支持
の鑑別 尿浸透圧 ほとんど変化しない を支持

⚠️ クッシング側の判定基準は施設・研究間で標準化されていない。 ACTH・コルチゾールの上昇率をどこで区切るかは報告によって異なり、より新しい中枢/末梢ACTH比を使う手法も提案されている4。ある研究の基準をそのまま別施設の結果へ当てはめず、各施設が採用している基準を確認する。

⚠️ 偽陰性・偽陽性

  • の寛解期()に行うと偽陰性になりうる。 IPSSと同様、活動性のコルチゾール過剰が続いている時期に施行する。
  • の一部も受容体を発現し、に反応する。 これが偽陽性の主因で、下垂体性か異所性かを確定できるほどの特異度はない4
  • 前述のとおり判定基準が標準化されていないため、境界域の結果は他の検査(CRH刺激試験、、画像所見)と統合して解釈する。
  • )が長期に続くと、腎髄質のが洗い流され、への尿濃縮反応が中間的な値になりうる。 部分型との区別が難しくなる場面で、ベースの検査が優先されつつある根拠のひとつでもある。
  • 部分型と部分型は、いずれも投与後の尿浸透圧上昇が中間的になりやすく、この検査単独での鑑別は難しい。
  • クッシング側は感度自体はおおむね確保されるが、判定基準が定まっていないぶん施設間で成績にばらつきが出やすい。境界域の反応を「陽性」と読むか「陰性」と読むかで、その後の方針(IPSSへ進むかどうか)が変わりうる。

代替・関連する検査

検査 何をみるか 使いどころ・注意点
CRH刺激試験 下垂体性はACTH・コルチゾールが上昇しやすい の鑑別で試験より広く検証されており、入手できる施設ではしばしば優先される
コルチゾールが50%前後抑制されれば下垂体性を支持 の鑑別の補助。単独では確定できない
(IPSS) 中枢/末梢ACTH比を直接測定し局在を決める の鑑別で他の検査が食い違う場合の最終手段
上昇時の反応 の鑑別でより精度が高く第一選択になりつつある2
試験 時の反応 の鑑別でに優れるが、頭対頭比較ではにやや劣る3
外因性ACTHへの副腎コルチゾール反応(副腎の 見ている軸が異なる別の検査。「ACTH」を含む名前だが本検査とは目的が異なる

まとめ

  • 試験」は、の局在鑑別に使う検査と、の中枢性・腎性鑑別に使う検査という、名前は同じでも見ている臓器・機序が異なる2つの検査を指す。
  • クッシング側は細胞の異所性受容体発現によるACTH・コルチゾールの上昇をみる。判定基準は標準化されておらず、単独では確定できない。異所性腫瘍の一部も反応するため特異度は高くない。
  • クッシング側のもう一つの用途として、術後の反応消失・再出現を再発モニタリングに用いる報告がある。
  • 側はに続けて行い、尿浸透圧のさらなる上昇の有無で中枢性・腎性を分ける。ただし現在はを用いた検査、特にがより高い精度を示し、可能な施設では優先される。
  • 側の偽陰性の主因はによるの洗い流しで、部分型どうしの鑑別も難しい。
  • 検査中は飲水制限とナトリウムモニタリングを徹底し、を避ける。

出典

  1. 1.DIAGNOSIS OF ENDOCRINE DISEASE: The role of the desmopressin test in the diagnosis and follow-up of Cushing's syndrome(European Journal of Endocrinology・2018)下垂体腺腫細胞の異所性バソプレシン受容体発現によりデスモプレシンへ逆説的なACTH・コルチゾール反応が生じるという機序、術後早期の反応消失が長期寛解を予測し経過観察中の反応再出現が再発の早期指標となり得るという再発モニタリングでの位置づけ、クッシング病と異所性ACTH症候群を鑑別する役割自体は確立していないという限界を確認した。閲覧 2026-08-02
  2. 2.Diagnostic performance of desmopressin stimulation test in pediatric Cushing's disease(Pituitary・2025)ACTH・コルチゾールの上昇率カットオフが研究間で一致していない(初期の報告はACTH50%超・コルチゾール20%超、この報告はACTH33%超・コルチゾール18%超を採用)こと、異所性腫瘍の一部もバソプレシン受容体を発現しデスモプレシンに反応し得ることを確認した。閲覧 2026-08-02
  3. 3.A Copeptin-Based Approach in the Diagnosis of Diabetes Insipidus(New England Journal of Medicine・2018)高張食塩水負荷コペプチン刺激試験(カットオフ4.9 pmol/L超)の診断精度が96.5%と、従来の水制限試験の76.6%を有意に上回ったこと、原発性多飲症と部分型中枢性尿崩症の鑑別でも95.2%対73.3%で優れていたことを確認した。閲覧 2026-08-02
  4. 4.Arginine or Hypertonic Saline-Stimulated Copeptin to Diagnose AVP Deficiency(New England Journal of Medicine・2023)アルギニン刺激コペプチン試験は患者忍容性で高張食塩水負荷コペプチン試験に優れるが、頭対頭比較での診断精度は74.4%対95.6%で高張食塩水負荷に劣ったことを確認した。閲覧 2026-08-02