内科学

内科学 · L-32

Cushing症候群

Cushing Syndrome

前提:病態
クッシング症候群の発症機序・症状・診断
前提:正常
副腎皮質の機能副腎皮質のステロイドホルモン合成
疾患
クッシング症候群周期性クッシング症候群
症状
線状皮膚萎縮
検査値
24時間尿中遊離コルチゾールCRH刺激試験デスモプレシン試験下錐体静脈洞サンプリング海綿静脈洞カテーテル検査高用量デキサメタゾン抑制試験低用量デキサメタゾン抑制試験副腎皮質刺激ホルモン
画像所見
異所性ACTH産生腫瘍の局在画像下垂体MRI

🧠 全体像:Cushing症候群はなグルココルチコイド過剰の臨床像である。まず曝露を除外し、高精度の検査でを確認してから依存性を判定し、画像検査へ進む。

原因

病型 主な原因
外因性 抑制 経口、注射、吸入、外用などのグルココルチコイド
非依存性 低値 、副腎癌、両側性副腎過形成
依存性:下垂体性 高値/ 産生=Cushing病
依存性:異所性 高値 、気管支など

、重いうつ病、、妊娠、コントロール不良糖尿病などでは非腫瘍性状態を示すことがあり、臨床背景と反復評価が必要となる。

疑う所見

  • 、幅広い、・、、原因不明の骨粗鬆症は識別力が比較的高い。
  • 、、、、、、。
  • 高血圧、糖尿病、低K性、、感染、血栓症、骨折、精神症状。
  • 小児では体重増加と身長増加速度低下の組合せが重要である。

診断手順

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Characteristic findings'>特徴的所見</span>・進行性合併症"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='exogenous glucocorticoid'>外因性グルココルチコイド</span>曝露を確認"]
    B --> C["高精度<span class='jp-term jp-term-diagram' title='screening test'>スクリーニング検査</span>"]
    C --> D{"少なくとも2回/別法で異常"}
    D -->|"いいえ"| E["可能性と偽陰性要因を再評価"]
    D -->|"はい"| F["内因性Cushingを確認"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adrenocorticotropic hormone'>ACTH</span>測定"]
    G --> H["低値:副腎<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>"]
    G --> I["高値/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inappropriately normal'>不適切正常</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pituitary MRI'>下垂体MRI</span>・異所性検索"]
    I --> J["不一致なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inferior petrosal sinus sampling, IPSS'>下錐体静脈洞サンプリング</span>など"]

コルチゾール過剰の確認

初期検査は、を2回以上、を2回以上、1 mg一晩抑制試験、または48時間低用量(2 mg)試験から患者背景に合うものを選ぶ。随時コルチゾールや随時、画像検査をスクリーニングに用いない1。1 mg抑制試験の判定は翌朝の血清コルチゾール 50 nmol/L(1.8 µg/dL)以下を正常とする2。

、睡眠障害、妊娠、腎機能低下、薬物相互作用、エストロゲンによる増加は結果を変える。⚠️ 偽陽性・偽陰性は検査ごとに機序が違う。 はそのものを見るため・睡眠障害で崩れ、は腎機能低下で低く出て偽陰性になり、はエストロゲンによる増加で偽陽性、を介した薬物相互作用で濃度が変わり両方向に狂う。だから「別法で、2回以上」確認する1。臨床的な疑いが強いのに初回検査が正常なら、症状に合わせて再検して経過を追う。周期性Cushingが疑われる場合は症状期に反復する1。

原因局在

生化学的に確認してからを測る。低値なら副腎性を、高値/なら下垂体性または異所性を検索する。やCRH刺激単独では確定できず、と結果が一致しないときは専門施設で両側を検討する。Pituitary Society 2021のコンセンサスは、とCRH(または)刺激試験の結果が一致すればCushing病を支持する非侵襲的な組合せになるが、不一致ならが必要とし、逆にで10 mm以上の腺腫がありと矛盾しなければサンプリングは要らないとした3。

💡 で見つかる軽度のコルチゾールを「サブクリニカルCushing症候群」と呼ばなくなった。 ESE/ENSAT 2023は、Cushing症候群の臨床徴候が無いまま1 mg抑制試験のコルチゾールが 50 nmol/L(1.8 µg/dL)を超える状態に という名称を提案した。「サブクリニカル(無症候性)」という旧称は無害さを含意するが、実際にはこの群で・死亡率の上昇が示されている。したがってMACSでは全例で高血圧・2型糖尿病などコルチゾール関連の併存症を探し、併存症があれば個別に手術を検討する2。旧称は文献・試験問題に残るので、両方を対応づけて覚える。

治療

  • 第一選択は原因病変の切除:は、片側は、異所性腫瘍は可能なら切除する。はコルチゾール値・作用の正常化と併存症の是正であり、薬物療法・両側・放射線治療は個々の患者に合わせて選ぶである4。
  • 手術不能・残存・再発例では、(metyrapone、osilodrostat、ketoconazoleなど)、下垂体標的薬、拮抗薬を病型・合併症に応じて選ぶ。
  • 両側は迅速なコルチゾール制御が必要な難治例の選択肢だが、生涯のグルココルチコイド・補充と対策が必要になる。
  • 高血圧、糖尿病、低K、感染、、骨粗鬆症、精神症状を並行して管理する。
  • 外因性Cushingでは原因薬を急に中止せず、軸抑制を考慮して計画的に減量する。

治療後は一過性または持続性副腎不全を予測して補充し、再発を長期追跡する。

まとめ

  • 曝露の確認が診断の第一歩である。
  • 内因性過剰を反復・別法で確認した後にを測定し、病因局在を進める。
  • 病変切除を基本とし、コルチゾール制御と心血管・感染・血栓・骨合併症を同時に扱う。

出典

  1. 1.The Diagnosis of Cushing's Syndrome: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline(Endocrine Society・2008)Cushing症候群の初期スクリーニングを24時間尿中遊離コルチゾール(2回以上)・深夜唾液コルチゾール(2回以上)・1 mg一晩デキサメタゾン抑制試験・48時間2 mg低用量デキサメタゾン抑制試験の中から患者背景に合わせて選ぶこと、随時血中コルチゾールやACTH・画像検査をスクリーニングに用いないこと、臨床的疑いが強いのに初回検査が正常な患者では症状に合わせて再検し経過を追うこと、事前確率が高い患者は内分泌専門医によるさらなる評価を要することを本文で確認した。閲覧 2026-08-25
  2. 2.European Society of Endocrinology clinical practice guidelines on the management of adrenal incidentalomas, in collaboration with the European Network for the Study of Adrenal Tumors(European Society of Endocrinology / European Network for the Study of Adrenal Tumors・2023)副腎偶発腫の全例に1 mg一晩デキサメタゾン抑制試験を行い血清コルチゾール50 nmol/L(1.8 µg/dL)以下をカットオフとすること、顕性Cushing症候群の臨床徴候が無いのに抑制後コルチゾールが50 nmol/L(1.8 µg/dL)を超える患者では罹病率・死亡率の上昇が示されており、この状態に「軽症自律性コルチゾール分泌(mild autonomous cortisol secretion, MACS)」という用語を提案したこと、MACSの全例で高血圧・2型糖尿病などコルチゾール関連の併存症をスクリーニングし、併存症がある例では個別に手術を検討することを抄録で確認した。閲覧 2026-08-25
  3. 3.Consensus on diagnosis and management of Cushing's disease: a guideline update(Pituitary Society・2021)単一の検査だけでは下垂体性と異所性を確定できないという合意、高用量デキサメタゾン抑制試験とCRH(またはデスモプレシン)刺激試験の結果が一致すればクッシング病を支持する非侵襲的な組み合わせになるが不一致なら下錐体静脈洞サンプリングが必要という位置づけ、下垂体MRIに10 mm以上の腺腫があり動的検査の結果と矛盾しなければ下錐体静脈洞サンプリングは不要という記載を確認した。閲覧 2026-08-25
  4. 4.Treatment of Cushing's Syndrome: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline(Endocrine Society・2015)抄録の結論で、Cushing症候群の治療目標がコルチゾール値・作用の正常化と併存症の是正であること、原因病変の外科的切除が一般に第一選択であること、薬物療法・両側副腎摘除・(コルチコトロフ腫瘍に対する)放射線治療といった二次治療は個々の患者に合わせて選ぶことを確認した。閲覧 2026-08-25