病態生理学

病態生理学 · P-2-5

肝疾患 症例2

Liver disease, Case 2

前提:病態
肝機能障害(1)肝機能障害(2)

🧠 全体像: 掻痒と背部へ放散する、2か月で8 kgの体重減少、・淡色便を訴える61歳男性(35年の喫煙歴)。鍵は 抱合型優位の+・優位の胆汁うっ滞パターン+尿ビリルビン陽性・陰性(の閉塞) と、無痛性の胆嚢腫大()・の膵頭部低吸収腫瘤 で、によると読む。 2.6は胆汁が腸に届かないことによるビタミンKとして説明できる。CA19-9は胆道閉塞だけでも上がるので、診断の根拠は画像の腫瘤に置く。

症例提示

61歳男性。掻痒と、背部へ放散する鈍いをに受診。痛みは食後および夜間に増悪し、でも軽快しない。過去2か月で悪心と食欲低下が頻回となり、8 kgの体重減少を認めた。尿は濃色化し、便色は通常より淡くなった。35年間の喫煙歴があり、飲酒は。

:

  • 身長: 175 cm
  • 体重: 90 kg
  • icterus
  • 四肢に
  • 無痛性の胆嚢腫大

画像検査:

  • 超音波: 膵に約3.5 cmのechogenic lesion、と膵管は軽度拡張
  • : 膵頭部に3.4 x 3.8 cmのhypodense・hypovascular mass

検査 — 血液:

  • 総bilirubin: 310 μmol/l
  • direct bilirubin: 275 μmol/l
  • AST: 110 U/L
  • ALT: 91 U/L
  • GGT: 405 U/L
  • ALP: 540 U/L
  • amylase: 48 U/L
  • lipase: 50 U/L
  • CA 19-9: > 12000 U/mL (高値)
  • CEA: 34.2 ng/mL (高値)
  • PT: INR = 2.6

尿:

  • UBG: 陰性
  • bilirubin: 陽性

主要所見と解釈

引用 / 値 解釈
“無痛性に腫大した胆嚢” :胆石による閉塞では慢性炎症で胆嚢壁が線維化し拡張しにくいため、無痛性・な胆嚢腫大はむしろ胆石以外の悪性胆道閉塞を示唆する。ただしに特異的な所見ではなく、など他の膵・胆道悪性腫瘍でも生じうる
: “膵頭部の低吸収・低血流腫瘤”、CA 19-9 > 12000、高値 画像で腫瘤が確認されていることが診断の根拠であり、膵頭部腺癌に典型的な所見。CA19-9は胆道閉塞だけでも上昇しうる(は偽陽性の最も多い原因とされる1)で、単独では確定診断に用いず、治療前・経過観察の補助として位置づける
110、 91 U/L(軽度上昇) 胆汁うっ滞に伴う二次性のを示す程度にとどまり、後述の・優位の胆汁うっ滞パターンが主体で、パターンではない
“ … 便色淡化”、尿bilirubin陽性、UBG陰性 腸管にビリルビンが届かず腸内でが作られない、型の()を示唆
総bilirubin 310、direct 275 µmol/L、 405、 540 U/L 抱合高bilirubin血症 + 酵素パターンで、胆道閉塞に一致
8 kg体重減少、食欲低下、性 後腹膜へ進展するの典型像
2.6 入欠如による脂溶性ビタミンKからが低下。肝細胞そのものの合成能は保たれているため、非経口ビタミンK投与に反応しうる点が、肝硬変での肝細胞合成能低下によるビタミンK抵抗性のと異なる
amylase/lipase正常 を原因とする可能性は低い

要点整理

  • 診断: による閉塞性()黄疸。
  • 代表的徴候: Courvoisierの法則。黄疸に無痛性・な胆嚢腫大を伴う場合、悪性閉塞を強く示唆する(胆石性の閉塞では胆嚢が線維化し拡張しにくいため)。ただしだけに特異的な所見ではない。💡 この徴候は悪性閉塞に対する特異度は83〜90%と高い一方、感度は26〜55%にとどまり、陰性であっても悪性を除外できない2。
  • 黄疸のタイプ: 抱合高bilirubin血症。bilirubin尿陽性かつ欠如は胆管を示す。/の軽度上昇は胆汁うっ滞の二次的な影響にとどまり、主体は・優位の胆汁うっ滞パターンである。
  • 病態生理: 腫瘍がを閉塞 → 胆汁うっ滞 → 、、掻痒、障害(非経口ビタミンK投与で是正されうる点が、肝硬変での合成能低下によると異なる)。
  • : のCA 19-9(および上昇)が膵悪性腫瘍を支持するが、CA19-9は胆道閉塞だけでも上昇するため単独では確定診断とせず、画像所見と併せて判断する。102例の前向き研究では、32 U/mLを閾値にすると良性黄疸の54.9%でも陽性(特異度45%)で、100 U/mLに上げても良性の35.3%が陽性だった1。
  • 症状との対応: 掻痒は胆汁うっ滞、体重減少と食欲低下は悪性腫瘍を背景とする全身症状として拾う。

出典

  1. 1.Adjusting CA19-9 values to predict malignancy in obstructive jaundice: influence of bilirubin and C-reactive protein(World Journal of Gastroenterology・2012)閉塞性黄疸患者102例(良性51例・悪性51例)の前向き研究で、CA19-9はカットオフ32 U/mLでは悪性の82.3%に対し良性黄疸の54.9%でも陽性(感度82.3%・特異度45%)、100 U/mLでも良性の35.3%が陽性であったことを抄録で確認した。全文(PMC3422795)では、CA19-9は良性胆道疾患でも上昇して診断精度を大きく下げること、偽陽性の最も多い原因は閉塞性黄疸であることを先行文献(同論文の参考文献10)を引いて述べ、ビリルビンやCRPで補正する方法を提案している閲覧 2026-08-26
  2. 2.Abdominal Physical Signs and Medical Eponyms: Physical Examination of Palpation Part 1, 1876–1907(Clinical Medicine & Research・2018)Courvoisier徴候(無痛性・触知可能な胆嚢腫大を伴う黄疸)は悪性胆道閉塞に対して特異度83〜90%と高い一方、感度は26〜55%にとどまり、徴候が陰性でも悪性を除外できないと報告している閲覧 2026-08-26