病態生理学

病態生理学 · P-2-7

肝疾患 症例4

Liver disease, Case 4

前提:病態
肝機能障害(1)肝機能障害(2)

🧠 全体像: 3週間続く・胆汁性嘔吐・黄疸で受診した52歳女性で、3年間の歴と多数のがある。鍵は 1316・ 2749 U/Lの著明な+抱合型優位の+ 1.49、3週間前の検査は陰性だったのに今回 がで陽性、・自己免疫パネル陰性 で、を経て診断されたC型肝炎による重症の肝炎と読む。・のはでも起こり、生検でが無いのでとは読まない。 が確認された急性C型肝炎は、自然排除を待たずに治療する。

症例提示

52歳女性(他に大きな既往なし)。3週間持続するの疝痛様痛をに受診。胆汁性嘔吐と黄疸を伴う。輸血歴はないが、の変更が多い。飲酒は(週1〜2本のビール)で、3年間の歴があり、これまでに複数回リハビリテーションを受けている。

:

  • 身長: 174 cm
  • 体重: 63 kg
  • に圧痛あり。抵抗やはなく、肝は触知しない。

検査結果:

  • 総bilirubin: 270.18 µmol/L
  • direct bilirubin: 205 µmol/L
  • ALT: 1316 U/L
  • AST: 2749 U/L
  • PTT: 15.9 s
  • INR: 1.49
  • ferritin: 5351 pm/L (33.7-449.4 pmol/L)
  • transferrin saturation: 88%(14%-50%)
  • Fe2+: 211 μg/dL (50-150 μg/dL)
  • acetaminophen: 陰性
  • 3週間前に実施した, , , 検査はすべて陰性

腹部超音波: 胆嚢炎はなく、cholestasisを認める。

自己免疫パネルは陰性。, , 抗体検査を再検したところ、HCV感染が確認され、ウイルス量 20 739 524 IU/mL、遺伝子型 1であった。

: 高度の活動性。肝細胞のと硝子様変性を認める。の目立つ増加とCouncilman小体を認め、はない。

主要所見と解釈

引用 / 値 解釈
“3年間の”、“パートナー変更が多い” 血液媒介・性的曝露があり、血液媒介性ウイルス肝炎の高リスク
1316、 2749 U/L 極めて高いで、重度急性を示唆
“感染確定: ウイルス量 20 739 524 IU/mL、遺伝子型 1” 原因としてC型肝炎を確定
総bilirubin 270、direct 205 µmol/L、 1.49 抱合高bilirubin血症 + 早期で、が有意
ferritin 5351、transferrin saturation 88%、Fe高値、ただし生検でなし は急性相反応物質であり、壊死した肝細胞からも放出される。も・で上昇しうるため、の素因と取り違えやすい1。生検でが無いので、現時点で鉄過剰(臓器への)を示す所見は無い。の指標は持続的な上昇なので、疑いが残るなら肝障害が落ち着いてから鉄指標を測り直す1。単位にも注意し、 5351 pmol/L は約2,380 µg/L(ng/mL)に当たる(1 µg/L ≈ 2.247 pmol/L)
acetaminophen陰性、自己免疫陰性、初回ウイルス検査陰性 paracetamol中毒・を除外。抗抗体の化には曝露後平均50〜60日(数週間〜5か月程度の幅)を要する一方、 は曝露後1〜2週間で検出可能になるため、抗体が既知陰性であった3週間後でも ・ウイルス量測定で感染を確定できる(今回の「抗体陰性 → ウイルス量陽性」はこので説明できる)2
生検: “、硝子様変性、、Councilman小体” 肝細胞アポトーシス(Councilman小体)とマクロファージ活性化を伴う活動性ウイルス肝炎。⚠️ 生検報告は「高度の活動性慢性肝炎」と書いているが、3週間前の検査が陰性で今回陽性になった経過は急性(最近の)感染を示唆する。報告の「慢性」は症例提示の文言としてそのまま残し、本ノートは経過に基づいて急性感染として解釈する

要点整理

  • 診断: C型ウイルス肝炎による重症活動性肝炎。確定の根拠は 陽性(ウイルス量 約2.1×10⁷ IU/mL)で、遺伝子型1は治療薬を選ぶための情報である。
  • 障害パターン: 著明な(/高値)に抱合高bilirubin血症とを伴う。
  • 重要な落とし穴: ferritin/transferrin saturation高値は鉄過剰を示唆しうるが、は急性相反応とで、もで上昇しうる。生検でがないので、による鉄過剰とは読まない1。
  • 危険因子: と複数(血液媒介感染リスク)。
  • 除外根拠: paracetamol陰性と自己免疫陰性で主要を否定。初期は抗体の(曝露後平均50〜60日)で説明でき、 はより早期(1〜2週間)に検出可能なため確定に至った2。
  • 今後の経過: 初感染は自然に排除されないことが多く、無治療では約55〜85%が慢性化しうる((1)参照)。慢性化すれば線維化・肝硬変・へ進行するリスクがある。
  • : ⚠️ 本症例のように が定量可能な急性C型肝炎では、自然排除を待って経過観察する方針は現在は取らない。 診断された時点で治療を開始することが推奨されており(推奨度 I、 B)、と同じ()レジメンを用いる3。同じ指針は、(など)と飲酒を避け他者への感染を減らすための指導(I, C)と、物質使用に関連した急性感染での依存症専門医への紹介(I, B)も推奨している3。歴のある本例では、予防と減薬・断薬支援を治療と並行して行うことが要点になる。

出典

  1. 1.EASL Clinical Practice Guidelines on haemochromatosis(European Association for the Study of the Liver・2022)全文(KU Leuven リポジトリ版。誌面の頁番号 77:479–502 を含む版)で確認した。フェリチンは鉄過剰の指標であるだけでなく急性相反応物質でもあり、壊死・融解した細胞からも放出されること、トランスフェリン飽和度は進行した肝硬変・低トランスフェリン・急性肝不全・急性肝障害でも上昇しうるためヘモクロマトーシスの素因と取り違えられうること、高フェリチン血症の鑑別としてウイルス性肝炎・急性肝障害・炎症を挙げていること、診断には持続的なトランスフェリン飽和度上昇が指標になることを述べている。閲覧 2026-09-24
  2. 2.Lesson 5. Diagnosis of Acute HCV Infection (Hepatitis C Online, National curriculum)(Hepatitis C Online, University of Washington・2026)抗HCV抗体は曝露後平均50〜60日(範囲20〜150日)で陽転化する一方、HCV RNAは曝露後1〜2週間で検出可能になり、抗体陰性・RNA陽性の組み合わせは急性感染がウィンドウ期にある可能性を示すことを確認した。閲覧 2026-08-14
  3. 3.Management of Acute HCV Infection (HCV Guidance: Recommendations for Testing, Managing, and Treating Hepatitis C)(AASLD/IDSA・2023)急性C型肝炎でウイルス血症(定量可能なHCV RNA)が確認された時点で、自然排除を待たずに治療を開始すべきである(推奨度 I、エビデンスレベル B)こと、および慢性感染と同じ直接作用型抗ウイルス薬(DAA)レジメンを用いること(IIa, C)を確認した。2026-09-24の再取得で、同じ表に、アセトアミノフェンなどの肝毒性薬と飲酒を避け他者への感染を減らすための指導(I, C)と、物質使用に関連した急性HCV感染では依存症専門医へ紹介すること(I, B)が並んでいることも確認した。閲覧 2026-08-14