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Drug Atlas · A13 Antimigraine drugs / 片頭痛治療薬 · 必修

ガルカネズマブ

galcanezumab

分類
Antimigraine drugs / 片頭痛治療薬Biologics & immunomodulators / 生物学的製剤
商品名(日本)
エムガルティ
商品名(EU)
Emgality
科目
Pharmacology
トピック
A13: Drugs used for treatment of gout. Drugs for headache syndromes
承認適応
片頭痛・一次性頭痛症候群
副作用
便秘レイノー現象血管浮腫そう痒

🧠 全体像:はとして初めて実用化された抗CGRPモノクローナル抗体の一つで、CGRPリガンドそのものに結合してシグナル伝達の入口を塞ぐ。トリプタン・ジタン・が発作が起きてから使う急性期治療薬であるのに対し、は発作を起こりにくくする側の薬で、個々の発作の頓用には使わない——この一点を混同しないことが最大のポイントになる。月1回の皮下注射という利便性の良さから、米国頭痛学会(AHS)は2024年の声明でを、従来の予防薬(など)の失敗を前提としない第一選択肢の一つと位置づけている。⚠️ 承認されている適応は3極で一致しておらず、に使えるのは米国だけである——この非対称が、本剤で最も間違えやすい点になった。

薬効群の中での位置づけ

の中で、はCGRP経路を直接標的にする点で従来薬と一線を画す。

分類 代表薬 標的 特徴
従来の予防薬 、バルプロ酸、、 片頭痛に間接的に効く既存薬の転用 安価だが片頭痛以外の適応から流用されたもの
(注射) CGRPリガンド 月1回皮下注。個々の発作の頓用には使わない。関連の相互作用がほぼない
経口(急性期+予防) CGRP受容体 経口小分子。急性期にも使える

⭐ は「リガンドを狙う抗体」と「受容体を狙う小分子()」の2系統に分かれる。 はリガンド側を中和するタイプで、CGRPが受容体に結合する前に捕まえるイメージを持つと、(受容体側で拮抗)との違いが整理しやすい。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='galcanezumab'>ガルカネズマブ</span>(抗CGRPモノクローナル抗体)を皮下注射"] --> B["血中・組織中の遊離CGRPに結合"]
    B --> C["CGRPが<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trigeminovascular system'>三叉神経血管系</span>の受容体に結合できなくなる"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dural vessels'>硬膜血管</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurogenic'>神経原性</span>拡張・炎症が起こりにくくなる"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trigeminal pathway, head'>三叉神経系</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pain sensitization'>痛覚感作</span>が起こりにくくなる"]
    D --> F["片頭痛の発症頻度が減少(予防効果)"]
    E --> F

薬物動態

生物学的製剤であるため、とはの考え方が異なる。

項目 値・特徴
皮下注射(SC)。用ペン製剤あり
吸収 緩徐。到達までのは5日1
半減期 約27日(≒1か月)。これが月1回投与を可能にしている1
定常状態 片頭痛:240 mgの負荷投与により初回投与後にに達する。:300 mg月1回では4回目の投与後に定常状態に達する1
代謝・相互作用 蛋白質のため一般的なを受ける。酵素を介した薬物相互作用はほとんど問題にならない

💡 負荷投与(240 mg)があるのは、半減期27日の抗体では通常量から始めると定常状態まで数か月かかるためである。 米国添付文書12.3は、240 mgの負荷投与で初回投与後にに達する一方、負荷投与を置かないの300 mg月1回では4回目の投与後に定常状態に達すると明記している1。群発期は数週間〜数か月で終わるので、このの差はでは実際に効いてくる。

適応(米国・EU・日本で一致していない)

地域 承認されている適応
米国(添付文書 2026年6月改訂) ①成人の片頭痛の予防(1.1)、②成人の反復性の治療(1.2)の2つ1
EU(Emgality SmPC) 月に4日以上の片頭痛日がある成人の片頭痛の予防のみ。の適応は無い(SmPC全文に cluster は0件)2
日本(電子添文 2022年5月改訂・第4版) 片頭痛発作ののみ。の適応は無い(電子添文全文に「群発」は0件)3

適応の位置づけとしては、米国頭痛学会(AHS)が2024年の声明で、を従来の予防薬の失敗を前提としないの第一選択肢の一つとしている4。一方、上表のとおり日本の電子添文は「と急性期治療を適切に行っても日常生活に支障をきたしている患者にのみ」と定めており、⚠️ AHSの位置づけをそのまま日本の運用に読み替えない。

⭐ でに承認があるのは米国のだけという点は、そのまま試験に出る非対称である。「CGRP抗体=片頭痛の薬」と丸暗記すると米国の1.2を落とし、逆に「にはCGRP抗体」と覚えると日本の臨床で使えない薬を挙げることになる。

💡 米国の添付文書は、片頭痛だけを “preventive treatment”、は “treatment of episodic cluster headache” と書き分けている。 側に「予防」の語は付かない。ただし実際の投与は群発期を通した月1回で、第3相試験(Study 4)のも第1〜3週の週あたり発作回数の減少であり、個々の発作を止めるではない1。

⚠️ の適応には「月に4日以上の片頭痛日がある」という患者側の条件が適応文そのものに書き込まれている。日本の電子添文は適応文には条件を書かず、5.1・5.2で「月に複数回以上の発作または慢性片頭痛であることを確認する」「と急性期治療を適切に行っても日常生活に支障をきたしている患者にのみ投与する」と入口を絞る23。適応の広さは「疾患名」だけでは決まらない。

用法・用量

いずれも皮下注射(SC)。急性発作の頓用には使わない。

適応 用量
片頭痛の予防(米国・・日本で共通) 初回に240 mg(120 mgを2回連続で皮下注)を負荷投与し、以降は月1回120 mg123
反復性(米国のみ) 群発期の始めに300 mg(100 mgを3回連続で皮下注)、以降は群発期が終わるまで月1回1

💡 2つの用法は「負荷のあと半分に落とすか、毎回同じ量を打つか」で対照的である。 片頭痛は240 mg→120 mgとが半分になり、期限を切らずに継続する。は毎回300 mgのままで、群発期の終わりという終了点がある——が「群発期」という区切りを持つ疾患であることが、そのまま用法に写っている。

⚠️ の300 mgは100 mg製剤3本で作る。 米国の添付文書は120 mg/mLペン・120 mg/mLシリンジに加えて100 mg/mLシリンジを剤形に挙げるが、・日本で承認されているのは120 mg製剤だけである( SmPC全文に “100 mg” は0件)123。

EUのSmPCは、開始後3か月以内に効果を評価して継続の可否を個別に判断し、その後も定期的に継続の要否を見直すことを求めている2。

禁忌・注意

  • 禁忌:本剤のまたは添加剤に対する重篤な過敏症。3極で共通の唯一の禁忌である(米国4、 4.3、日本2)123
  • ⚠️ 過敏症反応は投与の数日後に遅れて出ることがあり、長引くことがある。 米国5.1は市販後のアナフィラキシー・を挙げ、 4.4は発現までの幅を投与後1日以内から1日超〜4週間までとしている12。「注射直後に何も起きなかった」ことを安全の根拠にしない
  • ⚠️ 米国の添付文書だけがを4項目持つ(2026年6月改訂)。 5.1 過敏症反応に加えて、5.2 重篤な合併症を伴う便秘(入院例・手術を要した例があり、多くは初回投与後に発現。を落とす薬の併用で悪化しうる)、5.3 高血圧(新規発症・既存高血圧の悪化。最も多いのは投与開始7日以内)、5.4 (発現までの中央値71日、多くは中止で消退)が並ぶ。のSmPCと日本の電子添文には高血圧・の記載が無い(どちらも全文検索で0件)123
  • EU 4.4は、主要な心血管疾患を持つ患者がから除外されており、この集団の安全性データが無いとしている2。「血管収縮作用が無い=心血管疾患があっても安全」と読み替えない
  • 妊娠・授乳中の使用経験は限られており、個別にリスク・を評価する
  • CGRP経路はにも関与するため、便秘の訴えを見逃さない

副作用

3極で書かれている頻度の粒度が違うので、並べて読む。

出典 内容
米国 6.1(片頭痛試験、本剤120 mg 705例・1451例) 発現率2%以上かつより2%以上高いは注射部位反応だけ(18%対13%)1
4.8(120 mg/240 mg) 注射部位疼痛10.1%/11.6%、注射部位反応9.9%/14.5%、回転性めまい0.7%/1.2%、便秘1.0%/1.5%、そう痒0.7%/1.2%、蕁麻疹0.3%/0.1%。アナフィラキシー・は rare2
日本 11.2 注射部位疼痛10.1%、注射部位反応(紅斑・・内出血・腫脹等)14.9%。1%未満に回転性めまい・便秘、頻度不明にそう痒症・蕁麻疹・発疹。11.1 重大な副作用は重篤な過敏症反応(頻度不明)の1項目だけ3

💡 日本の電子添文で便秘は「1%未満」だが、米国では(5.2)の見出しになっている。 頻度が低いことと重篤度が低いことは別で、便秘はに至った市販後例がある。頻度表だけを見て軽く扱わない13。

まとめ

  • 抗CGRPモノクローナル抗体。CGRPリガンドに結合してシグナル伝達の入口を塞ぐ。
  • 急性発作の頓用には使わない(トリプタン・ジタン・との決定的な違い)。
  • ⚠️ が3極で違う。 米国は①成人の片頭痛の予防と②成人の反復性の治療の2つ、は月4日以上の片頭痛日がある成人の片頭痛の予防のみ、日本は片頭痛発作ののみ。の適応があるのは米国だけ。
  • 用量も適応で違う。片頭痛は初回240 mg→月1回120 mg、(米国のみ)は群発期の始めに300 mg→群発期終了まで月1回。
  • 月1回の皮下注射で足りるのは、抗体の半減期が長い(約1か月)ため。
  • 酵素を介した相互作用がほとんどなく、系(代謝)と対照的。
  • AHS 2024年声明で、は他の予防薬の失敗を前提としない第一選択肢の一つとされている。
  • 主な副作用は注射部位反応と便秘。⚠️ 米国の添付文書は2026年6月改訂で高血圧とをに加えたが、・日本の文書にはまだ無い。過敏症反応は投与数日後に遅れて出ることがある。

出典

  1. 1.EMGALITY (galcanezumab-gnlm) injection, for subcutaneous use — prescribing information(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed。Labeler は Eli Lilly and Company)・2026)DailyMedのSPL(当該setid、effectiveTime 20260605)をブラウザUA付きcurlで取得し全文を読んだ。Highlights末尾の改訂表示は Revised: 06/2026。適応は2つで、1.1 は逐語で "EMGALITY is indicated for the preventive treatment of migraine in adults."、1.2 は逐語で "EMGALITY is indicated for the treatment of episodic cluster headache in adults."(群発頭痛側には preventive の語が付かない)。2.1 片頭痛は240 mg(120 mgを2回連続皮下注)を負荷投与し以降は月1回120 mg、2.2 群発頭痛は逐語で "300 mg (three consecutive subcutaneous injections of 100 mg each) at the onset of the cluster period, and then monthly until the end of the cluster period"。3 の剤形は120 mg/mLペン・120 mg/mLシリンジ・100 mg/mLシリンジの3つ。4 の禁忌は本剤または添加剤に対する重篤な過敏症のみ。5 の警告は4項目で、5.1 過敏症反応(市販後にアナフィラキシー・血管浮腫の報告、投与数日後に発現し長引くことがある)、5.2 重篤な合併症を伴う便秘(入院例・手術を要した例があり、多くは初回投与後に発現、消化管運動を低下させる薬の併用で悪化しうる)、5.3 高血圧(新規発症・既存高血圧の悪化。最も多いのは投与開始7日以内)、5.4 レイノー現象(発現までの中央値71日、多くは中止で消退)。6.1 の片頭痛試験(Studies 1〜3、本剤120 mg月1回 705例・プラセボ1451例)で発現率2%以上かつプラセボより2%以上高い有害反応は注射部位反応のみ(18%対13%)。群発頭痛のStudy 4は106例(本剤49例・プラセボ57例)の8週間二重盲検で、主要評価項目は第1〜3週の週あたり群発発作回数のベースラインからの平均変化、ベースラインの週あたり発作回数は平均17.5回であり、安全性プロファイルは片頭痛患者と同様とされる。12.3 の薬物動態は逐語で "A loading dose of 240 mg achieved the serum galcanezumab-gnlm steady-state concentration after the first dose. A dose of 300 mg monthly would achieve steady-state concentration after the fourth dose. The time to maximum concentration is 5 days, and the elimination half-life is 27 days."。閲覧 2026-09-17
  2. 2.Emgality 120 mg solution for injection in pre-filled pen / pre-filled syringe — Summary of Product Characteristics (Annex I)(European Medicines Agency(EMEA/H/C/004648、EU/1/18/1330、販売承認取得者 Eli Lilly Nederland B.V.)・2026)EPAR製品情報のPDFを取得して全文を読んだ。year の根拠はEMAの製品ページの Product Information の Last updated 11/09/2026(同ページの Revision 15)で、PDFの「10. DATE OF REVISION OF THE TEXT」は日付が空欄、9 は初回承認2018年11月14日・直近更新2023年9月1日。4.1 の適応は逐語で "Emgality is indicated for the prophylaxis of migraine in adults who have at least 4 migraine days per month." の1項目だけで、全文に cluster は0件(群発頭痛の適応は無い)。4.2 は初回に240 mgを負荷投与し以降は月1回120 mg皮下注、効果は開始後3か月以内に評価し継続は個別に判断、以後も定期的に継続の要否を評価する。4.3 の禁忌は有効成分または添加剤への過敏症のみ。4.4 は、主要な心血管疾患を有する患者が臨床試験から除外されておりこの集団の安全性データが無いこと、重篤な過敏症反応(アナフィラキシー・血管浮腫・蕁麻疹)が投与後1日以内に起こりうる一方で1日超〜4週間の遅発例もあり持続が長引くことがあることを述べる。4.8 は120 mg/240 mgで注射部位疼痛10.1%/11.6%、注射部位反応9.9%/14.5%、回転性めまい0.7%/1.2%、便秘1.0%/1.5%、そう痒0.7%/1.2%、蕁麻疹0.3%/0.1%とし、表ではアナフィラキシーと血管浮腫を rare、蕁麻疹を uncommon に置く。⚠️ 全文に hypertension と Raynaud は0件で、米国添付文書の5.3・5.4に当たる警告はこの版に無い。承認されている剤形は120 mgのペンとシリンジだけで、全文に "100 mg" は0件である。閲覧 2026-09-17
  3. 3.エムガルティ皮下注120mgオートインジェクター/エムガルティ皮下注120mgシリンジ 電子添文(医薬品医療機器総合機構(PMDA)電子添文(日本イーライリリー株式会社)・2022)2022年5月改訂(第4版)の電子添文の本文(HTML)を取得して読んだ。「4. 効能又は効果」は片頭痛発作の発症抑制のみで、全文に「群発」は0件。「6. 用法及び用量」は成人に初回240mgを皮下投与し以降1ヵ月間隔で120mgを皮下投与する。5.1 は前兆のある又は前兆のない片頭痛の発作が月に複数回以上発現している、あるいは慢性片頭痛であることを確認したうえで適用を考慮するとし、5.2 は最新のガイドライン等を参考に非薬物療法・急性期治療を適切に行っても日常生活に支障をきたしている患者にのみ投与するとする。「2. 禁忌」は本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴を有する患者。11.1 の重大な副作用は重篤な過敏症反応(頻度不明。アナフィラキシー・血管浮腫・蕁麻疹等があらわれ、投与数日後に発現することも反応が長引くこともある)の1項目だけで、11.2 その他の副作用は注射部位疼痛10.1%・注射部位反応(紅斑・そう痒感・内出血・腫脹等)14.9%、1%未満に回転性めまいと便秘、頻度不明にそう痒症・蕁麻疹・発疹。⚠️ 全文に「高血圧」「レイノー」は0件で、米国添付文書の5.3・5.4に当たる記載はこの版に無い。承認されている剤形は120mgのオートインジェクターとシリンジだけである。閲覧 2026-09-17
  4. 4.Calcitonin gene-related peptide-targeting therapies are a first-line option for the prevention of migraine: An American Headache Society position statement update(American Headache Society・2024)CGRP標的薬(本剤を含む抗体薬・ゲパント系)は、従来の予防薬の失敗を前提としない片頭痛予防の第一選択肢の一つに位置づけられる閲覧 2026-08-03