小児科学

小児科学 · 26

耳の疾患

Diseases affecting the ear

前提:正常
耳:中耳(鼓室・耳管の形成)

🧠 全体像:小児の耳疾患は「外耳道の炎症()」「中耳の急性感染(急性中耳炎)」「中耳の()」の3つに整理できる。は操作痛、は急性のと鼓膜膨隆、は症状に乏しくが目立つ、という症状・の違いが鑑別の軸になる。

総論

小児で最も多い症状はに関連するものである。は乳幼児に非常に多いが、自然軽快する例もあり、年齢・重症度・片側/両側性と確実なフォローの可否で抗菌薬治療と経過観察を選ぶ。1

外耳炎

外耳道の炎症。

  • 病因:細菌性(主にPseudomonas、S. aureus)、真菌性(Candida、Aspergillus)。
  • 危険因子:水泳、使用、皮膚炎、、補聴器使用。
  • 症状:細菌性では疼痛、真菌性では掻痒や分泌物が目立つ傾向があるが、症状だけで病原体を確定しない。、外耳道()の圧痛、、難聴、分泌物、。発熱はまれ。外耳道皮膚の腫脹・発赤、漿液性/、・debris の貯留、鼓膜は正常に見える。
  • 治療:鎮痛、外耳道の慎重な清掃、抗菌薬±ステロイドが基本。高度腫脹で薬液が届かない場合はを用いる。または留置が疑われる場合は耳毒性のあるを避け、安全な製剤を選ぶ。単純なびまん性には通常不要で、耳介周囲への進展、免疫不全、糖尿病などがある場合に検討する。2

中耳炎

急性中耳炎

ウイルス性に続いて中耳にが生じる、疼痛を伴う感染症。細菌がしばしば関与するが自然軽快例もあり、2歳未満に多い。急性発症+炎症所見を特徴とする。1

  • 病因:肺炎球菌、H. influenzae、。
  • 危険因子:過密環境・不衛生な生活環境、栄養不良、解剖学的/免疫学的異常()、の細菌定着、。
  • 症状:、、鼻閉、難聴、発熱、倦怠感。穿孔があれば。外耳道は正常だが鼓膜は充血し、進行すると鼓膜膨隆(→穿孔)を来す。
  • 診断:中等度〜高度の鼓膜膨隆または、あるいは+48時間以内の/著明な鼓膜発赤を重視し、がなければAOMと診断しない。・でを確認する。合併症のないAOMに画像や培養をルーチンには行わない。1
  • 治療:全例で鎮痛を行う。、重症症状(中等度以上の、48時間以上の、39℃以上)、6〜23か月の両側AOMなどは抗菌薬を開始する。非重症の片側例や2歳以上では、確実なフォローを条件に48〜72時間の経過観察も選べる。抗菌薬を用いる場合の第一選択は通常アモキシシリンで、直近30日のアモキシシリン使用、膿性結膜炎、治療不応などではアモキシシリン/を検討する。治療期間は年齢・重症度で5〜10日とし、48〜72時間で改善しなければ再診断する。鼓膜穿刺/は重症・難治・合併症例でが検討する。1

滲出性中耳炎

中耳の急性感染徴候を伴わない滲出液貯留(または漿液性)を特徴とし、就学前小児に非常に多い。3

病期 貯留期間
早期 3か月未満
慢性 3か月以上
  • 病因:AOM、、、耳管の慢性機能不全(、腫瘍)。
  • 💡 の悪循環:→中耳換気障害+中耳陰圧→粘膜の浮腫・炎症→さらなる、という悪循環に陥る。原因には閉塞(腫瘍、狭窄)、感染()、炎症(アレルギー、毒素、GERD)、奇形()、外傷がある。
  • 症状:通常は無痛で、急性の耳症状や発熱などの全身症状を欠く。やが中心で、などを伴うこともある。
  • 診断:で鼓膜の不整/陥凹。で鼓膜可動性の低下/消失。で平坦なB型カーブ(陰圧主体ならC型)を認める。年齢相応の聴力検査でを評価する。/はOMEのルーチン検査ではなく、腫瘍・・などを疑う場合に限る。
  • 治療:リスクのない児は診断または発症から3か月の注意深い経過観察を行う。OMEそのものに抗菌薬、全身/点鼻ステロイド、抗ヒスタミン薬、を用いない。3か月以上持続する場合、または言語発達・学習・感覚障害などのリスク児では早期に年齢相応のを行う。3 両側性持続例で聴力障害がある場合などはを検討し、3〜6か月ごとに再評価する。4

まとめ

  • は細菌性なら疼痛主体、真菌性なら掻痒・分泌物主体という症状パターンで鑑別する。
  • は急性のと鼓膜膨隆/を特徴とし、重症度・年齢・片側/両側性で即時抗菌薬と48〜72時間観察を選ぶ。
  • はのによる無痛性のが特徴で、まず3か月観察し、持続例では聴力・言語発達を評価する。やステロイドはOME治療として推奨されない。
  • 持続性OMEで聴力障害などがある場合はを、AOMの重症・難治・合併症例では鼓膜穿刺/切開を専門医が検討する。

出典

  1. 1.The diagnosis and management of acute otitis media(2013)小児急性中耳炎の鼓膜所見を重視した診断、年齢・重症度別の経過観察、第一選択抗菌薬を確認した。閲覧 2026-08-13
  2. 2.Clinical practice guideline: acute otitis externa(2014)急性外耳炎では局所治療を第一選択とし、全身抗菌薬を耳道外進展や特定の宿主要因がある場合に限定する原則を確認した。閲覧 2026-08-13
  3. 3.Clinical Practice Guideline: Otitis Media with Effusion (Update)(2016)滲出性中耳炎の定義、3か月の経過観察、聴力評価、薬物療法をルーチンに行わない管理原則を確認した。閲覧 2026-08-13
  4. 4.Clinical Practice Guideline: Tympanostomy Tubes in Children (Update)(2022)3か月以上持続する両側滲出性中耳炎と聴力障害で鼓膜換気チューブを推奨し、非挿入例を定期再評価する適応を確認した。閲覧 2026-08-13