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Lab values · Published

ヒト精巣上体蛋白4

HE4

別名
HE-4Human epididymis protein 4WFDC2
臓器系
腫瘍生殖・産婦人科
科目
GynecologyPathology
トピック
婦人科 26:卵巣腫瘍の病因・臨床像・スクリーニング病理学 C/75:卵巣腫瘍
関連疾患
卵巣癌卵巣機能性嚢胞・良性腫瘍
スコア
卵巣悪性腫瘍リスクアルゴリズム

🧠 全体像:HE4(ヒト精巣上体蛋白4)はWFDC2遺伝子がコードするで、CA-125とセットで初めて意味を持つである。単独の役割は「CA-125が偽陽性になりやすい良性疾患で上がりにくいこと」に尽き、それ自体を無症状スクリーニングや単独診断に使う根拠はない。かつCA-125の弱点(早期癌・での偽陰性)をHE4も共有しており、閉経状態を加えたROMAという組み合わせでのみ本来の価値が出る。

何を測っているか

WFDC2遺伝子がコードするで、もともと精巣上体上皮で同定されたためこの名がある。正常組織でも気道・生殖器の上皮に発現するが、量として目立つのは漿液性・の卵巣癌での強いである。血中を循環し、主に腎から排泄される

flowchart TD
    A["WFDC2遺伝子"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='secreted glycoprotein'>分泌糖蛋白</span>HE4を産生"]
    B --> C["精巣上体上皮で最初に同定<br>正常でも気道・生殖器の上皮に発現"]
    C --> D["漿液性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Endometrioid'>類内膜型</span>の卵巣癌で<br>強く<span class='jp-term jp-term-diagram' title='overexpression'>過剰発現</span>"]
    D --> E["血中へ放出されHE4として測定"]
    F["腎機能低下(eGFR低下)<br>加齢・閉経後・喫煙・心不全・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary fibrosis'>肺線維化</span>"] --> G["腎からの排泄低下・非腫瘍性の産生増加"]
    G --> H["腫瘍が無くてもHE4が上昇<br>(腎機能を確認せず解釈しない理由)"]

主に腎から排泄されるという代謝経路が、後述する「腎機能低下でになる」という最大の落とし穴の構造的な理由である。

基準値と単位

項目 目安 注意点
単位 pmol/L U/mLではない
施設で使う測定系(アッセイ)のに従う アッセイ間差が大きく、単一の普遍的なはない
層別化 閉経状態・年齢で層別されたを用いる ROMAなどでも閉経状態は必須の入力

ROMAはHE4・CA-125実測値・閉経状態をに入れて(PP、%)に変換し、閾値と比較して高リスク・低リスクに分ける。アッセイの添付文書は特異度75%を確保するとして閉経前12.5%・閉経後14.4%を提示しているが1、この値を検証した論文自身が自コホートので導いた最良は閉経前16.6%・閉経後35.9%であり、添付文書の値と大きく異なった1アッセイの版・施設によってが異なるため、この数値をそのまま別の測定系に当てはめない。

高値の意味

機序 代表例 手掛かり
卵巣癌(漿液性で高い1)、 では上がりにくい1も由来組織が異なり、同様にHE4を高発現しない
非婦人科の悪性腫瘍 肺癌などに限らない腺癌 婦人科腫瘤に特異的なマーカーではない
非腫瘍性 腎機能低下(eGFR低下)2、加齢、閉経後、喫煙、心不全、線維化を伴う肺疾患 腫瘍が無くても上昇する。クレアチニン・eGFRを確認せずに解釈しない

低値の意味

低値そのものに確立された臨床的意義はない。HE4が正常であることは、など元来HE4を高発現しない組織型を除外する根拠にならない(詳細は次節)。

測定上の注意

  • CA-125と比べた最大の利点は、・月経・妊娠で上がりにくいことである。CA-125はこれらの良性疾患で偽陽性になりやすく、とくに閉経前女性で特異度が落ちる(など)。HE4はの刺激そのものには反応しにくいため、この種の偽陽性が少ない。
  • ⚠️ 腎機能低下があるとになる。 eGFRの段階が進むほどHE4が上昇し、eGFRとの間に明確な逆相関がある2。eGFRを確認せずにHE4単独で腫瘍の有無を判断しない。
  • ⚠️ では感度が低い。 はHE4を高発現するとは由来が異なり上昇しにくく1も同様にHE4を高発現しない組織型である。若年女性の卵巣腫瘤でHE4が正常でも悪性を除外したことにはならない。
  • 単独では使わない。 RMIとは別に、HE4・CA-125実測値・閉経状態を組み合わせたROMAとして用いるのが前提であり、<a href=“/scores/o-rads-us” class=“wikilink” data-goes-to=“”>など画像に基づく形態評価と併用する。
  • ⚠️ 無症状女性への卵巣癌スクリーニングに使わない。 平均リスクで無症状の女性におけるでの早期発見は死亡率低下が証明されておらず、偽陽性による侵襲的検査の害がある3。症状がある患者や既知のがある患者での・専門医紹介の判断が用途である。

経時変化とモニタリング

治療前のHE4は個々の患者のベースラインとして使える。ただし卵巣癌のにおけるHE4の位置づけは、CA-125と比べてまだ確立していない。データは限られるが、HE4がCA-125と独立に再発を予測しうるという報告があり、両者を併用すると精度が上がる可能性が示唆される一方、この役割を確認するための多施設研究が進行中の段階にある4。単回値より、CA-125と並べた推移を見る。

まとめ

  • HE4はWFDC2由来ので、精巣上体上皮で最初に同定されたが、漿液性・の卵巣癌で強くし、主に腎から排泄される。
  • pmol/Lで報告され、アッセイ・閉経状態・年齢でが異なるため単一のはなく、施設の測定系に従う。
  • CA-125最大の弱点である・筋腫・PID・月経・妊娠での偽陽性が少ない一方、腎機能低下ではになり、では感度が低い。
  • 単独では使わず、HE4・CA-125・閉経状態を組み合わせたROMAとして、など画像評価と併用する。
  • 無症状女性への卵巣癌スクリーニングには使わない。症状のある患者・既知のがある患者での・専門医紹介の判断に用いる。
  • での役割はCA-125単独より投機的で、確立した推奨ではない。

出典

  1. 1.HE4 and CA125 as a diagnostic test in ovarian cancer: prospective validation of the Risk of Ovarian Malignancy Algorithm(British Journal of Cancer・2011)ROMAの予測確率(PP)計算式(閉経前PI=−12.0+2.38×LN(HE4)+0.0626×LN(CA125)、閉経後PI=−8.09+1.04×LN(HE4)+0.732×LN(CA125)、PP=100×exp(PI)/(1+exp(PI)))、アッセイの添付文書が特異度75%を確保するよう選定したカットオフ(閉経前12.5%・閉経後14.4%)、この検証コホート自身のROC解析による最良カットオフ(閉経前16.6%・閉経後35.9%)が添付文書の値と大きく異なったこと、および漿液性癌でHE4発現が最も高く粘液性癌ではHE4・CA125とも診断精度が有意に劣ることを確認した閲覧 2026-08-04
  2. 2.Significantly elevated serum human epididymis protein-4 in chronic kidney disease patients without ovarian cancer: A large-scale retrospective study(Journal of Clinical Laboratory Analysis・2023)卵巣癌のない慢性腎臓病患者で血清HE4がステージ進行とともに段階的に上昇すること(ステージ2で中央値88.5 pmol/L、ステージ3で210.61 pmol/L、ステージ4〜5で786.90 pmol/L)、eGFRとの逆相関(ρ=−0.711)、および腎機能低下がある患者ではHE4上昇を腫瘍の所見と即断せずCKDの可能性も考慮すべきという結論を確認した閲覧 2026-08-04
  3. 3.The Role of the Obstetrician–Gynecologist in the Early Detection of Epithelial Ovarian Cancer in Women at Average Risk (Committee Opinion No. 716)(American College of Obstetricians and Gynecologists(ACOG)/Society of Gynecologic Oncology(SGO)・2017)平均リスクで無症状の女性における卵巣癌早期発見のための経腟超音波・腫瘍マーカー(単独・併用とも)は死亡率低下が証明されておらず、偽陽性による侵襲的検査の害があるため推奨されないこと、およびFDAが承認した複数マーカーパネルは画像で確認された付属器腫瘤を悪性リスクの高低で分類するためのものであり、無症状女性の早期発見のためではないと整理していることを確認した閲覧 2026-08-04
  4. 4.An update on post-treatment surveillance and diagnosis of recurrence in women with gynecologic malignancies: Society of Gynecologic Oncology (SGO) recommendations(Society of Gynecologic Oncology(SGO)/Gynecologic Oncology・2017)上皮性卵巣癌の項で、HE4はデータが限られるものの、再発の独立した予測因子となる可能性がありCA-125と併用すると精度が向上しうるとしつつ、HE4のサーベイランスでの役割を明らかにするための多施設研究が進行中であるという投機的な位置づけを確認した閲覧 2026-08-04