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Drug Atlas · B22 Antiasthmatic & COPD drugs / 喘息・COPD治療薬

ベンラリズマブ

benralizumab

分類
Biologics & immunomodulators / 生物学的製剤Antiasthmatic & COPD drugs / 喘息・COPD治療薬
商品名(日本)
ファセンラ
商品名(EU)
Fasenra
科目
Pharmacology
トピック
B22: Antiinflammatory agents inhibiting bronchial inflammatory processes. Antitussive agents and expectorantsB30: Immunopharmacology III (Antibodies and fusion proteins)
承認適応
気管支喘息好酸球性多発血管炎性肉芽腫症好酸球増多症候群
副作用
頭痛発熱注射部位反応
監視検査値
血中好酸球数
影響検査値
血中好酸球数
対象疾患
アスピリン増悪呼吸器疾患

🧠 全体像:を理解する軸は「リガンド(IL-5)ではなく受容体()を狙い、しかも中和ではなく細胞ごと消す」という一点にある。がIL-5そのものを中和して好酸球の分化・を断つのに対し、は好酸球表面のに直接結合し、⭐ フコースを除去した抗体構造がNK細胞のFcγRIII受容体との結合を強め、()で好酸球そのものをアポトーシスに導く。「シグナルを止める」のではなく「細胞を消す」という発想の違いが、同じ抗IL-5経路の薬の中でもだけの特徴になる。

薬効群の中での位置づけ

薬剤 標的 好酸球を減らす仕組み 主な適応
(受容体) フコース除去型抗体によるで好酸球・を直接アポトーシスに導く1 重症・EGPA・(HES)——ただし承認範囲は国で違う(下記「適応」参照)
IL-5(リガンド) IL-5を中和し好酸球の分化・を遮断 重症・CRSwNP・・EGPA
IL-5(リガンド) IL-5に結合しとの結合を阻害 好酸球性重症喘息のみ
・の両シグナルを遮断(好酸球経路に限らない) 全般

⭐ 「受容体そのものを叩く」設計だからこそ、好酸球をより深く、より速く減らせる。 は投与後速やかに末梢血好酸球をほぼ以下まで減少させる点で、リガンドより減少の程度が大きいとされる。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='benralizumab'>ベンラリズマブ</span>(フコース除去型ヒト化<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immunoglobulin G1'>IgG1</span>抗体)を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subcutaneous administration'>皮下投与</span>"] --> B["好酸球・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='basophil'>好塩基球</span>表面の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='IL-5 receptor alpha'>IL-5Rα</span>に直接結合"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Fc region'>Fc領域</span>のフコース欠失によりFcγRIII親和性が上昇"]
    C --> D["NK細胞などの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune effector cell'>免疫エフェクター細胞</span>がFcγRIIIを介して結合"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antibody-dependent cellular cytotoxicity (ADCC)'>抗体依存性細胞傷害</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antibody-dependent cellular cytotoxicity'>ADCC</span>)が誘導される"]
    E --> F["好酸球・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='basophil'>好塩基球</span>がアポトーシスで除去される"]
    F --> G["気道・全身の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eosinophilic inflammation'>好酸球性炎症</span>が抑制される"]

💡 と薬の違いは「シグナルを止める」か「細胞を消す」かにある。 はIL-5を中和してもすでに存在する好酸球はしばらく残るが、はで好酸球自体を積極的に除去するため、末梢血好酸球の減少がより徹底的かつ速やかになる。

薬物動態

項目 値・特徴
皮下注射(可能な製剤あり)
構造 フコース除去型(への11 pM)1
用量 適応・年齢・体重で異なる(下記「用法・用量」参照)
代謝・排泄 抗体としてを受ける()

適応

⚠️ 承認された適応は国によって違う。 同じ薬なのに、は成人の喘息とEGPAの2つだけ、日本と米国はそこに(HES)が加わり小児の喘息にも用量が定められている。一つの国の添付文書は、他の国で何が使えるかの証拠にならない。

適応 の(SmPC) 日本の電子添文 米国の添付文書
成人のみ。高用量薬と長時間作用性を併用してもコントロール不良の重症への。6〜17歳は有効性・安全性が確立しておらず用量を推奨できないと明記2 既存治療でコントロールできない難治例に限る。成人・12歳以上の小児・6歳以上12歳未満(体重で製剤が分かれる)3 好酸球表現型を伴う重症喘息、6歳以上1
(EGPA) 成人のみ。再発性または難治性のEGPAへの治療2 既存治療で効果不十分なEGPA。成人のみ3 成人1
(HES) 適応に無い(SmPC 4.1 に掲げられていない)2 あり(2026年5月改訂の第5版で追加)。成人及び12歳以上の小児3 12歳以上1
を伴う 適応に無い2 適応に無い3 適応に無い1

⚠️ という診断名への承認は、・日本・米国のいずれにも無い。 本症のを狙う生物学的製剤の候補としてが挙げられることはあるが4、上の裏づけは本症に合併する重症喘息の適応であって、本症そのものの適応ではない。⭐ には「を伴う」の適応も無い。のにも日本の電子添文にも掲げられていない23。本症の副鼻腔病変をの側から支える経路が無い点が、の適応を持つ他の抗薬との違いになる。⚠️ 2020年の総説の時点では、を伴うについても本症についても生物学的製剤どうしの直接比較試験は行われていなかった4。その後2025年にとを比較したEVEREST試験が報告されているが、⚠️ を含む比較ではない5(→)。

⚠️ ・状態の救急治療には使えない。 による好酸球除去が効果を発揮するまでに時間がかかるため、発作を止めるは無い1。日本の電子添文も「既に起きているの発作や症状を速やかに軽減する薬剤ではないため、急性の発作に対しては使用しないこと」(5.3)と定めている3。

用法・用量

⭐ 用量は適応・年齢・体重で変わるが、EGPAとHESは喘息の成人用量(30mg/4週)で固定される点が単純化のポイント。 喘息だけが初回・4週後・8週後の3回を4週ごとに打ち、以降は8週間隔へ広がる「導入→維持」の2段階になる。

適応 対象 用量・間隔(日本の電子添文)3
成人・12歳以上の小児・体重35kg以上の6歳以上12歳未満 1回30mgを初回・4週後・8週後に皮下注、以降8週間隔
体重35kg未満の6歳以上12歳未満 1回10mgを同じ間隔で皮下注
EGPA 成人 1回30mgを4週間隔で皮下注
成人及び12歳以上の小児 1回30mgを4週間隔で皮下注

⚠️ 30mgを投与するときに10mgシリンジを使わない。 10mgシリンジと30mgシリンジの生物学的同等性試験は行われていない(7.1)3。では6〜17歳の喘息と18歳未満のEGPAに推奨用量が示されていないため、上の小児用量はのには存在しない2。

禁忌・注意

  • 禁忌:または添加剤に対する過敏症の既往歴のみ。疾患名で指定された禁忌は無い23
  • ⚠️ 過敏症反応(アナフィラキシー・蕁麻疹・丘疹状蕁麻疹・発疹、日本の電子添文では・も)が投与後に生じうる。 投与から数時間以内に起こることが多いが、数日遅れて発現することもある。のは、過敏症反応が起きたら本剤を恒久的に中止すると定めている23
  • ⚠️ 投与開始前に既存の寄生虫(蠕虫)感染があればを済ませておく。 好酸球は一部の蠕虫感染への免疫応答に関与しており、で好酸球を減らすと反応が損なわれうる。投与中に感染しが無効な場合は本剤の一時中止を考慮する23
  • ⚠️ 投与開始後にステロイド薬を急に中止しない。 減量が必要ならの管理下で徐々に行う23
  • ⚠️ 併存する他の好酸球関連疾患の管理を手放さない。 本剤で好酸球が減るとの症状が変化しうるが、その疾患の治療を怠ると症状が急激に悪化し、喘息等では死亡に至るおそれがある(8.4)。の変更後・中止後も含めて、担当医と連携する3
  • ・状態の治療薬ではない(が無い)13

副作用

頻度 内容
高頻度(喘息) 頭痛 8%、咽頭炎 3%(のの集計)2。米国の添付文書では頭痛・咽頭炎がいずれも5%以上1
高頻度(EGPA) 頭痛 17%(EGPA試験では「非常に高頻度」の区分)2
高頻度(HES) 頭痛・過敏反応・(6〜16%)1
注意 発熱(2〜3%)、注射部位反応(疼痛・紅斑・・丘疹。2.2%対1.9%で一過性)21
重篤・まれ アナフィラキシー反応(頻度不明)。日本の電子添文は蕁麻疹・・を含む重篤な過敏症として挙げる23

💡 注射部位反応はプラセボ群でもほぼ同じ頻度で起きている(2.2%対1.9%)。「薬のせいで必ず起きる」ではなく「皮下注射という手技に伴う所見」として読む2。

まとめ

  • はフコース除去型ヒト化抗体で、好酸球・表面のに直接結合し、()を介して好酸球そのものをアポトーシスに導く。IL-5を中和するとは「消す」か「止める」かで作用の質が異なる。
  • ⚠️ は国で違う。 EUは成人の重症とEGPAの2つだけ2、日本は喘息(6歳以上)・EGPA(成人)・(成人及び12歳以上)の3つ3、米国は喘息(6歳以上)・EGPA(成人)・HES(12歳以上)である1。
  • 喘息の用量だけが(4週ごと×3回)と(8週ごと)の2段階で、EGPAとHESは30mgを4週間隔に固定される。体重35kg未満の6〜11歳だけが10mg3。
  • ⚠️ の治療薬ではなく、投与開始前に寄生虫(蠕虫)感染のが必要。過敏症反応が起きたら恒久的に中止する2。
  • ⚠️ という診断名への承認は3極のいずれにも無く、を伴うの適応も持たない23。本症のを狙う生物学的製剤の候補として挙げられることはあるが、2020年の総説の時点で直接比較試験は行われておらず4、その後報告された比較試験(EVEREST、2025年)も対でを含まない5。

出典

  1. 1.FASENRA (benralizumab) injection — Highlights of Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed、製造販売元 AstraZeneca Pharmaceuticals LP)・2026)添付文書(2026年5月改訂)の作用機序が、ベンラリズマブがヒトIL-5受容体αサブユニット(IL-5Rα)に解離定数11 pMで直接結合するフコース除去型(afucosylated)ヒト化IgG1κモノクローナル抗体であること、Fc領域のフコース欠失によりNK細胞などのFcγRIII受容体への結合親和性が高まり(45.5 nM)抗体依存性細胞傷害(ADCC)を介して好酸球・好塩基球のアポトーシスを誘導することを述べていること、適応が成人および6歳以上の小児における好酸球表現型を伴う重症喘息の維持療法・成人の好酸球性肉芽腫症を伴う多発血管炎(EGPA)・12歳以上の成人および小児の特発性好酸球増多症候群(HES)であること、急性気管支痙攣または喘息重積状態の救急治療には適応されないこと、禁忌が本剤または賦形剤に対する既知の過敏症であること、警告としてアナフィラキシー・血管浮腫・蕁麻疹・皮疹などの過敏症反応、既存の蠕虫感染患者は治療前に駆虫すべきことが挙げられていること、用法・用量が喘息では成人・12歳以上は30mgを最初3回は4週ごと、その後8週ごとに皮下投与し、6〜11歳では体重35kg未満は10mg・35kg以上は30mgで同じスケジュールであり、EGPA・HESでは30mgを4週ごとに皮下投与すること、高頻度の副作用が喘息で頭痛・咽頭炎(いずれも5%以上)、EGPAで頭痛(5%以上)、HESで頭痛・過敏反応・インフルエンザ様症状(6〜16%)、全体として発熱(2〜3%)・注射部位反応(2.2%)であることを確認した。閲覧 2026-09-05
  2. 2.Fasenra (benralizumab) — Summary of Product Characteristics (Annex I)(European Medicines Agency・2025)「4.1 Therapeutic indications」がAsthma(高用量吸入ステロイド薬と長時間作用性β刺激薬を併用してもコントロール不良の重症好酸球性喘息の成人への上乗せ維持療法)とEosinophilic granulomatosis with polyangiitis(再発性または難治性のEGPAの成人への上乗せ治療)の2つだけであり、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎・好酸球増多症候群・アスピリン増悪呼吸器疾患のいずれも適応として掲げられていないこと(全文でnasal polyp・hypereosinophilic・aspirinがいずれも0回)、「4.2」で喘息が30mgを最初の3回は4週ごと・以降8週ごと、EGPAが30mgを4週ごとであり、6〜17歳の喘息と18歳未満のEGPAは有効性・安全性が確立しておらず用量を推奨できないとされていること、「4.3」の禁忌が有効成分または添加剤への過敏症のみであること、「4.4」で急性増悪への使用が否定され、過敏症反応が発現した場合は本剤を恒久的に中止すべきとされ、蠕虫感染のある患者は投与開始前に治療すべきとされていること、「4.8」で最も高頻度の副作用が喘息では頭痛8%・咽頭炎3%、EGPAでは頭痛17%であることを確認した。閲覧 2026-09-07
  3. 3.ファセンラ皮下注30mgシリンジ/ファセンラ皮下注30mgペン/ファセンラ皮下注10mgシリンジ 電子添文(YJコード 2290402G1020、2026年5月改訂・第5版、効能変更・用法変更・用量変更)(医薬品医療機器総合機構(PMDA)電子添文・2026)「4. 効能又は効果」が30mg製剤で気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)・既存治療で効果不十分な好酸球性多発血管炎性肉芽腫症・好酸球増多症候群の3つ、10mg製剤で気管支喘息のみであり、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎もアスピリン増悪呼吸器疾患も掲げられていないこと、「6. 用法及び用量」が喘息では成人・12歳以上の小児・体重35kg以上の6歳以上12歳未満の小児に1回30mgを初回・4週後・8週後、以降8週間隔、体重35kg未満の6歳以上12歳未満の小児に1回10mgを同じ間隔、EGPAでは成人に1回30mgを4週間隔、好酸球増多症候群では成人及び12歳以上の小児に1回30mgを4週間隔であること、「2. 禁忌」が本剤及び本剤の成分に対する過敏症の既往歴のみであること、「9.1.1」が寄生虫に感染している患者では投与開始前に寄生虫感染を治療することを求めていること、「5.3」が既に起きている発作に本剤を使用しないよう定めていること、「8.4」が併存する他の好酸球関連疾患の治療を怠ると喘息等で死亡に至るおそれがあるとして担当医との連携を求めていること、「11.2」のその他の副作用が頭痛・咽頭炎・発熱・注射部位反応・過敏症反応であることを確認した。閲覧 2026-09-07
  4. 4.Aspirin-exacerbated respiratory disease: Update on medical management(World Journal of Otorhinolaryngology - Head and Neck Surgery・2020)PMC7729248の全文XMLを取得して確認した。アスピリン増悪呼吸器疾患(AERD/N-ERD)の治療選択肢としてオマリズマブ・レスリズマブ・メポリズマブ・ベンラリズマブ・デュピルマブが挙げられること、この総説の執筆時点では鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎についても本症についても生物学的製剤どうしの直接比較試験が行われていなかったこと(原文 There are currently no head to head studies of the various biologics in the management of nasal polyposis or AERD specifically)を確認した。⚠️ この記述は2020年時点のものであり、その後の比較試験(EVEREST)の有無を否定するものではない閲覧 2026-09-07
  5. 5.Dupilumab versus omalizumab in patients with chronic rhinosinusitis with nasal polyps and coexisting asthma (EVEREST): a multicentre, randomised, double-blind, head-to-head phase 4 trial(The Lancet Respiratory Medicine・2025)Crossrefで書誌を照合し、この試験がデュピルマブとオマリズマブを比較した直接比較の第4相試験であり、対象が喘息を合併する鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の患者であることを確認した。⚠️ 本剤(ベンラリズマブ)は比較対象に含まれない。本文は未取得で、ここで用いているのは比較された薬剤と対象疾患だけである閲覧 2026-09-07