Biochemistry

Biochemistry · 8/3

ヌクレオチドの構造と機能;食事由来ヌクレオチドの運命;尿酸の生成・排泄とその代謝的役割;プリン・ピリミジンヌクレオチドの合成と分解;細胞増殖抑制薬のヌクレオチド代謝への影響

Structure and function of nucleotides; fate of dietary nucleotides; formation and elimination of uric acid and its metabolic role; synthesis and degradation of purine and pyrimidine nucleotides; effects of cytostatic drugs on nucleotide metabolism — L II

応用トピック
プリン・鉄・銅代謝および希少代謝疾患血液・腫瘍救急:発熱性好中球減少症、腫瘍崩壊症候群、上大静脈症候群痛風小児尿路結石症
疾患
Lesch-Nyhan症候群

🧠 は「」と「(再利用)」の2つの入口で作られ、分解は最終的に尿酸に集約される、と読む。 ピリミジンは逆に、まず塩基骨格を作ってからを付ける点でプリンと合成順序が違う。と、そこを狙う〈antifolate〉・〈antimetabolite〉)の対応関係が臨床の要。食事由来のプリンはほとんど利用されず尿酸として捨てられる点も要点。

ヌクレオチドの構造と機能

ヌクレオチドは、(プリンまたはピリミジン)+またはデオキシ〈deoxyribose〉)+からなる。1

役割
核酸の構成単位 DNA・RNA
ATP、GTP
の構成成分 NAD⁺、FAD、CoA
シグナル分子 cAMP、cGMP
糖・の活性化中間体 UDP-グルコース、CDP-

食事由来ヌクレオチドの運命

食事中の核酸は消化管でヌクレアーゼ・ホスファターゼ・により分解され、塩基・・リン酸に分解される。

食事プリンのほとんどは体内で再利用されず、尿酸として排泄される。 腸粘膜・組織はを積極的に分解する能力が高く、食事由来のの寄与は新規合成に比べて小さい。に必要なヌクレオチドの大部分は、または体内で分解された塩基の由来である。プリン体(内臓・魚卵など)の多い食事が痛風のリスク因子になるのは、この尿酸産生経路を反映する。

プリンヌクレオチドの合成

デノボ合成

プリン環は、-5-リン酸から出発し、PRPP(5-ホスホリボシル-1-を土台として、その上に段階的に環を組み立てる(他のヌクレオチド合成と違い、塩基を単独で作ってからに付けるのではなく、の上で環を作る点が特徴)。

段階 内容
PRPPアミドトランスフェラーゼ(PRPP→5-)。(AMP・GMP)によるを受ける
最初の完成産物 IMP(酸)
IMP→AMP が窒素供与(を経由、GTPを消費)
IMP→GMP グルタミンが窒素供与(XMPを経由、ATPを消費)

💡 AMP合成にはGTP、GMP合成にはATPが必要——これが相互のバランスを取る。 一方のヌクレオチドが豊富だと、そのエネルギーがもう一方の合成に使われるため、AMPとGMPの産生量が自動的に釣り合う仕組みになっている。

サルベージ経路

分解された塩基()を、PRPPと直接結合させて再びヌクレオチドに戻す省エネルギー経路。

酵素 反応
HGPRT(-ホスホリボシルトランスフェラーゼ) / + PRPP → IMP/GMP
APRT(ホスホリボシルトランスフェラーゼ) + PRPP → AMP

⚠️ HGPRT完全欠損はLesch-Nyhan症候群 が働かないと、基質が蓄積してが過剰になり、・痛風・を伴う神経症状を呈する。

プリンヌクレオチドの分解と尿酸

flowchart TD
  A["AMP"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inosine'>イノシン</span>(IMPを経て)"]
  C["GMP"] --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='guanosine'>グアノシン</span>"]
  B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypoxanthine'>ヒポキサンチン</span>"]
  D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='guanine'>グアニン</span> → <span class='jp-term jp-term-diagram' title='xanthine'>キサンチン</span>"]
  E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='xanthine'>キサンチン</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='xanthine oxidase'>キサンチンオキシダーゼ</span>)"]
  F --> G
  G --> H["尿酸"]
  • →尿酸の両段階を触媒する律速的な酵素。
  • ヒトは尿酸をさらに分解する尿酸オキシダーゼ(、uricase)を欠くため、尿酸が最終として排泄される(多くのでより水溶性の高いまで分解できる)。

⚠️ 痛風は尿酸の溶解度の低さに起因する。 尿酸は水に溶けにくく、血中濃度が上昇するとし、)を起こす。を阻害し尿酸産生を抑える治療薬(はより水溶性が高く排泄されやすい)。

ピリミジンヌクレオチドの合成

プリンと異なり、ピリミジン環は先に完成させてから-リン酸を付加する。

段階 内容
カルバモイルリン酸合成酵素II(CPS-II、細胞質、グルタミン依存)。 のCPS-I(ミトコンドリア、アンモニア依存)とは別酵素
環の完成 が生成
付加 + PRPP →
OMP → UMP(ウリジル酸)
UMPから他のピリミジンへ UMP→UDP→UTP、UTP+グルタミン→CTP(アミノ化)、dUMP→(、thymidylate synthase)→dTMP

反応はを消費する、抗がん剤の主要標的。 dUMP→dTMPの反応でN5,N10-メチレンTHFがを供与しになる(葉酸はTHFへの再還元が必要、07-04-degradation-of-amino-acids-fate-of-the-carbon-skeleton-role-of-vitamins参照)。

リボヌクレオチド→デオキシリボヌクレオチド変換

DNA合成にはが必要。がNDP(二リン酸)レベルでの2’-OHを還元しdNDPを作る。この酵素は産物によるを受け、DNA合成に必要な4種のdNTPの供給バランスを保つ。

細胞増殖抑制薬とヌクレオチド代謝

経路の各段階が、がんの標的になる。

薬剤 標的 機序
メトトレキサート 葉酸の再還元(DHF→THF)を阻害 → が停止
(5-FU) 。dUMPの代わりに取り込まれ酵素を不可逆的に阻害 → dTMP合成阻害
(6-MP)、 プリンの 。HGPRTで活性化されなどを阻害
dNTP産生を阻害しDNA合成を止める

💡 これらの薬はすべて「急速に分裂する細胞(腫瘍〈tumor〉・骨髄〈bone marrow〉・粘膜〈mucosa〉)」を狙う。 ヌクレオチド合成阻害はDNA複製を必要とする細胞に選択的に影響するため、抗がん剤としての効果と同時に、骨髄抑制・などの副作用(正常な急速増殖細胞への影響)も説明できる。

まとめ

  • ヌクレオチドは核酸・・活性化中間体として多機能。食事プリンはほとんど尿酸として排泄される。
  • プリンはPRPP上で(律速:PRPPアミドトランスフェラーゼ)されIMP→AMP/GMPに分岐。(HGPRT・APRT)は省エネ的再利用で、HGPRT欠損はLesch-Nyhan症候群。
  • /→尿酸()。ヒトはを欠くため尿酸が最終産物、痛風・の理解の鍵。
  • ピリミジンは環を先に作ってからを付加(CPS-II律速)。dTMP合成は葉酸依存で抗がん剤の標的。
  • がdNTPを供給し、DNA合成に必要な塩基バランスを保つ。
  • (メトトレキサート・5-FU・6-MP・)はヌクレオチド合成の各段階を狙い、急速増殖細胞を選択的に障害する。

出典

  1. 1.シラバス項目+標準的生化学(対応講義の一次資料なし)対応講義PDF(Kolev_nucleotide_2022_09_22)は非標準フォントエンコーディングでテキスト抽出できなかった。本ノートに講義スライドそのものの裏付けはない。