Physiology

Physiology · 5.2

止血と血小板の役割。

Hemostasis and the role of thrombocytes.

応用トピック
抗血小板療法と適応フォン・ヴィレブランド病免疫性血小板減少症消化管出血血小板減少症血栓性微小血管症(TTP・HUS)出血性疾患と免疫性血小板減少症凝固異常症創傷の分類と創傷治癒創傷の分類と創傷治療の原則出血の種類・止血・輸血

🧠 は「血管収縮で時間を稼ぎ、血小板が接着→活性化→凝集という3段階で栓を作る」という一本道として読む。GPVI/GPIa-IIaによる弱い結合→vWF(von Willebrand factor)を介した-IX-Vによる強い結合→活性化によるCa²⁺放出・形態変化→GPIIb-IIIaを介したフィブリノゲン架橋、という「結合の強さと相手が段階的に変わっていく」流れを押さえれば全体が繋がる。

止血の全体構造

損傷血管からの出血を防止・停止する機構。の適切なバランス(正負のフィードバックで維持)により、治癒を促しつつを防ぐ。

止血=血管収縮+の形成(凝固)\text{止血} = \underbrace{\text{血管収縮}+\text{}}_{\text{}} \to \underbrace{\text{の形成}}_{\text{(凝固)}}

関与する要素: 血管壁(内皮細胞・内皮下組織)、血液成分(血小板、凝固因子 clotting factor、線溶/抗凝固蛋白、赤血球、 polymorphonuclear cell)、臓器(骨髄、肝臓)。

一次止血:血管収縮

損傷直後の即時反応で、血流を減らし血液喪失を抑えつつ、より効果的な止血過程が進行する時間を稼ぐことが主目的。

機序 内容
血管収縮を誘発
放出 ET受容体(Gq)→
血小板由来の血管収縮物質 (thromboxane A2, TXA2、血小板が合成)→Ca²⁺シグナル→収縮。セロトニン(血小板が合成)。エピネフリン(血小板が取り込む、合成はしない)→α1-AR→

血小板

の断片で、の主役。

構造 機能
Ca²⁺貯蔵
ADP、セロトニン、ポリリン酸(物質)
α顆粒 凝固因子
アクチン・ミオシン 後の血餅収縮(血餅を小さくする)
GPIa/IIa、GPVIなど

血小板の接着・活性化・凝集

flowchart TD
  A["血管損傷:コラーゲン露出"]
  A --> B["接着:GPVI・GPIa-IIaがコラーゲンに弱く結合<br>内皮由来vWFを介し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glycoprotein Ib'>GPIb</span>-IX-Vが強く結合"]
  B --> C["活性化:GPVI結合→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tyrosine phosphorylation cascade'>チロシンリン酸化カスケード</span>→PLC→IP3→Ca2+放出"]
  C --> D["形態変化(細胞骨格活性化)"]
  C --> E["TXA2産生増加(PLC↑経由)"]
  C --> F["顆粒内容物の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='exocytosis'>エキソサイトーシス</span>(セロトニン・ADP・TXA2・エピネフリン)"]
  D --> G["凝集:GPIIb-IIIa露出→フィブリノゲンのRGDモチーフに結合→血小板同士が架橋"]
  E --> G
  F --> G

1. 接着

  • 弱い結合: GPVI・GPIa-IIaがコラーゲンのに直接結合。
  • 強い結合: 内皮細胞が放出するを介し、血小板の-IX-V複合体が結合する——vWFが関与する方が結合が強固。

2. 活性化

GPVIのコラーゲン結合がを起動→PLC活性化→IP₃→Ca²⁺放出、という一連の流れが血小板を「活性化」させる。

[Ca²⁺]上昇の帰結:

  • 細胞骨格活性化→形態変化(からへ、より大きく他の血小板と結合しやすい形に)。
  • PLC↑→TXA2産生↑→活性化がさらに増強(正のフィードバック)。
  • 顆粒内容物(セロトニン、ADP、TXA2、エピネフリン)の→周囲の血小板も活性化。
  • を膜表面へ移動——血栓/栓形成を助け、凝固因子形成のにもなる(5-03-blood-coagulation-fibrinolysis-physiological-anticoagulant-mechanisms複合体の場を提供)。

3. 凝集

  • の安定化により血栓が発達を開始。
  • 高いストレスによる血小板膜からの微粒子の脱落も凝集に寄与。
  • ADP・TXA2が周囲の血小板を呼び寄せる。
  • 露出したGPIIb-IIIaがフィブリノゲンのRGD(Arg-Gly-Asp)モチーフに結合し、血小板同士を架橋する。

⚠️ 正常な血管では、NOが損傷を受けていない内皮細胞から放出され続け、血小板の凝集を抑制している。 これにより血栓が損傷部位に限局し、過大化するのを防ぐ——「止血」と「血栓症」を分けるがこの内皮由来のにある。

まとめ

  • は血管収縮(・血小板由来血管収縮物質)で開始し、血小板の接着・活性化・凝集へと進む。
  • 接着はGPVI/GPIa-IIa(弱)とvWF依存性の-IX-V(強)の2段階、活性化はGPVI→PLC→IP₃→Ca²⁺放出が引き金となり形態変化・TXA2産生・顆粒放出を誘発する。
  • 凝集はGPIIb-IIIaとフィブリノゲンのRGDモチーフの結合で血小板同士を架橋するが、健常内皮由来のNO・PGI2が血栓の過大化を防ぐ。